ユーラシア大陸を旅し、世界のアーチストとコラボレーションしながらオペラを創作する音楽詩劇研究所主宰、河崎純の旅と考察の記録。ユーラシア、日本を中心に知られざる音楽の現在と、伝統を紹介。

2022年11月刊行書籍「ユーラシアの歌」のwebバージョン。

  

ユーラシア大陸には

 

こんなにもたくさんの歌が潜んでいた

 

伝統にも、市場にも、前衛にも、芸術にも、芸能にも

どこにも収まらない不思議な音楽

 

このまどろめる草原より 平安と異教がたちこめ 海の墓の神々の偉容は息づくとき 旅人よ、飲み、騒げ

(ヴェリミール・フレーブニコフ)


ユーラシアの歌

          出会いのポリフォニーが奏でる 21世紀の「神謡集」

 

 

河崎純音楽詩劇研究所主宰・作曲家・コントラバス奏者)

 

1975年東京生まれ。埼玉県蕨市在住。早稲田大学文学部卒業。音楽詩劇研究所代表。主に舞台作品の音楽監督、演出、構成、委嘱作品の作曲。演劇・ダンス・音楽劇・伝統芸能、実験的なパフォーマンスを中心にこれまで90本以上の舞台作品の音楽監督、作曲、演奏を手掛けた。「音楽詩劇研究所」では、ユーラシアン・オペラプロジェクトとしてアジア・ユーラシアの歌手やアーチストとコラボレーションをおこなう。近年は特にトルコ、ロシアでの、現代音楽や即興、ダンスなど様々なプロジェクトに主要メンバーとして参加。ロシア民謡、俗謡を歌う歌手、女優石橋幸歌手「ロシアアウトカーストの唄」では、音楽監督をつとめている。立教大学、慶應大学などで、特別講師、ゲストスピーカーに招聘、各地で音楽・演劇・詩に関するワークショップを行う。埼玉県川口市のブック・カフェ「ココシバ」にて、「河崎純月刊音楽通信リュモーチナヤ」では、世界各地の音楽や、現代の音楽を紹介するトークイベントを行う。

 

音楽詩劇研究所 <ユーラシアン・オペラ・プロジェクト>とは

 

河崎純が主宰する音楽詩劇研究所によって、2016年に始まる。東京都歴史文化財団アーツカウンシル東京や国際交流基金の助成を受け、ユーラシア各地の歌手、演奏家やダンサーと現地でコラボレーションを行い、詩、口承芸能などを新たに詩的ドラマとして読み替えを行いオペラを創作。2016年より、アルメニア、ロシア、ウクライナ、ブリヤート共和国の国際演劇祭、音楽祭で詩作、上演を重ね、2018年東京で「Continental Isolation(ユーエアの精霊たちと奏でる21世紀の「神謡集」)」。2019年より「山椒大夫」を素材に、ユーラシアン・オペラ第二弾としてカザフスタン、韓国で上演。現代アジアの「マジックリアリズム」と称される。

 

<Link>

河崎純公式ホームページ 音楽詩劇研究所公式web

・Jun Kawasaki Facebook Jun Kawasaki, Music and Poetic Drama Laboratory |音楽詩劇研究所 facebook


内容


目次

         どの章からもお読みいただけます


 はじめに  囁きはじめる ユーラシアの風の歌

 

0 道の始まり  イスタンブールの喧騒 

1 continental isolation / 東京の沈黙

2 音の記憶・声の記憶

3 民謡から神無き時代の「神謡集」へ

4 旅と音楽

5 つたない語学力、未知なる音との遭遇 

6 外「国」人 

7 異邦人の耳 明治の音

8 ワールドミュージックブームの体験の体験

9 ロシア、東欧、社会主義 

10 イスタンブールの空港で

11 ユーラシアに訊ねる

 

 第一部 ユーラシアンオペラ=神なき時代の神謡集

 

第一章  死者のオペラ 「終わりはいつも終わらないうちに終わって行く」

 

1 ミュージック・ポエティック・ドラマ(音楽詩劇)とは 

2 小説「アルグン川の右岸」 

3 北方狩猟民族エヴェンキ 

4 死者のアリア「歌と逆に、歌に」 

5 河原から死を告げる声 心中天網島 

6 初演「終わりはいつも終わらないうちに終わっていく」 

 

◆ 「終わりはいつも終わらないうちに終わっていく」 (「Continental Isolation」)登場人物

 

 

第二章 アルメニア・モスクワ音楽創作記 2016 

 

 アルメニア篇

 

1 トルコのコーヒー占いによると 

2 世界で一番哀しい音色とコミタス 

3 エリヴァニ 禁じられた声  

4  朝のヴォトカ 

5 アルメニア古謡と「天女羽衣」

 

 モスクワ篇 

 

1 モスクワでつげ義春を思い出す

2 ロシア・アヴァンギャルドが宿る場所 

3 ウクライナの真珠 アーニャ・チャイコフスカヤとの出会い

4 二つの子守唄 古謡のない日本

5 二つの湖へ

 

ユーラシアンオペラを彩る海外アーチストたち オーラルヒストリー①

 アーニャ・チャイコフスカヤ(歌手/ウクライナ

 

第三章 シベリア・トルコ・ウクライナ バイカル・黒海プロジェクト創作記 2017

 

 バイカル (イルクーツク〜ブリヤート)

  

1 かさなり合うウイグルのひとたち  

2 バイカルプロジェクト、日本からのツアー・メンバー 

3 シベリアの音楽家との出会い  

4 イルクーツクのパンク少女  

5 ネオシャーマニズムと遊牧民の歌 

6 囚人の歌 

7 バイカル湖を越えて  

8  ザバイカル民族学博物館 

◆古儀式派の合唱とブリヤートの民謡について

9 「機材が燃えたのでできません」ボイス・オブ・ノマド  

◆「遊牧民の声」について新聞(バイカル・ダイアリー) 

10 チベット密教とレーニン像のある街で

11 ラーゲリの家族劇場 

12 顔たち 遊牧の民の末裔 

 

ユーラシアンオペラを彩る海外アーチストたち(オーラルヒストリー)②

マリーヤ・コールニヴァ(歌手/ロシア)

 

 黒海プロジェクト(トルコ~ウクライナ)

 

 1 懐かしいイスタンブールの大声 

2 トルコ歌謡と日本歌謡 

3 ガラタ橋ののセロニアス・モンク 

4 アジアの両端 イスタンブール=釜山 

5 テュルクの陸の雷魚、東西最果てアジアの声   

6 骨の振付家との再会  

7 イスタンブール・ミーティング 

8 ボスポラスの響きとユーラシアの大地を這う声 

9 ユーラシアンオペラを夢想した街で

 

ユーラシアンオペラを彩る海外アーチストたち オーラルヒストリー③

サーデット・チュルコズ(歌手/トルコ/スイス)

 

10 オデッサの舞踏フェスティバルへ 

11 ジャズ誕生の街? 

12 ウクライナの舞踏家たちと 

13 白塗りしたダンサーたちの多言語子守唄 

14 世界初の戦闘機女性飛行士 サビハ・ギョクチェン 

 

ユーラシアンオペラを彩る海外アーチストたち(オーラルヒストリー)④

 ドミトリー・ダツコフ(ダンサー、音楽家/ウクライナ)

 

第四章 シベリアに訊く 2017

  

1 イルクーツクの実験音楽祭に出る 

2 シベリア暮らしと平均寿命

3 エイジアン・フリー・フォーク四重奏団 

4 千の声の祈り トゥバ共和国のサインホ・ナムチラクと日本人墓地へ

5 唯物論的な墓を歩く

6 バイカル人間模様

 

第五章 ユーラシアンオペラ「Continental Isolation2018東京

 

◆ ユーラシアの精霊たち 4人のマレビトのプロフィール

・アーニャ・チャイコフスカヤ(ウクライナ)

・サインホ・ナムチラク(トゥバ共和国)

・サーデット・チュルコズ(トルコ)

・マリーヤ・コールニヴァ(ロシア)

 

2018東京 ユーラシアンオペラ「Continental Isolation

 

1  即興的に織り上げる21世紀の神謡集

◆「Continental Isolation」 ストーリー 

2マレビト来訪1 アーニャ・チャイコフスカヤと(ウクライナ)

3マレビト来訪2 サーデット・チュルコズと(トルコ)

4 マレビト来訪3 マリーヤ・コールニヴァと(ロシア)

5マレビト来訪4 サインホ・ナムチラクと(トゥバ共和国)

6 ユーラシア の歌

 

第六章 <Continental Isolation」その後1> 岩手山に祈りつづける「シャーマン」

 

1 ミュージック・フロム・モリオカ

2  五体投地から始まったサインホの旅

3  民謡酒場と化した小料理屋

4  シャーマンからのメッセージ 

5 「アーチスト」の素顔 I am a shaman of my life  

 

第七章  <Continental Isolation」その後2> タタールスタン・ロシア「草原の道」音楽創作記 2019

 

 タタールスタン篇

 

 1 男たちのアトリエ in カザン  

2 マリ人(チェレミス人)の聖なる湖の上で 前衛詩人フレーブニコフ追憶 

3  ヴォルガのマラルメと

4 チュヴァシ民謡と与謝蕪村

5 「去り行く」三陸・宮古 

6 「失われた7つの音」を踊るダンサー 

7 架空の民族 歌のない「夢の歌」 

 

 ロシア篇(ペテルブルグ・モスクワ・グスリッツァ)

 

1 全身音楽家 オレク・カラヴァイチュクのこと 

2 ソ連時代の非合法アジト 「アートセンター」という場所 

3 サインホとペレストロイカ 

4 ウクライナ古謡の世界と熱狂「アウクツィオン」ライブ 

5 アレクセイ・クルグロフと即興音楽のコンセプチュアルな世界 

6 小さな美術館できいたカザフスタン大統領の辞任 

7 フリーセッションの面白さ 

8 禊(みそぎ) 大斎・マースレニッツァ・どんど焼き 

9 森のなかのアートレジデンス 

10 街の小さな博物館 

11 ロシアの霊性1 雑木林と雪道で考えたこと

12 ロシアの霊性2 十字架と囚人の唄 

13 バシコルトスタンのトランペット奏者、ユーリ・パルフェノフの眼 

14 キャンディーズ in モスクワ 

15 テングリ・ヴァージョン「終わりはいつも終わらないうちに終わっていく」 

 

テングリの精神的伝統

霊的な瞑想によるテングリ信仰の音楽 (バクチャル・アマンジョール 拙訳)

 

 

 第二部 うたものがたり フォークソング」考 

 

 

 

1 独り歌の源流

2 「死者の歌」から「夢の歌」へ

3 「楢山節考」と「日本春歌考」

4 マテリアルな響きとともに 

5 フォークソング(民謡)にならない声

6 韓国民衆芸能のダイナミズム

7 ユーラシアンオペラとしてのパンソリ

8 「安里屋ゆんた」と春香伝

9  韓国のロミオとジュリエット 「春香伝考

10    和人のユーカラ/サハリンのアリラン

11 オタスの杜について

 

12 文字のない歌 中島敦の「狐憑」とル・クレジオ

 

 日本 ・アイヌ・琉球篇

 

1 日本の歌の原像を想像するための四冊の参考書

2 西洋人が日本に訊いた「明治の音」より

3 郷愁の「ご当地ソング」

4 しまぐにソウル

5 音楽水脈調査計画 水木しげるのオノマトペ 民謡の囃子詞いろいろ

6 朝の遠吠え

7 暗闇のレッスン

8 盲目と黙祷

9 スローミュージック 雅楽のテンポについて

10 男だらけの音楽 「ものみな歌で終わる」 

11 耳と耳の間に アイヌの音楽

12 ニライカナイと捕陀落渡海

13 ありえなかった音楽

14 賛美歌  

                            

 

第三部 安寿と厨子王、カザフスタン・韓国へ 

 

 

第一章 カザフスタンへの道 山椒大夫〜デデコルクト

 

1 口承芸能の宝庫カザフスタンへ

2 ロシアの高麗人、ミハイロヴァとともに

3 シャーマンの楽器コブスで語る説経節 

4 セミパラチンスク核実験場とロシアの前衛音楽家セルゲイ・レートフ 

5 ユーラシアンオペラ版「さんしょうだゆう」ストーリー 

 

 

ユーラシアンオペラを彩る海外アーチストたち オーラルヒストリー⑤

 アリーナ・ミハイロヴァ(ダンサー/ ロシア)

 

第二章 「さんしょうだゆう」創作日誌 2019 カザフスタン

 

 1 アルマティへ 

2 コリョサラムの唄(タルディコルガン) 

3 高麗人の丘で (ウシトベ) 

4 二種類のコブス カザフ・シャーマニズムの弦楽器 

5 DUET 奇跡の詩  

6 カザフスタンの若手女子弦楽四重奏団 

7 踊る遊牧民の末裔たち 

8 遊牧の国で馬と対話する 

9 オプティミズム 伝説のサイケロック歌手エゴール・レートフ 

10 ペシミズム 失語 石原吉郎 

11 吉郎と清志郎 

12 安寿の失語 ダウン症のアーチストとともに  

13 ソヴィエト・ロックの英雄ヴィクトル・ツォイ 戦争 

14 「歌はあなたのために世界の扉を開きます」

 

 

第三章 韓国への道 山椒大夫〜沈清歌 

 

 1 韓国との出会い シャーマン音楽ー韓国プロ野球ー演歌  

2 韓国語のわからない私 

3「さんしょうだゆう」から「沈清歌」へ 

4 美術家 鄭梨愛とパンソリ オーラルヒストリーから 

5 「正歌」の歌手、ジー・ミナとの出会い 

6 「この国に、近代はありません」 

7 ふたたび「イマジン」 

 

  <創作ドキュメント 2019 韓国 >  

  

●<0 「チャガン湖」、Kazakhstan> 

1 誕生、福島 ,Japan 

2 離、 新潟 ,Japan 

3 人魚、 東海(日本海) 

4 盲、アイヌコタン, 北海道, Japan 

5 寒, サハリン/樺太 Russia

6 邂逅、 Ice road (韃靼海峡) 

●<インタリュード,シベリア・ザバイカル,Russia> 

7 一九三七,ウシトベ, Kazakhstan in USSR 

8 受難、佐渡島、 Japan 

9 沈、印塘水、Korea 

10 着,、済州島、 Korea 

● < 0「チャガン湖」、Kazakhstan >〜東京 不忍池(映像 by 三行英登)〜福島) 

 

◆ 「さんしょうだゆう」のその後 2020〜 

 

第四部 埼玉初のユーラシアンオペラ/アジア篇 

 

1 円形劇場または広場にて

2 ワラビスタンに暮らす

3 トルコの前衛が教えてくれたクルドの歌( デングベジュ )

4 クルドの娘が教えてくれた「クルドの娘」

5 もうひとつのユーラシアンオペラ

6 強いられた沈黙から 2021年の円形劇場

 

<台湾、中国篇>

7 わたしの「わが西遊記」 

8 中国の声 

9 台湾 夜のアオゾラ 台北のロックフェスティバル

 

 

第五部 西欧編

 

 1 スペイン 半島の音楽 「ドゥエンデ」と「恨」

2  ドイツ/フランス① トニオとリサとフランスけんちゃん

3 ドイツ/フランス② ドイツ語のバルバラを聴く

4 ドイツ/フランス③ドイツ/フランス③ 天下茶屋の文房具屋で

5  ドイツ/フランス④ 昭和最後の日のこと

6 フランス マニュエル・ビアンブニュとロバート・ワイアット

7 ドイツ 西ドイツの戦後歌謡と69年のジャニス・ジョプリン

8 ドイツ ヨーロッパの歌工場(ブレヒトソングについて)

9 ドイツ 都会のハクビシン 

10 フランス 「神は豚だ」

11 ヨーロッパ最古の民族バスクの伝統音楽とキルメン・ウリベ

 

 

第六部 東欧、中欧編

 

ポーランド  2001 2002

 

1 旅芸人一座クラコフで 

2 ポーランドの20世紀前衛芸術

3 ロマとユダヤの悲歌

4 タンゴ ゴンブロヴィッチとイリーガルな夜

 

ウクライナ篇(キエフ・2008)

 

1 異常事態発生

2 キエフの地下道の哭き女

 

 ハンガリー(ブダペスト)2010

 

1 ハンガリーと日本 口琴について

2 「マジャロック」とロマ自身のための音楽

3 バルトーク・ベラを聴きながら

 

 リトアニア2004 2008

 

1 貧乏音楽家「贅沢病」になる

2 星と調和の女声合唱 スタルティネス

3 リトアニア再訪

  

第七部 ロシア編

 

 「オマエタチはコミュニストですか」 2004

 

1 メガロシティ・モスクワ「オマエタチはコミュニストですか」

2 ロシアの平原を走る車輪の響き

3 極北の港町アルハンゲリスクのジャズフェス

 

 モスクワの天使、または老婆たち 2010

 

1 「砂の舞台」 ロシアのアーチストとの出会い

2 モスクワの天使、または老婆たち

3 石橋幸とスターリンに屠られた3人の歌手 

  

③ 明るいロシア民謡 ~歌はどうして「暗く」なったのか~

 

1 ペテルブルクの「モスクワ」駅 2004

2 暗い音楽 

3 放浪楽師(スコモローヒ)の伝統楽器 グースリ 

4 西洋楽器としてのバラライカ

5 長調を奏でる/短調を聴く

6 美しい未来(プリクラスナエ・ダリョーカ)

 

第八部「デデ・コルクト」ベルリン・トルコ・中央アジア2013、2014

 

1 下北沢に向かっていたら 

2「デデ・コルクトの書」 ベルリンのトルコ街

3 デデコルクト ソリスト紹介

4 クリスマスキャロル

5 パウル・ツェランを歌にする 

6 異教徒の孤独 ドレスデンの森にとりのこされて 

7「中央アジアのニーベルングの指輪」でノマド(遊牧民)を演じる

8 トイトイトイ 悪魔払いのおまじないとオーケストラの仲間たち

9 レイプを演じた私・アゼルバイジャンからのメッセージ

■  現代音楽を演奏する クセナキス、ユン・イサン(尹伊桑)

10 狂乱の宴 in リヒテンシュタイン公国

11 シュトッツガルド 「魔の山」

12 セルビアの狂乱 作曲家、オーボエ奏者ハインツ・ホリガー(スイス)

 

★「これは音楽なのだろうか....」 トルコの振付家とのイスタンブールの日々 2011・2012

 

 第九部 日本舞踊家西川千麗の夢想、あるいは教え

 

1 ジュネーブの夜 

2 書簡(E-mail

3 孤独

4 アール・ブリュット デュビュッフェ 

5 ジュネーブの見張塔 2013年12月 

6 京都 2012年12月

7 「或る日のルソー 孤独の散歩者の夢想」

8 声 パリ 東京 

 

■  「 ライブ イン パリ 2006 」 

 



ユーラシアン・オペラ音楽詩劇研究所お客様の声

photo by Mikomex
photo by Mikomex

○ユーラシア大陸から日本を音楽と詩、演劇とともに旅できるゴージャスな芸術体験です!(評論家)

 

○ ユーラシアをつなぐ可能性のもう一つの側面を見せてもらいました。それは多国籍音楽アンサンブルみたいに無理にエキゾチックな ものをまとめたものでなく、音を通じたユーラシアの記憶の交錯という深淵の可能性を感じました。(著述家 ロシア研究者)

 

○ ユーラシアンオペラ東京、素晴らしい出来だった。何と言っても、トゥバ共和国出 身のサインホ・ナムチラクさんの存在感が素晴らしく、ため息が出る程だった。サインホさんの様な 素晴らしい芸術家に出会えると、生きて良かった、そう素直に思える。(映画監督)

 

○ いわゆるワールドミュージックのようなものではないものがもとめられている。ロマン的あるいはロマン主義的な感じがあるかもしれない。アイデンティティのふたしかさ。どこでもなくいつでもない想像と記憶の限界あるいは境界をこえようとする反復。モデルのないものを模倣しようとする即興。記憶にないものが想起されるように。(詩人)

 

○ひとつ言えるのは河崎のユーラシアンオペラは、領域国民国家という西洋近代がもたらした大きな価値観が揺らいでいる今日ならではの作品ということなのである。サインホ ・ナムチラクがステージに現れた時に空気が変わったように、彼女の存在感は傑出していた。以前と変わらぬ透明で美しい声、パフォーマーとしてアーティストとして表現領域を広げてきただけに、ポップな表現も含めて、観客を捉えたのである。まるでその姿は、しなやかな手指の動きといい、まるで菩薩のようでさえあった。ふと、ますます瀬戸内寂聴に似て来たなと思ったのである。また、サーデット・テュルキョズのシャーマン性を感じさせるヴォイスにもぐいと人を惹きつける計り知れないパワーを感じた。それと好対照だったのがアーニャ・チャイコフスカヤ、マリーヤ・コールニヴァの美しい声、三木聖香もまた好演していた。確かにポストモダンの先は見えていない。それは、作品のエンディングが妙にポップで明るく、それなのに暗さを抱え込み、混沌とした集団即興は、破綻しつつある西洋近代の価値観、しかし答えを見出せないでいる現在を象徴しているようでもあった。だが、河崎のプロジェクト自体が新たな領域を拓いたといえるのではないか。そしてまた、表現分野での試みが我々に想像力を駆使することや思考を促していることは間違いない。(Jazz Tokyo 記事 抜粋)

 

○ 多国籍、多ジャンルの表現者が交通するためのプラットホームを創造するという面では、即興演奏の歴史において、各国別の即興オーケスト ラからグローバルなコンダクションへとその存在様式を変えてきた集団即興の歴史が、トラディショナルな歌と声をテーマにした『ユーラシアンオペラ東京2018』にもはっきりと刻印されていました。 個々の身体表現を十全に生かすような多彩なパフォーマンスの魅力を引き出すと同時に、よき共同作業によって参加者がひとつの意識を作りあげるというのは至難の技です。この点でも、音楽詩劇研究 所の挑戦が、またひとつ新たな局面を開いたことを実感させる公演でした。(舞踊、音楽批評)

 

○ 序盤は演奏に惹かれ、後半はソリストの4人や演者の声色を駆使したパフォーマンスに、 舞踏と相まって、とても引き込まれた。それぞれの時に可憐に、時におどろおどろしく迫る声が素晴らしかった!(コンサートプロデューサー)

 

○ 歪で無機質な調和しない声が増えていく中で、しかし、各々の固有の響きが一瞬閃く。そういう瞬間 が、幾度か繰り返される。 その積み重ねの中でやがて調和に似た何かが生じてくる。恐ろしさが少しずつ引いていった。 そもそも、かつての民らの「うた」も、異なる民が交わり合う中それぞれの民の響きは必ずしも調和し きってはいなかった。それこそが生(せい)の生々しさ、うたのうたらしさでもあった。 デジタルの時代、溢れる声は総てノイズに均される。個が個として独立しすぎて、無個性な砂粒がざ らつくようだ。でも、全部均されて均されきったその先で、私たち、いや私が、最小単位の「民」として再び謡を取り戻すこともあるのかもしれない。

 

○ 天と地と 神様に捧げものする神事に立ち会った気分。

 

○ ユーラシアンオペラってよくわからず行ったけど、圧倒的な歌唱力とキャラ強すぎ渋滞そしてレベル 高いコントだった...最前列で感じまくったために笑いこらえるのきつかったけどすごい楽しかったです

○ 本物の「Shaman」から物凄く強烈なインパクトを頂きました!!!

 


海外メディア 音楽詩劇研究所 批評記事


○ 本原作小説、ユーラシアンオペラで復活した「山椒大夫」

 童子アートホールで10月9日、夕方の7時最後の公演

     8日夜7時、ソウルのトンジャアートホールで「ユーラシアオペラ山椒大夫」公演が行われた。 

 

「山椒大夫」は、日本の小説家、森鴎外(1862~1922)、原作を監督であり、作曲家の河崎純が現代風にアレンジした作品だ。 原作は平安時代(794~1185)を背景に、父を探しに旅立った家族が人身売買で母と二人が生き別れになって、「山椒大夫」家に雇われ、経験する話であり、これは1954年溝口健二が映画化して爆発的な人気を呼んだ。

昨日公演した「ユーラシアンオペラ山椒大夫」は原作や映画とはまた違った感興を与えたためか、客席は息づかいなく静かだった。 幕が上がると、画面いっぱいに一人の女性が踊る。 全身をよじりながら続く踊りは、幼い兄妹と別れて佐渡島に売られ、目の見えない盲人になった母親のようにも見えるし、「山椒大夫」家で数年間奴隷生活をして脱出を夢見たが、結局は水に落ち込んで死ぬ女主人公の安寿のようでもある。

 

「ユーラシアンオペラ山椒大夫」は原作が日本小説であるだけに、観客の理解を助けるため舞台の中央の大型スクリーンに理解しやすい説明があって観やすかった。 俳優が日本語で話すと、画面の字幕は韓国語と英語で説明が出て、韓国語で話すと英語の字幕が出て、該当言語で理解するのに困難がないように構成されていた。公演の構成はすべて10章に分かれたが、誕生、別れ、人魚、盲人、酷寒、出会い、1937、災い、沈、終着地と続く間、俳優の演技と音楽演奏者たちの演奏が幻想の姿を見せた。

今回の作品を監督した河崎純は、「韓国と中央アジアの神話と伝説、コリアンディアスポラの歴史を繋げてみた。 これを表現するために、舞台を近代、現代に移しながら日本の小説を再解釈しようとした。 今回の作品は日本、韓国、ロシア、カザフスタンの芸術家たちが集まって作った国際プロジェクトだ。」と言った。

 

 作品のストーリーのうち、平安末期騒々しい社会の中で人身売買とこれを通じて、お金を稼いだ守銭奴一家で死ぬまで奴隷として生きていった平安人と1937、スターリンの命令によってソ連政府が沿海州の高麗人(韓国人)を中央アジアに強制移住させて多くの人命と財産の被害を招いてきたのは、何の相関関係がないことだ。にもかかわらず、作品ではこのような事実がお互い絡まれている。なぜだろうか。筆者はそれを河崎純監督が持っている「人間に対する暖かい視線」と読んだ。河崎純監督自身が言ったように、「日本の伝統作品にコリアンディアスポラの歴史を連結した」という言葉からそんな感じを受けた。

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 千年前日本の平安時代(794~1185)を背景にした話が進化されて復活し、今日韓国の地で新たなテーマを加味した「音楽オペラ」として披露されたというのは非常に新鮮な試みだと考えだ。 古典を古典としておけば古典に過ぎないが、現代的な感覚で再解釈すれば現代物になる。ここでさらに重要なことは、「日本的なものに韓国とロシア、カザフスタン的なものを加えた」という点だ。

その点で「ユーラシアンオペラ山椒大夫」は新鮮だ。 実は、私は大学で森鴎外の原作である「山荘大夫」を講義し、溝口健二監督が作った映画も学生たちと何度も観た。その中、国際交流基金ソウル日本文化センターから送られてきた「ユーラシアンオペラ山椒大夫」の案内文を見て、最初に予約を申し込んだ。 この作品をどうやってオペラに? しかもユーラシアンオペラ? で作ろうか知りたかったからだ。

 

 2時間近い公演を観ながら日本原作小説を理解できない観客の立場では少し難解で難しいかも知れないとも思ったが、そんな懸念は、大型スクリーンに十分な解説があったので解決されたものとみられる。

冬の海を眺めながら、私が家を出て死んだら青い海に私の骨粉を撒いてほしいという字幕が意味深長に聞こえる。 愛する夫と別れて兄妹を連れて探しに出たが、人身売買にかかって粉々になった一家族の悲劇的な生と、日帝侵略で慣れた故郷から離れて沿海州に移住したが、再びスターリンの強制移住命令で突然酷寒の中央アジアのカザフスタンに捨てられた高麗人たち!

 

 お互い比べられない状況だが、「別れ」、「災難」などの面では頷ける部分もある。 重要なことは、日本の古典を現代的な意味で再解釈し、それに韓国とユーラシアの歴史と神話、伝説と結びつけようとする実験精神は新鮮な作業とみられる。

(韓国「私たちの文化」新聞 )

 

○ 高い技術の演奏と非現実的で幻想的な世界、宇宙的な声、それらはアコースティックの可能性の自由と音の可能性をあらわす神秘的な音であった。神秘的という形容が意味しているのは、オロンホの歌(ヤクートの神々の歌)としても聞こえるものだった、ということである。この日本人たちはエヴェンキ族の伝説を持って現れ、遊牧民の声というイヴェントを最も象徴する存在になったのだが、それ以上に彼らの作品は非常に生態学なるものへの生取り組みであったといえるだろう。それはかつて私がウクライナの「ダーハブラーハ」とともにおこなったパフォーマンスのコンセプトをより自覚的に体現するものであった。彼らのパフォーマンスは、声の周りを旋回し、定式化されたフェスティバルの定住から逃れ出るものとなっていた。事実、その日本人たちは、自国家だけの音楽を追求するのではなく、音楽の採掘機械となって、文化の商業的利用を採掘したのでもなく、繊細に文化の深層を発掘し、それらの層をもちいていくことへの責任への理解を伴いつつパフォーマンスしていたのである。(ロシア バイカルダイアリー 2017)

 

○ 「亞弥の身体は全てを感知し、丹念なものだ。感知したものそれぞれに対し別々のエネルギーを発しながらそれらが統合される。いわば私のダンスでは身体から動きが生じるが、彼女のダンスは魔術的なものから発するのだ。そしてわたしは純が演奏するようにダンスがしたいのだ」2018年ゴールデンマスク受賞者である共演者のヌルベック・バトゥーラはいう。河崎純と亞弥はきわめて高度な舞踊をおこない、純はそのうえでコントラバスを錬金術ように扱うことでこの時空間を制御した。パフォーマンスは日本からロシアまで、かつてその帝国の下にあったすべての国や民族の様式やジャンルが、多国籍なユーラシアのイデアに貫かれて結合されている。(タタール情報 抜粋 2019)

 

○ 混み合う客席、静寂、薄明かりの中で、ヌルベック・バトゥーラと亞弥が蠢きはじめ、微かな音が呼応する。身体からは、プロットやドラマから逃れて存在していることに気づき始める。論理や構造で解釈しようとすことを中止しそこで何が生成されるか、その一点のみに観客の眼は注視することになる。その密度の濃い集中は持続し、観衆の猛烈な喝采を迎えた。(ロシア「INCLUDE」記事 抜粋  2019)

 

○ 日本の演出家がカザフスタンの劇場のために並外れた特別なパフォーマンス「さんしょうだゆう」を発表した。公演はカザフスタン、ロシア、日本のパフォーマーによって演じられ、そこに障がい者のパフォーマンス研究所である「文字通りの行動」が加わるという計画が実行された。プロットは重層的に織りなされる。物語は、離散した母と二人の子ども、そして農場に売られた子供はそれに抵抗するというものだが、河崎はそれらをスターリンによる高麗人の強制移住制作になぞらえた。現代音楽と伝統音楽、民族、伝説を通してアジア地域と国家間の関係を模索するものだ。(カザフスタン 日刊Express K 政治共和新聞 要約  2019)

 

○ 日本の革新的な芸術監督河崎純が南部の首都でわずか2回の公演で感動を与えた。その作品の核をなすのは残忍な物語だ。複合的なテーマが生成される作品に、創造的な空間「トランスフォーム劇場」でアルマティの観衆は息をのんだ。奇想天外で超越的でこのうえなく魅惑的なプロジェクトにおいて、河崎は次のような問題を明るみにした。国家による強制移住の結果、忘却に棄した望郷の念、多声的な巨大な世界を前にして無防備な存在としての人間、抗うことが困難な時間。思想的首謀者として河崎純は音楽詩劇研究所を組織している。この組織で彼とその魅力的なアーチストたちは観客を惹付け、一目にして、彼らが、アジアの神話のイメージを大胆かつ慎重にとりあつかい伝統と現代の演劇を統合してゆく様がみられる。折衷的なビジョンにおいてあらゆる吸収がなされ、傑出したものを与える。 

 見たことのない青い花のように、花びらの一枚一枚が結合す舞台の上で花開いた。

 

 クラシック、伝統音楽、エレクトロニクスによる音楽が舞台の上で織りなされる。観衆は、才能あふれる弦楽四重、伝統楽器コブスの震え、韓国の打楽器、ロシアのマエストロによるジャズ、サックスフォンの苛烈な響き、河崎自身が触れることにより狂気じみた響きを奏で出すコントラバス。河崎が想定する次元へと深めてゆくためには、声楽、詩的表現、ダンスの方法論が含まれていた。上演は、様々な言語が響きあい、それらがかならずロシア語へ翻訳される、というわけではない。それゆえ不可逆的、無意識的な予測の中で、内部に醸成されたものへと注意深く耳目を開いてゆくことになる。そこで、あらゆる常識的な共通の見解に対し、みるものそれぞれの心の中に物語が意識の上に現れる。言語の障壁を超え、独自に身振り、ダンス、音楽が語るので言語の障壁を超えてゆく。

 河崎純はきわめて重層的にそれらを、テキスト、歌、音楽、語り表現したが、主人公の少女は感情を引き裂かれ、沈黙を貫ぬき、永遠が約束された場所へと身を置く、家族の喪失による苦痛やかなしみが、計り知れない別の恐怖へと変換される。そのような創造行為により、彼は間違いなく偏見やあらかじめ予測されることを超えることで観客の心を開いていった。(カザフスタン カザフスタン新聞 要約 抜粋  2019)