ユーラシア大陸には こんなにもたくさんの歌が潜んでいた

 

伝統にも、市場にも、前衛にも、芸術にも、芸能にも どこにも収まらない不思議な音楽

 

 

ユーラシア大陸を旅し、世界のアーチストとコラボレーションしながらオペラを創作する音楽詩劇研究所主宰、河崎純の旅と考察の記録。ユーラシア、日本を中心に知られざる音楽の現在と、伝統を紹介。


ユーラシアン・オペラ・用語集・索引

アーギュリアン, スムル /  Sumru Ağıryürüyen

トルコの女性歌手、マンドリン奏者。1980年代より、バルカン、地中海方面の民俗音楽を多様な解釈で演奏するさまざまなプロジェクトを主導。前衛的な即興音楽の分野でも活動し、グループKONJOに参加。KONJO

 

アールブリュット/Raw art, Art Brut

画家ジャン・デュビュッフェにより提唱され、「生の芸術」とも訳される。内面の衝動を動機とし、教育を前提とせず技巧や流行に囚われない創作活動のこと。精神的な障がいをもつ人々の創作をさすことが多い。スイス・ローザンヌにデュビュッフェが収集したそれらの作品が展示される美術館がある。

 

アイギ、アレクセイ/Alexey Aigi, Алексей Айги  

ロシアのヴァイオリニスト、作曲家。アメリカの作曲家ジョン・ケージのピアノを弾かないピアノ作品の名を冠したアンサンブル「4'33”」を主宰し、オリジナルのミニマルミュージック等を情熱的に奏でる。チュヴァシ共和国出身の 詩人ゲンナジイ・アイギの息子。映画音楽の作曲が多く、日本映画「真実」(是枝裕和監督)も担当。

 

アイギ、ゲンナジイ /Gennadiy Aygi , Геннадий Айги

19342006  ロシアのヴォルガ川東岸地方のチュヴァシ共和国出身の現代詩人。当初はチュヴァシ語、後にロシア語で書いた。「ヴォルガのマラルメ」とも称された。野に舞い、地に落ちる雪片の静寂と沈黙を言葉にし、独自の詩的言語を構築。タタールスタン出身の作曲家ソフィア・グバイドゥリーナとも共作。 グバイドゥリーナ、ソフィア

 

アイスラー、ハンス/Hanns Eisler

18981962  ドイツのユダヤ人作曲家。現代音楽の先端だった新ウィーン楽派の作曲家だったが、劇作家、詩人のブレヒトとの共同作業を進め、劇音楽も創作。ヒンデミットやヴァイルなど、ブレヒトと共作した音楽家のなかでも、もっともその理念に共感し、刺激を与え合った。一見平易なメロディで情動に訴えつつ、それに流されないような仕掛けを工夫し、数々の「ソング」を作曲。亡命先ハリウッドから帰国後は、東ドイツの音楽界を牽引し、第二の国歌ともいえる「子どもの国歌」も作曲。レヒト、ベルトルト

 

あいちトリエンナーレ

 愛知県で2010年から3年ごとに開催されている国際芸術祭。2019年の企画展「表現の不自由展・その後」は慰安婦をめぐって日本と韓国との間で論争になっている少女像も含まれ、物議をかもした。「表現の不自由展」(2019           

 

アイヌ/Ainu

本列島北部、北海道、以北の先住民族。元来は狩猟採集民族であり、周辺民族と物々交換による交易を行った。文字を持たず、歌謡や語り、踊りにも多様な形態の文化を持つ。 日本とロシアの各々の領土が確定し、編入されて以降は、日本またはロシア国民となった。

 

アイヌの葬儀(ウェンベ・ブリ)

 アイヌ文化における死の儀礼。古くは、死者を埋葬した墓地に参る習慣がないとされ、カムイ ()となって地を離れた死者に対して家のそばで先祖供養を行う。

 

アイヌール(・ドアン)/Aynur Doğan

1975年生まれのトルコ東部ディルシィム出身の、クルド語やトルコ語で歌うクルド人女性歌手。トルコでの活動は制約が多く、活動の拠点は国外に移す。代表曲「クルドの娘」もかつて発禁された。世界中のクルド人にカリスマ的人気を誇り、ワールドミュージックシーンで活躍している。

 

アイヌ神謡集 

 アイヌの女性、知里幸恵が日本語に訳したアイヌ神謡(カムイユカラ)。1923年、19歳で迎えた死の直後に発表。序文と13のユーカラで成立し、アイヌ語のローマ字表記も付されている。梟の神が歌う「銀の滴降る降るまはりに」の節はとくに知られる。知里幸恵

 

「哀の極」 

 1897 年に「お雇い外国人」ドイツ人のフランツ・エッケルトが作曲した葬送行進曲。昭和天皇崩御の際に演奏された。エッケルト、フランツ

 

アインシュテュルツェンデ・ノイバウテン/Einstürzende Neubauten

1980年にブリクサ・バーゲルトを中心に西ベルリンで結成されたドイツの実験音楽バンド。バンド名は「崩壊して行く新しい建物」の意味。ノイズサウンドを多用しつつ独自のロックサウンドやアンビエントを構築。ライブに舞踏の白虎社の踊が融合する、石井聰亙監督による映像「ノイバウテン半分人間」(1985)は伝説的作品となっている。メンバーは現在に至るまで多彩なソロ活動を繰り広げる。ハッケ、アレクサンダー

 

アウトサイダーアート

 正規の芸術の美術教育訓練を受けていない者の制作した作品を指すが、とくに精神や身体に疾患、障がいを持つ人々の芸術作品、行為を指すことが多い。アールブリュットよりやや広義に用いられる傾向がある。→アールブリュット

 

アヴァンギャルドジャズ

 モダンジャズのアドリブ性を拡張した1960年代のアメリカのフリージャズ、さらにヨーロッパの現代音楽的要素が融合する場合もある音楽。ヨーロッパ各国やペレストロイカ以降のロシア、日本においても、それぞれ独自の発展を遂げている。ノイジーでフリーキーな演奏は、ニューウェーブミュージックやロック、映画や現代舞踊の舞台上で効果的に挿入されることもある。

 

アウクツィオン/Auktyon, Аукцыон

ペレストロイカ期から現在まで精力的に活動するロシアの前衛、ニューウェーブロックバンド 。レオニード・フョードロフ、オレク・ガルクーシャらがペテルブルグで1978年に結成。特異な詩的表現と、フォークロア的な世界観が融合し、パンキッシュでユーモアのあるステージが知られる。

 

「青い氷」/фестиваль ≪Синий лёд≫

ロシアのバイカル湖氷上で行う芸術祭。この地の先住民族ブリヤーヤート、ロシア正教古儀式派のセメイスキーなどの民俗芸能や現代音楽で構成される。

 

「青い鳥」/새야 새야 파랑새야

1894年の農民蜂起、東学党の乱を指導して日本軍に処刑された全琫準を歌ったとされる韓国の民謡。4行の詩が、たった3音の音階の親しみやすいメロディをもち、現在も愛唱される。→東学党の乱

 

「青い湖」/Синее Озеро

ウクライナ出身の歌手アーニャ・チャイコフスカヤによる古謡とペテルブルグの前衛ジャズ奏者との録音作品 (2018 )。→チャイコフスカヤ、アーニャ

 

青木純一 

 文芸批評家。評論家。日本文学から、専門とするニーチェらの西洋哲学までを主に論じる。2001年「法の執行停止 森鷗外の歴史小説」で第44回群像新人文学賞評論部門。著書に「三島由紀夫 小説家の問題」(原書房 2014)。

 

青木菜穂子

 ピアニスト、作、編曲家。音楽大学卒業後、アルゼンチンに渡りタンゴを学ぶ。繊細なアレンジが高く評価される。ハーモニカ奏者ジョー・パワーズとのデュオ作「Jacaranda en Flor」など。2022年に新作「遥かなる午後 」を発表。

 

赤の広場/Красная площадь

ロシアのモスクワの大広場。大統領官邸、レーニン廟、大型百貨店、大聖堂がある。共産主義と結びつき「赤の広場」といわれるが、原義は赤も含む「美しい」の意。16世紀末頃から露店街が整理され成立。2003年には、ポール・マッカートニーがコンサートを開いた。

 

秋田音頭 

秋田県の民謡。言葉遊びを含む歌詞が、即興的に歌われた。なかでも秋田名物を次々に並べたものが知られるようになり、「お国自慢」の歌として広まった。→「八木節型」

 

アキン、ファティ/Fatih Akın

ハンブルクでトルコ移民の二世として生まれたトルコ系ドイツ人 の映画監督。イスタンブールの音楽シーンを描いたドキュメンタリー「クロッシング・ザ・ブリッジ ~サウンド・オブ・イスタンブール~」(2005)や、トルコをテーマや舞台にした映画を発表。

 

悪所

「悪い場所」をさす。とくに、江戸期の遊郭や芝居などが行われる地は民衆の抵抗のエネルギーの源泉となっていたと指摘され、国文学や芸能史において重視される。

 

芥川龍之介

 18921927  小説家、文学者。古典的説話等の脚色など、多くの名短編を残す。私小説等に対し、芸術の自律性を主張し、作品にニヒリズム観も強く漂わせた。過度の服薬により自死した。

 

アクバンク・ジャズ・フェスティバル/Akbank Caz Festival

1991年からイスタンブールの市内各所で行われるトルコ最大のジャズフェスティバル。ジャズのみならず現代音楽、民族音楽など様々なジャンルが演奏される。 

 

アクンジュ、シェヴケット/Şevket Akıncı

トルコのギター奏者、作曲家、即興演奏家。イスタンブールのアヴァンギャルド音楽シーンを牽引し、指導者的な役割を果たしている。2021年に大著「Öteki CazOther Jazz)」を出版。自らの創作活動に重ね、メインストリームのジャズの外側にある音楽的事象を研究。20102011年の国際交流基金が主催した日本トルコ国交100年を記念する日本トルコ現代音楽プロジェクトで、河崎と共演。→KONJO

 

アザーン/adhān

イスラム教の礼拝(サラート)への呼びかけ。一日5回の礼拝時間前に、ムアッジンによって周辺に住むムスリムにモスクに集まるように朗詠される。ムアッジン

 

朝崎郁恵

 奄美のウタ者(唄い手)の第一人者。1935年に鹿児島県の加計呂麻島生まれた。さまざまなジャンルとのコラボレーションも積極的に行う。奄美では「シマ」は故郷を表わし、島唄という言葉も元来は、沖縄諸島ではなく奄美の歌を指す。

 

「安里屋ゆんた」

 八重山諸島の竹富島に伝わる古謡。18世紀中頃に実在した絶世の美女といわれた庶民のクヤマの、求婚を求む役人に逆らった気丈さを讃える歌詞となり、反骨精神の象徴として歌い継がれ、沖縄諸島に広がって変奏された。現在広く知られる歌は日本語の標準語と75調が用いられ、1943年頃につくられた。

 

アジアン・フリー・フォーク四重奏団/Asian Free Folk Quartet

2017年のロシアのシベリア、イルクーツクの音楽祭「Fall Up」で結成された即興音楽カルテット。メンバーはエフゲニー・マスラボーエフ(打楽器)、サインホ・ナムチラク(ヴォーカル)、ウラジミール・マルコフ(口琴)、河崎純(コントラバス)。 マスラボーエフ、エフゲニー

 

アシューク(アシュク)/Âsık

アナトリア、コーカサス地域の吟遊詩人のトルコ語での呼称。トルコではオザンと呼ばれることもある。撥弦楽器のサズなどを弾きながら、叙事的な内容を歌い語る。13世紀頃からその名手の名が残り、18世紀のコーカサス地域のサヤト・ノヴァ、20世紀ではトルコの盲目のアシュク・ヴェイセルらが名高い。ヴェイゼル、アシュク/サヤト・ノヴァ

 

アシュク・ヴェイセル/Âşık Veysel

1894-1973 トルコの盲目の吟遊詩人、国民的音楽家。トルコ中東部の農家に生まれ、幼児期に患った天然痘により、生涯のほとんどの間盲目で過ごした。撥弦楽器サズの名手であり、アナトリアの大地を往く孤独や物悲しさを乾いた声で弾き語った。

 

梓弓 

 日本の民間儀礼で、古代より祈祷に用いる音具。魔除けのために使われた。梓の木で作られた丸木の弓に麻糸や樹皮で弦を貼り、細い竹の棒で叩いた。

 

アストレイヤ/Astrea , Ансамбль"Астрея  

ソ連時代よりタタールスタン出身の現代音楽の作曲家ソフィア・グバイドゥリーナ、ヴィクトル・ススリンらによって組織された即興演奏集団。演奏者は、自らが専門とする西洋楽器を特殊な奏法で演奏したり、専門ではない民族楽器を用いたりした。→グバイドゥリーナ、ソフィア

 

アズナブール、シャルル /Charles Aznavour

1924~2018  フランスを代表するシャンソン歌手。アルメニア系フランス人。代表曲に「ラ・ボエーム」や「世界の果てに」など。日本でも翻訳された歌詞で歌われ、「シャンソン」の名曲として人気が高い。

 

東歌

 万葉集の詠み人知らずの和歌。東国方言で詠まれ、男女の情交について相聞歌が多い。実際に歌われた民謡だったとされる。

 

アッカド(人の詩)/Akkad

南メソポタミアの北部からおこり、シュメール人を征服して、前24世紀頃メソポタミア初の統一国家を建てた。アッカド語は古代オリエント世界の共通語とされる。初代の王女エンヘドゥアンナは多くの詩を粘土版に残し、作者が分かっている文章を書いた世界最古の人物の一人とされる。

 

アナキズム/Anarchism

反権威的な自由主義により、国家の統制を否定し無政府状態の実現を目指す思想。共産主義、社会主義革命運動と関係しあいながら、19世紀前後から政治、芸術、社会運動となって世界各地に広まる。第二次世界大戦以降、運動としては力を失っていったが、現在のグローバリズム社会や自由主義経済に対する行動形態として模索されている。

 

アストラハン /Astrakhan, Астрахань 

ロシア南部、ヴォルガ川下流域の都市。ハジタルハンといわれ古都として栄えた。交易によって様々な民族が往来し、17世紀にはコサックのステンカラージンが占拠し、反ロシア帝国の拠点となった。

 

足立智美

 ドイツのベルリン在住のヴォイスパフォーマー、自作楽器奏者、作曲家。音響詩、美術、舞台音楽などの幅広い分野で活動。自作のフィジカル・インターフェイス、ツイッター、脳波から人工衛星、テレパシー、骨折までを用い、ポンピドゥー・センター、ベルリン芸術アカデミーなどで公演。

 

アナトリア(半島)/Anatolia, Anadolu

アジア大陸最西部で西アジアの一部をなす半島で「小アジア」ともいわれる。現在はトルコ領内にあり、そのほとんどの部分をなす。黒海、マルマラ海、エーゲ海、地中海に囲まれている。

 

アニミズム/animism

あらゆる事物や現象に霊魂や精霊が宿るという考え方、あるいはそれらへの信仰。原始信仰の特色であり、シャーマニズムや祖先崇拝に連なる。キリスト教や一神教的信仰や仏教などにもそれぞれの土着信仰の痕跡をみることができる。

 

アニリ/아니리

韓国の口承芸能のパンソリの歌唱方。ダイナミックに表わされる「チャン(唄)」の部分などに対して平調子の語りの部分。

 

阿毘羅吽欠(あびらうんきゃん)

 真言密教の大日如来の真言。サンスクリット語「a vi ra hū kha」の音写。それぞれ地、水、火、風、空を表わす。

 

アフマートヴァ、アンナ/Anna Akhmatova, Анна Ахматова 

1889-1966 ウクライナのオデッサ出身の20世紀のロシアを代表する女性詩人。ロシア革命以前から創作した。初期は愛と死、日常、宗教を繊細に歌う叙情的な詩を書いた。革命後は長期間その詩は発禁となったが、スターリン政権下で粛正や圧政に苦しむ家族や人々を代弁する長編詩「レクイエム」を発表。

 

アフロアメリカン/African-American

アメリカ合衆国のアフリカ出身の黒人とその子孫。19世紀半ばの南北戦争以前に奴隷貿易によりアメリカに連れてこられた奴隷の子孫。

 

「天城越え」

演歌歌手の石川さゆりが歌った大ヒット曲 (1986)。エフェクトをかけたエレキギターや邦楽器の多用は、以降の演歌サウンドのひな形となった。静岡県の伊豆半島の天城山が舞台。

 

(在沖)奄美人差別

 アメリカ合衆国統治下の沖縄で行われることがあったとされる、「非琉球人」としての奄美諸島出身者にたいする差別。

 

アマンジョール、グルジャン/Gulzhan Amanzhol, Гулжан Аманжол

カザフスタンの伝統弦楽器、女性コブス奏者。とくにコブスの新型楽器であるプリマ・コブスで演奏し、夫の作曲家故バフチャル・アマンジョールとともに、カザフスタン民族音楽の新しい地平を開いた。2019年の音楽詩劇研究所のユーラシアンオペラ「さんしょうだゆうinカザフスタン」のカザフスタン、アルマティでの公演に参加。コブス

 

アマンジョール、バフチャル/Bakhtiyar Amanzhol, Бахтияр Аманжол

1952~2021 カザフスタンの作曲家。カザフスタン、テュルク族の音楽文化の研究の第一人者。作曲や民謡の編曲を行い、カザフ民族音楽の指導者的役割を果たした。

 

アミ(族、音楽)/Pangca, 阿美族

台湾の原住民。先住少数民族のなかでは最も人口が多い。自らを「人間」「仲間」を意味するパンツァハと呼ぶ。独特な歌謡文化で知られ、郭英男(ディファン、Difang)による民謡が世界的に知られている。

 

「雨に消えたあなた」(美しい昔,ジエムスア)/Diem Xua

ベトナムの作曲家チン・コン・ソンがつくり、 カーン・リーが歌唱した悲恋の歌。ベトナム戦争を背景に反戦歌としても歌われた。1970年に開かれた⼤阪万博に出演し、⽇本語で披露し、同年にレコードも発売された。加藤登紀子や天童よしみなどの歌手により日本語バージョンもあり、アジアのスタンダードソングとして歌い継がれている。

 

アメ横

 東京の台東区のJR線、上野〜御徒町駅高架下付近にある商店街 「アメヤ横町」の略称。第二次世界戦後すぐに闇市のある地帯から組織された。

 

亞弥

 舞踏家。独舞作品に「raziko」。代表作に島尾敏雄原作「死の棘」。東京の神田の古民家を改築したフリースペース「楽道庵」で、踊り、動き、音、にまつわるワークショップや企画をプロデュースしている。音楽詩劇研究所の主要メンバー。

 

アラシュオルダ/Alash Autonomy , Алаш-Орда

カザフスタンで、カザフ族の国家独立運動を進めた議会。カザフ・ハン国を築いていた遊牧のカザフ人は、19世紀前半にはロシアの保護下にあった。定住化が強制されて生活が崩れ、抵抗運動を活発化させた。1917年、革命によるロシア帝国の滅亡を機に混乱に乗じ、セメイを首都にアラシュ自治国を成立。ソヴィエトは1920年にカザフスタンの支配権を奪還し、5年後にカザフ自治ソビエト社会主義共和国を設立した。

 

アラビア文字

 4世紀頃より紅海付近から用いられはじめた文字。7世紀のイスラム教誕生以後、多数の言語に適応されて広がり、世界で三番目に使用者数が多い言語を表記する。右から左に表記され、子音文字のみから構成される表音文字。母音はa,i,u3種類の記号として文字に付されて表記される。

 

アラベスク/Arabesk

1960年頃から盛んに作られはじめたトルコの大衆音楽のジャンル。オスマントルコの古典声楽とアラブからの移民などが持ち込んだ音楽が融合する。日本でいう演歌に近い存在で、大量生産された大衆歌謡曲として愛された。代表的な歌手に男性歌手のオルハン・ゲンジェバイ。1990年代以降下火になったが、打ち込みダンスビートが加わり現在も根強く愛好されている。

 

アラム語/Aram

キリストが喋っていた言葉といわれる言語。前600年頃までシリア、メソポタミアで話されていた言語。同地域はアラビア語が優勢となり、現在はシリア、トルコ、イランなどのごく一部で使用されている。

 

アララト共和国/Republic of Ararat 

19271931の間にトルコ南東部に存在したクルド人自治国家。1920年のセブール条約で独立を約束され、クルド独立運動にはイランのクルド人たちも加わって成立。1923年のローザンヌ条約でトルコの領土が確定し、それに則って承認する国はなく、1931年までにトルコ軍によって制圧された。

 

「アララト蜂起」(アララトの反乱)

1920年代後半、クルド人反政府勢力によるトルコ政府に対する抵抗。クルド人反政府勢力がアルメニア人とも協力し、トルコ共和国領として未確定だったアララト山地域に集結したが、1930年に鎮圧された。

 

アララト山/Ararat,  Ağrı Dağı

標高5000メートルを越える現トルコ領の山。ノアの方舟がたどり着いたといわれる場所があり、伝説化されている。アルメニア人、クルド人などの聖山として知られる。トルコ語では「アウル・ダウ」。

 

アリア/aria

オペラなどの大きな規模のアンサンブルを伴う歌曲で、旋律が明確な独唱曲。逆に旋律が不明確な語りに近い叙唱をレチタティーヴォという。

 

アリラン/아리랑

朝鮮半島の最も有名な民謡。成立に関しては諸説ある。各地で曲想も異なり、 長調的な旋律も短調的な旋律もある。リズムも3拍子が多いが、2拍子系、5拍子など多様。歌詞は、実在しない峠「アリラン」(後に歌に由来して名付けられた同名の峠はいくつか存在)を越えてゆく人が歌っている、という内容。

 

(サハリンの)アリラン/Сахалинский Ариран 사할린아리랑

サハリン島に暮らし、第二次大戦後も帰還することのなかった「在樺コリアン」がつくった「アリラン」。故郷に帰ることのできない悲哀を歌う。→在樺コリアン

 

「アリラン隊列」 

1910年頃から、貧困や、日本支配の状況への不安などを理由に、朝鮮半島から極東ロシア、満洲方面への移民者にたいする呼称。一団の姿と民謡アリランの内容を重ねてそのように呼ばれた。高麗人(コリョサラム)

 

アルグン川 /Argun , Аргунь 額爾古納河

中露国境地域に流れるアムール川の支流。先住者だった狩猟、遊牧民族のエヴェンキ族も居住した。音楽詩劇研究所のユーラシアンオペラプロジェクトに連なる重要作品「終わりはいつも終わらないうちに終わっていく」の原作小説である中国の作家遅子建による小説の舞台。→エヴェンキ

 

「アルグン川の右岸」/額爾古納河右岸

中国の女性作家の遅子建による、作家自身のルーツである少数民族エヴェンキ族の取材に基づいたフィクション。20世紀に入って近代国家への編入が本格化したために、生活を変えて離散する一族の姿が描かれる。

 

「主なき槌」(ル・マルトー・サン・メートル)/Le marteau sans maître

フランスのシュールレアリスト、ルネ・シャール の詩をピエール・ブレーズが室内歌曲として作曲し、1955年に初演。シェーンベルグの「月に憑かれたピエロ」へのオマージとして書かれたともいわれ、戦後のヨーロッパ現代音楽書法の完成形として多くの称讃を受けた。アルトソロ(声)、アルト・フルート(吹奏)、ヴィオラ(擦弦)、ギター(撥弦)、ヴィブラフォン/シロリンバ(鍵盤打楽)、打楽器という、演奏法や楽器の素材の異なる種の楽器による。

 

アルタイ/Altai , Алтай

西シベリア、モンゴル、中国の新疆ウイグル自治区にまたがる大山系のある地。中央アジアの遊牧民の言葉で「金の山」に由来する。

 

「ある所のある時におけるある一人の話と語り聞かせ」

 美術家の鄭梨愛の2015年のビデオ作品 。同年に逝去した在日一世である祖父をモチーフに、それまでに撮影された映像中のさまざまな言語からテクストが再構成される。鄭梨愛(チョン・リエ)

 

アルハンゲリスク/Arkhangelsk , Архангельск 

ロシア北西部の白海に臨む、軍港として栄えた主要都市。18世紀にネヴァ川河口にペテルブルクが開港されるまでは、ヨーロッパからの唯一の玄関口だった。

 

アルハンゲリスク(音楽集団)/Джаз-группа "Архангельск

北ロシアのフォークロアや、放浪芸人集団スコモローヒを意識した大道芸的なパフォーマンスを行なった、アルハンゲリスクのフリージャズのグループ。ペレストロイカ期を代表するサックス奏者のウラジーミル・レジツキーがリーダー。日本公演も行われた。

 

アルハンゲリスク・ジャズフェスティバル/Джаз-группа "Архангельск"

1982年からアルハンゲリスク市で開催されている前衛音楽フェスティバル。河崎は2004年にグループExias-Jで出演。→Exias-J

 

「或る日のルソー」

 日本舞踊西川千麗の最後の舞踊作品(2013)。遺作。逝去のため本人は舞うことが叶わなかったが上演された。西川千麗

 

「アルプスの少女ハイジ」

1974年に放映が開始されたTVアニメ作品。スイスの作家ヨハンナ・スピリの原作。総合演出は高畑勲。世界各国で放映され、主題歌の曲想の違いに民族性や言語特性、歌謡文化が現れている。

 

アルマティ(アルマ-アタ)/Almaty, Алматы

カザフスタン南西部の都市。1997年まで首都であり、現在も経済、文化の中心である古都。カザフスタン人の他、近年もロシア人比率が高く、30パーセント近く。そのほか、ウイグル人、高麗人も暮らす多民族都市。カザフスタン語で「りんごの里」を意味する。

 

アルメニア教会

 アルメニア使徒教会。キリスト教は2世紀頃アルメニアに伝道され、4世紀に国として世界で初めてキリスト教を受け入れた。円筒形の教会の八角形のドームが特徴的。→(中世のアルメニア)聖歌

 

「アルメニア詩篇」/Армения

ポーランド出身のロシアの詩人・マンデリシュタームによる詩篇。取材者として訪れたアルメニア、コーカサスへの憧憬が描かれている、→マンデリシュターム、オシップ

 

「アルメニアの花嫁」/Aravodun TeminAgainst the Morning, Yağmurlu bir Nisan günü

アルメニア民謡。1915424日、「雨の記憶」トルコによるアルメニアジェノサイドによる被害者への追悼として、アルメニア、トルコの42人の演奏家が演奏。

 

アルメニア文字

 他地域の語派に属さない単独言語とされるアルメニア語で用いる文字。8つの母音、30の子音を表す表音文字をもち、左から右に読む。ギリシア文字と北アラム文字を基に作られ、すでに3世紀くらいから用いられていたとされる。

 

アルメニアジェノサイド

 1915年に行われたトルコによる15万人が犠牲になったともいわれる大虐殺。2021年現在、トルコ政府は残虐行為の事実を認めているが、キリスト教徒のアルメニア人を組織的に抹殺しようとしたわけではなく、第1次世界大戦の混乱の中でトルコ人も大勢死亡したと主張。

 

アルリ、マルチェロ/Marcello Allulli

イタリアのジャズサックス奏者。2011年から2018年にかけて、イタリアの最高のサックス奏者の1人としてJAZZITAWARDに選出。映画、演劇、美術との共同作業も多い。トルコのピアニスト、セレン・ギュリュンとの日本ツアーで河崎と共演した。

 

「アレクサンダー中央刑務所の亡霊たち」/Александровский централ

石橋幸の紀伊国屋ホールコンサート2014年の演目名。同名の刑務所は19世紀中頃にロシアのイルクーツクに建設され、主に政治犯が移送された。囚人たちによる合唱文化でも知られ、録音も残されている。石橋幸

 

ヴィクトル・アン/Viktor An

1947年ウズベキスタン生まれの高麗人の写真家。作家姜信子との共著があり、高麗人や自身の来歴が述べられ、貴重な写真作品も多数掲載されている。「追放の高麗人「天然の美」

 

安西冬衛

1887-1952  日本のモダニズム詩を代表する詩人。奈良県に生まれ、1920年に大連に渡り、大陸で15年を過ごした。詩集「軍艦茉莉」(1929)など。「てふてふが一匹韃靼(だったん)海峡を渡つて行つた」というわずか一行の詩「春」がとくに知られる。

 

アンサンブル・アズナシ/ensemble Aznach

ジョージアのチェチェン人伝承音楽の女性合唱アンサンブル。チェチェン人が多く暮らすジョージア東部の山岳地帯パンキシ渓谷を拠点に、同地のポリフォニー合唱や民族音楽を編曲して演奏。「Aznach」は「声」を意味する。

 

アンビエント(ミュージック)/ambient music 

1970年代よりイギリスのミュージシャン、ブライアン・イーノが提唱。過去の芸術や娯楽とは異なり、「効用音楽」ともいえる。環境への同化作用、またはそれがあることにより環境自体を異化する。のちに、ミニマリズムと融合するなど、さまざまな展開を見せ、ニューエイジ、ヒーリングミュージックとしても展開した。

 

安寿と厨子王

 日本の説経節などで中世より語られてきた口承芸能「さんしょうだゆう」の登場人物。一般的に、森鴎外の「山椒大夫」により、姉と弟の関係で認知されるが、さまざまなバージョンで逆の場合もある。

 

按摩 

 衣服の上から行う手技療法、またはその職業。江戸時代に当道座が組織して興隆し、盲人の職業として広まった。客引きのための按摩笛は音階が使える男笛(おぶえ)と,竹を二つ並べて共鳴させる女笛(めぶえ)がある。

 

(イ)

イヴァン4世/Иван IV Васильевич

1530~1584 16世紀後半、モスクワ公国の大公として正式にツァーリ(皇帝)に戴冠。専制政治(ツァーリズム)による強権政治を行い、雷帝といわれた。カザン=ハン国に遠征し、ヴォルガ下流、カスピ海北岸のアストラハン=ハン国を征服。ヴォルガ川流域からシベリア方面への東方進出も開始。エイゼンシュタインによる三部作映画「イワン雷帝」(1944)で斬新な映像美のなかに描かれた。

 

異化(効果)/Alianation effect, остранениеverfremdungseffect

ソ連の文学、フォルマリズムの理論家シクロフスキーの用語。見慣れた日常的事物に対し、非日常的な奇異なものとして本質を獲得する芸術の方法。同時期にドイツのブレヒトが、「異化効果」として叙事的演劇の実践に用いた 。従来の心情的な同化作用をドラマのカタルシスとするのに対し、劇中の言動や出来事を社会的身ぶりとして提示し、演者、観客に自身が社会的存在であることを意識させる。ブレヒト、ベルトルト

 

伊賀ふで 

 19131967  現在の釧路で生まれたアイヌ詩人でアイヌ文様刺繍家、詩人チカップ美恵子の母。「アイヌ・母のうたー伊賀ふで詩集」には、アイヌ語と日本語両方でその暮らしの中にある言葉が描かれる、旋律を輪唱のようにずらして歌われる座り歌であるウポポを、親子が家庭内で歌ったCDも付録されている。

 

伊賀上菜穂

 ロシア民族学、ロシア史、文化人類学者。著書に「ロシアの結婚儀礼 家族・共同体・国家」(彩流社)。近年は旧満洲(中国東北部から内モンゴル北部)における民族間関係にも着目し、共著に「満洲の中のロシア」(大阪大学出版会)。

 

壱岐島(いきのしま)

古事記にも登場する長崎県の離島。福岡から約70kmで対馬との間にある。古くは645年の大化の改新ごろからの流刑地でもあった。

 

石川さゆり 

 日本の演歌歌手。「津軽海峡・冬景色」(1977)、「天城越え」(1986)などのヒット曲がある。「天城越え」

 

石川樹里

 韓国ソウル在住の翻訳家、演劇コーディネーター、ドラマトゥルグ。日韓演劇交流のかけはしとして、双方の多くの現代演劇を紹介。携わる「現代戯曲ドラマリーディング」シリーズでは「現地でのドラマリーディングに劇作家が必ず参加すること」として、戯曲の紹介に留まらぬ濃密な交流の場を生んでいる。

 

イコン/Icon, икона

キリスト教の聖像。立像を禁じる東方正教会によって発達した聖画。ロシア正教のイコンは特に知られる。神の恩寵により書かされているものであり、原則として作者は名を記さない。この点で、作者による芸術としての絵画に発展したカトリックの宗教画と異なる。しかしタルコフスキーの映画によっても知られる、14世紀のアンドレイ・ルブリョフのように制作者として名が残ることもある。宗教用語から離れ、現在でも「アイコン」の語として一般化されている。

 

石橋幸 

 ロシア語で歌う日本の歌手 俳優。ロシアやアメリカで古いロシアの歌を採取し、ロシア語で歌い続ける。とくに、囚人、街歌、ジプシー貧民の歌を中心にそのレパートリーは300曲ほどに及ぶ。東京の紀伊国屋ホールで毎年「僕の呼ぶ声」を開催。ロシア人からも高く評価されている。ガルガンチュア

 

石原吉郎

 1915-1977 静岡県生まれの詩人。大阪歩兵連隊の陸軍露語教育隊に派遣されロシア語を学習し、ハルビンの関東軍情報部に配属。29歳で終戦を迎え、戦前はシベリア抑留体験から、スターリン死去にともなう特赦で1953年に帰国。体験を基にした詩を創作し、現代詩の代表的作家となった。「失語と沈黙のあいだ」

 

伊地知一子

 パフォーマー、歌手。オペラシアターこんにゃく座、時々自動などに参加。音楽詩劇研究所公演でも主軸メンバーとして活動。

 

石塚俊明 

 1950年東京生まれの打楽器奏者。バンド頭脳警察を結成し日本のロック、フォークの創世記から活動し、友川カズキ、三上寛、遠藤賢司、遠藤ミチロウなどの歌手や、フリージャズの演奏家との共演を続ける。「打楽」と称した独自の打楽器独奏も行っている。

 

出雲の阿国

1572~没年不詳 安土桃山時代の女性芸能者。生涯は不明な点が多い。出雲大社の巫女だったといわれ、踊、歌舞伎踊りの創始者とされる伝説的存在。男装した遊女との濃密な掛け合いによるエロティックな踊は、のちの芸能に取り入れられ、女歌舞伎、若い美少年による「若衆歌舞伎」に発展。江戸幕府に女歌舞伎が禁じられ、歌舞伎は男性が演じるようになり現在に至る。ややこ舞

 

伊勢物語

 平安初期、宮廷貴族の在原業平を主人公にしたとされる、作者不詳の恋愛を主軸にした歌物語。和歌とそれらにちなむ短編125話からなる。能の主要作品「井筒」「隅田川」の題材となった。

 

「イスタンブール・東京・ミーティング」/Istanbul-Tokyo-Meeting

2017年、音楽詩劇研究所がトルコのイスタンブールで主催した企画。イスタンブールを拠点に活動するインプロヴァイザーが、即興音楽、ダンスのセッションを行い、交流した。

 

イズミル/İzmir

トルコ西部、エーゲ海沿岸の主要都市。17世紀以後オスマン・トルコとヨーロッパ諸国との地中海貿易の拠点として栄えた。

 

イスラム教

 7世紀の初めにムハンマドが、アラビア半島のメッカで唯一神アッラーの預言者として 創始した宗教。天使ガブリエルを通じて神の啓示を授かったことをきっかけに布教を開始。アラビア語の「イスラム」は、神の意志に対する帰依、服従を意味し、教徒を「ムスリム」という。

 

李承燁(イ・スンヨプ)/이승엽

韓国出身の元プロ野球選手。 日本でも活躍した強打者。2022年現在、通算本塁打数は韓国プロ野球で第一位。

 

磯原節

 北茨城、太平洋沿岸地域の自然を歌う、大正15年につくられた新民謡。作詞者であるこの地の出身の詩人野口雨情が広めた。研究に基づき民謡を歌曲として数多く作編曲した、日本民謡の新たな地平を開いた藤井清水による作曲。

 

イソリズム/isorhythm

14世紀のフランスで栄えた、複雑に技巧化されたポリフォニーの作曲手法。フランスの音楽の潮流アルス・ノヴァ(新しい芸術)で探求され、旋律とリズムを異なる周期で反復する。ギョーム・ド・マショーの作品が知られる。マショー、ギョーム・ド

 

李成愛(イ・ソンエ)/이성애

韓国の大衆音楽界を代表する女性歌手。1970年代後半には日本でも活躍し、「カスマプゲ」などがヒットし人気歌手となった。演歌の源流が韓国にあるという説を展開 した評論家の平岡正明はその歌唱について「夜の深さがただごとでない」と称讃した。

 

五木寛之

 1932年福岡県生まれの作家。北朝鮮より1947年に引き揚げ、早稲田大学に入学しロシア文学科に学ぶ。社会主義時代の東欧や、故郷福岡の炭鉱、東京に生きる若者の姿を、ロシア文学、ジャズ、民俗学的な視点も交えながら創作。さまざまな音楽をそのような独自の観点で紹介した。のちに仏教への造詣も深め、多くの随筆を発表。

 

イタコ

 東北地方の北部、とくに太平洋沿岸地域に伝統的な女性の霊媒師。降霊の口寄せを行う。ほかにその地域に広く流布した家神のオシラ様の祭文も唱えた。先天、後天的に盲目か、弱視の女性の職業だった。→オシラ様

 

一国史観

 国民国家の単位で、自国中心史観で歴史を捉える考え方。19世紀に入り近代国家の成立にあたり、国民意識の形成の観点から重視された。

 

一神教

 一般的にイスラム教、キリスト教、ユダヤ教を指す。

 

「逸脱の歌声 歌謡の精神史」

国文学者、永池健二の著書(梟社 2011 )。鼻歌、馬子歌、舟歌などの旅の歌、田植え、草取り、石曳きなどの仕事歌、恋、来訪神、死者と生者が取り交わす掛け合いの歌、室町の閑吟集などから、民謡の源流を「独り歌」という観点で考察。

 

一遍

1234-1289  鎌倉時代中期の僧侶。浄土教の時宗の開祖。「一遍上人」、「遊行上人」、「捨聖」とも呼ばれる。信州の佐久を訪ねたときに始まったとされる踊念仏は念仏者の遊行,時宗の教勢拡大とともに急速に広まった。 「となふれば仏もわれもなかりけり」の問答が伝えられる。踊念仏

 

「糸(絲)の太陽たち」/Fadensonnen

ドイツの詩人、パウル・ツェランの詩(1968)。詩集「息のめぐらし」の一篇。「まだ歌える/ 歌がある、人間の彼方に」(飯吉光夫訳)の句がある。作者自身の朗読の録音も残されている。ツェラン、パウル

 

イノ(韓国の人魚伝説)/인어

韓国の済州島、日本海(東海)あたりの古い伝説の水の精、人魚。6から7本の長い脚を持ち、頭と体は人間といわれる。 鱗を伴わない白い肌に覆われ、 尻尾は馬のように細長い。子供たちに母乳を飲ませ、捕らえられると真珠の涙を流す。

 

井上まどか

ロシア文化、宗教学者。近現代のロシア、ソ連解体以降の国家と宗教の関係を主な研究テーマとしている。

 

イフンケ/Ihunke

アイヌの子守唄。独特な囃子詞、ホロルセとよばれる舌を使って鳥の声の模倣によって調子を整えながら歌われる。

 

今井次郎

1952-2012 作曲家,芸術家。パフォーマンスグループ時々自動に所属し、ほとんどの作曲を担当した。2021年生前のドキュメンタリー映画「芸術家 今井次郎」が公開された。国広和毅、河崎とのバンド「オジュデュイイルフェボウ(今日は良い天気)」でも活動。時々自動、 オジュデュイイルフェボウ

 

今井尋也 

小鼓奏者、演出家、劇作家。能、演劇、ダンスを交えたパフォーマーとしても活躍。シルクロード能楽会の代表。→シルクロード能楽会

 

今村昌平 

19262006  映画監督。代表作に「にっぽん昆虫記」、「神々の深き欲望」、「楢山節考」など。民衆の現実と原像について深く掘り下げつつ描いた社会派の巨匠。

 

「イマジン」/Imagine

1971年に発表されたイギリスのジョン・レノンの曲。同年に発表された同名のアルバムの一曲。妻のオノ・ヨーコの詩から着想を得たため、2017年にオノの名が共作者として追加された。日本では歌手、忌野清志郎の翻訳歌詞による歌唱も知られる。

 

今用雄二

沖縄生まれの建築家。黒川紀章に師事し、ソ連崩壊後に同氏が建築に携わった、カザフスタン首都建設デザインに携わる。2007年よりカザフスタンにIMAYO CREATIONを設立。黒川紀章

 

忌野清志郎

19512009東京都生まれの歌手、音楽家。1968年にRCサクセションを結成。1980年代にバンドがエレクトリック編成になり、新たな日本のロックムーブメントの象徴的存在となった。1991年以降は、ソロ名義を用いてさまざまなバンド活動を展開。2005年に咽頭癌の治療を開始し、治療中も復活ライブなどを行ったが、2009年に癌性リンパ管症により死去。メモリアルイベントも頻繁に行われ、死後も大きな影響力を与えている。RCサクセション

 

イ・ミジャ(李美子)/이미자

1941年生まれの韓国を代表する国民的なトロット歌手。日本では「韓国の美空ひばり」と称されることもある。大ヒット曲「椿娘(백아가씨)」は日本風を意味する「倭色」として、長らく規制された。→トロット

 

任炅娥(イム・キョンア)

 チェロ奏者。クラシック、室内楽を中心に活動。2002年に在日コリアン音大生による楽団「パラン」を旗揚げ。

 

イム・グォンテク (林權澤)/임권택

1934年生まれの韓国の映画監督。代表作にパンソリの旅芸人家族を描いた「風の丘を越えて/西便制」、パンソリの名作をメタ構造で描いた「春香伝」、農村の伝統的な葬儀の慣習と現在を描いた「祝祭」など。

 

イムジン川(臨津江)/임진강

黄海に注ぐ朝鮮半島中央部、朝鮮半島の両国の国境を分かつ軍事境界線付近を流れる川。

 

林昌勇(イム・チャンヨン )/임창용

韓国出身の元プロ野球選手。日本でも活躍した投手。

 

「イヨドサナ」/이어도사나

韓国、済州島の海女たちが、夕方漁からの帰りに歌ったといわれる舟歌。「イヨドサナ」は囃子詞。男性も歌ったが、重労働を担わされた女性たちが、怒りや嘆きも込めて大らかに歌った。済州島の海女は、日本や極東ウラジオストックまでも出稼ぎすることもあった。

 

(在日本)イラン人

ビザの相互免除のため1988年のイラン・イラク戦争休戦後に急増し、不法滞在者が最盛期には4万人を超えた。駅周辺での無店舗の小売りや、日本人が作った違法テレホンカードを売却する姿が東京近郊に目立つようになると取締りが強まり、1992年に免除協定が終結して激減した。

 

イルクーツク/Irkutsk, Иркутск

ロシアの都市。文化都市と知られ、ユーラシア大陸の中央あたりに位置する。17世紀頃に街が開かれ、モンゴル、中国、レナ川流域などと連絡する交通の要地。シベリア産毛皮等を清に輸出するためのキャフタ貿易の中継地として急速に発展。19世紀にはデカブリストの乱によりペテルブルグから流刑された文化人が大きな影響を与えた。デカブリストの乱

 

「いろは歌」 

1011世紀に成立したといわれる、5・7調の韻文。文字学習の手習いに用いられてきた。

 

岩絵(古代のシベリアシャーマンの)/Petrograph

有史以前に岩の表面や洞窟内の壁面などに描かれた絵。シベリア、アルタイ地域にも、それぞれの時期における、シャーマニズムの生活様式を伝える岩刻画が数多く残されている。

 

岩田守弘

ロシア在住のバレェダンサー、振り付け家。ブリヤート共和国国立歌劇場の芸術監督。2019年現在はニジニノブゴロドにある国立歌劇場の副総裁に就任。

 

岩手山

「南部片富士」の名で知られ、標高200メートルを超える岩手県の最高山。山頂火口から何度も噴火して、溶岩等で形成された成層火山。

 

インドシナ難民

 1975年から80年代にかけて、ベトナム、カンボジア、ラオスの社会主義化で経済活動の制限が生じ、新生活に不安を終える人々がボートなどで欧米、日本へ難民として移住した。1979年に頃にピークを迎えたが、その後、三国の国内状況の安定化により流出は減少。

 

インドーヨーロッパ語族(印欧語族)

インドからヨーロッパの大半の地域に分布する語族。ゲルマン(英語、ドイツ語、オランダ語など)、ロマンス(ラテン、フランス語、イタリア語、スペイン語など)、スラヴ語(ロシア語など)、ギリシア語などのヨーロッパの言語、インドのサンスクリット語、ヒンディー語、イランのペルシア語など。中央アジアの草原地帯から移動した騎馬遊牧民、アナトリア半島の農耕民によって農業とともに広まったという説がある。

 

 

(ウ)

ヴァイル、クルト/Kurt Weil

18901950 ドイツの作曲家。ユダヤ人の家系に生まれる。ブレヒトとの「三文オペラ」で、異化効果や叙事詩的演劇の方法を用いて数々の名曲を残す。戦局を逃れ、フランス、アメリカへと渡り、ブロードウェイで多くのミュージカルソングを作曲。妻の歌手ロッテ・レーニャも多く歌い、「マック・ザ・ナイフ」「Speak Low」など曲のいくつかはジャズスタンダード曲となった。ブレヒト、ベルトルト

 

「ヴァニノ港」/Ванинский порт

極東ロシアの囚人を唄った歌。サハリン島の対岸のヴァニノ市の港に囚人護送船が到着した。ここからマガダンに移送され、コルィマ鉱山のグラグ(強制収容所)に収容された。

 

コミタス・ヴァルタペッド(ゾゴモン・ゾゴモニヤン)/Komitas Vardapet, Soghomon Soghomonyan

1869-1935 アルメニアの作曲家。現在のトルコ中部の村で生まれる。孤児であったが、アルメニア正教の修道院で育ち音楽の才能を開花。民俗音楽を収集し、宗教音楽や民謡の作編曲を行った。トルコで1915年アルメニアに対するジェノサイドに遭い、その精神的外傷体験により、帰国後も音楽活動は不可能だった。アルメニアでは、ハチャトゥリアンと並び国民的音楽家として民族の精神を表わす象徴的な存在とされている。

 

ヴィオラ・ダ・ガンバ/viola da gabba

16世紀から18世紀にヨーロッパで用いられた擦弦楽器。ヴァイオリン族と形が似ているが、調弦等も異なるガンバ族の楽器。バッハやマラン・マレなどが作曲した。現代の名演奏家として知られるジョルディ・サバールは、古楽器アンサンブルを組織し、ヨーロッパに留まらず、コーカサス、地中海、アナトリアまでさまざまなな観点で、想像的な復元をおこなっている。

 

ウェーベルン、アントン/AntonWebern

1908-1945 オーストリアの作曲家。シェーンベルグの弟子でありベルクとともに12音音楽を発展させた。音数を抑制し、点描的な作風を確立し、のちのトータルセリエリズムの礎を作った。第2次世界大戦後の混乱が続く1945年に、ベランダで煙草に火をつけたところを、闇取引の合図と間違われ、占領軍の米兵により射殺された。トータルセリエリズム

 

上田益

 作曲家。代表作に「レクイエム~あの日を、あなたを忘れない~」。2008年より、合唱によるレクイエムプロジェクトを展開。

 

上田美佐子

演劇プロデューサー。東京の墨田区両国の劇場シアターXの芸術監督。ポーランド、ロシア、イスラエルなど世界各国から優れた公演を同劇場に招聘。著書に「曠野と演劇」(港の人 2010)。

 

ヴィソツキー、ヴラジーミル/Vladimir Vysotsky, Владимир Высоцкий

1938-1980 ロシアの歌手、俳優、詩人。囚人などのアウトサイダー、人生の哲学的問答、愛、社会批判を歌詞に折り込み、独特のしわがれ声で煽動するように歌った。旧ソ連において非合法の地下音楽として広まり、愛された歌の数々やそのカリスマ性によって、現代も英雄視されている。

 

ウィルタ(族)/Uilta ,  Ороки

サハリン島東岸のツングース系の少数民族。オロッコとも呼ばれる。トナカイ牧畜や狩猟を中心に漁労も行った。

 

ヴィリニュス/Vilnius

リトアニアの首都。14世紀にリトアニア大公国の首都となり、以降リトアニア、ポーランド、ロシア、ソビエトを経験した。そのため、カトリック、正教の教会がともに残り、両大戦で被害を受けたが、旧市街は中世の面影を遺す街並みをもつ。

 

ヴィリニュスのジャズフェスティヴァル/Vilnius Jazz

リトアニアの首都で行われている、前衛ジャズを中心にした国際音楽フェスティバル。2021年には34回目の開催。河崎は2004年にExias-Jで出演。→Exias-J

 

ヴヴェイ/Vevey

スイスのレマン湖周辺の地域。チャールズ・チャップリンが晩年に暮らした地としても知られる。→チャップリン、チャールズ

 

ウェイツ、トム/Tom Waits

1949年カリフォルニア州生まれの歌手、作詞作曲家。下町の下層社会に生きる人々の人情からから広がるや独の歌詞世界、ジャズ的なピアノ演奏と嗄れ声語るような歌唱で、世界的に支持を受けている。実験音楽的要素もとりいれ、演出家ロバート・ウィルソンと共同作業。ジム・ジャームッシュ作品など映画への出演も多数。

 

ヴェッダ(族)/Vedda 

南インド、スリランカの森林部に居住する狩猟採集民。一人で狩りを行うため、合唱や斉唱は行わず狩人それぞれ固有の曲を有するという固有の音楽的文化を持っていた。→ヤイサマ(アイヌ)

 

ウェンベ・ブリ

アイヌ文化における死の儀礼。古くは、死者を埋葬した墓地に参る習慣がないとされ、カムイ ()となった死者に対して家のそばで先祖供養を行う。

 

ヴォカリーズ/vocalise

母音唱法による無言歌。楽曲としてはラフマニノフの「ヴォカリーズ」が広く知られる。器楽として奏されることも多い。

 

ヴォルガ・ドイツ人/Wolgadeutsche / Поволжские немцы

帝政ロシア時代の18世紀半ばよりタタール、ヴォルガ川沿岸等の空白地を耕作のため誘致されたドイツ人。第二次世界大戦の独ソ戦により、西シベリア、カザフスタンなどに強制移住させられた。1980年以降、ドイツへの帰還が進んだが、ドイツ語話者は少なく、ドイツ側の大量受け入れも難しくなった。作曲家アルフレッド・シュニトケもその出自をもつ。シュニトケ、アルフレッド

 

ヴォルガ・ドイツ人自治ソヴィエト社会主義共和国 /The Volga German Autonomous Soviet Socialist Republic

1917年の革命と民族政策に乗じ、1924年にロシアにヴォルガ川沿岸に建国された民族自治共和国。第二次世界大戦の独ソ戦のなか、1941年にスターリン政権により「ヴォルガ・ドイツ人追放宣言」が公布された。

 

「ヴォルガの舟歌」/Эй, ухнем

ロシア民謡。ヴォルガ川の船引き人夫の労働歌。陸地や上流に船を戻す重労働の悲哀が歌われる。

 

ヴォルコフ、ウラジーミル/Vladimir Volkov, Владимир Волков

ロシアを代表するコントラバス奏者。ペレストロイカ期より活躍し、ジャズ、古楽、ロック、現代音楽と活動は多岐に渡り、ロシアのジャズコントラバスの第一人者と讃えられる。その活動がまとめて紹介されるフェスティバルが毎年開催されている。

 

ウォルフ、クリスチャン/Christian Wolff

1934年生まれのアメリカの実験音楽の作曲家。図形楽譜なども用い、演奏者自身の思考と即興的判断を重んじる作風で知られ、既存の西洋古典音楽の美的秩序とは異なるシステムを音楽内に構築する。

 

ウクライナ語

 スラブ語系言語でロシア語との共通点は多いが、語彙においては西部を中心にポーランド語、ベラルーシ語の影響が強い。方言がきわめて少ないロシア語と異なり、支配国家の影響で、各地に方言がある。スラブ諸語の中で最も多い48の音素を持つ。

 

ウクレレ/ukulele

ハワイ諸島の伝統撥弦楽器。19世紀半ばのポルトガルからの移民が開発。通常4弦で用いられ、ギターの一般的な調弦と異なり、明るく開放的な響きを奏でられる。複雑なフォームで弦を押さえることなく、簡易な和音を弾くことができるため、伝統音楽以外にもひろく愛好され、さまざまなジャンルで用いられている。

 

ウシトベ/Ushtobe, Үштөбе

カザフスタンの古都アルマティから北方へ約 300Kmにある市。スターリンに迫害された多くの極東ロシアの高麗人が、この地の丘に降り立った。高麗人

 

ウシトベの集団農場

 ソ連時代、さまざまな強制移民が共存する集団農場が築かれた。1977年にフルンゼ記念実験農場として統合された。

 

ウスリースク(遠東)/Уссурийск

ロシアの沿海地方南部にある都市。中央アジア強制移住前に高麗人の多くが居を構えた。ソ連崩壊後、中央アジア地域からこの地に戻る高麗人も多い。

 

歌垣(うたがき、かがい)

歌を掛け合いながら遊技的に野外で行われる求愛の風習。古代の日本、琉球や中国南部、東南アジアなどに多い。沖縄の浜辺や野原で、若い未婚男女が三味線をひきながら歌い交わす「毛あしび」は、さまざまな琉球民謡の源流になっている。

 

「歌と逆に、歌に」

詩人、小野十三郎が展開した詩の言語についての理念と創作。花鳥風月の詠嘆や7・5調の韻律による歌謡性、叙情性を伝統は近代以降の国民国家の成立のため強調されて用いられたものとし、それに囚われない響きこそが新しい民衆の歌になると考えた。そのため歌や詩はいったん「歌」から遠ざからなければならない。

 

「歌の本」(聖歌集)/Поющая книга

ロシア正教古儀式派による、独特のズメナニ聖歌(ロシア正教の聖歌)の歌唱法が記された楽譜(ネウマ譜面)。→ロシア正教の聖歌

 

「歌へのお辞儀」/Поклон — пению

ロシアの詩人ゲンナジイ・アイギの詩集。「ヴォルガ地方の民謡の主題による100の変奏曲」として、ヴォルガ中流域に伝わるチュヴァシ語の歌をロシア語の四行詩で書き直した。息子である作曲家アレクセイ・アイギが作曲を試みている。アイギ、ゲンナジイ、アイギ、アレクセイ

 

歌物語

和歌とその内容にまつわる説話で進行する日本の物語文学。平安時代前期の「伊勢物語」がその祖とされる。→「伊勢物語」

 

打ち込みビート

リズムマシーン、シンセサイザーに打ち込まれたビート。生演奏することが難しいテンポも正確で、強弱がはっきりと刻まれることが多い。大衆音楽の同質化に与えた影響は大きい。そのことにより批判されることもあるが、音楽の三大要素の一大要素であるリズムが安定することで、他の二つ(旋律、ハーモニー)をより複雑で繊細な表現が可能になることもある。

 

内田百閒 

1889~1971 小説家、随筆作家、ドイツ文学者。夏目漱石の弟子。「件」、「冥土」などの代表作にみられる不条理と独自の幻想的な作風で知られる。箏を愛好し宮城道雄に師事。盲目の宮城に文章表現を教え、互いについての文章を残し深く交流した。

 

内村剛介 

1920-2009 栃木県生まれのシベリア抑留体験をもつ思想家、ロシア文学者。農家に生まれ、14歳で満洲に渡る。日本陸軍の関東軍に徴用され、敗戦とともにソ連に抑留。1956年最後の帰還船で帰国。11年間の強制収容所での体験を基にスターリニズムを告発するとともに、日本の思想状況を鋭く批判した。

 

ウチョーソフ、レオニード/Leonid Utyosov,  Леонид Утёсов

1895-1982 ソ連時代の国民的歌手。現ウクライナのオデッサのユダヤ人家庭に生まれサーカス一座に入団。その後、歌手としてソヴィエトジャズのイノヴェーターとなる。喜劇俳優としても活躍し、スターリンにも愛された。1965年のソ連人民芸術家の称号を与えられる。

 

「海霧讃歎」(うみぎりさんだん)

作曲家、宮内康乃の新作聲明。2011年の東日本大震災の追悼回向のために作曲され 、本来はありえない、異なる宗派の僧侶が同時に歌うことが試みられた。実験的な再演が繰り返されている。宮内康乃

 

ウラジオストク/Vladivostok, Владивосток

ロシア極東の沿海地方の都市。軍港であり国際都市だったが、ソ連時代の冷戦時代には、ロシアでも在住者以外は立ち入りを規制された閉鎖都市だった。現在では航空直行便で東京から約二時間半で着くため、最も近い「ヨーロッパ」といわれることもある。

 

ウラル・アルタイ語族

現在は、ウラル、アルタイそれぞれ別の語族として分類される。インド・ヨーロッパ語族と異なり膠着語であることや語順にも共通点があり、かつて日本語も属するとされたが、語彙には共通性が少ない。

 

ウラン-ウデ/Ulan-Ude,Улан-Удэ

ロシア連邦ブリヤート共和国の首都。バイカル湖の南東約100kmに位置し、モンゴル系のブリヤート人が先住した。イヴォルギンスキー・ダツァンなど寺院が多く、ロシアにおける仏教信仰の中心になっている。1920年にソビエト政権が、日本のシベリア出兵に警戒して建国され、1922年まで存在した短命な傀儡政権の緩衝国「極東共和国」の首都(「ヴェルフネウディンスク」と呼ばれた)だった。

 

ウルフ、ヴァージニア/Virginia Woolf

1882-1941 イギリスの女性小説家、評論家。ロンドンで、新たな価値観を求めた知識人や芸術家の組織で知られたブルームズベリー・グループに加わり、モダニズム的な作風で知られた。第二次大戦中、ロンドン近郊の川で入水自殺を遂げ、その遺書も広く知れ渡った。音楽やダンス、演劇にも触発を与え、アメリカのドミニク・アルジェント、マックス・リヒターなどが作曲している。

 

ウルムチ〈烏魯木齊市〉

中国ウイグル自治区の首府。漢時代からの古都であり、中国西北部最大の都市。ウイグル人、カザフ人、漢人が暮らし、イスラム教が信仰の中心。

 

「麗しのアンガラ」/Красавица Ангара

1959年に初演された、ブリヤート人の劇作家ナムジル・バルダーノの原作によるロシアのバレェ作品。ロシア人と先住民のブリヤート人の友好が描かれる。アンガラはバイカル湖に注ぐ大河の名前。

 

「ウロボロス」(舞踏集団)/ouroboros

ウクライナ在住の舞踏家のドミトリー・ダツコフによるオデッサのダンサー組織。野外でもゲリラ的な集団パフォーマンスを行った。名称となった「ウロボロス」はギリシア語に由来し天地創成神話に用いられた、自分の尾を嚙んで円形をなす蛇または竜のこと。

 

ウロルト/Ureltu, 乌热

中国のエヴェンキ族出身の小説家。日本では「琥珀色のかがり火」が 早稲田大学出版部の 「新しい中国文学」シリーズの一つとして刊行された。

 

うわたけ(宇和竹、姥竹)

「さんしょうだゆう」の登場人物。安寿・厨子王の一家に付き添う女中。人買いに騙されたと悟り、海に飛び込み入水自殺を図る。新潟では「宇和竹恨みの段」として独立して、瞽女や祭文で唄い語られた。

 

 

(エ)

エーコ、ウンベルト/Umberto Eco

1932-2016 イタリアの哲学者、小説家、記号学者。大学卒業後。放送局に勤め、ルチアーノ・ベリオやピエール・ブーレーズなどの現代音楽の作曲家を起用して実験的番組を制作。1980年に歴史小説「薔薇の名前」を発表し、聖書、中世史を文学理論や記号論を用いて読解する知的ミステリーが世界的なブームとなった。著作に「フーコーの振り子」など。

 

エヴェンキ族/Эвенки Evenki 郭温克族

シベリアから満洲にかけて居住するツングース系の狩猟遊牧の北方少数民族。「高い山の森林から降りてきた人たち」の意。主にロシア国内のクラスノヤルスク地方、サハ共和国などにも居住し、中国国内でも興安嶺山脈周辺、黒竜江省に暮らす。言語はエヴェンキ語。

 

エカチェリーナ2世/Yekaterina IIЕкатерина II Алексеевна

1729-1796 18世紀後半のロシアの全盛期のロマノフ朝(帝政ロシア)の女帝。ドイツ(現在ポーランド領)で神聖ローマ帝国領の貴族の娘として生まれ、ロシア皇太子妃として迎えられる。クーデターで女帝となり、農奴制を強化しロシアの強大化を推進。

 

江上波夫

1906-2002 考古学者オリエント考古学、ユーラシア遊牧騎馬民族研究者。昭和23年に発表した「騎馬民族日本征服説」は、天皇家の起源を神話に求める皇国史観を覆し、大きな衝撃を与えた。現在ではこの説は退かれることが多い。

 

エゴリエフスク/Yegoryevsk, Егорьевск 

ロシアの都市。モスクワ地域とリャザン地域の境目にあり、かつて交易で栄えた。

 

江差追分

北海道民謡。信州中山道山麓の街道の分岐する追分の馬曳きの馬子歌が、江戸時代に追分宿の三味線歌となった。越後から日本海を経て船乗りに伝えられ、北海道南部の漁場であった江差の地に定着したといわれる。のちに尺八が伴奏するようになりひじょうにゆっくりと無拍節で歌われる民謡として復興。モンゴルの伝統的歌唱のオルティンドー(長い歌)が渡ったものとする説もある。→オルティンドー

 

エジソン、トーマス/Thomas Alva Edison

1847-1931 アメリカの発明王。株式相場表示機・電信機・送話器・蓄音機・白熱電球・映画用撮影機・映写機・蓄電池の発明で知られる。蓄音器

 

エスノギャラリー・オルダ/Этно-галерея ОРДА

ロシア連邦ブリヤート共和国の首都ウラン-ウデ市にある美術館。先住民族のフォークロアと彼らによる現代アート作品を扱うロシアで最初の美術館。

 

エスペラント語

19世紀後半にポーランドのユダヤ人眼科医ルドヴィコ・ザメンホフらによって創案された世界共通語を目指した人工言語、国際補助語。エスペラントの「国歌」ともいわれた「ラ・エスペーロ(希望)」という歌もある。

 

エセーニン、セルゲイ/Sergei Yesenin, Сергей Есенин

1895-1925 ロシアの国民的叙情詩人。素朴な農村の原風景をモダニズム的作風で描いた。革命を支持したが、失望。天才詩人と称賛されて活躍し、トリックスター的な振る舞いが知られ、スキャンダラスな存在だった。アメリカのダンサーのイサドラ・ダンカンとの夫婦生活も破綻し、自死を遂げた。手首を切った自身の血で書いたといわれる辞世の詩もよく知られる。ロシアでは、多くの詩が楽曲化され愛されている。

 

「越後追分」

新潟民謡。「松前」と呼ばれ、追分節の祖とされる「信濃追分」が北海道の「江差追分」に発展する過程に位置するものとされる。→江差追分、信濃追分

 

エチミアジン/Echmiatsin

アルメニアの都市。紀元前から築かれた古都で、アルメニア正教の中心地。地名は「神が降臨した土地」という意。4世紀初頭に建立されたエチミアジン大聖堂がある。

 

エッケルト、フランツ/Franz Eckert

1852-1916 ドイツ、プロイセンの軍隊の作曲家。「お雇い外国人」として来日し。「君が代」を吹奏楽用に編曲し、和声を付けした。日韓併合以前に、朝鮮半島に渡り李王朝の宮廷音楽教師となり、「大韓帝国愛国歌」も作曲。「大韓帝国愛国歌」

 

江戸糸操り人形

江戸時代から伝わる日本独自の糸あやつり人形。文楽、手操り(パペット)の人形浄瑠璃と異なり、糸で人形を操る(マリオネット)。現在は、「結城座」、「一糸座」などに引き継がれ、古典とともに現代演劇との融合の試みもなされている。

 

エニセイ碑文/Yenisei inscriptions

北極海に流れ込むロシアのエニセイ川流域で発見された古代テュルク族の突厥文字による碑文。この地に居住したキルギス民族の支配者が、死者自身が自らの生前の功績を述べ、自分の死を悼む内容の短文。

 

「エフゲニー・オネーギン」/Eugene Onegin, Евгений Онегин

ロシアの詩人、小説家のアレクサンドル・プーシキンが1832年に発表した小説。1879年にチャイコフスキーがオペラ化。社交界に飽きた放蕩貴族が農村に居を移し、そこで地主娘の少女の恋情を弄ぶ。のちに社交界で、洗練し貴婦人となったその少女と遭遇する。

 

エリ・リャオ/Eri Liao

幼少時から自身のルーツである台湾原住民族タイヤル族の音楽や踊りに親しむ。ジャズに関心を持ちニューヨークで文芸創作とジャズを学ぶ。台湾原住民音楽、民謡など、古今東西、言語やジャンルを超えて揺さぶる歌の世界を歌い続ける。

 

エルドアン、レジェップ・タイイップ/Recep Tayyip Erdoğan

1954年に生まれたトルコ共和国の政治家。1994年にイスタンブール市長に当選し、演説中にイスラム賛美の詩を引用したことにより扇動罪の実刑判決を受け、一時服役。2003年から共和国の首相となり、従来の欧米偏重の外交を改め、政教分離の原則を緩め、クルド民族政党(PKK)との和平も目指した。2014年、議院内閣制を敷いていたトルコで初の直接選挙を行い、過半数以上を得票し大統領に就任。独裁性が高まり、ふたたびクルド政党にも圧力を加えて関係が悪化した。2018年再選。

 

エルミタージュ(美術館)/Hermitage Museum, Эрмитаж

ロシアのペテルブルグにある国立美術館。1764年にロマノフ王朝のエカチェリーナ2世がドイツの画商から美術品を買い取り、1863年からそれらが一般公開された。帝政時代は王宮として使われたが、二月革命では臨時政府もおかれた。ロシア革命後は貴族から没収された美術品の集積所となった。名前は仏語で「隠遁者の部屋」を意味する。

 

エレヴァン/Yerevan 

アルメニアの首都。紀元前より築かれた世界有数の古都で、「エデンの園」があったという伝説を有する。

 

エレクトロニクス(エレクトロニカ(ミュージック)

20世紀半ばの現代音楽に始まる電子音楽を用いた実験的に創作された音響を、さらにテクノロジーの発展による多彩な音色を用い、さまざまなジャンルに幅広く適合させた音楽。

 

演歌

明治時代の自由民権運動において政府批判を歌に託した演説歌が新民謡、洋楽と融合し、1960年代半ばに日本の歌謡曲から派生したジャンル。初期においては民謡歌手が演歌歌手を担うことも多かった。日本統治下の朝鮮半島で、当時の日本の大衆音楽の曲調と、民謡やパンソリに影響受けた歌唱が融合するように登場した韓国歌謡トロットを、歌唱の直接的な源流とする説もある。トロット

 

演歌師

歌ったり演説したりする楽士。明治初期から「書生節」とも呼ばれ、自由民権運動を背景に社会批判を込めて歌われた。じょじょに流行歌化し、書生の格好をしたりして盛り場や街頭でバイオリン・アコーディオンなどを弾きながら歌い、その歌詞本を売った。

 

演劇センター6869 

1968年に創設された劇団「黒テント」の旧称。日本のアングラ演劇の天井桟敷、状況劇場(紅テント)とともに三大劇団の一つ。独自の身体論や土着性を掲げながら主宰者のカリスマ性を前面に出した他の二つの劇団とは異なり、佐藤信や山元清多ら複数の演出家を擁し、社会に対して理知を以て情念と拮坑するような作風。書籍、出版メディアなどと連携が特徴。現在も活動は続いている。

 

「演じられた近代「国民」の身体とパフォーマンス」

国文学者の兵藤裕己による著書(岩波書店 2005)。明治維新以降の国民国家の成立と密接に関わりながら、 変容を遂げた声と身体の身振りについて、戦間期に向かう時代の中で国民的行事となった芸能、盆踊りや、ラジオ体操なども例に挙げながら考察される。

 

遠藤賢司

1947-2017  音楽家、シンガーソングライター。ロック、フォークを基盤としながら、独自の宇宙観で「純音楽」を標榜し、創作し続けた。独自の視点で日本の伝統音楽を解釈し現代のサウンドと結びつけ、日本のフォーク、ロック史の中で、数々のエポックメイキングな作品を発表した。

 

遠藤ミチロウ

1950-2019 福島県出身の音楽家、シンガーソングライター、1980年に過激なメッセージとパフォーマンスで知られたパンクバンド、ザ・スターリンを結成。晩年は積極的にアコースティックサウンドを展開させた。

 

えんぶり

青森県八戸など北東北にみられる豊年祈願の祭、田楽的な予祝芸能。田をならす農具「えぶり」が名前の起源。馬の頭首をかたどった華やかな烏帽子を被った舞手が稲作の動作を表わし、頭を大きく振り、鳴子板や金輪をつけた「ジャンギ」と呼ばれる棒を持って勇壮、華麗に踊る。田植え歌や笛、太鼓、手平鉦、子供の芸を伴う。

 

 

(オ)

オイストラフ、ダヴィド/David Oistrakh, Давид О́йстрах

1908~1974  ウクライナのオデッサ出身のソ連時代に活躍した20世紀を代表するユダヤ系ヴァイオリン奏者。情感表現、演奏技術ともに最高峰の名手とされる。後世の第一人者であるラトビア出身のギドン・クレメールもモスクワ音楽院で教えを受けている。

 

「お岩木様一代記」

青森のイタコ語りによる祭文「さんしょうだゆう」。岩木山の神体を安寿姫とし、その一人語りで物語が展開する。民俗学者、詩人の坂口昌明によるイタコからの口述筆記による書籍、研究書「安寿 お岩木さま一代記奇譚」(ぷねうま舎2012)に詳しい。

 

「追分型」

民族音楽学者小泉文夫による日本民謡の分類。無拍節の追分型に対して拍節をもちリズム感のある八木節型がある。

 

応用演劇/Applied Theater

娯楽の提供自体を目的とせず、ワークショップ的創作を重ねながら、さまざまな演劇的手法を社会や生活に適用させる劇作。

 

大岡淳

1970年生まれの演出家、劇作家、批評家。商品劇場、普通劇場、無人劇場などを主宰し、知的で挑発的なエンタテインメントを創造する「日本軽佻派」を自認。演劇、ミュージカル、コンサート、オペラ、ダンス、人形劇などを、幅広く手がける。主要演出作品に、ジェルジ・リゲティ作曲「アヴァンチュール/ヌーヴェル・アヴァンチュール」、編著に「21世紀のマダム・エドワルダ」(光文社 2015)、訳著にベルトルト・ブレヒト「三文オペラ」(共和国2018)がある。

 

大里俊晴

1950~2008  音楽批評家。ロックバンド「ガセネタ」に参加。フランスでジョン・ケージの研究者として知られるダニエル・シャルルに師事し、帰国後、フランスのフリージャズシーンやアヴァンギャルド音楽を紹介した。

 

大島渚

19322013 映画監督。1950年代末より創作し、日本のヌーヴェルヴァーグの旗手といわれた。社会問題、国家と民衆、差別問題などを独自の視点で描き続けた。「日本春歌考」

 

太田惠資

1956年生まれのヴァイオリン奏者。中東音楽の奏法を用いながら、自由な即興演奏を行う。

 

大塚惇平

笙奏者。古典のみならず、即興、現代音楽も演奏。2018年に「SILKROAD JAPAN」を立ち上げコンサートの企画、演出も行う。

 

大野一雄

1906-2010 舞踏家。南方前線から復員後、50代で土方巽と出会い「舞踏」を確立し、世界的評価を得た。「ラ・アルヘンチーナ頌」「わたしのお母さん」などの代表作がある。100歳を超えた晩年も舞台に立ち続けた。

 

大斎(おおものいみ)(期の習慣)/Great Lento, Великий пост  

ロシア正教の復活祭前の儀礼期間。正教徒はこの時期、乳製品、肉製品、アルコールを飲食せずに、多くの時間を神への祈りや神についての思考に費やす。

 

オーラルヒストリー

史実に対し、口述で語られた歴史。またはそれをより重視する、社会学、民俗学における研究方法。

 

岡本太郎

19911996 美術家、民俗学者。大学を中退し1929年に渡仏。民族学等を学び、シュールレアリストや抽象芸術家と交流を深めて帰国。戦後は旧態依然とした美術界に反旗を掲げ、前衛的な芸術活動を展開。縄文土器、日本、沖縄、韓国の伝統や風俗にも創作の源泉を求めた。

 

岡本夏生 

1965年生まれのタレント。グラビアアイドルとして活躍したのち、個性的なコメンテーターとしてもテレビ等で活動。

 

小川珠絵

モダンダンサー。京都を中心に国内外で活動。1989年より肉体表現の中に美術の要素を取り入れ、 舞踊を肉体の動きによる現代アートと位置づけたパフォマンス「舞台美術館」を立ち上げる。

 

沖縄(音楽) 

琉球諸島の民謡や伝統音楽、それをもちいた現代の音楽。西洋音楽などの「ドレミファソラシド」から、4番目と7番目を抜いた日本の伝統音楽にみられる「よな抜き」と異なる、2、6を抜いた「ドミファソシド」の5音を中心にした長調的な音階を用いることが多い。類似の音階は鹿児島県の与論島、沖永良部島の民謡でも多用され、インドネシア、東南アジアの音楽にも存在する。その点から、潮(黒潮)の流れと南洋音楽の伝搬の関係も推測される。

 

オクジャワ、ブラート/Bulat Okudzhava, Булат Окуджава

1924~1997 ジョージア系の父とアルメニア系の母の間に生まれた。ヴィソツキーとともにソビエト時代を代表する吟遊詩人。文学的な歌詞を叙情的な旋律にのせ、ヴィソツキーとは対照的に静かに語るように歌う。小説も翻訳され日本で出版されている。ヴィソツキー、ウラジーミル

 

オグズ(族)/Oghuz

6世紀頃,バイカル湖の南からアラル海,カスピ海に及ぶ地域中央アジアの北部に存在したテュルク系遊牧民族。

 

小沢あき

ギター奏者即興演奏、歌の伴奏、フラメンコなども演奏。音楽詩劇研究所では音楽監督もつとめる。

 

オジュデュイイルフェボウ(バンド)/Aujourd'hui il fait beau

国広和毅、今井次郎、河崎純によるパンクバンド。2020年に今井の生前の音源を用いたCD作品が発表された。今井次郎、国広和毅

 

オシラサマ(おしら様)

東北地方の家内神信仰。蚕の神、農業神、馬神、目の神とされ、桑の木の棒の先に頭をつけた人形(オセンダク)を祀り、頭ごと布で包む場合もある。由来は諸説あるが、柳田国男の「遠野物語」に記録された馬娘婚姻譚がよく知られ、馬の首と一緒に昇天した娘が残った父が困らぬように、庭の臼の中で馬の形をした白い虫()になったと書かれている。

 

オスマン帝国/Ottoman Empire Os̠māniyye

テュルク系のオスマン家の君主を戴く多民族帝国。1299年に建国され、15世紀に東ローマ帝国を滅ぼしコンスタンチノープル(イスタンブール)を征服し首都とした。17世紀には東西はアゼルバイジャンからモロッコ、南北はイエメンからウクライナ、ハンガリーに至る広大な領土を得た。1922年トルコ革命で帝国の幕を閉じた。

 

オタス(の杜)

1930年に日本占領時代のサハリンにあった敷香(現ポロナイスク)近郊つくられたサハリン、オホーツクに先住するニブフ、ウィルタ、樺太アイヌなどの人々が日本語教育などを受け、集団化された「土人村」。「新領土」として観光にも利用された。

 

落合康介

1987年生まれのジャズを中心に活動するコントラバス奏者。埼玉県の北本団地内の商店街に、「自由な交流の生まれる自分たちの場所」として、ジャズ喫茶「中庭」を開店し、地域交流の新たなプラットホームとなっている。

 

「(オッチョンジー)黄色いシャツ」/노란샤쓰 입은 사나이

韓国の60年代の流行歌。日本、東南アジアでも各国語で歌われたヒット曲。「オッチョンジー」という語は他語版でもそのまま歌われ,「なぜか、どうしてか」を意味する。

 

オデュッセイア/Odysseia

8世紀ごろに成立、ホメロスの作とされる古代ギリシアの長編叙事詩。トロイア戦争から凱旋するオデュッセウス(ユリウス、ユリシーズ)が海上での苦難の旅をつづけた末、故郷イタケー島に帰還し妻と再会する。オデュッセウスを誘惑する人の顔を持ち鳥の身体を持つ、セイレーンの歌声の場面も知られる。

 

オデッサ/Odessa , Одеса 

ウクライナの都市。トルコ、ブルガリア、ルーマニア、ウクライナ、ロシア、ジョージアを沿岸国とする黒海の主要な海洋都市として、ソ連時代以前はとくに賑わい、ユダヤ人をはじめ多民族の文化が混合した。そのため音楽文化も栄え、とくに多数のユダヤ系音楽家を輩出。

 

「オデッサ監獄の歌」/С одесского кичмана

ロシアの歌手、1927年にレオニード・ウチョーソフによって歌われ、流行した囚人、港町に横行するギャングの歌は多く作られ、ユダヤの大衆音楽の旋律やリズムが用いられた。スターリンが好んだ歌としても知られ、招聘されてクレムリンでも歌われた。歌手石橋幸の重要なレパートリーのひとつで、2010年にクレムリン宮殿で行われた音楽祭でも歌った。ウチョーソフ、レオニード

 

(オデッサ)国際演劇祭(OITF)/Odessa International Theater Festival OITF

ウクライナのオデッサでおこなわれる国際演劇祭 。2017年に音楽詩劇研究所が招聘された。

 

小野十三郎 

1903~1996 大阪のアナキズムの詩人。社会運動とも関連し関西の文学界を牽引。重工業化してゆく都市と、民衆の生活の現実を即物的な叙述法によって示し、独自の叙事詩的骨格をもつ詩を書き続ける。戦時中の、国家主義的な精神論に反目。短歌的叙情の否定を提唱し、それを引き継ぐものとして萩原朔太郎のような叙情も否定し、その詩歌論は大きな反響をよんだ。批評的態度を貫きながら、過度に難解な隠喩を用いず素朴さをもち、教科書に掲載される詩もある。「歌と逆に、歌に」

 

「音の更地、空白、四角」

音楽家の髙橋琢哉と河崎の即興演奏と、水木しげるの漫画のオノマトペだけを使ってスライドに投射した映像で構成された1997年のコンサート。髙橋琢哉

 

(韓国語の)オノマトペ 

韓国語は世界の言語において最も擬音語が多い世界の言語で一番多いとされる。日本語が約1500種に対し、韓国語は8000種ともいわれる。語自体が持つ多彩な音にも起因すると考えられる。

 

「オプティミズム」(楽曲)/Оптимизм

ロシアの伝説的なサイケデリック音楽の歌手、エゴール・レートフが作詩、作曲した曲。→レートフ、エゴール

 

尾松亮

ロシア文化や、事故5年後の1991年に旧ソ連で制定され、ソ連崩壊後にロシア・ウクライナ・ベラルーシに引き継がれたチェルノブイリ法の専門家。著書に「チェルノブイリという経験――フクシマに何を問うのか」(岩波書店2018)等。

 

オムスク/Omsk, Омск

ロシア連邦、西シベリアの主要都市。帝政時代には流刑地の一つで、185054年に作家ドストエフスキーが流刑されている。

 

「お雇い外国人」

幕末から明治にかけて、明治政府や民間の会社・学校などが、ヨーロッパ、アメリカの先進文化を急速に移入するために、各分野の指導者を教師として雇用した外国人。

 

オリ/Oli

ハワイアン・チャントのなかでも、踊や楽器を伴わない祈り歌。文字を持たなかった古来ハワイ人が物事を伝承する為に育んだ口承文化。

 

折口信夫

1887-1953 民俗学者 国文学者 歌人釈迢空。国学に民俗学の研究法をあわせ、古代から現代に至る日本人の原像をとらえようとした。文学、民俗学をはじめ、神道学、国語学、芸能史の面に及んだ。

 

オリホン島/Olkhon, Ольхон

ロシアのバイカル湖に浮かぶ最大の島で、シャーマンの聖地ともいわれる。現在も1500人ほどの人口を有し、その多くがブリヤート人。

 

オルティンドー/Urtyn duu, Уртын дуу

モンゴル地帯の伝統的歌唱法。(息の)長い歌を意味する。拍節のない自由なリズムで歌われる。⇔短歌(ボグンドー)

 

オルホン碑文(突厥碑文)/Orkhon inscriptions

6世紀中ごろから8世紀中ごろにかけて、北アジアから中央アジアで勢力を持った遊牧国家突厥の人々が自らの文字で残した碑文。最古のトルコ語系文字とされる。

 

「俺はマガダンに行ったぜ」(曲)/Я уехал в Магадан

ロシアの歌手、ヴラジーミル・ヴィソツキーが、極東のマガダンの流刑について歌った曲。→マガダン

 

オロッコ(族)/ Uilta, Уилта, Ороки

サハリン島東岸のツングース系少数民族ウィルタの、アイヌによる呼称。→ウィルタ

 

おわら風の盆

富山県富山市で毎年9月の初めに行われる年中行事。江戸の元禄時代に由来するとされ、哀愁を帯びた旋律を歌い、胡弓を弾きながら、女性たちが練り歩く姿が幻想的で知られる。「おわら節」は、酒盛り歌などで掛け声から始まる「ハイヤ節」系の歌で、「キタサノサーアー ドッコイサノサッサ」 と歌われる。胡弓は新潟の瞽女がもちこんだとされる。    

 

音楽詩劇研究所/JunKawasaki, Music and Poetic Drama Laboratory

河崎が2015年より主宰する、音楽、舞踊、演劇的要素を用いた創作集団。ユーラシアン・オペラプロジェクトをすすめ、2022年までに2作品「Continental Isolation」、「さんしょうだゆう」を発表。ほか、ブレヒト、ツェランらの詩から構成される「捨て子たち星たち」、近松門左衛門などをテクストにした「終わりはいつも終わらないうちに終わっていく」、「春香伝考」、中島敦原作「古譚」などを発表。

 

「音楽水脈調査計画」 

1997年から中野富士見町のPlanB で企画された音楽イベントシリーズ。

 

「音楽の捧げもの(6声のリチュルカーレ)」(ウェーベルン編曲)/Das Musikalische Opfer

アントン・ウェーベルンが編曲したJS・バッハの曲。6声の原曲をウェーベルンが大オーケストラに編曲。新ウィーン楽派による、音の高さやリズムの変化による従来の旋律概念に対し、音色の変化も旋律概念とする作曲方法につながるとされる。

 

恩納なべ

18世紀前半に生きたとされる琉球王国の農民・女性歌人(琉歌)。島の自然や農民の心情とともに情熱的な恋愛歌も残す。清からの使節が訪れた際、風紀の乱れを隠蔽するため、歌垣の男女の「毛あしび」を禁じる立て札を建てたことに、反抗する歌が有名。琉歌

 

 

 

 

(カ)

カーデュー、コーネリアス/Cornelius Cardew

1936-1981イギリスの実験音楽の作曲家。専門楽器を演奏しない演奏集団「スクラッチ・オーケストラ」の創設者のひとり。図形楽譜を用いた「論文」「大学」などの作品や、後期は民謡を素材にしたピアノ曲など。濃密に政治と関わりながらその手法を音楽に託した。

 

カーメネフ、レフ/Lev Kamenev, ЛевКаменев

1883-1936 ユダヤ系ロシア人の革命家。スターリンの陰謀によって失脚し、粛清された。

 

カーロ、フリーダ/Frida Kahlo

メキシコの画家。メキシコに亡命したロシアの革命家トロツキーとの恋愛関係でも知られる。ヨーロッパの影響を拒否し民俗伝統への回帰を支持し、南西部の女性の民族衣装を着ることが多かった。

 

「海峡を越えたホームラン祖国という名の異文化」

作家、関川夏央による創成期の韓国のプロ野球、日本のプロ野球から渡った在日韓国人選手たちのレポート(双葉社1984)関川夏央

 

回文/palindrome

初めから読んでも終わりから読んでもある程度意味が通ずる文字列。起源は古く、紀元前後にも認められ、日本でも江戸期には回文による句集が残されている。ロシアのサックス奏者、アレクセイ・クルグロフも演劇的作品の創作の重要なモチーフにし、2020年東京でも発表し、河崎と共演。クルグロフ、アレクセイ

 

ガイボロンスキー、ヴァチェスラフ/Vyacheslav Gayvoronskiy,  Вячеслав Гайворонский

ロシアのトランペット奏者、作曲家。ペテルブルグを中心に活動し、ペレストロイカ期よりロシアの前衛ジャズを牽引。民間伝承とクラシック音楽の観点から、旋法の視点から述べる理論書「寺院の門」。ウラジミール・ネペブニーにより2018年に、ドキュメンタリー映画「束の間 ガイボロンスキー」が制作された。

 

カウナス/Kaunas

リトアニアの都市。1939年この地で日本領事代理として従事した杉原千畝の存在でも知られる。外務省の訓令に反してユダヤ人に対して日本通過を可能とした査証及び渡航証明書を発給して欧州からの脱出を支援した。

 

雅楽

アジア大陸の諸国からもたらされた音楽や舞に、上代以前から伝わる神道系の芸能や儀礼が融合して日本化した。十世紀以降宮廷の保護下におかれ、武家時代には衰退しつつ維持され、伝承されている。律(ド・レ・ファ・ソ・ラ)と呂(ド、レ、ミ、ソ、ラ)という二つの音階があり、それぞれの宮音(主音)の音名により音階が形成され、無拍節な「序拍子」と拍節的な拍子に分かれる。

 

郭泰源

台湾出身の元プロ野球選手。「オリエンタルエクスプレス」と称され、日本のプロ野球界を中心に活躍。

 

学術人類館 

1903年に大阪で開かれた勧業博覧会の施設。アイヌ・台湾原住民・琉球・朝鮮(大韓帝国)・清・インド・ジャワ・バルガリー(ベンガル)・トルコ・アフリカなど合計32名の人々が、民族衣装姿で一定の区域内に住みながら日常生活を見せる展示が行われた。

 

神楽

神を慰め、奉る神事芸能。創世神話からの起源をもち、平安時代にまとめられた宮廷の御神楽と、民間で行う各地の里神楽がある。里神楽は山伏修験者、神職、巫女が担ったが、明治以後は民間の者も携わるようになった。

 

(韓国)歌曲(カゴク)/가곡

古来より発達し、李朝後期から盛んになった韓国の宮廷音楽から発展した伝統声楽、正歌の歌唱。両班や知識人階級(ソンビ)に好まれた。棒で叩いて奏する6弦琴のコムンゴ(玄琴)を中心に管弦の伴奏を伴う。

 

(韓国)歌詞(カサ)/가사

韓国の国楽の歌唱。短詩を歌う歌曲(カゴク)や三行詩の時調に比べ、長い歌詞が歌われる。→時調(シジョ)

 

(ウイグルの)カザフ難民

1930年代から、チベット,カシミール・英領インド(後のインド・パキスタン)を経て約2万キロメートル、20年余りをかけてにわたる大移動の果てにトルコ共和国に辿り着き、イスタンブールなどに移住した中国の新疆地域のカザフ人。

 

カザフ民謡

中央アジアのチュルク系のカザフ族の民謡。イスラム化以降の、中東アジアの伝統音楽と、それ以前の古来のシャーマニズム文化が融合し、遊牧生活を反映した多様な音楽形態を持つ。

 

カザン/Kazan, Казань

ロシア連邦タタールスタン共和国の首都。11世紀初頭に建設されたヴォルガ川流域の古都。ハザール、モンゴル支配下ののち、15世紀にはテュルク系イスラム王朝カザン・ハン国の首都として、ロシアとの間でイスラム教文化とキリスト教文化が混在する文化都市として繁栄。1552年にロシア帝国により陥落。

 

カラカシュル、カリン/Karin Karakaşlı

トルコのアルメニア人女性作家。1996年から10年間アルメニア系新聞で編集業務の傍ら記事も執筆。短編小説集の他に、長編小説「都合のいいところで降ります」、共著に「トルコのアルメニア人:コミュニティ、個人、国民」などがある。

 

ガスリー、ウディ/Woody  Guthrie

1912-1967 アメリカのソンングライター、フォークシンガー。放浪の旅を続けながら労働者たちのために歌をつくり続けた 。「アメリカン・フォーク・ソングの父」といわれ、反戦歌などを含むその音楽は、ボブ・ディランなど後のポピュラー音楽に多大な影響を与えた。

 

「風の丘を越えて」(「西便制」)/서편제

韓国の林權澤監督による映画(1993)。アメリカ文化の影響が増す全羅南道の1960年代頃の山村を舞台に、パンソリの旅芸人の親子の芸道が描かれる。

 

カタルシス/catharsis

純化、浄化、排泄などを意味するギリシア語。アリストテレスが悲劇の効果として説明した。文学、演劇作品などの観賞で、物語世界への感情移入が行われることで、日常生活の中で抑圧されていた感情が解放され、快感がもたらされる作用。

 

「カチューシャ」/Катюша

ロシア民謡の代表的歌曲。古来の民謡ではなく、1930年代末に作詞ミサハイル・イサコフスキー、作曲マトヴェイ・ブランテルにより作られ、独ソ戦を背景にソ連時代に国民的愛唱歌となった。翻訳され日本でも戦後の「歌声運動」でよく歌われた。ロシアでは現在もショーのなかで軍服を着た少女や若い女性によって歌われ、喜ばれている。

 

「カチューシャの唄」

1914(大正3)年のトルストイ原作の演劇「復活」のなかで、松井須磨子らによって歌われ大流行した。作詞は島村抱月と相馬御風、作曲は中山晋平。

 

香月泰男

1911-1974 山口県生まれの洋画家。第二次大戦後の敗戦後のシベリア抑留から1947年に帰国し、1950年代後半に後期作品を特徴づける黒色と黄土色の重厚な画風を確立。太平洋戦争とシベリア抑留の体験を主題とする「シベリア・シリーズ」で知られた。ほかに台所の食材や庭の草花など身の回りのモチーフも色彩豊かに描いた。

 

門付け(日本)

人家の門口で芸能を見せ、報酬を受ける芸能と芸能者。神を装い、民家の戸口等に立って祝福する「ほがい人」の芸を起源とする。新年の祝祭芸など季節に応じた予祝芸能として行われることも多いが、説経や祭文、瞽女など季節に関わらない旅芸人の諸芸のこともさす。

 

カトリック/Catholic

1054年の、東方正教会の分離(大シスマ)に対し、西方教会が普遍、正統派を主張してカトリックと称したキリスト教最大の教派。その中心をローマに置くことから、ローマ教会、ローマ・カトリック教会ともいわれる。

 

金子光晴

1895-1975 詩人、随筆家。新象徴主義詩人として出発し、1929年に日本を脱出、足掛け5年、東南アジアからヨーロッパまで放浪し、無国籍者の視座を得て、反権力、反骨的な詩作を行う。戦後も日本社会の根元から鋭く風刺しするユーモラスな作品も多い。

 

金子雄生

ジャズ、即興のコルネット、トランペット奏者。アフリカの民族楽器の製作も行い、演奏もする。河崎との即興演奏によるCD作品「二つの月」。

 

金村詩恩

在日コリアンの著述家。著書に「私のエッジから観ている風景: 日本籍で、在日コリアンで」(ぶなのもり2017)。

 

鹿野武一

1918-1955 シベリア抑留された軍人。詩人石原吉郎の壮絶なシベリア抑留体験に大きな影響を与え、「ペシミストの勇気」の中に記録されている。石原吉郎、「ペシミストの勇気」

 

カポエラ(カポエイラ)/Capoeira

ブラジルの音楽を伴う格闘技。ブラジルの黒人奴隷が、ダンスのふりをして修練した格闘技といわれる足技を中心にした格闘技といわれる。音楽、舞踊的要素を持ち、打弦楽器のビリンバウなどが伴奏。後のブラジルの民衆音楽に大きな影響を与えた。

 

上方文学

江戸時代前期の元禄期に、大坂、京都などで、町人文化の台頭、印刷文化の発展にも伴い流行した文学的潮流。井原西鶴の浮世草子、近松門左衛門らの浄瑠璃、松尾芭蕉らの俳諧など。

 

「神々の沈黙-意識の誕生と文明の興亡」/The Origin of Consciousness in the Breakdown of the Bicameral Mind

アメリカの心理学者 ジュリアン・ジェインズの1976年の著書。その中で古代人には「意識に先立って、幻聴に基づいた全く別の精神構造があった」と「二分心」を 仮説し、人類が意識、言語を持つ前の人間像を考察。バイキャメラルマインド(二分心)

 

紙切り(芸)

江戸時代に宴席で謡や音曲に合わせて、様々な形を切り抜く芸として始まったといわれる芸能。

 

「カミュ・クローデル」(舞踊作品)

フランスの彫刻家カミーユ・クローデルの生涯を描いた西川千麗の日本舞踊作品。→クローデル、カミーユ西川千麗

 

ガムラン/gamelan

インドネシアのジャワ島やバリ島で行われる、打楽器を主体にした合奏形態。8世紀ごろから宮廷で宗教儀式として継承される仏教寺院ボロブドゥール遺跡のレリーフに、いくつかの楽器が描かれるが、現在の形態の起源として確証されるものではない。植民地化された17世紀以降近代的ガムランとして統制され、現在の形態の基礎が築かれた。

 

亀山郁夫

ロシア文学者。ドストエフスキーやアヴァンギャルド文学や社会などを論じ、多くの著書をもつ。

 

カヤグム (伽耶琴)/가야금

韓国の伝統弦楽器。12弦の琴。3世紀から6世紀中頃にかけて朝鮮半島の中南部の伽耶国で作られ、奈良時代に日本にも伝わった。桐製の胴に絹製の弦を張り、主に指で弾く。

 

カラオケ

「空」のオーケストラ。伴奏オーケストラの代用として録音された。1970年代より日本で宴会場、スナックなどで広まり、80年代にボックス形態が広まり一般化した。

 

カラガンダ /Karagada, Караганда

カザフスタンの主要都市。第二次世界大戦の独ソ戦を背景に強制移住されたロシアへのドイツ移民であるヴォルガ・ドイツ人が多く、炭鉱労働に従事した。1940年代には人口の7割りほどを占めた。戦後はシベリアに抑留された日本人捕虜が多く連行された。ヴォルガ・ドイツ人

 

カラコチ、アブゼール/Abuzer Karakoç

1952-1996 トルコ東部の山岳地方出身の民謡歌手、社会主義者。音楽学校でチェロと声楽を学ぶ。1970年代には政治運動のため数度投獄され、出獄後パリに渡り、音楽作品を発表。いわゆるこの地の男声による民謡や、大衆歌謡の歌唱とは異なる繊細な歌声で、諺や童謡やフォークロア音楽を解釈して歌い、政治的なメッセージも込めた自作の曲も歌った。

 

ガラタ橋

トルコイスタンブールのボスポラス海峡の金角湾に架かり、旧市街と新市街を結ぶ大橋。1845年に開通。

 

カラヴァイチュク、オレク/Oleg Karavaychuk, Олег Каравайчу́

1927-2016 ウクライナ生まれロシアのピアニスト、作曲家。神童と称され、ソ連時代数多くの映画音楽を作曲したが、スキャンダラスな演奏法で、コンサート活動が禁止された。ソ連崩壊後の晩年は前衛音楽家などに支援されながら、パフォーマティブな演奏活動を突発的に行う機会もあった。

 

樺太アイヌ(サハリンアイヌ)/Sakhalin Ainu

サハリン島南部のアイヌ系民族で、第二次世界大戦後は北海道に移住することが多かった。元来、北海道にも居住したが。サハリンに移住したとされ、アムール川流域の諸民族と交易を行った。弦楽器のトンコリはのちに北海道のアイヌにも伝搬した。ミイラ葬の風習を有した。

 

カン・テーファン (姜泰煥)/Kang TaeHwan 강태환

韓国のサックス奏者。1960年代からジャズに影響を受けるが、やがて孤高の即興演奏スタイルを築く。サックス奏法におけるマルチフォニック(重音)と循環呼吸奏法の先駆的存在として知られ、それらの奏法が東洋哲学的な永遠や深淵をイメージさせる。

 

「樺太への旅」

作家の林芙美子の1934(昭和9)年の旅行記。林芙美子

 

「カラマーゾフの兄弟」

1879年に発表されたドストエフスキーの長編小説。父親殺し事件を中心に、三人兄弟と私生児をめぐって展開される展開の中に、宗教的思想と作者自身の葛藤を通して人間性を追求。ドストエフスキー、フョードル

 

カリーキ(・ペレホージェ)/калики перехожие

1617世紀の頃ロシアに出現した巡礼者。乞食同然の身なりで喜捨を求めながら門付し、聖書から題材をとった巡礼歌を歌った。盲目あるいは身体になんらかの障害をもつ者が多かったといわれる。

 

ガルキ(村)

ロシアのシベリア地域の小村。イルクーツクから北に50キロほど。イルクーツク

 

ガルクーシャ、オレグ/Oleg Garkush, Олег Гаркуша

ロシアのアヴァンロックバンドのアウクツィオンのメンバー、詩人。メインヴォーカルではないが、センターの位置でパフォーマンスをする。巨体でコミカルな動きを交え、バンドの象徴的存在。→アウクツィオン

 

「ガルガンチュア」

著述家の立花隆が1971年に開店した、新宿ゴールデン街のバー。引き継いだ歌手、女優の石橋幸が40年以上営んでいる。ロシアからの来客も多い。石橋幸

 

カルムィク(共和国)/Kalmykia , Калмыкия

ロシア連邦にある仏教を信仰の中心とするカスピ海の北西部の共和国。基幹民族のカルムィク人は、仏教を受容したモンゴル系民族。新疆地域に暮らしたとされるが、民族間の争いから逃れ西へ移動。第二次大戦の独ソ戦の際、ドイツに協力的であるとみなされ、スターリンによりシベリア、中央アジアへ強制移住された。レーニンは、父方の祖母を通じてカルムイク人の血統を持つ。

 

カルナイ/Karnay,Карнай

ウズベキスタンの軍楽合奏や祭で用いる長さ2メートル以上をもつ巨大なチャルメラのような金管楽器。バルブやスライドをもたず、音程は一つのピッチしかもたないが、口内の形を変化させ倍音を調整して音色に変化を与え、ひじょうに力強い音を出す。イラン、タジキスタンなどでも用いる。

 

「可哀想なカモメ」/Ой бідабіда мені чайці небозі

子を失った哀しみを歌うウクライナ民謡。音楽詩劇研究所「Continental Isolation」で、歌手アーニャ・チャイコフスカヤが歌った。

 

河合隼雄

1928~2007  兵庫県生まれの臨床心理学者、文筆家。アメリカ、スイスに留学しユング派精神分析を学ぶ。日本の口承芸能や神話に着目し、日本人の精神の特色を分析。文学,宗教など幅広い分野で活躍。日本舞踊家西川千麗の創作に共感し、支援した。西川千麗

 

川口(市)

荒川を隔てて東京都に接する埼玉県南端の都市。かつては鋳物工業の都市と知られ映画「キューポラのある街」(1962)の舞台となった。在留外国人の人口は約4万人で、市の総人口の6.5パーセンントを占め、全国一の多さになる(2021年12月末法務省データ)。

 

河鍋暁斎

 1831~1889 幕末から明治にかけて活躍した浮世絵師、狩野派の日本画家。多岐にわたる画題の混合、画法を駆使。魑魅魍魎を多く描き、斬新な戯画、風刺画も多く描いた。記念美術館が埼玉県蕨市にある。

 

川又 一英

1944~2004  小説家。信徒であった正教、イコン関連の著作が多く、イコン画家山下りんの評伝もある。山下りん

 

河原乞食(河原者)

中世以来、河原に暮らすものを不浄の民とし、階級外の被差別的な階級を称した。また、芸を売り金銭を得る芸能や娼妓に関わる人々を象徴的に呼ぶ。歌舞伎の起源である「かぶき踊り」を出雲阿国が京都の河原町で踊り始め、それを起源に同地で興業が行われるようになったため、のちの歌舞伎役者、芸能人が自称することも多い。→出雲阿国

 

環境音楽/ambient music, environmental music

従来の西洋古典音楽などで、音楽に芸術の絶対性を目的とするのに対し、機能性やBGMなどの効果性を目的とし、芸術理念のオルタナティブなあり方としても創作された。自然環境そのものに音楽が内在すると捉え、音の数が少なく、物語展開を持たないことが多い。アンビエントミュージック

 

「閑吟集」

室町時代後期に流行した歌謡集。七五調ではない自由律の短詩の流行歌謡。小歌の集成。庶民の歌が数多く収められている。厳正的な生活感情における恋愛感情が詠まれることが多い。

 

韓国プロ野球/KBO League

1982年に発足した韓国のプロ野球機構。「KBO」 と略される。「海峡を越えたホームラン祖国という名の異文化」

 

江原道アリラン/강원도 아리랑

韓国、江原道地域で歌われたアリラン。五拍子系のリズムが朝鮮半島各地の代表的なアリランと異なる特徴をもつ。→アリラン

 

神田晋一郎

ピアニスト、作曲家。「音樂美學」を主宰。制御された作曲を前提とし、それを即興するジャズのアドリブに見られるような一般的な演奏とは異なり、即興を前提とし、さらにそれを制御するための方法として作曲や演奏を試みている。舞台音楽の作曲や歌との共演にもその方法を拡張させる。

 

カントール、タデウシュ/Tadeusz Kantor

1915-1990 ポーランドの演出家、美術家。ドイツ占領下のクラクフで実験的な地下劇場を設立。「死の教室」、「芸術家よ、くたばれ」をはじめとする一連の舞台で、20世紀後半、世界の演劇に大きな影響を与えた。本人が舞台上に「演出家」として登場して歩き回り、その場で演出的な合図を俳優に施すこともある。

 

カントリー(ミュージック、アメリカ)/country music 

開拓民の民謡に持つアメリカ労働者階級の白人のフォーク・ミュージック。1920年代にアメリカ合衆国南部で発祥したとされる。ロカビリー、ウェスタンなどさまざまなのちの大衆音楽に派生。白人中心社会のノスタルジーをもよおすこともあるとされ、保守的なイメージをもたれることも多い。

 

カンバル・アタ

キルギスの馬の守護聖者、伝説上の狩人。撃ち落とした山羊の腸が木に掛かったまま乾燥し、そこに風が吹きつけて美しい音を奏でたことをきっかけに、キルギスの3弦の伝統弦楽器がコムズが誕生したとの伝説をもつ。

 

漢文朗読(教育)

漢文の素読。江戸時代以来、寺子屋などで学習の初歩として重用された日本の音読教育の方法。明治の学制頒布から第二次世界大戦終戦まで、中等教育においては、今日の課程とは比較にならないほど多くの時間が設けられ、必修科目として履修された。

 

カンブロワ、エレーナ/Elena Kamburova,Елена Камбурова

ロシアの女性「シャンソン」歌手。1960年代から活動し、ソ連当局が好まない現代詩の作品を積極的に歌謡化した。ブラート・オクジャワの曲をも積極的に歌い継いでいる。1992年に「音楽と詩の劇場」を設立した。オクジャワ、ブラート

 

「岸壁の母」

ソ連引き揚げ船で帰る抑留者の息子を待つ母親の心情を歌う菊地章子の歌唱による流行歌(1954)。シベリア捕囚(抑留)

 

ガンボ/gumbo

アメリカのルイジアナ州を起源とするシチュースープ料理 。フランス、スペインなどの入植者や、西アフリカからの奴隷民がもたらした、さまざまな食材が混在して生まれた。そのような「ごった煮」感を、この地の音楽にも反映させ、同州のニューオリンズ出身のオルガン奏者ドクター・ジョンらが体現。R&Bや、サイケデリックロック、アフリカの原始信仰敵感覚を融合させた音楽を創作した。

 

 

(キ)

キーウ(キエフ)/Kiev, Київ,Киев

ウクライナの首都。東欧における最古の都市で、キリスト教の聖地の一つ。

 

キーテジ(伝説)/Kitezh, Китеж

ロシア正教の古儀式派の人々にとっての伝説的な湖上都市。ニジニ・ノヴゴロド州のスヴェトロヤール湖に存在されるといわれ、ユートピア的な原郷としてさまざまな文学、絵画作品のモチーフにもなっている。2022年に、ロシアの歌手マリーヤ・コールニヴァをフューチャーした河崎のCDユーラシアン・ポエティック・ドラマvol.2STRANGELANDS」でも、重要なテーマとなっている。

 

キエフ公国(キエフルーシ)/Киевское князство

9世紀にキエフを中心に成立した。東スラブ人が建てた最古封建国家の国家であり、10世紀ごろにはドニエプル川流域一体を領有。13世紀モンゴルに滅ぼされた。

 

キエフバレェ

タラス・シェフチェンコ記念ウクライナ国立バレエ。旧ソ連では、ボリショイ(モスクワ)、マリインスキー(ペテルブルグ)とともに、3大バレェ団といわれた。

 

妓生(キーセン)/기생

高麗時代より、性的奉仕のために準備された奴婢身分の女性。諸外国からの使者や高官の歓待のため楽技を披露した。雑歌、歌曲、パンソリなどの歌舞を行い、伝統音楽の新たな潮流の礎の一つをつくった。職は母から娘へと継承されたが、没落した両班家庭の娘、巫家系の女性や反逆罪人の婦女子から転ずることもあった。日本統治以降は実質的に娼妓化し、現代の韓国では観光客などを相手とする接客業の女性も指す。

 

気功

中国の民間療法、自己鍛錬的な代替治療。古来よりさまざまな方法や思想があるが、「気功」という総称は1950年代に誕生した。

 

岸田理生

1946-2003 長野県生まれの劇作家、演出家。演劇実験室天井棧敷のメンバーとして活動を始め、脚本を手がける。1980年代には女性の心理を繊細に描いた。1990年には日本の戦争責任と向き合い、歴史や国家などを批評と詩情が織り混ざる作品を創作し、アジア諸国の演劇人と交流し、共同制作作品を構想した。

 

「汽車は8時に発つ」/The train leaves at eight, o tréno févgi stis októ

ギリシャの国民的作曲家、現代音楽作曲家のミキス・テオドラキス作の歌唱曲。世界各国で翻訳され歌われており、クラシック声楽のみならず日本でも森進一らによって歌われている。→テオドラキス、ミキス

 

貴種流離譚

文学作品や口承文芸において、幼い神や英雄が種々の試練を経て困難を克服し、神となったり、高貴な地位についたりして展開をする物語。

 

木曾節

長野民謡。近世から木曽地域に伝わる民謡で、木々を河川に流して運ぶ「中乗り」を題材に歌われる。明治末期に「新民謡」として広く紹介されて全国に知られた。

 

「ギターを抱いた渡り鳥―チカーノ詩礼賛」

アメリカ文学者、越川芳明の著書(思潮社2007)。米国・メキシコ国境から、人々の生き様を通じ現代社会をみつめる。越川芳明 

 

北川源太郎(ダーヒンニェニ・ゲンダーヌ)

1926-1984 樺太生まれのウィルタ人。民族の研究、文化保護の運動家。シャーマンの家系に生まれ、遊牧と狩猟で生活を営んでいた 。第二次世界大戦中、樺太の少数民族も日本名をつけられ、対ソビエトの諜報員や軍隊に招集。戦後シベリア捕囚で10年間抑留生活の後、北海道に渡り少数民族の軍人恩給支給問題を国へ訴えた。ウィルタ

 

北原白秋 

1885-1942 詩人、童話作家。象徴主義的な浪漫派詩人として出発し、新民謡、同様の多くを作詞。晩年はヒトラーユーゲントの来日に際し「万歳ヒットラー・ユーゲント」を作詞するなど、国家主義への傾倒を強めた。

 

ギデイオン、アンドレイ/Andrei Gedeon,  Андрей Гедеон

ロシア、イルクーツク在住のサックス奏者。独奏やパイプオルガン奏者とのDUO活動を中心に、ジャズ、クラシック、ロックを横断する。

 

喜納昌吉

1948年、沖縄のコザ生まれの音楽家、政治家。民謡歌手の父喜納昌永を父に持つが保守的な民謡界に反発し独学。「ハイサイおじさん」がヒット。民謡とロックを融合した喜納昌吉&チャンプルーズを結成し、社会批判を織り交ぜた作品を発表し、「ウチナー・ポップ」を確立。代表曲に「花」があり、アジアのスタンダードソングとして歌い継がれている。

 

キプチャク・ハン国(ジョチ=ウルス)

13世紀中頃、モンゴル人チンギス・ハンの孫バトゥによって東ヨーロッパ,南スラブ、中央アジアに建設された国。16世紀初頭まで存続したが、支配地はトルコ系のキプチャク族が大半を占めイスラム化し、各民族が独立。ロシア人も多く、ロシア人側からは「タタールのくびき」といわれ、1480年にモスクワ大公国のイヴァン3世が独立を達成し、ロシアの大国化が進んだ。

 

キプロス紛争

ギリシャ系住民とトルコ系住民の対立により、1955年からキプロスで継続している紛争。キプロスは1960年に英国から独立するが、現在もトルコの実効支配下の北部と南部に分断されている。

 

「君が代」

明治時代初期より作編曲を重ね、1930(昭和5)年に国歌として制定された。

 

キム・イルソン (金日成)/김일성

1912-1994 朝鮮民主主義人民共和国の革命家、政治家。抗日独立パルチザンに加わり運動を指導。第二次大戦後、北朝鮮臨時人民委員会委員長を経て、1948年の建国とともに首相に就任。その思想は「主体(チユチエ)思想」とよばれる1972年国家主席となる。

 

キム・サンヨン(キム・サンヨン)/Sang-yong Kim김상용

1902‐1951。韓国の詩人。渡日し、立教大学英文科入学。1928年に帰国し英文学者になる。1930年頃から詩を書きはじめ、東洋的な自然や虚無感を、楽観的に描く作風で評価される。1939年に発表された詩集「望郷」に収められた、「南に窓を」は広く知られ、金素雲によって日本語訳され、のちに詩人金時鐘が改訳を発表。

 

金時鐘(キム・シジョン)/김시종

韓国の釜山近郊に1923年に生まれる。戦前は日本統治下において「皇国少年」として過ごすも、1949年済州島より密航船で来航し、以後大阪で日本語で詩を書く在日朝鮮人の詩人。

 

キム・ジンモク/Kim Jin-mook,김진묵 

韓国の春川在住の音楽評論家、演奏家。ジャズや韓国、アジア各地の民族音楽、韓国のトロット(演歌)を研究し著作を発表。それらを元にした創作活動も行っている。

 

金素雲 (キム・ソウン)/김소운

 

1907~1981 釜山出身の詩人、翻訳家、随筆家。1920年、13歳で日本に渡り34年間にわたって滞在。日本語翻訳した朝鮮の民話、民謡、現代詩は当時の日本の文壇に絶賛された。知日家として知られるため、韓国での評価は高いとは言えない

 

キム・ソクチュル (金石出)/Kim Suk Chul, 김석출

1992-2005 韓国東海岸のシャーマン。無形文化財に指定された。胡笛(ホジョク:チャルメラのような管楽器)をけたたましく奔放に演奏。ヨーロッパや日本のジャズなどの即興音楽家を中心に驚嘆され、影響を与えた。斎藤徹をはじめとする日本の前衛音楽家、ヨーロッパ、オーストラリアでも注目され、記録音源、コラボレーション作品やドキュメンタリー映画も作成された。

 

キム・デファン (金大煥)/Kim Dae Hwan, 김대환

1933-2004 韓国の打楽器奏者、フリー・ジャズの第一人者。1980年代より多くの日本の即興演奏家と共演した。韓国のロック音楽の創世記に重要な役割を果たしたが、ジャンルに囚われない独自の演奏法を開拓。能楽師、鼓奏者大倉正之助による評伝「破天の人韓国のスーパーアーティスト金大煥」(アートン2005)がある。

 

キム・ヒョンヒ (金賢姫)/김현희

翌年のソウルオリンピック阻止のため1987年の日本人客になりすまし、大韓航空機爆破事件を実行した北朝鮮の元工作員。韓国で死刑判決を受けたが、事実究明のため特赦された。1991年に韓国国家安全企画部の嘱託職員になり、公演活動や本の出版などを行っている。2010年に訪日。

 

キャンディーズ

1973~1978年に活躍した日本の女性3人組 のアイドルグループ。「春一番」「年下の男の子」など数々の大ヒット曲がある。

 

キュイ/Kyui, kjui, кюи

カザフスタンの伝承や物語を背景に演奏される撥弦楽器のドンブラによる独奏器楽曲。演奏の前に奏者によって曲にまつわる伝説が語られることもある。

 

「旧約聖書」/The Old Testament

神と人類との約束の意。大部分はヘブライ語で記述され、本来ユダヤ教の聖典だが、キリスト教でも新約聖書とともに正典に位置づけられる。イスラム教でも一部が啓典とされる。「律法」と呼ばれる祭儀と行動規範の書としての側面と、神の世界創造や救済を予告する預言書の二つの側面を持ち合わせる。

 

キューン 、ヨアヒム/Joachim Kühn

1944年生まれのドイツのジャズピアノ奏者。1964年に旧東ドイツで最初のフリー・ジャズを披露した。以後世界各地でアヴァンギャルド、ロック、クラシックと幅広い演奏活動を行う。

 

ギュリュン、セレン/Selen Gülün

トルコを代表する女性ジャズプレイヤー。ピアノ奏者、作曲家。東京とイスタンブールを往復しながら世界的に活動。音楽詩劇研究所と共演を重ね、2017年トルコのイスタンブール公演にも参加。

 

教育劇(教材劇)/Lehrstück

ドイツの詩人、劇作家、演出家のベルトルト・ブレヒトによって、主に1930年代に試みられた演劇実践理論。職業俳優だけでなく労働者や学生も演じることが想定され、舞台は演じられたテーマを思考、討論する場となり、従来の演劇と異なり、観客と演者の境界がなくなる。現実的な達成は困難だったが、野外劇も含めのちの観客参加を誘発する現代演劇の創作方法や、南米や東南アジアの自主的演劇運動の潮流に多大な影響を与えた。ブレヒト、ベルトルト

 

教育勅語 

自由民権運動に対する明治政府の危機感も背景に1890(明治23)年に発布された教育に関する基本方針。第二次世界大戦後、1948(昭和23)6月に廃止され、新たに教育基本法などが定められた。

 

姜信子(カン・シンジャ)

 横浜生まれの作家。主な著書に、「棄郷ノート」(作品社)「ノレ・ノスタルギーヤ」「ナミイ 八重山のおばあの歌物語」、「声 千年先に届くほどに」「平成山椒大夫 あんじゅあんじゅさまよい安寿など多数。「声」と「語り」をテーマに近代の彼方をまなざす「旅するカタリ」としても活動。

 

ギョクチェン、サビハ/Sabiha Gökçen

1913-2001 トルコの女性飛行士。トルコ革命を指導したムスタファ・ケマル・アタテュルクの養女。1937年のクルド人虐殺で活躍し、世界初の女性戦闘機パイロットともいわれ、英雄視されている。イスタンブールの国際空港にその名が冠されている。

 

「極北ヒステリー」(北極ヒステリー)/Arctic Hysteria, Piblokto

イヌイット文化やシベリア少数民族にもみられる突如とした憑依状態で、シャーマニズムにも関連する。科学的には、この地域の太陽光の不足、極寒、荒涼とした状態、ビタミン摂取方法が原因との説があるが定かではない。女性に現れることが多いとされる。

 

キョル・テギン(闕特勤)/Köl-tegin

685-731  トルコ系民族による突厥が分裂して、のちに復興した東突厥において、兄をビルゲ=カガンを立て、軍事権を握って、国を隆盛させた。最古のオルホン碑文は彼を讃えて建てられた。オルホン碑文、突厥

 

ギリシャ内戦/The Greek Civil War

ナチスドイツに占領されたギリシャでは国王がエジプトに亡命し、国土はドイツ、イタリア、ブルガリアに三分された。国内では共産党のレジスタンスが組織され、当初イギリスもソ連もそれを支援したが、戦後、共産勢力の浸透が強まりアメリカが介入。内戦状態となったが、共産党勢力を徹底的に弾圧により、内乱が集結し国王が復帰。以後西側諸国としてNATOにも加盟。混乱は、テオ=アンゲロプロスの映画、「旅芸人の記録」に描かれている。テオドラキス、ミキシ、クセナキス、ヤニス

 

キリスト単性説/Monophysitism

正統とされた、神とイエスと聖霊の三者はそれぞれ別な位格をもつが実体としては一体である説に対するキリスト教の異端神学説。イエスにおいて神性と人性が結合したのちに人性は神性に吸収され、1つの本性しか残らないとする。451年の召集されたカルケドン公会議で異端とされたが、コプト、シリア、アルメニアの各教会が継承。

 

ギリヤーク(族)(ニブフ族)/Gilyak

サハリン北部、アムール川流域のニブフ族の呼称。古シベリア諸語の孤立言語であり、アイヌ、ツングース・満洲系諸族やモンゴル系民族とは別系統の民族とされる。

 

桐山真二郎

1978~2016 映像、テレビディレクター。NHKETV特集 アンジェイ・ワイダ祖国ポーランドを撮り続けた男」にて2008ATP賞グランプリ、第42回アメリカ・ヴィデオ・フィルム祭 歴史・伝記部門クリエイティブ・エクセレンス賞を受賞。

 

キリル文字/Cyrillic alphabet, кириллица

ロシア文字などキリル文字を母体とするすべての文字をさす。9〜10世紀ごろよりブルガリでギリシャ人宣教師キュリロスが、ギリシャ文字をもとに作成したといわれる。スラブ圏東部のギリシア正教圏で用いられてきた。

 

(キル・)コブズ/Kobyz, Қыл Қобыз

カザフスタンのシャーマンが用いていた楓の木からつくられた二弦楽器。弓だけでなく弦も馬の尾毛でつくられている。撥弦楽器のドンブラとともに、カザフスタンの伝統音楽を象徴する楽器。→ドンブラ

 

キレメチ/kiremet, киреметь

ロシアのチュヴァシやマリーエルの在来信仰で動物の供儀とともに行われる儀礼、およびそこに棲む霊。

 

 

金田一京助

1882-1971 国語学者、民俗学者。在学中からサハリン、北海道で調査を行ない多くのユーカラを採録した。無文字社会であるアイヌの言語や文化の研究に専念し、アイヌ語学の創始者となった。

 

 

キューン 、ヨアヒム/Joachim Kühn

1944年生まれのドイツのジャズピアノ奏者。1964年に旧東ドイツで最初のフリー・ジャズを披露した。以後世界各地でアヴァンギャルド、ロック、クラシックと幅広い演奏活動を行う。

 

姜信子(カン・シンジャ)

横浜生まれの作家。主な著書に、「棄郷ノート」(作品社)「ノレ・ノスタルギーヤ」「ナミイ 八重山のおばあの歌物語」、「声 千年先に届くほどに」「平成山椒大夫 あんじゅあんじゅさまよい安寿など多数。「声」と「語り」をテーマに近代の彼方をまなざす「旅するカタリ」としても活動。

 

キョル・テギン(闕特勤)/Köl-tegin

685-731  トルコ系民族による突厥が分裂して、のちに復興した東突厥において、兄をビルゲ=カガンを立て、軍事権を握って、国を隆盛させた。最古のオルホン碑文は彼を讃えて建てられた。オルホン碑文、突厥

 

「銀の時代」/Silver Age  Серебряный век

ロシアの帝政時代末期、19世紀末から2世紀初冬にかけての象徴主義のモダニズム的な芸術運動。アクメイズム、未来派など新たな潮流を生み、革命期をはさみ、のちのロシア現代詩の基盤となった。

 

金野吉晃

盛岡在住の音楽批評家。サックス奏者、即興演奏家としてはONNYKの名義を用いることが多い。webマガジンのJAZZ TOKYOに前衛音楽の記事を多数執筆。2018年の音楽詩劇研究所と歌手サインホ・ナムチラクによる岩手公演に関する「メドウ無きステップの、トライブ無きシャーマン~野惑(ノマド)としてのサインホ・ナムチラク」、河崎のCDユーラシアンポエティックドラマシリーズに関する「妣が國への旅」も読むことができる。ナムチラク・サインホ

 

キンメリア人/Kimmerians

紀元前9世紀頃ウクライナ南部に居住したイラン系の遊牧騎馬民族。

 

 

(ク)

クァンデ (広大)/광대

韓国の大道芸者であるパンソリの唄い手のこと。李朝時代の賎民階級の出身で、巫女の手伝い、人形劇や仮面劇、その他の雑技もこなしていたが、パンソリの人気が高まり、19世紀には歌唱芸能の歌い手として独立性が進んだ。

 

グィン

奄美諸島の伝統的な民謡の節回し。ファルセットと地声を往来とコブシを震わせながら歌う。12世紀に平家が伝えた神歌が起源ともいわれる。

 

クールジャズ/Cool Jazz

黒人奏者に盛んだったハードバップジャズに反動して、音を控え目に使い、クラシック音楽の語法やテクニックを取入れた白人中心ジャズ。ハードバップがニューヨークなどアメリカ東海岸(イースト・コースト)に展開したのに対し、ウェスト・コースト・ジャズともいわれる。

 

グールド、グレン/Glenn Gould 

1932-1982 カナダのピアニスト。クラシックピアノの奏法において、従来のロマン派的な楽曲分析と重厚な演奏とは異なり、和声より対位法を極端に重視。たとえば残響にふくらみを持たし、オーケストレーションを可能にするフッド・ペダルの使用は極めて少ない。1964年演奏会活動に疑問を感じ、演奏会活動を中止し、レコード録音活動に専念。それらが革新的な解釈として称賛された。

 

「グスリッツァ」/Гуслица Творческая Усадьба

ロシアのモスクワ近郊の森の中にあるアートレジデンス。芸術、教育、福祉など多ジャンルのフェスティバルや、ワークショップが開催されている。2019年に音楽詩劇研究所が、上演、ワークショップを行った。СВЕТ0ТЕНЬ(光=0=影)」

 

クズル/Kyzyl, Кызыл

ロシア連邦トゥバ共和国の首都。西サヤン山脈南麓のトゥバ盆地を流れる大小のエニセイ川の合流点近くに位置する。→トゥバ

 

クセナキス、イアニス/Iannis Xenakis

1922-2001 ギリシャ系フランス人の作曲家。ギリシャで建築と数学を学ぶが戦争が勃発し、反ナチの地下運動に参加。戦後、枢軸軍のギリシャ退去後に進駐した英軍と戦った際には銃弾を受け、顔の左側に傷を負い左目も失う。それらの原体験が音楽の作曲方法に直接的に応用された。古代音楽に起源を求めながら、音楽を物理的音響現象として数学的に捉える立場に立ち、コンピュータも駆使する独自の創作技法を用いた。結果として演奏の再現が極めて困難な曲が多い。

 

クッ/굿

シャーマン(ムーダン)が憑依して神を憑依させ、お告げを行う韓国の伝統的な祭儀。1)個人レベルのクッ(財数クッ、憂患クッ、死霊クッなど)2)集団単位の、別神 (ピョルシン) クッ(豊漁祭、豊饒祭、祈雨祭など)、3)降神巫が自分のために行うクッ(降神クッ、神クッ)などに分かれる。

 

クック、サム/Sam Cooke

1931-1964 アメリカのR&B、ソウル、ゴスペル歌手。ゴスペルシンガーとしてキャリアをスタートさせるが、現代にも歌い継がれるR&Bのヒット曲も多く歌った。伸びやかな美声が特徴的だが、ライブでは扇動的なパフォーマンスも行った。公民権位運動にも積極的に加わったが、モーテルに連れ込んだ女性に射殺された。

 

クッコリ/굿거리

韓国の巫俗(シャーマニズム)系の音楽に由来する代表的なリズム(チャンダン/長短)のひとつ。3拍子と4拍子のアクセントがずれながら重なり合う12拍のポリリズムをもつ。

 

国広和毅

作詞、作曲家、歌手。河崎も参加するバンド「ダた」を率いる。数々の演劇作品の音楽も担当している。→ダた

 

グバイドゥリーナ、ソフィア/Sofia Gubaidulina, СофияГубайдулина  

ロシアのタタール族出身の女性作曲家。前衛的作風のためペレストロイカ期まで制限があったが、ヴァイオリン奏者ギドン・クレメールなどが西側に紹介し、西ドイツに居を移す。正教に改宗したタタール人であり、宗教的題材も多い。神秘主義的作風が評価される。→アストレイヤ

 

熊野古道

中世期に日本最大の霊場とされた紀伊半島の熊野の三山(熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社)へと通じる参詣道の総称。

 

くやま(安里屋クヤマ)

1722-1799 八重山諸島の竹富島の娼婦、絶世の美女。沖縄地方を代表する民謡となった「安里屋ユンタ」に歌われている。「安里屋ユンタ」

 

クライ/Quray, Курай

ロシア中西部、ウラル山脈南麓の共和国、バシコルトスタンでバシキール人が伝統的に用いている細長い縦笛。尺八の音色も想起させる。→バシキール

 

クラクフ/Krakow

ポーランドの都市。古都。中世に栄えた中心街とユダヤ人街が残され、現代もポーランド文化の中心地といわれ、多くの20世紀の前衛芸樹家も排出。

 

「くらげの唄」

金子光晴の1952年の詩集「人間の悲劇」に収められた詩。金子光晴

 

「グリーンスリーブス」/Greensleeves

イングランドやスコットランド起源の民謡。低音の進行にのせて旋律が展開するロマネスカ形式で奏されることが多かった。悲恋が歌われ、曲名として用いられる「緑の袖」はイングランドで「娼婦」や野外性交をさす隠語でもある。

 

クリステヴァ、ジュリア/Julia Kristeva, Юлия Кръстева  

ブルガリア出身のフランスの女性哲学者、文学理論家。精神分析医でもあり患者の治療にあたった。夫はフランス前衛文学、ヌーヴォー・ロマンの旗手フィリップ・ソレルス。

 

栗原小巻

俳優座出身の女優。かつて吉永小百合と人気を二分した。1981年には日本で初めてソ連の演出家(A・エーフロス)を招いて行った舞台公演「櫻の園」に主演。以降、ロシア映画や、ロシア人演出家の舞台公演に数多く出演し、ソ連でも人気を誇った。

 

栗原成郎

ロシア文学者。スラブ、ロシアのフォークロアに関する著書、論文が多く、「ロシア異界幻想」(岩波書店2002)など。

 

クリミアタタール(人)/Qırımtatarlar 

クリミア半島に起源を持つテュルク系先住民族。13-18世紀にかけてクリミア半島、南ロシアを支配したクリミア・ハン国のテュルク系ムスリム住民を起源とする。

 

クリョーヒン、セルゲイ/Sergei Kuryokhin, Сергей Курехин

1954-1996 ロシアの作曲家、ピアニスト。早逝したペレストロイカ期のカリスマ的、伝説的前衛音楽家。現在に至るまでロシアの前衛音楽において大きな影響力をもつ。

 

クルグ、ミハイル/Михаил Круг

19622002 ロシアの歌手犯罪者の歌を多く歌う人気歌手だったが殺害された。事件は迷宮入りとなっている。犯罪者の歌(ロシア)

 

アレクセイ・クルグロフ/Alexey Kruglov, АлексейКруглов

ロシアの若手、中堅のジャズ界を牽引するサックス奏者。ジャズ、即興演奏の手法を用い、演劇性をもつ独自の音楽を展開。ロシア移民のイギリス人レオ・フェイゲンが主宰する音楽レーベルによる音楽祭「Leo Festival」で芸術監督をつとめている。→LEOレコーズ

 

クルチョーヌィフ、アレクセイ/Alexiey Khruchenyk, Алексей Крученых

1889-1968 未来派的な作風で知られたロシアの詩人。フレーブニコフとともに音声詩的実験「ザーウミ」(超意味言語)を試み、ジョージアの未来派と行動をともにする。革命後はジャズのリズムをとりいれた詩集「ヘロディアス」を発表。以後、活動に制限を受けて詩作を止めた。

 

クルディスタン人民共和国(マハーバード共和国)

1945-1946 南下政策を進めるソヴィエト連邦の後押しにより、イラン西アゼルバイジャンのクルド族地域に存在したクルド人自治国家。ソ連軍撤退を機に、イラン政府により崩壊。

 

クルド人/Kurds

トルコ、イラン、イラク、シリアの4カ国にまたがる山岳地域に主に暮らす「国を持たない世界最大の民族」といわれる。インド・ヨーロッパ語系のペルシア語系のクルド語は、地域による方言の差が大きく、独自の文字は持たない。イスラム教スンニー派が多い。

 

(在日本)クルド人

主にトルコ国籍のクルド人。差別的処遇を逃れ1990年代から来日。少しずつその数は増え、2010年代に急増し、2020年現在は埼玉県川口市周辺に約2000人が居住。難民申請が法務省から認められないため、在留資格がない非正規滞在、入管施設への収容を一時的に解かれた仮放免の人が少なくない。

 

クルド人虐殺(デルスィム事件)

単一民族国家を建前とするトルコ政府による、クルド人ナショナリズムに対する抑圧。1937-38年にかけトルコ中東部のデルスィム(現トゥンジェリ)で起きたトルコ軍による「虐殺」。

 

クルド人自治区(イラク)

1970年に設置され、1991年の湾岸戦争時に実行支配が開始されたイラクの北部にあるクルド人自治地域。

 

「クルドの娘」/KeçêKurdan

クルド民族の現代の愛唱歌。カリスマ的な女性歌手アイヌール・ドアンが歌い広げている。→ドアン、アイヌール

 

『クルド文学短編集 あるデルスィムの物語』

1937年トルコ、デルスィムで起きたクルド人虐殺をテーマに、10人のトルコ人作家が描いた短編小説集。(さわらび舎2017)

 

サギルバユリ、クルマンガズィ/Kurmangazy Sagyrbayuly, Құрманғазы Сағырбайұлы

1823-1896 カザフスタンの作曲家、ドンブラ奏者。たくさんのキュイをつくりカザフスタン民族音楽の祖といわれる。キュイ

 

クルマンジー語/Kurmancî, Kurmanji Kurdish

クルド語の方言のひとつ。カフカース地域、トルコ東部、シリア、イラク・クルディスタン北部で話されている。イラク・クルディスタン地域で多く話されるクルド語ソラニーなど方言差が多く一般的に意味が通じ合うことが不可能とされている。

 

クレヴェンスキー、セルゲイ/Sergey Klevensky, Сергей Клевенский

ロシアのモスクワ在住のマルチ民俗管楽器奏者。さまざまなジャンルでそれらを用いて演奏している。

 

クレオール/Créole

西インド諸島、カリブ海、中南米などで生まれ育ったヨーロッパ人、特にスペイン人、フランス人を指す。

 

 

クレズマー/Klezmer

バルカン半島、東欧、ドイツのユダヤ人(イディシュ、アシュケナジム)の伝承音楽。ヴァイオリンやクラリネットの響きが特徴的。同地の流浪の民、ロマ音楽との共通点も多い。

 

グレムボツキー、ヤン/Jan Glembotzki

ドイツ出身のクラシック音楽のヴァイオリン奏者。北ドイツ放送交響楽団など有名なオーケストラで第 1 バイオリン奏者として。演奏日本在住。劇中音楽などで、河崎の作曲作品の独奏曲、室内楽曲の初演も多い。

 

クロイツベルク/Kreuzberg

ドイツの首都、ベルリンの旧西側の東端の地区。トルコ人移民街もあり、オルタナティブな文化を担うスペースも多い地区。

 

クローデル、カミュー/Camille Claude

1864-1943 フランスの彫刻家。愛人でもあったオーギュスト・ロダンに師事し、アシスタントをつとめながら創作。ロダンの創作には多くのカミーユのアイデアが反映された。関係が破滅し、精神的な不安点が生じ、多くの自作を破壊した。その後創作することなく30年を精神病院で過ごし生涯を閉じた。

 

クローデル、ポール/Paul Claudel

フランスの詩人、劇作家、外交官。外交官として1921年から1927年日本に滞在し日本文化を研究。能の謡曲等の作者にもなった。彫刻家カミーユ・クローデルの弟。作品に上演時間8時間に及ぶ戯曲「繻子の靴」、オネゲルの作曲によりオペラ化された「火刑台上のジャンヌ・ダルク」など。

 

「黒い土地」/Kara Toprak

トルコの国民的歌手、アシュク・ベイゼル作のトルコの愛唱歌の一つ。故郷トルコ中東部の高地、スィヴァスの黒い大地の孤独と故郷喪失感が歌われる。→アシュク・ヴェイゼル

 

黒川紀章

1934-2007建築家 丹下健三に師事し、1960年代に日本の建築界をリードしたメタボリズムグループを先導。都市計画にも携わり、ソ連崩壊後にカザフスタンのアスタナ(現ヌルスルタン)を新首都としてデザインした。

 

「クロッシング・ザ・ブリッジ サウンド・オブ・イスタンブール 」/Crossing the Bridge: The Sound of Istanbul

ドイツのファティ・アキン監督 ドイツ・トルコ合作映画(2005)。トルコ系ドイツ人のファティ・アキンが監督・脚本・製作を務めたドキュメンタリー作品。ドイツの前衛音楽、ノイズバンドのアインシュテュルツェンデ・ノイバウテンのベーシストのアレクサンダー・ハッケが、イスタンブールの新しい音楽的潮流や伝統音楽をセッションにも加わりながら訪ねる。

 

クナンバイウル、アバイ/Abai Qunanbaiuly, Абай Құнанбайұлы

1845-1904 カザフスタンの「国民詩人」「国民音楽家」と称される思想家・啓蒙家。それまで口承によって伝えられてきたカザフスタンおよびそのイスラーム文化を明文化し、多くのロシア、ヨーロッパ文学をカザフ語に翻訳した。

 

クンブ・メーラ/Kumbh Mela

インドで、ヒンドゥー教の聖なる川で淋浴を行い、8週間渡っておこなわれる巡礼。「水甕のあつまり」を意味し、3年ごとに、神が不死の妙薬を入れた水がめを運ぶ際にしずくが滴った場所である4つの都市で開催され、世界最大の宗教行事といわれる。

 

訓民正音/훈민정음

韓国、李朝時代の1446年に世宗により公布された文字体系ハングルの呼称。モンゴル文字等さまざまな文字の研究をもとに、漢字ではなく庶民の読める文字として開発された。母音11字、子音17字のあわせて28字(現在は24字)を組み合わせてあらわされる表音文字。

 

 

(ケ)

桂銀淑(ケイ・ウンスク)/계은숙

韓国の1961年生まれの女性歌手。モデル、歌手として活動し、1984年に来日。「すずめの涙」、「北空港」など日本でも多くの人曲をヒットさせた。

 

ケージ、ジョン/John Cage

1912~1992 アメリカの作曲家。米国の現代音楽作曲家。アルノルト・シェーンベルク、ヘンリー・カウエルに師事。プリペアド・ピアノやチャンス・オペレーションによる偶然性の音楽の発明し、禅などの東洋思想にも接近した。代表作に「プリペアド・ピアノのためのソナタとインターリュード」「433]」など。著書に「サイレンス」、「ジョン・ケージ 小鳥たちのために」など。

 

ゲガルト修道院/Monastery of Geghard

4世紀に完成し、13世紀に改築された石灰岸壁の中にあるアルメニア最古の修道院のひとつ。ゲカルトは「槍」を意味し、キリストの脇腹を突いた聖槍がここで発見されたこという伝説に由来する。

 

ゲジェコンドゥ/gecekondu

トルコで、カザフ難民や農村からの移住者などが他人の私有地や公有地に許可を得ないまま建てられた不法建築のバラック。都市部周縁の山の斜面などに一夜で建てられたような簡素な住宅。

 

「景色もいいけれど暮らしもいい」/경지도 좋지만 살기도 좋냐

北朝鮮の代表的な愛唱革命歌の一つ。南北の国境地帯の北朝鮮側にある金剛山の景色とともにある人民の暮らしの良さを歌う。

 

ケチャ/kecak

インドネシアのバリ島の男性合唱と古来の呪術的舞踊による舞踏劇。1920年代にドイツ人の画家ヴァルター・シュピースの提案により、「ラーマーヤナ」をモチーフに形式化を提案し、現在に続く観賞用芸術として洗錬させた。

 

「欠落ある写本 デデ・コルクトの失われた書」/The incomplete manuscript”,  “Yarımçıq ǝlyazma”, “Неполная рукопись

アゼルバイジャンの作家カマル・アブドゥッラの小説(2006)。チュルク族オグズの英雄譚「デデコルクトの書」の謎を素材にした歴史心理推理小説。「デデコルクトの書」

 

ムスタファ・ケマル(ケマル・アタテュルク)

1881-1938 オスマントルコ領内、ギリシャのテッサロニキに生まれの政治家。192223年のトルコ革命によってトルコ共和国を樹立し、初代大統領となる。近代化につとめ、立憲制確立、政教分離(カリフ制の廃止)、イスラム暦廃止、ローマ字採用、婦人解放(イスラム教徒の女性が外出時に全身を覆う丈の半円の布、チャドルの廃止)、ヨーロッパ法の採用など改革を行った。チュルク族の盟主として民族の唯一性の確立を目指し、他民族の排斥も実行。

 

ケマンチェ(ケマンチャ)/kemanche

イラン、アナトリア、コーカサスで用いる擦弦楽器。演奏には旋法によりさまざまな微分音も用いられる。ヨーロッパのヴァイオリン、フィドルの源流とされる。

 

「ケルビムのぶどう酒」

人類学者中沢新一の著書(河出書房新社1992)。ケルビムは、「智天使」と訳される、ヘブライ語で旧約聖書に由来する知を司る天使のこと。

 

「限界芸術論」

哲学者の鶴見俊輔の著書(1967)。専門的芸術家ではなく、非専門的芸術家によって作られ大衆によって享受される芸術に対する概念。鶴見俊輔

 

ケンガリ/꽹과리

韓国の真鍮製の小型銅鑼。木製のマレットで叩くことで、独特の高次倍音による独特な硬質なシンバルのような音色を生み出す。

 

玄奘

602664 中国、唐の時代の僧侶。サンスクリット仏典の研究のためインドに向かい、諸方を歴訪し、長安に戻る。訳された仏典等は中国や日本の仏教教理の基本となった。また「西遊記」の題材になったといわれるインド紀行「大唐西域記」により西域の事情を紹介。「西遊記」の登場人物、三蔵法師のモデルとされる。「西遊記」

 

「ゲンナジイ・アイギのロシア語詩における ヴォルガの不在」

ロシア文学者の後藤正憲による、チュヴァシ族出身のロシアの詩人ゲンナジイ・アイギをテーマにした論文(2012)。アイギ、ゲンナジイ

 

 

 

(コ)

小泉文夫

1927~1983 民族音楽学者。フィールドワークを行いながら世界の民族音楽を研究し紹介。日本民謡の音階構造を分析し、テトラコルド(完全協和する4度音程<ド、ファ>内の3音<ド、ファとその間にある1音>の関係)の概念を発見。それらを民謡に留まらず、歌謡曲を含め様々な音楽分析に応用させた。主な著書に「日本伝統音楽の研究」「音楽の根源にあるもの」。

 

口琴/Jew's Harp

口腔内の空気に震動させて響かせる、金属製、木製の楽器。各地域、民族により固有の奏法や名称を持つが、ヨーロッパ地域ではユダヤ人(あるいはユダヤ教徒となったハザール人)により伝播したという説があるために、英語ではユダヤを表す「Jewのハープ」と呼ばれるようになった。

 

光復節( 815光復節 )/광복 (8·15광복)

韓国の祝日。日本の植民地支配から解放された1945年8月15日を記念する。光復は「奪われた主権を取り戻す」の意味。

 

小唄

三味線声曲の歌曲。江戸時代後期の流行歌曲の端唄の影響を受けて、明治以降に定着。端唄は平坦に歌い、三味線を撥で弾くのに対し、小唄は技巧的で三味線は人差指爪先の肉で爪弾く。

 

高麗人(コリョサラム)/Koryo saram,  Корё сарам

19世紀半ば以降のロシア、中央アジアへの朝鮮半島からの移民。ソビエト連邦崩壊後のロシアおよび中央アジア諸国の国籍を持つ朝鮮民族。約50万名の高麗人が中央アジアを中心に居住している。19世紀後半まで朝鮮と境を接した沿海地方に居住していたが、1930年代後半から第二次世界大戦中にかけて仮想敵国である日本のスパイという不当な嫌疑で、スターリンによって中央アジアに追放された。

 

高麗人劇場/Korean Theater

1968年にカザフスタンのアルマティに移転して作られた高麗人の劇場。朝鮮半島の外で運営されている唯一の韓国国立劇場。高麗人

 

高麗神社

716年に武蔵国高麗郡現在の埼玉県日高市に設置された、高麗若光を祭る朝鮮ゆかりの神社。大和朝廷が日本に居住していた高句麗からの帰化人をこの地に移住させた。

 

ご詠歌

平安時代より伝わる宗教的伝統芸能。僧侶ではなく一般の信者が寺院や霊場巡礼の際に唱える歌。一節のみのシンプルな旋律は哀愁を帯びたものが多い。仏教の教えを31文字からなる和歌と節を結びつけたもので、一般的に鈴(れい)や鉦(かね)を鳴らしながら詠唱する。

 

ゴーゴリ、ニコライ/Nikolay Gogol,  Николай Гоголь

1809-1852 ウクライナ出身のロシアの小説家。「笑い」と「目に見えぬ涙」を通し、ウクライナの農村やペテルブルグの下層市民の日常生活のリアルな描写でグロテスクに描き、ドストエフスキーをはじめロシア文学に大きな影響を与えた。代表作に「狂人日記」、戯曲「検察官」。

 

コージン、ヴァジム/Vadim Kozin, Вадим Козин

1903-1994 ロシアの歌手。絹糸のような繊細な声のテノール歌手。ペテルブルクでロマの歌手であった母から歌を学ぶ。1920年代より活躍するが、1944年、スターリン賛美をしなかったという理由(同性愛者と推定されたことも理由とされる)で懲役を受け、極東のマガダンの収容所に送還。以後、この極東の地で歌手活動を続けた。マガダン

 

コーラン(クルアーン)/Qur'an, Quran

イスラム聖典。ムハンマドが最初に神からの啓示を受けた610年から632年の死に至るまでの22年間を人々が記憶し、後に第3代カリフのウスマーンの時に集録された。

 

ゴールデンマスク/Золотая Маска

1994年にロシア演劇連合によって設立された国立演劇賞、演劇祭。毎年春にモスクワでロシア全土からの最も重要なパフォーマンスにたいし、ドラマ、オペラ、バレエ、オペレッタやミュージカル、人形劇、舞台芸術の各部門の作品に賞が与えられる。

 

コールニヴァ、マリーヤ/Marya Koreneva, Мария Корнева

ロシアの女性ヴォーカリスト。イルクーツク出身。2017年、音楽詩劇研究所の「バイカル・プロジェクト」の参加し、以後ユーラシアン・オペラ・プロジェクトに欠かせない存在として活動。その声をフューチャーした河崎によるCD作品「STRANGELANDS」(2022)がある。

 

コールマン、オーネット/Ornette Coleman 

1930~2015 アメリカのジャズサックス奏者。フリージャズのパイオニアであり、ユニゾン概念を拡張した独自の合奏法「ハーモロニック理論」を用い、世界のジャズシーン、現代音楽シーンに多大な影響を与えた。

 

小鍛冶邦隆

現代音楽の作曲家。著書に「作曲の思想─音楽・知のメモリア」(アルテスパブリッシング 2010)、「作曲の技法バッハからウェーベルンまで」(音楽之友社 2007)。

 

五月革命(フランス)/May 68, Mai 68

1968年5月フランスで、パリの学生運動を発端とし、フランス全土に労働運動として起こった改革を求める運動。第二次大戦後の、経済成長を築いたが硬着化したド-ゴール体制終焉の機となった。メディアの発達と若者文化の隆盛をもたらし、サルトルやジュネらも関わり、トリュフォー、ゴダールをはじめとするヌーヴァルヴァーグが勃興。民衆音楽では、実存主義的なシャンソンからダンスミュージックへと変遷する中で、この機運のなかピエール・バルーがサラヴァレーベルを設立。歌手ブリジット・フォンテーヌらを輩出するなど新たな潮流をつくった。

 

五カ年計画(第一次、ソビエト)

1928年から、ソ連の社会主義国家建設計画。経済発展が自然成長的に行われるのではなく、社会(国家、政府)の側からの「意識的制御」のもとに置かれる社会主義的経済。1929年に始まる世界恐慌のただ中で、その第一次計画をスターリンが主導。市場経済体制の外部にいたソ連はそれに巻き込まれず、その優位性が喧伝された。スターリンはこの成功でより独裁的な権力を獲得した。

 

胡弓(日本)

東洋の擦弦楽器を総称して呼ぶが、日本では、小型の三味線を縦にかまえて弓奏する。江戸時代に検校が洗練させ、地歌や箏曲では三曲合奏の楽器として用いられたが、明治以後は尺八に代わった。富山の「おわら風の盆」など、民謡で用いられることもある。→おわら風の盆

 

「故郷の春」/고향어

植民地時代に創られた朝鮮半島の童謡。日本語版もある。作曲者の洪蘭坡は日本でも学び、帰国すると研楽会を創設し、作曲、演奏、評論活動を展開した。1936年には京城中央放送局洋楽部の責任者となり、京城放送管弦楽団を組織し、指揮者として活躍した。

 

コキリコ節

富山県南砺市の五箇山地方に伝わる民謡。「こきりこ」とは竹製の短い棒状の打楽器。田楽から派生した日本の民謡の中でもっとも古い民謡(古謡)ともいわれる。

 

(北朝鮮の)国営放送/조선중앙방송

国内向け放送の「朝鮮中央放送」、朝鮮語の海外向け放送の「平壌放送」、朝鮮語以外の言語による放送の「朝鮮の声放送」がある。放送開始時の国歌演奏後に「栄えあるわが祖国、朝鮮民主主義人民共和国、万歳!」「朝鮮人民の全ての勝利の立役者であり、導き手である朝鮮労働党、万歳!」と言うスローガンが読み上げられる。

 

(韓国)国楽/국악

韓国の伝統古典音楽の総称。正楽と民俗楽に分けられる。正楽は宮中での祭禮楽と李朝時代の両班達の生活の中で好まれていた風流音楽、正歌、主君や高官のお出ましの際に演奏する鼓吹楽など。いっぽうの民俗楽は、声楽曲はパンソリ、短歌や民謡、器楽曲は散調、シナウィ、風物、サムルノリ、また仏教音楽の梵唄、シャーマニズムの巫俗音楽など。

 

国際女性デー/International Women's Day

1975年国連によって制定された記念日、祝日。38日。

 

コクトー、ジャン/Jean Cocteau

1889-1963 フランスの詩人、芸術家。文学、作詞、映画、バレェ、美術、オペラなどさまざまな芸術に携わった、総合芸術家。エポックメイキングな1917年のバレェ作品「パラード」(サーカスの呼び込みの意味)で台本を書き、ピカソ、サティ、ディアキレフのバレエ・リュス(ロシア・バレエ団)とコラボレーションした。

 

国民国家/nation-state

国民、あるいは同一民族の意識によって形成された中央集権国家。

 

(カザフスタン)国立民族楽器博物館/The State Museum of National Musical Instruments, Музей народных музыкальных инструментов

カザフスタンのアルマティ市内にある楽器博物館。カザフスタンの民俗楽器を中心に、中央アジア、世界各国の楽器が展示される。

 

哭礼(こくれい)の儀式

「礼記」にも記された儒教のしきたりで、葬儀にあたって亡き人を偲んで大げさに泣き叫ぶ。とくに李朝期の韓国で根づき、そのための専門職も存在した。

 

「故国山川」/고국산천

ソビエト、中央アジアの高麗人が歌い継いだ歌。原曲は日本の「天然の美(美しき天然)」。→「天然の美(美しき天然)」

 

(アンテナブックカフェ)ココシバ

埼玉県川口市のブックカフェ。読書会、著者・編集者を招いてのトーク、手づくりワークショップ、落語会も行われる、上映会など各種イベントも頻繁に行われている。トランスビュー取扱いの本を全て取り揃える。

 

コサック(コザーク)/козак

ウクライナ、南ロシアの草原で半農半牧生活を送りながら自治的な軍事的共同体を築いた人々。テュルク語の「自由で向こう見ずな人」を表わす語が起源とされる。15世紀頃、武装した騎馬民として結束しながら特権を与えられ、ロシアの辺境警備などにあたるようになった。ステンカラージンの乱、プガチョワの乱などのロマノフ王朝に対する反乱を起こした。

 

小阪亜矢子

メゾソプラノ歌手。フランス近代歌曲を中心に古楽から現代作品まで幅広く演奏。仏語ほか欧州各国語からの歌詞・音盤解説・字幕翻訳も手掛けている。河崎作曲の現代音楽、演劇音楽も数多く歌唱。

 

越川芳明

アメリカ文学者、映画評論家。90年代半ばよりメキシコとアメリカ国境地帯で混交文化をめぐるフィールドワークを行う。著書に「トウガラシのちいさな旅ーボーダー文化論」(白水社 2006)、「あっけらかんの国キューバー革命と宗教のあいだを旅して」(猿江商会 2016)など。

 

古事記

奈良初期に成立。日本に現存する最古の歴史書であり天皇家の神話、正統性が述べられる。天武天皇が舎人の稗田阿礼に「誦習」させ、太安万侶によって編纂されたとされる、阿礼は実在したとされるが、男女どちらとも判明していない。

 

小島美子

民俗音楽学学者。山田耕作を研究し、日本の音楽文化、教育における西洋音楽受容がいかに行われたかを論じ、日本の民衆音楽の基層を現代の大衆音楽にも求めながら考察。国立歴史民俗博物館名誉教授。著書は「歌をなくした日本人」」など多数ある。

 

ゴスペル/gospel

キリストの生涯や教えのことを記した福音を歌う、19世紀後半から歌われたアメリカ発祥の音楽。プロテスタント系の宗教音楽として教会で歌われてきた。そのうち黒人が歌い継いだ歌がゴスペル・ミュージックとして、後のブルース、ソウルミュージックに大きな影響を与えた。

 

瞽女(ごぜ)

室町時代に現れ、江戸時代の元禄期に盛行した盲目の女性旅芸人。三味線を弾き、歌を歌って門付をしながら、小集団で山里を巡行し暮らしをたてた。明治以降は新潟に多く、祭文松坂や、説経節などの語り物の祭文や、新内、都都逸、端歌、和讃、民謡、はやり歌を歌った。室内楽の座敷芸とは異なり、荒々しく即興性をともなって歌われ、娯楽の少ない雪山農村で歓迎された。→門付

 

「古代歌謡をひらく」

国文学者、土橋寛の著書(大阪書籍1986)。古代語の響きや、他民族との比較、「独唄」の視点も用いて、アイヌのユカラや叙事詩や琉球の南島歌謡にも注目しながら、より音楽的観点で歌謡文化について語られる。土橋寛

 

古代ギリシャ(演劇)

紀元前5世紀のアテネに、アイスキュロス、ソフォクレス、エウリピデスの三大悲劇詩人と喜劇のアリストファネスが現れて成立。日中の野外円形劇場で、仮面を着けた俳優が対話を主とし、合唱隊(コロス)にも呼応して進行。舞台装置は用いない。見物は市民にとって最大の娯楽であるとともに教養を高める機会だった。

 

古代ギリシャ(音楽)

単旋律で奏でられ、対位法や和声法はなかったといわれる。音楽は美術のように残らず、発掘された断片的な楽譜からは再現することが困難で、想像で補う復元が試みられている。前8世紀ごろのホメロスの朗唱叙事詩にはキタラの伴奏による歌や踊りが記されている。学問の対象でもあり、前6世紀のピタゴラスによる音程比論、前4世紀のリストクセノスによるハルモニア論と音階旋法論などが知られる。

 

五体投地

仏教徒の最高の敬礼法。両ひざ、両ひじ、額を地に着けて伏し、さらに合掌して頭を地につける。チベットでは、移動過程もすべて「信仰行為」とし、礼拝しながら少しずつ前に進み、聖地に向かって巡礼する。

 

「古譚」

中島敦「狐憑」とル・クレジオ「地上の見知らぬ少年」を原作に創作された音楽詩劇研究所の舞台作品(2019)。

 

「古譚」

中島敦 の「木乃伊」「文字禍」「山月記」「狐憑」の四篇で構成される短編集。1942年に発表されている。中島敦

 

コタン

村落、集落、宅地を意味するアイヌ語。アイヌは狩猟民族だが、漁労を中心としたため、定住の傾向が強かった。数件の家で構成され、アイヌ社会の最小単位の共同体でもある。

 

胡蝶の夢

荘子の説話に由来する故事成語。夢の中で蝶になり、自分が蝶か、蝶が自分か区別がつかなくなった。夢と現実、自我の区別がつかない状態またはそのような境地を表す。

 

黒海/Black Sea

南東ヨーロッパと西アジアの間に位置する内陸海。ウクライナ、ロシア、ジョージア、ルーマニア、ブルガリア、トルコに囲まれている。ドナウ、ドニエストル、ドニエプル、ドンなどの河川が流入。

 

「(バイカル・)黒海プロジェクト」/Bikal and Black Sea Project

音楽詩劇研究所の2017年のプロジェクト。ロシアのイルクーツク、ウラン-ウデで行った「バイカルプロジェクト」に引き続き、トルコのイスタンブールとウクライナのオデッサで、現地アーチストとコラボレーションを行った。

 

(日本の)琴(箏)

箏は奈良時代に中国の唐から十三本の絃を持つ楽器が日本に伝来。箏は柱(じ)と呼ばれる可動式の支柱で弦の音程を調節する。琴と混同されるが、琴には本来、柱や琴爪は用いない。

 

「孤独な夢想者の散歩」/Rêveries du promeneur solitaire

1782年に発表されたスイス、フランスの哲学者、教育学者、作曲家ジャン・ジャック・ルソーの随想。「10の散歩」が断章仕立てに分けられ、自身のために過去の甘美な思い出、現在の心象や瞑想が書かれる。日本舞踊家、西川千麗が舞踊作品化した。「千麗舞の夕べ 或る日のルソー 孤独な散歩者の夢想」、ルソー、ジャン・ジャック

 

ご当地ソング(日本)

演歌、民謡、歌謡. 曲、ポピュラー音楽で、タイトルや、歌詞において、地名が重視される歌。その土地の自然や、都市を舞台にした物語的にしたり、叙情的な内容が多い。明治期の「新民謡」では観光誘致もかね、曲が多く創られた。言葉自体は、1960年代の地方都市が舞台として描かれることが多かったムード歌謡の流行を背景に用いられるようになった。

 

コニッツ、リー/Lee Konitz

1927-2020   クールジャズを牽引したアメリカ のジャズサックス奏者。のちのフリー・ジャズムーブメントに先立ち、テーマやコード進行に拠らないフリー・フォームの即興演奏も、すでに1949年にレコーディングしている。新型コロナウイルスによる肺炎により92才で死去。

 

(法恩寺)五百羅漢

岩手県盛岡市にある曹洞宗の寺院。境内には、京都の九人の仏師の手により、1731年から4年を費やして作られた五百羅漢像が安置されている。全て寄せ木造り、漆塗りで、像の中にはマルコポーロ、フビライなども見られる。

 

(キル・)コブズ/Kobyz, қобыз

楓の木からつくられたシャーマニズムに由来するカザフスタンの二弦楽器。キルギス、タタールなど周辺地域でも用いられる。弓だけでなく弦も馬のしっぽで作られている。

 

コプト正教(の聖歌)

Coptic Orthodox Chant

エジプトの人口の5-10%程といわれる原始キリスト教の一派の、イスラーム成立以前から存在する聖歌。、典礼の言葉はギリシア語、シリア語、コプト語、アラビア語などで述べられる。のちの多くのキリスト教聖歌が裏声で歌われるのに対し、地声で歌われ「コブシ」も用いる特徴をもつ。伴奏には打楽器等民俗伝統楽器も使われる。

 

高麗楽 

飛鳥時代から平安時代初期にかけて高麗から日本に伝来した音楽宮廷雅楽。大陸系の雅楽のうち、中国系の唐楽に対する朝鮮系のもの、および日本に定着し新たの創作された楽曲。力強さに特徴がある。

 

小松川事件

1958年に東京の江戸川区で発生した事件。殺害された女子高校生と同じ定時制に通う18歳の金子鎮宇こと李珍宇が逮捕された。事件の背景に貧困や朝鮮人差別の問題があったとされ、押収された犯人のノートには日記、随想とともに小説も書かれていた。大岡昇平ら文化人による助命請願運動が高まったが、殺人と強姦致死により死刑が執行された。大島渚の映画「絞首刑」(1968)の題材となった。

 

小森慶子 

クラリネット、サックス奏者。クラシック。ジャズ、オンプロヴィゼーション、ロック等さまざまなジャンルを、端正な演奏で横断する。

 

コリア、チック/Chick Corea

1941-2021 アメリカのジャズピアニスト、作曲家。1960年代後半よりマイルス・デヴィスグループに加わりエレクトリックの領域を広げ、70年代は「サークル」を結成し前衛色も強めた。いっぽうでクロス・オーバージャズバンド「リターン・トゥ・フォーエヴァー」を結成し、ロック、ラテン色も増しながら世界的な人気を得た。

 

(上野の)コリアンタウン

台東区東上野2丁目にあるコリアンタウン。昭和23年に「上野親善マーケット」として現在の場所に、焼肉店・キムチ店・肉店・民族衣装店等が集まったことに端を発する。

 

コリアンディアスポラ

朝鮮半島から20世紀間に日本、中国、ロシア、アメリカ、カナダなどに流失した約六百万人もの朝鮮半島にルーツを持つ人々を指す。元来「ディアスポラ」の語は、バビロンで集団的に離散したユダヤ人のこと。高麗人

 

「コリアン・ディアスポラ」展/Korean Diaspora - Beyond Dispersion, 코리안 디아스포라, 이산을 넘어

2018に韓国京畿道美術館の企画展。「コリアンディアスポラ」の歴史と現在をテーマに中央アジアやロシアからも出展された。美術家の鄭梨愛も出展。鄭梨愛

 

コルタサル、フリオ/Julio Cortázar

1914-1984 ベルギーのブリュッセル生まれのアルゼンチンの小説家。留学したフランスで生涯を送った。幻想的、アンチロマン風な作品で知られた。主な小説に長編「石蹴り遊び」。

 

コリンズ、キャットフィッシュ/Catfish Collins

アメリカのギタリスト。 ジェームス・ブラウンのJB’Sを経て、ジョージ・クリントンが率いた、P-FUNK(パーラメンツ・ファンカデリック)に参加。→ JB’S

 

コリンズ、ブーツィー/William "Bootsy" Collin

アメリカのベーシスト。JB’SP-FUNKに参加。アメリカのファンクミュージックを象徴するような存在。

 

コルトレーン、ジョン/John  Coltrane

1926-1967 アメリカノサックス奏者。モダンジャズの巨匠であるが、モード、フリーなど様々な先端手法にアドリブ表現を拡張し、ジャズの地平を切り開いた。インドのシタール奏者・ラヴィ・シャンカールに影響され、ルーツであるアフロスピリチュアル性をじょじょに加味させた。日本ではとくに人気が高くモダンジャズの精神性の象徴的存在だった。死の前年に日本公演を行った。

 

コルホーズ/kolkhoz, колхоз

ソ連時代の集団農場。ソフホーズとともに社会主義農業経営の基本形態とされた。完全に国営であるソフホーズに対し、協同組合形式により生産手段を組合が所有して大農経営を行い、農民は労働に応じた報酬を受け取る。

 

乞粒牌 (コルリッペ)/걸립패

韓国の民間伝統技能。寺社と結びつき、門付しながらお祓いなど儀式的な芸能を行い喜捨する旅芸人組織。

 

是枝裕和

 1962年生まれの映画監督。テレビ番組などの制作会社に在籍中にデビュー作「幻の光」(1995)を発表。2018年には「万引き家族」でパルムドール賞を受賞し、海外での評価も高い。ロシアの作曲家、ヴァイオリン奏者のアレクセイ・アイギが、「真実」(2019)で音楽を担当。アイギ、アレクセイ

 

木幡東介

マリア観音

 

コンダコフ、アンドレイ/Andrey Kondakov, Андрей Кондаков

ウクライナ出身のロシアの作曲家、ピアノ奏者。ペレストロイカ期より、前衛ジャズの方法を用いて数々の作品を残している。

 

近藤等則

1948~2020  トランペット奏者。フリージャズから演奏のキャリアをスタートさせ、後にエレクトリック・トランペットを用い、さまざまなジャンルを越境。

 

近藤秀秋

ギター奏者。音楽プロデューサー、エンジニア。実験音楽アソシエーションExias-J、音楽レーベルBishop Recordsを主宰。著書に「音楽の原理」。Exias-J

 

コンドル、ジョサイア

1852~1920  イギリス出身の建築家。明治10年に「お雇い外国人」として来日。「日本近代建築の父」とも呼ばれ、鹿鳴館やニコライ堂を手がけた。絵師の河鍋暁斎に師事、交流し、海外に作品を紹介した。「お雇い外国人」

 

 

 

 

(サ)

座(日本)

 

中世に、朝廷、貴族、寺社などの保護を受け、座役を納める代わりに種々の特権を有した商工業者や芸能者の特権的な同業者団体。

 

サージナ、ヴィエラ

Vera Sazhina, Вера Сажина 

ロシアの歌手、シャーマン。トゥバ共和国のシャーマニズムを学習し、治癒的活動を行う。そのスタイルを応用してロシア式アコーディオンなどを弾きながら魔術的な歌を歌う。音楽詩劇研究所「トランス・ステップ・ロード・プロジェクト」公演(2019)に参加。

 

サイ、ファジル

Fazıl Say

トルコのピアニスト、作曲家。クラシック音楽以外にも、民族音楽、ジャズなどに領域を広げながら世界的に活躍。

 

在樺朝鮮人(在樺コリアン)

 

第二次大戦以降も旧日本領であった南樺太のサハリン島に在留し、ロシア国籍をもつ朝鮮半島にルーツをもつ人々。また、戦後、稼ぎ労働者として朝鮮民主主義共和国から移住した朝鮮民族。

 

サイケ(デリックロック)(ミュージック)

psychedelic music, asid rock

1960年代後半に流行したLSDなどのドラッグによる幻覚を、ロックミュージックとして再現し、芸術音楽としてのロックの前衛性の中核をなした。

 

済州島

Jeju Island, 제주도 

朝鮮半島の最南方にある韓国最大の島。中央に漢拏(ハルラ)山がそびえる火山島。神話の伝承や巫俗にも独自の伝統があらわれる。古来、女性数が男性数を上回り、風と石と女が島の伝統文化を象徴する。李朝時代は流刑地だった。済州島出身の在日朝鮮人は10万余に及ぶ。

 

済州島四・三蜂起

제주 4•3 사건

1948年4月3日に、韓国の済州島で、南北を分断するアメリカ軍政下の南朝鮮の単独選挙に反対した蜂起。7年余にわたる闘争で3万人以上の島民が犠牲となった。朝鮮戦争とその後の韓国の反共路線の強化のなかで真相が伏せられていたが、2000年に金大中大統領の下で、真相究明と犠牲者名誉回復が目指された。

 

齋藤徹

 

1955-2019 コントラバス奏者。舞踊、演劇、美術、映像、書、邦楽、雅楽、能楽、タンゴ、ジャズ、ヨーロッパ即興、韓国の文化、アジアのシャーマニズムなど、様々なジャンルと積極的に交流。河崎が約10年間師事した。

 

催馬楽 

 

平安時代に宮廷貴族の祝宴、遊宴の場で盛んに歌われた声楽曲。アジア大陸から伝来した唐楽、高麗楽風の旋律に日本の民謡や風俗歌、童謡の歌詞をあてはめたものが多いとされる。内容は多様だが、民衆の生活感情、とくに男女の恋愛を歌ったものが多い。笛、琴、琵琶などの伴奏で、笏拍子を打ちながら歌われた。

 

祭文 

 

祭の時に、独特の節をつけて神仏に告げる言葉。中世以降になると、山伏修験者、巫女により説経祭文などとして芸能化し、民間に広まった。近世に入って三味線や法螺貝にあわせて、ダミ声で唸る白声(しらごえ)という発声で歌われた。元祿期には心中、犯罪などの話題を取り入れた歌われる歌祭文を指した。近松の浄瑠璃も影響を受けたといわれる。盆踊り歌や瞽女唄にも転じ、浪花節や浪曲の源流の一つとなった。

 

「西遊記」

 

16世紀明の時代に大成した口語体による小説。明の呉承恩の作という説もあるが、多くの人の手で書き上げられたと考えられている。「水滸伝」、「三国志演義」、「金瓶梅」(もしくは「紅楼夢」)と並ぶ中国四大奇書のひとつ。唐の僧侶インド紀行「大唐西域記」を題材にしたとされる。個性的なキャラクターによる冒険譚で愛され、日本でも江戸時代から紹介された。「わが西遊記」(中島敦の小説)

 

再臨派キリスト教

Seventh-day Adventist Church

19世紀末に自然発生的に生れた「新興」プロテスタント系キリスト教。キリストの再臨が間近に迫っているとして、信仰心を強めた多くのプロテスタント系グループの総称。キリストが地上に再来し、1000年のあいだ統治し、その後、世界は終末にいたるとする「千年王国説」を信奉する。

 

ザウーミ

Zaum, заумь

ロシアの詩人、ヴェリミール・フレーブニコフによる創造言語。クルチョーヌィフなど未来派の詩人たちと創作した。→フレーブニコフ、 ヴェリミール

 

サウンドアート

sound art

音を「音楽」的な行為の枠にはめず、たとえば美術的観点で制作された音、音響を用いた芸術。

 

サウンドスケープ

sound scape

カナダの作曲家マリー・シェーファーが1960年代に提唱した概念。音楽を、舞台や録音物としての作品に限定せず、環境の音全体を「音風景」と捉える。語はより一般化されて用いられている。

 

坂井弘紀

 

中央ユーラシア叙事詩研究、中央ユーラシア文化史特に各地の口承芸能を専門とする研究者。著書に「中央アジアの英雄叙事詩: 語り伝わる歴史」(東洋書店2002)。

 

坂本弘道

 

アヴァンギャルド・チェロ、ノコギリ奏者。歌手、朗読、演劇との共演も多く、バンド「パスカルズ」にも参加。

 

坂本龍一

 

作曲家、サウンド・プロデューサー、ピアニスト。前衛音楽の現在を求めて作曲活動を開始。スタジオミュージシャンを経たのちにテクノミュージック、ポップスにも活動を広げる。数々の映画音楽を作曲している。

 

防人の歌

 

万葉集にある詠み人知らずの歌。北九州地域の防衛のために配置された兵士である防人とその近親者が詠んだ和歌。防人は遠い東国から九州までを自力で移動せねばならず、任務期間中の兵は食糧も武器も自力で調達する厳しい任務だった。

 

桜井順(能吉利人) 

 

1934-2021 作詞、作曲家。三木鶏郎主宰の「冗談工房」で、ラジオやテレビ番組の音楽を作編曲。数々のCM音楽の作曲し、作家の野坂昭如の音楽活動も作詞、作曲でサポートした。

 

座敷童(ざしきわらし)

 

岩手県を青森県の旧南部藩を中心に、東北地方に伝わる子供の姿をした妖怪の一種。村々の旧家の奥座敷にいるとされる。56歳ぐらいの赤顔の幼児の姿をし、突然現れたりする。姿は子供たちにしかには見えないという伝承がある。住みついた家や、目撃した人に幸運をもたらす存在として伝えられる。

 

サズ

Saz

トルコなどアナトリア半島、ペルシャ、バルカン半島で用いられる、長いネックを持つリュート属の撥弦楽器。ブズーキやタンブーラと同様に、古代ギリシアのパンドゥーラを祖とし、2000年の歴史を持つといわれる。トルコ人が中央アジアや北アジアに住んでいた頃の音楽の伝統を引き継いで演奏されてきた。

 

薩摩琵琶

 

室町時代の末に、盲僧琵琶が伝わり薩摩地方で生まれた語り物で用いられる楽器。扇形の大形の撥で演奏する。武士道精神や教訓譚的な硬質な内容が多い。明治期に女性を中心に流行した筑前琵琶にたいし、粗野で荒々しい響きは、楽音に留まらず、かえって現代音楽や、映画音楽に効果的に用いられる。武満徹の「ノヴェンンバーステップ」の初演者、鶴田錦史が奏者として知られる。→武満徹

 

サティ、エリック

Erik Satie

1866-1925 フランスの作曲家。芸術性を主張せず、生活に溶け込むような「家具の音楽」などを提唱し、アンチアカデズミ的なサウンドスケープや実験音楽、商業音楽にも影響を与えた。神秘主義思想をあらわす楽想も多い。代表的な曲にピアノ曲「グノシエンヌ」、「3つのジムノペディ」などがよく知られる。

 

サト

sato

ウズベキスタンの弦楽器。長いネックをもつ撥弦楽器のタンブールに由来するが、弓奏で用いるときはサトと呼ばれる。ウズベキスタンのマカーム(旋法)である「シャシュマカーム」を奏する。→マカーム(ムガームなど)

 

佐渡(島)

 

新潟県の島で、古事記にも記され古来の文化を持つ。京都から流罪された文人・政治家などが都の文化を伝えた影響から、さまざまな伝統芸能も受け継がれている。流刑された世阿弥の影響もあり江戸時代には200を超える能舞台があった。江戸時代に徳川家康が金銀山に着目し、直轄地として開発を始め幕府の財政面を大きく支えた。労働者の確保のため流刑地だった。第二次世界大戦の戦間期には1000人を超える朝鮮人が鉱山労働に従事した。

 

佐藤春夫

 

1892-1964 和歌山県生まれの詩人、小説家、文学者。大逆事件で処刑された同郷の医師を描く「愚者の死」や叙情的恋愛詩を発表。小説「田園の憂鬱」で評価を得る。谷崎潤一郎との妻をめぐる「細君譲渡事件」も知られた。戦時中は、従軍文士として中国や南方を巡り、日本の伝統美への傾斜しながら戦意高揚を促した。多くの校歌の作詞を残し、戦後の東京オリンピックの讃歌も書いた。

 

佐藤信

 

劇団黒テントの演出家、劇作家。1966年に劇団「自由劇場」、1968年に「演劇センター68」(現在、劇団黒テント)を結成。1980年代より東南アジアを中心に海外の現代演劇との交流を深めた。劇中化等の作詞では作曲家林光とのコンビで多くの曲(「ソング」)を残している。YMO「散開コンサート」の演出を担当。 演劇センター68(黒テント)

 

佐藤允彦

 

ジャズピアニスト、作編曲家。1969年に初リーダー作を発表以降多くのリーダー・アルバムを発表。日本のジャズ界を理論的支柱としてリード。メールス、モントルーなどのフェスティバル、ツアーなど国内外で活躍。独自の即興音楽システムを構築し、ワークショップ、教育活動も行う。

 

佐藤優

 

外交官、作家。1988年から1995年まで在ソ連、ロシア日本国大使館勤務。ロシア情報収集、解析のエキスパートであり、神学、地政学、文学など多岐にわたる評論活動を行う。

 

佐藤行衛

 

長年韓国ソウルに在住するギター奏者、即興演奏家。バンド「コプチャンチョンゴル」のリーダー。1999年に日本人バンドとして初の韓国正式デビュー。日韓の音楽家の交流の橋渡しとしても重要な存在。著書に「韓式B級グルメ大全」(コモンズ2013 )。

 

サナート

Sanat

トルコの大衆歌謡。民謡を基礎にするハルクに対し、オスマン朝の古典声楽を基盤としながら、イスタンブールなどの都会で発展してきた歌謡曲。ミュゼィイェン・セナール、ゼキ・ミュレンらが代表的歌手として知られる。→ハルク

 

ザバイカル民族学博物館

Этнографический Музей Народов Забайкалья

ロシア連邦ブリヤート共和国 ウランーウデ市の野外施設も含むロシアで最大の野外博物館の一つ。先住遊牧民、狩猟民族、ロシア正教古儀式派のセメイスキーの住居の再現と記録物が展示されている。

 

サムルノリ

사물놀이

韓国の伝統芸能の農楽の要素を発展させたプク(太鼓)、チン(大鉦)、ケンガリ(小鉦)、チャンゴ(杖鼓)による四つの打楽器合奏。1970年代以降の、大学など草の根的なサークルによる伝統芸能復興が盛んになり、各地の農楽の音楽的要素が混合し、金徳洙率いる「サムルノリ」など高度な技術をもつグループが世界に発信され、衝撃を与えた。

 

サヤト・ノヴァ、アルチュン

Sayat Nova

1712-1795 アルメニア、ジョージアの、コーカサス地域の伝統を象徴する吟遊詩人。ジョージア王朝に詩人、外交官として仕えた後、アルメニア正教の僧侶となった。アルメニア語、ジョージア語、アゼリ語、ペルシア語で詩を書き、擦弦楽器を弾きながら歌った。

 

「サヤト・ノヴァ」(ざくろの色)

Sayat Nova 

ジョージア出身のセルゲイ・パラジャーノフの映画作品(1969)。コーカサスの伝説の詩人の生涯と作品をモチーフに描かれ、「ざくろの色」(1971)として再編集された映像詩。パラジャーノフ、セルゲイ

 

「サヤン」(楽団)

Тувинский национальный ансамбль песни и танца «Саяны

国立トゥバ民族歌謡団。サインホ・ナムチラクが若かりし頃に在籍した。「サヤン」はシベリア南部、モンゴル国との国境付近にある山脈の名前。ロシア人にはトゥバ人はこの山脈の語源となるソヨト人と呼ばれていた。

 

サラート

salāt

イスラム教の礼拝。宗規によって定められた1日5回の祈祷時に、メッカのカーバ神殿に向かい、アッラーへの服従と感謝を所作と唱句で表明する。金曜日の正午にはモスクでの集団の礼拝が行われる。

 

「去り行く」

Отъезд

1958年に書かれたロシアの詩人ゲンナジイ・アイギの詩。アイギ、ゲンナジイ

 

サルドゥイ、セベロ

Sarduy, Severo

1937-1993 キューバの詩人、小説家。パリに住み,サイユ出版社の顧問。キューバ革命を支持するが、同性愛への迫害も恐れ、1960年に渡仏。先鋭的な言語実験に関心を寄せる、前衛文学雑誌「テルケル」に加わる。エイズにより死去。

 

サルプリ

살풀이

韓国の南道地方の巫俗から派生した舞。厄払いの意味を持つ。現在では巫女舞の呪術的な部分を弱め、芸人や妓生たちによる女性の内面を表す民族舞踊として発展。女性のもつ苦しみ、悲しみを白い布(スゴン)にたとえて表現される。

 

皿回し(ボナ)(芸)(韓国)

버나

韓国の伝統遊芸集団のナムサダンの演目の一つ。大きな器を棒の上にのせて演技する皿廻しの芸。→ナムサダン(男寺党)

 

澤田香織里

 

ロシアのトゥバ共和国の伝統弦楽器イギル奏者、ホーメー歌手。2016年に日本初のトゥバ共和国国立大学を卒業。トゥバ語の通訳者であり、同地の音楽家を紹介している。

 

澤村祐司

 

1981年生まれの生田流箏奏者。詩と音楽のコラボレーション集団“VOICE SPACE”代表。盲目の奏者。

 

「散開」(コンサート)

 

イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)による1983年 のコンサート。舞台演出は劇団黒テントの佐藤信、舞台美術は妹尾河童が担当。

 

山海塾

 

1975年に設立された舞踏カンパニー。振付家・演出家の天児牛大が主宰し、日本とフランスを拠点にした創作活動で世界的に高い評価を得ている。

 

山岳信仰

 

山を神聖なものとして崇拝する信仰。日本ではさらに仏教や陰陽道を習合させた「修験道」や、富士山信仰などが知られる。

 

「山家鳥虫歌」

 

江戸時代中期に編纂された民謡、俗謡歌の歌詞集。大部分は近世民謡の定型七・七・七・五詩形。農村の盆踊歌,田植歌,草取歌,米搗(こめつき)歌,茶摘歌,木樵(きこり)歌などが収められている。

 

三曲合奏

 

江戸期の室内合奏の基本形態。三味線、胡弓、琴の三重奏。明治以降胡弓ではなく尺八が用いられた。

 

参勤交代

 

江戸時代の各地の大名が一定期間交代で江戸に参勤する大名統制策。1635年に3代将軍徳川家光が武家諸法度を改訂し、大名の参勤交代の時期を定めて制度化した。

 

(サンクト・)ペテルブルグ

Saint Petersburg, Санкт-Петербург

ロシア連邦北西部のロシア第二の都市。帝政ロシア時代ピョートル1世がヨーロッパへの貿易ルート確保のため築かれ、北方戦争でスウェーデンを破り、バルト海の覇権に貢献。1712-1728年、1732-1918年にはロシア帝国の首都。1914-1924年はペトログラードと改称。レーニン死後、レニングラードに改称され、1991年に、旧称サンクト・ペテルブルグに戻された。

 

「山椒大夫」(小説)

 

中世より説経節など語られてきた説話「さんせう太夫」をもとに脚色した森鷗外による小説(1915)。物語の持つ残虐的な復讐譚としての要素が削除されて脚色されている。森鷗外

 

(ユーラシアン・オペラ)「さんしょうだゆう」

Sansho the Bailiff

音楽詩劇研究所の作品。ユーラシアンオペラプロジェクトの第二作目として、2019年にカザフスタンで初演。韓国の国際演劇祭PAMSで国際交流基金ソウルセンターの主催により上演。

 

サンスクリット

Sanskrit

インドなど南アジアおよび東南アジアで用いられた古代語。ヒンドゥー教の礼拝用言語でもあり、大乗仏教でも多くの仏典がこの言語で記された。

 

三線(さんしん)

 

沖縄諸島、奄美諸島の撥弦楽器。14世紀後半に中国の弦楽器に由来するとされる。本州以北では三味線に対し蛇皮線(じゃびせん)ともいわれる。絹製の3本の弦は、低いほうから男弦(ウージル)、中弦(ナカジル)、女弦(ミージル)とよばれる。

 

サント-コロンブ

Sainte-Colombe

1640-1770 フランスのヴィオール(ヴィオラ・ダ・ガンバ)奏者、作曲家。生涯は明らかに記録されるものがないが、残された曲は現在でも演奏される。門人であった名手マラン・マレとのエピソードや師弟関係は、小説家パスカル・キニャールにより「めぐり逢う朝」として1991年小説化、アラン・コルノー監督により映画化された。ヴィオラ・ダ・ガンバ

 

(ブラジルの)サンバ

samba

19世紀末アフリカ大陸からの奴隷貿易港であったブラジル北東部のバイーアで生まれたといわれる。二拍子を基調とした複雑なポリリズムによる打楽器合奏(バトゥカーダ)が、西洋音楽の影響を受けた器楽合奏のショーロなどと混ざり合い、歌唱表現も加えながら成立。

 

三方楽所

 

応仁の乱の戦乱期より楽士の分散や衰退的な状況にあった雅楽の江戸時代初期の復興の動き。約50人の楽師により組織化された。雅楽

 

サンモ

상모

韓国の農楽で用いる帽。帽子の先についた長い紐をリズミカルにくるくる廻しながら踊る男性による伝統技能。紐の動きは性的な行為や感情を表わすこともある。→農楽(プンムル、プンムルノリ、風流踊)

 

「三文オペラ」

Threepenny Opera, Die Dreigroschenoper

ドイツのベルトルト・ブレヒト作、作曲クルト・ヴァイルの歌劇。プロレタリアート社会、地下組織社会の矛盾や不条理を描いた。1928年ベルリンで初演。従来の歌劇の演出や作曲を革新する実験的な作品であったが、優れた楽曲の効果もあり大ヒット作品となり、現在も上演され続けている。ヴァイル、クルト、ブレヒト、ベルトルト

 

 

 

 

(シ)

シアターx

Theater X

東京都墨田区の劇場。東欧、ロシアの劇団、アーチストの招聘も多く、さまざまな国際フェスティバルや研究会を主催している。劇場の自主企画による「自主公演」の入場料金は一律1.000円に設定されるなど、商業主義と一線を画した理念で運営されている。上田美佐子

 

ジー・ミナ

Ji Min-ah. 지민아

韓国の国楽、正歌の女性歌手。古典や現代歌曲を歌う。2019年に音楽詩劇研究所のユーラシアンオペラ「さんしょうだゆう」に参加し、2022年、河崎によりCD作品「HOMELANDS」を発表。正歌

 

ジェインズ、ジュリアン

Julian Jaynes

1920-1997アメリカの心理学者。動物行動学を学んだあと、イングランドで劇作家、俳優として活動。考古学を学びつつ1976年に発表した著書「神々の沈黙-意識の誕生と文明の興亡」の中で、古代人には「意識に先立って、幻聴に基づいた全く別の精神構造があった」と「二分心」を 仮説し、人類が意識、言語を持つ前の人間像を考察した。バイキャメラルマインド(二分心)

 

ジェゴグ

jegog

インドネシアのバリ島の音楽。バリ島西部のヌガラ地方を中心に演じられている巨大な竹のガムラン。金属楽器を多用するガムランに対し、20世紀に改良した竹琴だけを使って15人定度で奏でられる。通常のバリ・ガムランが5音階を用いて演奏されるのに対してガムラン・ジェゴグは4音階。

 

「死者のアリア」

 

音楽詩劇研究所の創作概念の一つ。ポリフォニー合唱の断片から独唱を抽出、形成する。楽曲は、西洋古典音楽における機能和声の進行や、終止形のトニックコードの使用などが極力避けられる。

 

四声

 

中国語の高低アクセンなどの四種類の声調。たとえば「ma(マー)という音は声調により、「 (お母さん)」、「麻 ()」、「 ()」、「 (叱る)」とまったく違う意味により、中国語学習の大きな「壁」ともいわれる。

 

シタール

sitar

北インドの代表的な撥弦楽器。14世紀頃に考案されたといわれる。ラビ・シャンカールの演奏によって世界的に知られるようになり、1960年代半ばからはサイケリデリックムーブメントとともに、ロックを中心にさまざまな音楽にとりいれられた。

 

時調(シジョ)

시조

高麗時代に成立した韓国の定型短詩。李朝時代に流行し、歌唱された。文芸ジャンルとして、日本の短歌のように今日も愛好されている。

 

「失語と沈黙のあいだ」

 

詩人の石原吉郎の過酷なシベリア抑留生活における失語症体験をもとに言語活動についての随想(雑誌「詩学」1972)。「詩における言葉はいわば沈黙を語るためのことば。」などの言葉が記されている。石原吉郎

 

シナウィ

시나위

韓国の伝承的な巫俗儀式の舞踊の伴奏に由来する巫楽。リズム(チャンダン)周期の元に行われる即興的な音楽。韓国南部の全羅道を中心に演奏される。→クッ

 

シナゴーグ

synagogue

「新約聖書」で「集会」を意味するユダヤ教の会堂。バビロン捕囚期に神殿を失ったユダヤ人が離散各地で集って聖書を読み,祈祷する場所として建てたとされる。

 

信濃追分

 

長野民謡。江差、越後、酒田など、以後各地に伝搬する追分節の元祖。遊女屋、茶屋が多かった中山道と北国街道の分岐点で浅間山麓宿場の馬子唄に由来。元来、馬子唄とは運送人夫や、馬の売買をする博労が、労働歌として山道などを馬を曳いて歩く際に歌っていたもの。それらが各地で酒席や座敷歌として広まった。

 

シナン、マーク

Marc Sinan

ドイツの作曲家、ギター奏者。アルメニア系トルコ人の母をもつ。現代音楽オーケストラのドレスデンシンフォニカとともに、各地の伝統楽器や映像を交えた作品を発表。ドイツの音楽レーベルECMから諸作を発表している。「デデコルクト」

 

ジノヴィエフ、グリゴリー

Grigorii Zinoviev, Григорий Зиновьев 

1883-1936 ロシアの革命家。ソビエト政権発足後は要職を得るが、スターリンとの権力闘争に敗れ、後に処刑された

 

篠田正浩

 

映画監督。1960年代の安保闘争を描いた「乾いた湖」(音楽:武満徹)で大島渚、吉田喜重とともに「松竹ヌーベルバーグ」として注目を集める。「心中天網島 」「はなれ瞽女おりん」、「スパイ・ゾルゲ 」などの代表作がある。

 

(イギリスやアメリカの)実験音楽

Experimental Music

アメリカの作曲家ジョン・ケージが提唱した即興的偶然性や不確定要素の重視する潮流。またその重視の度合いや解釈により、西洋古典音楽の伝統の前衛と区別された。フルクサスなど現代美術のコンセプチュアルアートの前線とも重なった。それらの試みはアメリカやイギリスの作曲家によって行われることが多かった。

 

不忍池

 

東京の台東区の天然池。明治期には周回に競馬場が設営された。戦後の一時期は水が抜かれて水田となり、その跡地には野球場を建設する案なども出されたが、池のまま保存することで合意がなされて現在に至る。

 

芝園団地

 

埼玉県の蕨駅付近の川口市にある巨大団地。現在は中国出身者が多く暮らす。

 

シベリア鉄道

Транссибирская магистраль

世界一長い路線として知られる、ロシア南部を東西に横断するシベリア横断鉄道。皇帝アレクサンドル3世の命により計画され、1891年に起工し、1916年に全通した。現在一般には、ウラジオストクとモスクワを結ぶ全長約9300キロメートルの鉄道のことをいう。のちにバイカル、ハバロフスク方面と結ぶバム鉄道(第二シベリア鉄道)なども開通。バム鉄道

 

「シベリアの道化師」

 

石原吉郎の随想「ペシミストの勇気」をテクストに舞台化された、2008年の普通劇場によるインスタレーション作品(演出 大岡淳/音楽 河崎純 美術村松正之)。「ペシミストの勇気」、大岡淳

 

島崎藤村

 

1872~1943 長野県生まれの小説家、詩人。在学中に受洗したキリスト教やヨーロッパ文学の影響で文学を志す。浪漫主義詩人から自然主義文学に転じ、被差別部落に生まれた青年教師の丑松を主人公にした「破戒」を刊行。姪との恋愛関係から逃亡しフランスへ渡るが、第一次世界大戦を逃れ帰国。「椰子の実」など作詞も多い。

 

島村一平

 

文化人類学者。モンゴルのシャーマニズムをナショナリズムやエスニシティとの関連から研究。著書に「ヒップホップ・モンゴリア 韻がつむぐ人類学」(青土社、2021)「 憑依と抵抗」(晶文社2022)など。

 

シベリア捕囚(抑留)(日ソ)

Японские военнопленные в Сибири

ソ連軍による日本軍捕虜の抑留。鉄道建設や鉱山、建築現場できびしい強制労働に従事させた。第2次大戦終結直前に対日参戦したソ連は、終戦直後、旧満州,朝鮮半島北部、千島・樺太などから約64万人を領内に連行。民間人も含み、約3万人は朝鮮・中国人。捕虜収容所はシベリアや極東地域を中心に、モスクワ以東のロシア、中央アジアの約2000ヵ所に及んだ。1993年にロシアのエリツィン大統領が謝罪。

 

シャイムルジノ

Shaimurzino, Шаймурзино 

ロシア、チュヴァシ共和国の村。詩人ゲンナジイ・アイギの出生地。→アイギ・ゲンナジイ

 

ジャーナン・セルダル

Serdar Janan

トルコ再南東部のハッカリ出身のクルド民謡研究者、音楽民族学者、歌手。2015年にアムステルダムで初演されたクルド語オペラ「トスカ」出演。短編映画Barê Giran2019トルコ語・クルド語)のポストプロダクション責任者。伝統楽器バーラマの奏法指導の傍ら、クルド音楽の歴史と理論、奏法についてクルド音楽解説番組Selîqeを配信。2022年来日し各地で講演を行い、音楽刺激研究所がコーディネートしたコンサートで河崎と共演。

 

シャフチョールスク

Shakhtyorsk, Шахтёрск

サハリン島の西岸のウグレゴルスキー市の都市集落。日本統治時代の塔路町。

 

シャーマニズム

Shamanism

巫者が神憑りして,死者と交信して神意を示したり,悪霊を祓ったり,予言したりする原始的・呪術的な宗教形態。ツングース語の「シャマン」に由来する。3つ(天、地、地下界)からなる宇宙領域の各界を観念上の大木(世界樹)が結びつけ、シャマンの移動と連絡を可能にする。交信の形態は、「憑依」(possession)と「脱魂」(ecstasy)2種類あるとされる。北東アジア、シベリア地域に特徴的であるが、世界的に類似な信仰形態が発見され一般化した。

 

シャール 、ルネ

Rene Char

1907~1988 フランスのシュルレアリスム運動に参加し、戯曲、断章も残した詩人。1948年には第二次世界大戦後のヨーロッパの現代音楽界を牽引した作曲家ピエール・ブーレーズがその詩に曲を付けた「水の太陽」がラジオ放送で発表。ブーレーズはその後も「主のない槌」、「婚姻の顔」をテクストして用いた。

 

尺八

 

7世紀後半に唐楽の楽器として日本に伝来。現在の尺八の元となるのは、普化(ふけ)尺八または虚無僧尺八。中国唐代の禅僧普化を祖と仰ぐ臨済宗の普化宗と呼ばれる一派の法器として用いられ、僧侶が禅の修行や托鉢のために門付して吹奏した。江戸時代に公認され、演奏法が楽曲としてまとまり、二大流派「琴古流」と「都山流」の祖となった。箏、三味線とともに三曲(合奏)で用いられるようになり、日本の伝統楽器の象徴的な響きとして認識される。

 

シャピラ、ロネン

Ronen Shapira

イスラエルの作曲家、ピアニスト。映画や演劇の作曲も多く、日本にも演劇音楽で数度来日。中東の微分音を用いた作曲や、微分音程を調律したキーボードのよる演奏も行う。河崎も、尺八、鼓を伴う日本初演作品の演奏家として参加。

 

シャフラン 、ダニイル

Daniil Shafran, Даниил Шафран

1923-1997 ロシアのユダヤ系音楽家。ムスティスラフ・ロストロポーヴィチとともにソビエト時代を代表するチェロ奏者。

 

「シャマンとヴィーナス」

Шаман и Венера

ロシアの詩人ヴェリミール・フレーブニコフの小説(1913)。冬の大地に一人暮らすアジア系のシャーマン男の許に、裸体で現れたヴィーナスの恋愛を描く物語詩。フレーブニコフ、ヴェリミール

 

三味線

 

胴に長い棹を差し込んだ形状の日本の撥弦楽器。室町時代に中国の「三絃」が琉球へ渡来し「三線」となり、それが日本の楽器として改良され、地唄、浄瑠璃で用いられた。近世になると歌や語りの伴奏楽器として用いられるようになり、「長唄」「義太夫節」「清元節」「常磐津節」新たなジャンルも生まれ、歌舞伎音楽にも持ち込まれた。→ 三線

 

ジャンジャン

 

渋谷にあった教会の地下にあり、200席ほどの客席をもったミニシアター(1969-2000)。コンサート、演劇、コント、伝統芸能などアンダーグラウンド芸術の発信地として機能してきた。

 

シャンソン

chanson

フランス語で〈歌謡〉の意。13世紀末から16世紀にかけてフランスで流行した、吟遊詩人トルバドゥール、トルベールによる歌曲。また一般的には 19世紀末から20世紀初頭の「ベルエポック」期に勃興した、詞を重視したフランスの代表的な大衆歌謡。物語風の内容をもつものが多い。

 

ジャンバローヴァ、アクサナ

Oxana Zhambalova

ロシア連邦のブリヤート人の民謡等の伝承歌や古典音楽の声楽曲の女性歌手。2017年の音楽詩劇研究所「バイカル・黒海プロジェクト」のイルクーツク公演に参加。

 

「十牛図」

 

12世紀中国北宋の禅僧の廓庵が、悟りの過程を牛と牧夫にたとえてかいた詩画による禅の入門書。逃げ出した牛を探し求める牧人の様子を、段階的に描いた10枚の絵。

 

囚人の歌(音楽ジャンル)

 

音楽、演劇や映画の中で囚人を主人公にした内容の歌。世界、日本各地にそのような伝統があるが、とくに帝政ロシアからソビエト時代に開拓要員としての流刑が盛んであったロシアでは多くの曲が残され、懐メロの一ジャンルしても愛好されている。

 

シュヴァルツ、エレーナ

Elena Shvarts, Елена Шварц 

1948~2010 ロシアの女性詩人。父方の祖先はタタール、ウクライナその他の血をひく。古典にも題材を求めた夢と現実が融合する神秘主義、宗教詩的な個性的作風が禁じられたが、1960年代以降に地下出版(サミズダート)で流通し、80年代以降は海外でも発表された。

 

シューベルト、フランツ

Franz Schubert

1797-1828 オーストリアの作曲家。ウィーンで活躍。室内楽曲、交響曲など数々の作品を残す。とりわけ「歌曲の王」と称され、ドイツ歌曲(リート)を600曲以上作曲し、ロマン派の抒情詩と音楽表現の一致を芸術的に高めた。代表作は歌曲集「美しき水車小屋の娘」「冬の旅」「白鳥の歌」。

 

シュールリアリズム(超現実主義)

Surrealisme

第一次世界大戦後にフランスの詩人ブルトンの「シュールレアリスム宣言」刊行によって始まった新芸術運動。ダダイズムの思想を受け継ぎつつフロイトの深層心理学の影響を受け、夢も含む非合理的なものや意識下の世界を表現。それらの思想は第二次世界大戦期の反戦レジスタント運動に呼応した。

 

儒教(儒学)

Confucianism

紀元前6世紀に中国の魯に生まれた春秋時代末期の孔子の教説を中心とする思想や祭祀の総称。祖先信仰の祭事の体系化に端を発するとされ、「仁」を「礼」により実践。戦国時代には諸子百家の一つだったが、漢の武帝により国教となり、それ以後清朝の崩壊に至るまで、政治権力と一体となって中国の社会・文化の基盤をなす。漢字文化圏である日本、朝鮮半島、東南アジア諸地域にも伝わり、大きな影響を与えている。

 

収容所群島

Arkhipelag Gulag, Архипелаг ГУЛАГ

広大なソ連領内の各地に点在する収容所の分布のありようを、大海中に点在する島々になぞらえた表現。作家アレクサンドル・ソルジェニーツィンが同事実をルポルタージュした文学作品(1973)のタイトル。

 

ジュネーブ 

Geneva, Genf(ドイツ語名)

スイス南西端の都市。スイスのフランス語圏の中心。レマン湖から流れ出るローヌ川の流出口にある。国連ヨーロッパ、国際赤十字社本部、国際労働機関本部などがある。

 

シュルツ、ブルーノ

Bruno Schulz

1892-1942 ポーランドのユダヤ系小説家、画家。現ウクライナ領の小都市ドロボビチに生まれ、そこで生涯を送る。「肉桂色の店」(1933)、「砂時計の下のサナトリウム」(1937)のほか4 編の短編小説を世に送った。寡作の巨匠として両大戦間期ポーランド前衛文学を代表する。ナチス・ドイツ占領下、路上で射殺された。

 

シュレヴァコヴァ、アナスタシア

Anastasia Shcherbakova, Анастасия Щербакова 

ロシアのダンサー。エレクトロニクス音楽「PURBA」とのコラボレーションで精力的に活動。モスクワのコンテンポラリーダンス、舞踏、即興音楽のセッション・ワークショップをプロデュースし、シーンのプラットフォーム的機能を果たしている。2019年モスクワ近郊のアートレジデンス施設で行われた音楽詩劇研究所ワークショップをプロデュースし、作品にも出演。

 

春歌

 

性風俗に関連した猥褻な内容の歌詞を含む俗謡。歌詞を猥褻なものに変えた「替え歌」にする例も多く見られる。猥歌、艶歌、情歌ともいう。

 

「春香伝」(春香歌)

Chun-hyang Jeon, 춘향전 

韓国の口承芸能であるパンソリの最も有名な物語。妓生の娘と両班の息子の身分を越えた恋愛が、官僚社会の腐敗にたいする風刺を交えながら語られる。李朝時代の18世紀にパンソリの歌唱芸術として人気を得て、庶民、上流階級文化に幅広く流布。「沈清歌」とともにパンソリの二大作品とされる。パンソリ

 

「春香伝考」

 

音楽詩劇研究所の上演作品(2017)。深沢七郎の小説「楢山節考」、大島渚の映画「日本春歌考」を参照し、韓国のパンソリの名作を素材に、「ユーラシアン・オペラ」の視座で解釈し、「歌物語」として舞台化。

 

「春風馬堤曲」

 

与謝蕪村による和漢混合文の短い詩文。 1777年に発表され、日本初の「自由詩」ともいわれる。春の午後、「薮入り」で暇を与えられ少女が帰省のために河原を歩む際の情景が描かれる。

 

 

同様の楽器が東アジア各地に見られる伝統管楽器。中国または東南アジアが起源とされ、日本には奈良時代直前までに中国から伝わり、雅楽の旋律楽器として使われた。「合竹(あいたけ)」という奏法で5~6音を同時に奏することが可能。和音を同時に鳴らすことは、他の日本の伝統楽器の特徴にはみられない。

 

傷痍軍人(日本)

 

戦闘や公務で負傷した軍人。戦時は戦意高揚の中「白衣の勇士」と讃えられ、国家からさまざまな優遇施策を受けた。敗戦後は軍事援護の停止による恩給の打ち切りなどで生活は困窮したが、恩給の復活とともにわずかに改善をみた。街頭や縁日、列車内などで見られたハーモニカやアコーディオンを抱えた募金者は、昭和50年代には姿を消した。傷痍軍人を偽装し物乞いする者も存在した。

 

荘園(日本)

 

公的支配を受けない一定規模以上の私有地のこと。奈良時代から戦国時代にわたる中央貴族や寺社による古代・中世社会の大土地所有の形態。貴族、寺社の私有地を基盤として土地、人民を支配する。鎌倉末期以後、武士に侵害されて衰え、応仁の乱、豊臣秀吉の太閤検地で消滅。

 

小乗

Theravāda buddhismHinayana

南伝仏教、上座部仏教。現在は、スリランカを中心に、タイやミャンマーなど、東南アジアで信仰される。中国、日本などに伝わった大乗が衆生救済的だったのに対し、戒律を重んじ、出家し、瞑想などの自分修行を通じて、まず自己の悟りを第一とする教え。大乗からの蔑称的な表現。

 

ショーロ 

Choro 

19世紀にブラジルのリオ・デ・ジャネイロの白人系社会で生まれた音楽。ヨーロッパ渡来の音楽をフルートやギターなどからなる小規模の器楽合奏で演奏し、独自の即興性をもつ器楽に発展。ジャズより早い時期にアドリブを重視した音楽といわれる。

 

唱歌(日本の明治時代、教科)

 

明治の学制公布(1872)により小学校に設置された「唱歌科」の授業とそこで歌われる楽曲。当初は外国曲に歌詞をつけたものが多かった。1907年に小学校令が改正されて必須科目となり、1910年の「尋常小学読本唱歌」においてすべてが日本人による作詞、作曲となった。多くは教訓的内容や花鳥風月が歌われた。4、7度を用いない(ヨナ抜き)長音階 で2拍子系が多く、ほとんど単旋律、無伴奏で歌われた。

 

正倉院(の楽器)

 

奈良市の東大寺大仏殿西北にある校倉造の宝物庫とその一画。聖武天皇の遺愛の品々を納めた。楽器も多数あり、和琴(わごん)・琴(きん)・琵琶、五絃琵琶・阮咸(げんかん)・筝・瑟・簫(排簫)(しょう・はいしょう)・笙(しょう)・竽(う)・尺八・横笛・新羅琴の13種。打楽器はない。

 

声明(日本)

 

6世紀の仏教伝来とともに声明も伝えられた経文を朗唱する声楽。サンスクリット語で書かれた梵文、漢文系、和文系の三つに大別できる。諸国では僧侶があわせて楽器を奏でる場合も多いが、日本は唱和中心。現行の声明は、ほぼ天台声明と真言声明の流れにある。

 

浄土真宗

 

大乗仏教の宗派のひとつで、浄土信仰に基づき親鸞が開祖した。師である法然によって明らかにされた浄土往生を説く真実の教えを継承。念仏で阿弥陀仏への感謝を称えて極楽往生を果たすという「他力念仏」の教えをもつ。

 

浄瑠璃

 

平曲や謡曲などを源流とする音曲語り物の一つ。室町時代に琵琶等の伴奏で語られた。のちに中国から琉球を経て伝来した三味線に合わせ、上方の盲人たちが語るようになり地唄を形成。江戸初期には人形操りと結んで人形芝居が成立し、義太夫節、歌舞伎音楽としても展開。

 

ジョーンズ、エルビン

Elvin Jones

1927~2004  アメリカのジャズドラム奏者。ジョン・コルトレーンなど伝説的な音楽家との共演も多い。ドラムセット全体を使って大きなグルーヴを創り出し、ポリリズムやシンコペーションを多用する演奏が、アンサンブルのダイナミズムに寄与した。

 

ショスタコーヴィチ、ドミートリー

Dmitrii Shostakovich, Дмитрий Шостакович

19061975 ロシアの作曲家。ヨーロッパのモダニズムの影響下で創作。オペラ、バレエ音楽、映画音楽や劇の付随音楽を含む管弦楽曲、協奏曲、室内楽曲のほか、ピアノ独奏曲や歌曲、劇音楽など多分野で創作。前衛的な書法や響きをもつこと多かったが、当局から批判を受けて作風を変えつつ、ソ連音楽界の第一線で活躍。規制下における随時の作風の変化については、賞賛と批判の対象になっている。

 

ショパン、フレデリック

Frederic Chopin

1810-1849 ポーランド出身の作曲家。ピアニストとしても活躍し、主要作品の多くもピアノ曲。リリシズムを基調に、雄々しさ、メランコリーなど多彩な性格をあわせもち、「ピアノの詩人」と称された。

 

「ジョローナ」(ラ・ヨローナ)

La Jorona, La Llorona

メキシコの子供を川に捨て狂女となった母の亡霊の悲嘆を歌う「哭き歌」。中南米に古くから伝わる伝承曲、悲歌。→バルガス、チャベラ

 

白鳥加奈子

 

岩手県出身のシャンソン歌手、ファッションモデル。古くからの浅草の芸人との交流も深く独自の芸能活動を展開。音楽詩劇研究所の初期作品のいくつかでも重要な役割を果たした。東京演芸協会会員。

 

シルクロード(絹の道)

Silk Road, 絲綢之路

東洋と西洋を繋ぐ歴史的な交易路の総称。ドイツの地理学者が19世紀に命名。狭義には北方の草原地帯のルートである草原の道、中央の乾燥地帯のルートであるオアシスの道(絹の道)、インド南端を通る海の道を指す。

 

シルクロード・アンサンブル

The Silk Road Ensemble

1998年にチェロ奏者ヨー・ヨー・マが組織する西洋、東洋の伝統音楽と現代音楽を融合させるアンサンブル。メンバーが固定されるのではなく、伝統的な東西の音楽と、現代の音楽との関りを追求するアーティストの集団。

 

シルクロード能楽会

 

小鼓奏者、演出家の今井尋也が主宰する舞台芸術集団。日本やアジアの古代や中世の神話や民話、歴史の裏側に隠された物語を掘り起こし、それを軸にした「音楽舞踊劇」をなす。メンバーが作るシルクロード沿いの諸国に伝わるオリエンタルな楽曲により物語が進行。語りや謡、歌、ホーメイなど自由な表現様式を駆使しながら、高い身体能力を生かした所作や舞踊、芝居、狂言などを交えて演じられる。→今井尋也

 

白澤吉利

 

舞台監督。舞台芸芸術、野外公演も含むさまざまなジャンルで舞台監督をつとめ、とりわけ舞踏や音楽コラボレーション作品においてそれぞれへの深い造詣から的確な舞台作りを行い、アーチストからの信頼が高い。

 

新歌舞伎

 

明治後期から昭和初期に創作された歌舞伎演目、またはその潮流。歌舞伎を専門に書く狂言作者、大家河竹黙阿弥の死後、西洋的なリアリズムに基づく「演劇改良運動」の影響を受け、座付き作家ではなく外部作者による新しい台本が演じられた。菊池寛、谷崎潤一郎、岡本綺堂、坪内逍遙など、多くの作家も台本を提供。

 

清(大清国)

 

中国史上の最後の王朝(1611-1912)。半農、半猟、半牧の生活を営んだツングース系民族である女真(満州)族を統一したヌルハチにより設立。1616年即位して後金国と号し、息子のホンタイジ(太宗)が清に改称。第3代順治帝の頃、明朝の滅亡に乗じて中国に入り、北京に遷都。領土を拡張し、現在の中国領の原型を作った。19世紀前半から欧米列強の侵入が顕著となり、半植民地化の道を辿った。末期には太平天国の乱による国力の衰退、資本主義列強の侵略を受け、1911年の辛亥革命で倒れた。

 

新疆ウイグル(自治区)

 

古来西域の名で知られる中華人民共和国の西端の、東トルキスタンとも呼ばれる自治区。首府はウルムチ。モンゴル、ロシア、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、アフガニスタン、パキスタン、インドに接する。さまざまな民族がこの地の覇権を担ったが18世紀に清朝に編入。住民は多くがイスラム教を信仰するウイグル人が約三分の二を占め、漢族の流入も多く、ほかにカザフ人など。ウイグル人は「歌と踊りの民族」ともいわれ、中央アジアのテュルク系音楽を基盤に、周辺の多様な音楽文化の影響を受ける。

 

新劇

 

明治以降に、それ以前の能・狂言、歌舞伎などの伝統演劇をさす「旧劇」に対する呼称として、西洋近代劇の影響をうけて起こった演劇の総称。翻訳劇を中心に始まり、歌舞伎や新派の商業主義を批判し、芸術志向的な演劇を目指した。ロシアの演出家スタニスラフスキーの写実的なリアリズムを重視する小山内薫、土方与志によって関東大震災後に作られた劇団築地小劇場ができ、新劇運動を確立。

 

シンコペーション

 

強拍と弱拍の位置をずらして、アクセントを変え、リズムやノリに変化を与えること。

 

「沈清歌」(沈清伝)

Simcheong-ga, 심청가

韓国の口承文芸のパンソリの演目。「春香伝」とともにパンソリの二大作品のひとつ。盲目の父親の下で育った親孝行の娘、沈清のストーリーが、さまざまなフォークロアの芸能をとりこみながら歌われる。→パンソリ

 

「沈睛歌」(美術作品)

 

美術家の鄭梨愛の作品(2018)。パンソリ「沈清歌」に引用される民謡のモノローグや、韓国にルーツを持つ自身の祖父の記憶を元に構成されるビデオ作品。鄭梨愛

 

ジンタ

 

明治中期に興った市中音楽隊とそれによる吹奏楽。30名ほどの編成で発足した軍楽隊出身者を中心とする「東京市中音楽隊」が元祖で、行進曲やワルツ等を演奏。民間オーケストラがなかった時代に、西洋音楽の普及に貢献。日清戦争を機に全国的に普及。サーカス(曲馬)の客寄せや広告宣伝のために演奏するようになったが、それにあわせアンサンブルが縮小し、楽曲も流行歌が多くなった。大正後期にはチンドン屋などがとって代わった。

 

「心中天の網島」

 

1720年初演の浄瑠璃作品。同年に大坂網島で起こった紙屋治兵衛と曾根崎新地の遊女小春の心中事件を近松門左衛門が脚色。近松の最高傑作の一つとされ、文楽、歌舞伎作品として現在でも上演されている。近松門左衛門

 

「心中天網島」(映画)

 

篠田正浩監督による近松門左衛門の同名作を原作にした映画作品(1969)。音楽は武満徹が担当。篠田、小説家、詩人の富岡多恵子、作曲家の武満徹の3人が脚本を書いた実験的作品。

 

新民謡

 

大正後期くらいから、地方公共団体の委嘱で観光などのためご当地ソングとして新たに作られた民謡。そのような歌が古来の民謡、俗謡と混同されることも多い。作者が特定できない本来の民謡に対し、作詞者や作曲者が存在し、作曲家の藤井清水は研究に基づき民謡の新たな地平を開いた。

 

親鸞

 

1173-1226 鎌倉時代の僧侶。浄土真宗を開く。その教えは徹底した信心中心の思想で,阿弥陀仏への絶対的信仰を往生の要義とした。著書の「歎異鈔」の「悪人正機」(「善人なおもて往生をとぐ、いはんや悪人をや」)に、象徴的に表現されている。

 

 

 

 

(ス)

スヴィヤズスク(島)

Sviyazhsk, Свияжск 

16世紀中頃にイヴァン雷帝率いるロシア軍がカザン遠征の途上の拠点として大河ヴォルガに浮かぶ島のような土地に開発された地域。キリスト教布教の拠点となった。生神女就寝大聖堂と修道院が世界遺産に認定されている。

 

スーパーデラックス

SuperDeluxe

東京の港区六本木に2019年まであった実験音楽や即興音楽、パフォーマンスを中心のライブスペース、クラブ。そのような先鋭的アートのプラットホームとして長年機能した。

 

スーフィーズム

Sufism

イスラム神秘主義哲学。スンナ派の律法主義的な形式主義への批判から、より敬虔な生宗教生活を送ろうとした人々による信仰。教義では制限される音楽的舞踊的行為を典礼の中にとり入れた。ズィクル(アッラーの名を繰り返し称えること)やサマー(音に聴き入ること)などによって神秘的体験を得て、魂を浄化させてアッラーへの帰一を達成しようと考える。現在では、トルコを中心に伝承されているメウレウィー教団の典礼が広く知られている。セマー

 

ズィクル

Dhikr, зикар

イスラムス神秘主義のスーフィズムで神の名を唱え念じる修行、儀式。

 

ズヴォニク、ケイト

Kate Dzvonik

カザフスタン のユダヤ系ロシア人振付家、ダンサー。アメリカでコンテンポラリーダンスを学び、カザフスタン初の独立劇場で演出家として活躍し、現在はアルマティ市の劇場で自閉症とダウン症のパフォーマーグループの演出、ワークショップをファシリテート。2019年のユーラシアンオペラ「さんしょうだゆう」では、舞台監督、演出助手を兼任し、同グループと音楽詩劇研究所とのコラボレーションを援助した。

 

管啓次郎

 

詩人。翻訳者。比較文学者。著書に「本は読めないものだから心配するな」(左右社2011)、「オムニフォン 〈世界の響き〉の詩学 」(岩波書店2005)。詩集も多く出版し、朗読ライブも行っている。音楽詩劇研究所がユーラシアンオペラ作品上映にてトークゲストとして招聘し、河崎と対談を行った。

 

スキタイ(人)(匈奴)

Skythai, Scythae

紀元前8世紀から前3世紀くらいまで、南ロシア、ウクライナ、クリミア、中央アジアに存在した古代のイラン系民族。

 

杉本彩

 

タレント、女優。動物愛護活動家でもある。かつては「学祭の女王」の異名もあり、ヌード写真集を多数発表。官能小説を執筆など幅広く活動。

 

スクリャービン、アレクサンドル

Alexander Scriabin, АлександрСкрябин

1872-1915 ロシアの作曲家。神秘主義的傾向の作風で知られ、4度音程の堆積による「神秘和音」を含む独自の和声語法の探求し、管弦楽曲「法悦の詩」や「ピアノ・ソナタ第5番」に表現。後にジャズの音楽理論にも継承された。後年は色、光、香りを加えた総合芸術も構想し、鍵盤の操作によって色彩を映し出す「色光オルガン」を用いて和声と色彩の統合を試みたが未完に終わった。

 

図形楽譜

 

五線譜ではなく、自由な図形、テクスト等などを用いて書かれた楽譜。再現性ではなくむしろ、恣意的、能動的な即興性が重要視されることが多い。アメリカやイギリスの実験音楽のシーンでしばしば用いられた。

 

鈴木正美

 

ロシア文学者、ロシアジャズ専門家、管楽器奏者。著書に「ロシア・ジャズ 寒い国の熱い音楽」(東洋書店 2006)、「言葉の建築術マンデリシュターム研究1」(群像社 2002)。研究の一環としてロシアの前衛音楽家を数多く日本に招聘し、コンサート、セッションをプロデュース。マンデリシュターム・オシップ

 

「スターバト・マーテル」(楽曲)

Stabat Mater

「悲しみの聖母」の意の、13世紀のフランシスコ会のカトリック教会の聖歌。イエス・キリストが磔刑となった際、母マリアが受けた悲しみを思う内容。数多くの作曲家に音楽化され、ヴィヴァルディ、ペルゴレージ、ハイドン、プーランクなどの楽曲として知られる。20世紀音楽でもアルヴォ・ペルト、クシシュトフ・ペンデレツキら旧社会主義の東欧圏の作曲家も作曲。

 

スターリン、ヨシフ

Joseph Stalin, Иосиф  Сталин 

1878-1953 ロシアの政治家。靴職人の息子としてジョージアに生まれる。若くして革命運動に参加し、1902年以後逮捕・流刑・逃亡を繰り返しつつカフカスで活動。1912年党中央委員,1922年党書記長となる。レーニンの死後、世界革命論に対し、一国社会主義論を主唱し、1920年代末には党と政府を完全に掌握。計画経済で一定の経済効果を達成し、第二次世界大戦では英米とともに反ファシズム統一戦線を結成。ソ連の国際的地位を高める一方、独裁色が濃くなり、多くの粛正を行った。死後の1956年、フルシチョフにより批判が行われた。

 

「スターリン・エピグラム」

The Stalin epigram  Кремлёвский горец

ロシアの詩人、オシップ・マンデリシュタームの1933年の詩。スターリン政権への不服従が表明された。そのためマンデリシュタームは再び逮捕、流刑された。マンデリシュターム・オシップ

 

スターン、アイザック

Isaac Stern

1920~2001 ウクライナ出身の20世紀アメリカを代表するユダヤ人のヴァイオリニスト。生後10ヶ月で家族とともにサンフランシスコに移住。ウクライナにおけるユダヤ虐殺を題材にしたミュージカル映画「屋根の上のバイオリン弾き」では劇伴のヴァイオリンソロを担当した。

 

「捨て子たち星たち」

Orphan and stars

ドイツのベルトルト・ブレヒト、パウル・ツェランの詩を、歌曲、合唱、パフォーマンステキストとして用いて構成された音楽詩劇研究所の舞台作品(2015)

 

ストラビンスキー、イーゴル

Igor  Stravinsky, Игорь Стравинский 

1882-1934 ペテルブルグ近郊に生まれた ロシアの作曲家。新古典主義、十二音技法と作風を変容させながら、リズムの書法で現代音楽の展開に大きな影響を与えた。初期の管弦楽が、振付家のディアギレフに認められパリで初演された「火の鳥」、「ペトルーシュカ」、「春の祭典」の、三大バレエ作品が名高い。民話風の題材を用い、ロシア民謡の5音ないし6音の旋律を、大編成のオーケストラの激しく複雑なリズムと響きのなかに表わした。第一次世界大戦と十月革命により故国への帰還が困難となり、以後スイス、フランス、アメリカに暮らした。

 

「砂の舞台」

 

2009年モスクワで初演した、コントラバス、トランペット、パフォーマンス、録音素材による河崎のシアターミュージックピース。チュヴァシの詩人、ゲンナジイ・アイギや日本のシベリア抑留詩人、韓国人アーチストのテレサ・ハッキョン・チャの詩を用いた。

 

「砂山」

 

1922年に北原白秋が作詞した唱歌。新潟から佐渡を一望する日本海の風景が描かれる。さまざまな作曲家が曲をつけたが、山田耕筰と中山晋平による二曲がとりわけ知られる。

 

頭脳警察

 

日本のロックバンド。歌手パンタと打楽器奏者のトシ(石塚俊明)により結成され、1972年にレコードデビュー。共産主義的な革命運動が激化する時代背景の中、日本語による過激な歌詞と自由が支持を得て反体制の象徴のひとつとなる。それぞれソロ活動を展開しながら、断続的にバンド活動も継続。 石塚俊明

 

スフバートル、ダムディン

Дамдины Сүхбаатар

1894-1923 遊牧民の出身 のモンゴル革命の父とよばれる政治家。ロシア革命の影響を受け、1920年モンゴル人民党結成に参加。イルクーツクで人民義勇軍を結成し、新政府の樹立に成功。同年モスクワでレーニンと会談し、モンゴルの社会主義革命への道を探った。革命の約1年半後、30歳の若さで死去(死因は不明)。チョイバルサンと共に人民革命の功労者とされる。

 

スレイメノフ、オルザス

Olzhas Suleimenov

1936年生まれのカザフスタンの詩人、反核運動家。「ネバダ・セメイ」国際反核運動の総裁を努めた。「ネバダ・セミパラチンスク運動」

 

スラブ(人)

 

言語、起源、文化の近親性、同一性と類似性によって統括されるヨーロッパ諸民族の中で最大の民族。起源は定説化されていないが、ヨーロッパ中東部カルパティア山脈周辺が有力視され、6世紀以降、東ヨーロッパに広がった。東スラヴ人(ウクライナ人、ベラルーシ人、ロシア人)、西スラヴ人(スロバキア人、チェコ人、ポーランド人)、南スラヴ人(クロアチア人、セルビア人、ブルガリア人など)に分けられ、宗教文化も異なる。

 

ズルナ

zurna

中央アジア、バルカン半島に普及するダブルリードの木管楽器。チャルメラのような甲高く乾いた音が特徴的。オスマントルコ帝国時代の軍楽隊で知られ、ヨーロッパ人がその響きに驚き、オーボエを作製したといわれる。

 

スンム(僧舞)

승무

韓国の仏教舞踊。仏教精神を基調とした舞の中に、民俗舞踊の美意識渾然一体となった最も格調高い舞踊。人生の苦悩や哀歓を表現し、仏具である大太鼓の法鼓(ポプコ)とともに僧侶の煩悩の葛藤が表現される。

 

 

 

 

(セ)

世阿弥

 

1363-1443 能役者、能作者。能を総合芸術として大成させその基礎を確立。娯楽性を主体とする能から、歌舞中心の幽玄へとその芸を洗錬させ、複式夢幻能の様式を完成させた。舞の身体原理や高度な演劇的思考が「風姿花伝 」にあらわされている。足利義政に重用されたが、じょじょに冷遇され、晩年は佐渡へ流刑された。夢幻能

 

(中世のアルメニア)聖歌

Divine Liturgy of the Armenian Church

アルメニア教会の聖歌の多くは、教会体制が黄金時代を迎える5世紀頃に作曲された。種類も賛歌やオードなど多岐に渡り、ヨーロッパの聖歌の響きは異なる中東の響きももつ。12世紀に聖歌の音楽改革が行われ、メロディーを単純化し、アルメニアの民謡のスタイルに近づけたといわれる。

 

聖歌(キリスト教)

Chant

古代、中世から続く一般に、キリスト教の宗教歌。カトリック、プロテスタントなどのキリスト教宗教歌曲。グレゴリオ聖歌、讚美歌などを含めた呼称。

 

聖歌(シリア)

 

単性説のために異端派となったシリア正教の聖歌。言葉はイエス・キリスト自身が日常語として用いたアラム語を、現在も用いている。「ハギオポリタン・オクトエコス」という、中東のマカームの要素を持つ8つの音階を有している。

 

斉唱

 

ハーモニーや輪唱を用いず、同じ旋律を同時に歌うこと。

 

聖俗二元論

The Sacred and the Profane

フランスの社会学者エミール・デュルケームの聖と俗の二分法を宗教の中心とする論。聖のもつ力や威厳などの源泉が、社会を統合させる原理とする。またはその論に対する、聖俗それぞれに対する解釈や関係性への言及をいう。

 

聖なる湖(マリ人の)

 

ロシア連邦タタールスタン共和国にある先住マリ(マリ-エル)人の聖地のひとつで、現在はロシア正教の聖堂の敷地内にある。マリ(マリ-エル)

 

青年トルコ革命

Young Turk Revolution

1908年に起こったオスマントルコ末期に立憲制の導入を目指したトルコの近代化改革運動。初代大統領ケマル・アタテュルクを初めとしてかつての活動家が、初期のトルコ共和国の政治を主導した。ケマル・アタテュルク

 

セイレーン(の声)

siren voices

ギリシア神話海の女性半身鳥の怪物、精霊。オデュッセウスを声で幻惑する。→オデュッセウス

 

ゼーバルト(WG

Winfried Georg Sebald

19442001 ドイツの小説家でイギリスに定住した。多くの写真を挿入し、小説とも、随想とも、旅行記とも、回想録ともつかない独自の散文作品で知られる。代表作に「移民たち 四つの長い物語」、遺作「アウステルリッツ」。

 

セーブル条約

 

1920年、第一次世界大戦敗戦後にオスマントルコが連合国との間で締結した条約。トルコにとって不利な条約だったため、ケマル・アタテュルクの指導のもと締結を拒否。改めて1923年にローザンヌ条約を結んで主権の確立とアナトリアの領土を回復した。

 

関川夏央

 

作家。現代韓国文化にも造詣が深く、「海峡を越えたホームラン 祖国という名の異文化」、「ソウルの練習問題」などの著書がある。

 

世宗(セジョン)

세종

1397-1450 韓国の李朝第4代国王。名君と知られ、現在も1万ウォン札に紙幣の肖像に描かれる。訓民正音でハングルを施行。優れた儒教政治を行い、朝鮮独自の民族文化を開花させたといわれる李朝最盛期の王。

 

説経節

 

中世から近世初期に盛んだった放浪芸能。娯楽性と仏神の縁起などが語られて民衆に愛された。中世末期には人形劇と結びつき、近世初期に人形浄瑠璃と並んで劇場で上演された。近世中期以降は義太夫の隆盛により衰退したが、各地の民俗芸能にその片鱗を残した。諸説あるが「刈萱(かるかや)」「山椒太夫」「小栗判官」「俊徳丸」「法蔵比丘」が代表的な五説経とされる。

 

セデック族

Seediq, 賽德克族

台湾の先住少数民族。セデックはセデック語で「人間」を意味する。ヨグ・ワリス(Yogu Walis/幽谷瓦歴思)のCD作品で、セデック語の歌を聴くことができる。ウェイ・ダーションの映画、「セデック・パレ」では、1930年の抗日蜂起事件である霧社事件が描かれている。霧社事件

 

セマー(旋回舞踊)

sema

イスラム神秘主義であるメヴレヴィー教団の旋回舞踊。死に似た状態に陥る神秘体験による修行といわれる。1923年のトルコ革命以降公式には禁じられたが、現在では観光資源としてショー形式で行われることが多い。スーフィーズム

 

セミパラチンスク核実験場

Семипалатинский ядерный полигон

カザフスタンのセメイにあったソビエトの核実験場。1949年から1989年の40年間に合計456回の核実験に使用された。1991年に閉鎖。1965年に行った地下核実験(チャガン核実験)で、大地を吹き飛ばして作られた人造湖のチャガン湖が存在する。チャガン湖

 

セメイ

Semey, Семей

カザフスタン北東部の都市。ソ連邦時代のセミパラチンスクであり核実験場が存在したことでも知られる。

 

セメイスキー

Семейский Semeiskie

バイカル地方、ブリヤートに暮らすロシア正教古儀式派の子孫。17世紀のニコンの宗教改革で、ベラルーシ方面に逃亡した古儀式派の人々が、のちにこの地域に追放された。生活の中で伝統文化が伝承され、ロシア文化の古層を垣間みることができる。ロシア正教古儀式派

 

セメイスキーの合唱

 

バイカル地方、ブリヤートに暮らすロシア正教古儀式派の子孫によるポリフォニックで遊戯牲をもつ無伴奏合唱形態による民謡文化。

 

セリエリズム

Serialism

シェーンベルグらが体系化した1オクターブの12音の音高を等価に規則的に扱う12音主義、その音列を作って作曲に応用する技法。トータル・セリエリズム

 

セルジューク朝トルコ

Seljuk Empire

イスラム化しながら西アジアに大移動した中央アジアのオグズ族が建てたイスラム王朝 (1037-1157)1071年にビザンツ軍を破り、小アジア(アナトリア)に進出。ヨーロッパのキリスト教世界に大きな脅威を与え、十字軍遠征の発端となった。十字軍やモンゴルの侵攻により13世紀に消滅。オグズ族

 

「戦艦ポチョムキン」

Броненосец “Потёмкин”

ロシアのセルゲイ・エイゼンシュテインのプロパガンダのサイレント映画(1925)。ウクライナのオデッサの市民がツァー(皇帝)の兵士たちによって虐殺される階段のシーンが有名。俳優の演技の個性ではなく、編集によるカットの組合せによる衝撃的なリズムと緊迫感をつくるモンタージュ技法が、革命思想に通ずるとされた。

 

禅宗

 

インド僧の達磨が開宗。唐より宋初にかけて伝わり、鎌倉時代以後、日本で結実。坐禅における内観や内省によって仏道を求める。栄西により臨済宗、道元により曹洞宗が、江戸時代に隠元により黄檗宗が武家の信仰として広く普及。その思想は学問、文芸、生活のうえに大きな影響をもたらした。20世紀半ばに欧米でも、カウンターカルチャーとしてインド思想と並び注目された。

 

「戦争」(楽曲)

Война  

ロシアのペレストロイカ期のカリスマ的ロック歌手、カザフスタンの高麗人にルーツを持つ歌手ヴィクトル・ツォイの在籍したバンド、キノの曲。→ツォイ、ヴィクトル、KINO

 

センファン(笙簧)

생황

韓国の伝統楽器で、日本の笙にあたる。三国時代から宮廷音楽に使われ、李朝時代には上流階級の室内楽でも用いられた。韓国の伝統楽器の中で唯一といえる和音楽器だが、日本の笙と異なり、合竹のように56音を同時に鳴らすのではなく、単音の旋律か、複数音を同時に鳴らすとしても23音程度。

 

洗礼者ヨハネ女子修道院の披昇天大聖堂

 

ヴォルガ川に浮かぶ島状の地域、スヴィヤズスクにある教会。ソビエト時代は囚人、精神病患者の収容所だった。ユネスコの世界遺産に認定を受けた。→スヴィヤズスク

 

「千麗舞の夕べ 或る日のルソー 孤独な散歩者の夢想」

 

日本舞踊家、西川千麗の舞踊作品。本人逝去の後、2013年に洋舞家のダンサー(小川珠絵)の振付けにより上演された。「孤独な夢想者の散歩」、西川千麗

 

千麗舞山荘

 

京都京北の山麓にある日本舞踊家西川千麗のアトリエ。

 

 

 

 

(ソ)

草原の道(ステップロード)

Steppe Road

ユーラシア大陸の東西交通の北寄りの陸路。南ロシアの草原地帯から東に向かい、カザフやジュンガル盆地の草原地帯、アルタイ山麓を経てモンゴル高原に入り、中国の頂上地帯にいたる。

 

荘子(荘周 )

 

紀元前4世紀ごろの人物。儒教の人為的礼教を否定し、自然に帰ることで無私無我の境地が求められる。現実のすべての差別の相を平等視する観念的な哲学。道教の始祖の一人とされる。老荘思想、胡蝶の夢

 

壮士芝居

 

自由民権運動を訴えた自由党壮士が政治活動の資金源とした書生芝居。1887年の保安条令発布での政治運動弾圧により、政談演説が全面的に禁止されたが、官憲の取締りの盲点をつき、演劇を通じて大衆の啓蒙を試みた。1891年には川上音二郎が一座を組織し、政治宣伝劇を上演。後の新派劇の源流となった。

 

葬式仏教

 

葬式や法事においては仏教の様式を用いるが、実生活では教義と関わらないような信仰のかたち。元来の仏教は、葬送儀礼を重視する宗教ではなかった。位牌も、儒教の葬礼に用いられる神主(しんしゅ)が変化したものだと考えられる。漢民族の道教や儒教に由来する先祖供養の民間信仰と習合した仏教の葬送儀礼が日本に伝わった。

 

「増殖するシャーマン モンゴリ・ブリヤートのシャーマニズムとエスニシティ」

 

人類学者、島村一平の著書(春風社2011)。ソビエト、モンゴルに分散した主に仏教徒であるブリヤート族が、社会主義政権崩壊後、民族の帰属意識として古来のシャーマニズム文化を復興させてゆく過程についてレポートされている。島村一平

 

「創世記」(キリスト教)

 

古代ヘブライ語によって記されたユダヤ教、キリスト教の聖典。初めの「天地創造と原初の人類」では、アダムとイブ、カインとアベル、ノアの方舟、バベルの塔について記されている。

 

葬列歌(韓国 サンヨソリ)

상여소리

韓国では棺を担ぎながら歌う地域ごと葬列歌が多く残されている。担ぎ手の中の一人が仏教的な「回心曲」型(俗世の行いを仏教的な観点で反省する)の野辺送りの挽歌が歌われ、葬列に人々がその後に続き声を合わせる。数日間かかる土俗の葬礼では、全羅南道の珍島の「ダシレギ」のように、出棺の前日に笑劇を行う慣習もある。

 

ソウル(都市)

Seoul서울、京城、漢陽

大韓民国の首都。地名は「首都」を意味する。漢江が市の中心を流れ、南北に隔てられた地域をそれぞれ江南、江北と呼ぶ。李氏朝鮮時代(1392-1910)に都に定められた。

 

ソウルオリンピック

24 하계 올림픽 경기 대회

1988年に開催された第24回オリンピック競技大会。ピョンヤンでの共同開催案も検討されたが1987年の大韓航空機爆破事件の影響もあり実現しなかった。

 

ソウルミュージック 

Soul music

アフロアメリカンの現代的な大衆音楽。宗教音楽であるゴスペル、ブルースに端を発する、第2次世界大戦直後に興ったR&Bが、よりゴスペル色の濃厚な音楽として、ジャズ、白人のポピュラー音楽などの影響をうけて洗練。より土着的なR&Bと区別して呼ばれることもあるが、明確な差異はない。

 

添田亜蝉坊

 

1872-1944     神奈川県の農家に生まれた明治大正期の演歌師。浅草芸に憧れながら働き、壮士節に出会う。社会批判とユーモラスな風刺精神でたくさんの歌を作った。「まっくろけ節」、「ノンキ節」など200曲近い歌を残した。 「パイノパイノパイ」で知られる。

 

添田知道(さつき)

 

1902-1980 演歌師。添田亜蝉坊の長男。「パイノパイノパイ」、「ストトン節」、「復興節」などがよく知られている。文筆活動も行い、貧民街の小学校校長をモデルにした長編小説「教育者」(1942)や「日本春歌考」を発表。「日本春歌考」

 

ゾーン、ジョン

John Zorn

1953年生まれのアメリカのサックス奏者、作曲家、編曲家。即興、ジャズ、メタル、ハードコア、現代音楽など、ジャンルは特定できず、1980年代半ばより、ニューヨークの前衛シーンをリード。東京在住期もあり、日本のオルタナティブ音楽シーンに多大な影響を与えた。ユダヤ人の出自を持ち、クレズマー音楽を新たな解釈で演奏。ユダヤ人古来の軍事戦略をゲーム化的な演奏システムとして翻案した「コブラ」を開発。1995年に音楽レーベルTZADIKを設立し、実験音楽、アンダーグラウンド音楽としては世界最大規模の音源を制作。

 

副島輝人

 

1931-2014 ジャズ評論家、プロデューサーとして、とくに日本と海外のフリージャズシーンを紹介する活動、執筆を行った。著書に「日本フリージャズ史」(青土社2002)、「世界フリージャズ記」(青土社2013)など。

 

即興演奏(インプロヴィゼーション)

improvisation

広義において音楽的行為における即興性。狭義では、西洋古典音楽の方法に対するアフリカなどのフォークロアに本質的に内在する即興性を重視したフリージャズや現代音楽の偶然性に影響を受け、即興の特権性を強く意識し、それを強調して表現される音楽。

 

ソビエト連邦(ソビエト社会主義共和国連邦)(ソ連)

Union of Soviet Socialist RepublicsUSSR, Союз Советских Социалистических Республик(СССР)

1917年のロシア革命を経て、1922年から1991年まで存在した社会主義国。マルクス・レーニン主義を掲げたソビエト連邦共産党による一党制で統治された複数の共和国により構成される連邦国家。

 

ゾロアスター教

Zoroastrianism, 祆教

前7世紀メディアの預言者ゾロアスターによってペルシャでおこった、光りの神と闇の神との、永遠の二元論とその闘争を説く宗教。ササン朝の国教。南北朝時代の中国に伝来し、拝火教または祆教と呼ばれた。開祖の実在が確実視される創唱宗教として世界最古とされる。善神を象徴する聖火を拝し、死体を塔上に放置して鳥葬にする。偶像崇拝・火葬・土葬・水葬は禁じた。ニーチェが著名で用いたようにドイツ語ではツァラトゥストラ 。ロックバンド「クイーン」のリードヴォーカルだったフレディ・マーキュリーも教徒。

 

「ソロカウスト」

Сорокоуст

ロシアの詩人、セルゲイ・エセーニンの詩(1920)。エセーニン、セルゲイ

 

ソン・ドンヨル (宣銅烈)

 

韓国出身の元プロ野球選手。日本でも大活躍した投手。

 

西便制( ソッピョンジェ )

서편제

韓国の伝統芸能パンソリのうち、全羅道西方面平野地帯で唄われたもの。装飾的な修飾によって、哀切を表すような歌い方を修行によって獲得する。→東便制(トンピョンジェ)

 

 

 

 

(タ)

ダーチャ

дача

ロシアで、主に週末に通う一般的な菜園付きの別荘。野菜等の食物を栽培し現金収入とする場合もあり、ソヴィエト、ロシアの生活や経済の最低限を裏側で支えているといわれる。国有化で土地を失った農業労働者が1930年代に自足の食物確保を求めての土地の要求に端を発し、1960年代にフルシチョフ政権が一家族に最低600平米の土地を与えるよう法制化。掘建て小屋程度のものが多かったが、現在では家のように機能する建築も多い。

 

大韓航空機爆破事件

 

ソウルオリンピックの前年の1987年にイラクのバグダードから韓国へ向った大韓航空機便が、ビルマの南方海上で消息を絶った事件。日本旅券をもった男女2人がバーレーン警察に逮捕され服毒自殺を図った。生き残った金賢姫が朝鮮民主主義人民共和国の指示で同便に爆破工作を行ったことを自供。

 

大韓帝国

대한제국

朝鮮,李朝末期、1897年に採用し、1910年の日韓併合まで用いられた国号。

 

「大韓帝国愛国歌」

 

「御雇外国人」として滞在した日本からの帰国後、大韓帝国の宮廷の軍楽隊の指導者として韓国を訪れたドイツ、プロイセンの軍隊の作曲家エッケルトが李朝末の1902年に作曲した国歌。韓国の伝統音楽に多い3拍子でできている。エッケルト、フランツ

 

大極拳

tai chi

中国で明朝末頃に創始された伝統武術。健康促進法として中国政府が奨励。日本にも1970年代に伝わりでも健康法として人気がある。

 

大鵬(幸喜)

 

1940-2013 横綱力士。サハリン島ポロナイスク市(敷香町)で、コサック将校であったウクライナ系ロシア人と日本人女性との間に生まれた。幕内通算 746144敗。優勝 32回。

 

タイヤル(族)

 

台湾北部山地に居住する原住民族。人口は台湾少数民族の中ではアミに続き、2番目に多い。首狩り(出草)や、 顔に入れ墨を入れる「文面」の慣習を持った。音楽詩劇研究所に参加の歌手エリ・リャオの父親の出身。エリ・リャオ

 

「太陽への勝利」

Победа над солнцем

ロシアで創作された前衛歌劇(1913) 。クルチョーヌィフの詩、フレーブニコフの口上、マレーヴィチが舞台美術をミハイル・マチューシンが作曲を担当し、ロシアの未来派様式の確立を目指した。

 

タイラガーン

Тайлаган

ロシアのバイカル湖周辺に暮らすブリヤート族のシャーマニズムによる儀式。主に初夏に行い、鼓や鉦を鳴らし天上の門を開き神々を降霊し、豊穣や幸福を願う。

 

ダウン症(ダウン症候群)

Down syndrome

染色体異常症の一種で、身体的発達の遅れ、軽度の知的障害がみられるとされる。

 

高砂義勇隊

 

太平洋戦争中に日本軍に組織された台湾原住民による部隊。高山地域に暮らす人々が多く、そのための体力や知識にたけたていたために、東南アジアの密林地帯での戦闘要員として動員された。非戦闘員であっあったため武器は一切所持せず、日常生活のための刀を持たされた。

 

高砂(高山)族

 

日本統治時代の各台湾原住民の総称。台湾原住民は現、台湾在政府に16民族認定されているが、中華人民共和国においは「高山族」として、ひとまとまりに55少数民族の一つとされる。

 

高田渡

 

1949-2005 歌手。1969年に「自衛隊に入ろう」でデビューし、働く者の日常を淡々と歌う独特のスタイルで人々の共感を呼んだ。代表曲に「生活の柄」「夕暮れ」「仕事さがし」など。自身の作詞作曲のほか、アメリカ民謡や沖縄の詩人の山之口貘や金子光晴の詩も曲にした。

 

高橋琢哉 

 

音楽家。作曲家。環境音楽やフリージャズのアプローチから、即興演奏を中心とした独自の音楽活動を1995年より開始。1999 ~ 2006年にはダンサー田中泯の音楽を、ギターやシンセサイザーなど様々な楽器で担当。2007年以降は、映像作品への楽曲提供、国立博物館の特別展や、ミラノ・サローネの企業展示など、音響演出を多く手がける。

 

高村光太郎

 

1883-1956 詩人、画家、彫刻家。仏師である父の光雲の援助で、米、英、仏に留学し日本の美術界に反旗を掲げる。詩作行為については「自身の彫刻の純粋さを守るため、彫刻に文学など他の要素が入り込まないようにするため」と考えた。妻の死後1941年に愛を綴る詩集「智恵子抄」を刊行。戦時中は戦争賛美の詩を多く書き、その反省から戦後は7年間農耕自炊の生活も送った。

 

タガログ語(フィリピン語)

Tagalog

フィリピンの公用語の一つで、フィリピン語の母体となった方言。母音5、子音15のローマ字を用いるが、古くはインド系の文字を使用していた。約30パーセントのフィリピン人の母語。

 

タガンカ劇場

Taganka Theatre, Театр на Таганке 

ロシアのモスクワの劇場。1964年に創立。社会主義リアリズムに対し、メイエルホリドの身体的演出法(ビオメハニハ)など、革命芸術の方法論として確立しながら形式主義として批判された前衛芸術の方法を復活、発展させた。そのため当局と対立が絶えず、演出家リュビーモフは市民権を剥奪され、1984年国外追放され西側に亡命。地下文化のカリスマ的歌手のヴラジーミル・ヴィソツキーも参加し、主要作で主演を務めた。セルゲイ・レートフも同劇場の音楽を多く担当している。

 

雫境

 

聾の舞踏家。1996年~2001年日本ろう者劇団に在籍。1997年舞踏を始める。以降、国内外で公演、ワークショップを行っている。2013年、アニエス・トゥルブレ監督の映画「わたしの名前は...」に出演。2016年、牧原依里と共同監督の映画「LISTEN リッスン」を制作。

 

「竹田の子守唄」

 

元歌の京都民謡を、フォークグループ「赤い鳥」が1971年に大ヒットさせた。親元を離れて子守奉公を行う幼い守子の辛い心情が描写される。歌詞にある「在所」は、京都では被差別部落をさすことがある。原曲はヒット曲の哀切感のある叙情的なものとは異なり、テンポも速く力強く、かけごえとともに歌唱された。

 

武満徹

 

1930-1996 作曲家。一時、清瀬保二に師事した以外は独学で作曲を学ぶ。ドビュッシー、ベルク、メシアンの影響を受けながら、さらにミュージック・コンクレートや不確定性など欧米の前衛音楽の手法を用いて独自の美学に基づく作品を発表。映画音楽も数多く作曲。代表作に薩摩琵琶と尺八の協奏曲「ノヴェンバー・ステップス」、「鳥は星形の庭に降りる」。著書も多数。

 

タスカー

тоска

憂愁、陰鬱的な意味を表すロシア独特の民族的精神性を象徴する語。

 

ダた

 

国広和毅率い歌詞、歌唱、アンサンブル面で実験的手法を用いたバンド。河崎純(コントラバス)小林武文(ドラム)齋藤丈二(ギター)。→国広和毅

 

タタール(ヴォルガ・タタール)

 

中央ユーラシア地域研究の文脈では、中世においてはジョチ・ウルスの諸民族、帝政期にはテュルク系のムスリム諸民族を総称することが多い。現代では一般的に、沿ヴォルガ地域に居住するテュルク系ムスリムのなかのヴォルガ・タタール人(カザン・タタール人)を指す。

 

タタール海峡(韃靼海峡、間宮海峡))

Tatar Strait, Татарский пролив

ロシア連邦のシベリア東岸とサハリンとの間の海峡。北部にはアムール川河口のアムール湾がある。北部の主水道の水深は低潮位時に約4メートルで、小船舶がかろうじて通行できる。11月から5月ごろまでは結氷し、橇で通行できる。江戸幕府の命で樺太を探検した間宮林蔵が、樺太を島であることを明らかにしたため「間宮海峡」とも呼ばれる。

 

「タタールのくびき」(「モンゴル=タタールのくびき」)

Tatar-Mongol Yoke,  Монголо-татарское иго 

キプチャク・ハン国による中世ロシア諸公国の間接支配をロシア側からいう言葉。タタールは直接的にこの地に先住する、ヴォルガ・タタールに限らず、モンゴル人と同化したトルコ系民族も含めた総称。1480年、モスクワ大公国イヴァン3世が自立して解放したとされる。キプチャク・ハン国

 

タタールの民謡

 

多様な民謡をロシア式のボタン式アコーディオン(ガルムン)で奏でるようになったソ連初期に、「タタール民謡」として確立。 元来はユーラシアの諸民族にみられるような鉄製の口琴や、西アジアなどにもみられるダブルリード型の管楽器、カザフのドンブラと似た23弦の撥弦楽器などもよく使われた。多くの歌詞は、厳密に韻を踏んだ四行連で構成されている。

 

タタミスタジオ(蕨)

 

埼玉県川口市のタタミとハンモックのあるスタジオ。エアロ(空中)・ヨガをはじめとしたボディワーク、完全暗転を利用した企画等、健康・知覚に関連するユニークなワークショップも行なっている。

 

橘政愛

 

打楽器奏者。東京楽竹団代表。竹、南部鉄器・木の板・釘など多種多様な物から音の世界を作り上げる。舞踊家西川千麗、横浜ボートシアターの音楽など舞台音楽も多く担当した。

 

 ダツコフ、ドミートリー

Dmitry Datskov, Дмитрий Дацков 

ウクライナ在住の舞踏家・ミュージシャン。ナホトカで育ち、新潟の国際少年野球大会でであった山海塾の写真の衝撃を受ける。イスラエル空軍に従軍後オデッサに移住し、舞踏家、ミュージシャン、国際フェスティバルのディレクターとして活動。ダツコフとオデッサの舞踏グループ「ウロボロス(Ouroboros)」を主宰。

 

田中泯

 

1974年より独自の舞踊活動を開始。1978年のパリデビュー以来、世界的なダンサーとして活躍する。以降、独自の踊りのあり方として「場踊り」を追求。ダンスのキャリアを重ねる一方で、俳優として映画出演も多数。

 

谷川健一

 

1921-2013民俗学者。日本人の死生観や世界観の古層の解明にとりくむ。主な著書に日本文学の源流を沖縄、鹿児島などの謡にもとめた「南島文学発生論」(思潮社 1991)がある。詩人、活動家の谷川雁の兄。

 

タハリール

Tahrir

ペルシア、イランの古典的歌唱法。高音域で声を細かく震わせながら母音唱法で裏声と本声を行き来しながら旋律を歌う。口腔内や咽喉の器官を使って作り出す音は「鶯の声を真似たもの」ともいわれる。クルド、アゼルバイジャンなど近隣の諸民族にも類似する歌唱方がある。民族音楽研究者、小泉文夫が激賞している。

 

ダルブッカ(ダラブッカ)

darbuka

アラブ諸国とトルコおよびその影響圏で一般に使われる一面鼓。両手の指を駆使しさまざまな音色を出し複雑なリズムに彩りを与える。

 

ダフ

daf

アゼルバイジャンや中東地域で用いられるフレームドラム。さまざまな呼称を持つ。

 

田村隆一

 

1923-1998 詩人。戦後詩を代表する詩誌「荒地」出身の詩人。戦争体験に基づく心象風景を鮮明に刻印する。代表的な詩集に「言葉のない世界」。詩(「帰途」)の中の名句として「言葉なんかおぼえるんじゃなかった」がある。

 

打令(タリョン)

타령 

韓国の伝統口承芸のパンソリのなかでも、悲運に対する嘆きの深さを表わすストーリーを持つもの。身世打令ともいう。また、原義からはなれ、「民謡」や「音頭」のような意味合いで用いられることも多い。

 

タルカン

Tarkan

1972年西ドイツ生まれのトルコ人男性歌手。13歳でトルコに帰国し、貧しい暮らしの中で音楽の才能を発揮し、1993年にデビュー。一躍トップスターとなり、オリエンタルなポップサウンドとしてヨーロッパでも絶大な人気を誇る。

 

タルディコルガン(タルディクルガン)

Taldykorgan, Талды-Курган

カザフスタン東南部の中核都市。1937年にスターリンの迫害により、この地のカラタル地区に、極東ロシアの朝鮮人移住者が送り込まれた。その後1948年にかけて沿ヴォルガ、ウクライナおよびコーカサスの少数民族も強制移住させられた。朝鮮人はこの地域の基幹民族的な存在となり、その後に送られてきた他民族も朝鮮語を覚えることもあり、ロシア語とともに地域の諸民族間の意思疎通言語のひとつになったとされる。

 

ダンカン、イサドラ

Isadora Duncan

1877-1927 アメリカの女性舞踊家。バレェのメカニカルな振付けに抗い、古代ギリシャの彫刻や壁画にインスピレーションを受け、自然を追求する身体表現減を開発し「モダンダンスの祖」と呼ばれる。渡欧して成功を収めベルリン、モスクワに舞踊学校を設立し子供や後進を育成。

 

タンゴ

Tango 

イベリア半島の舞曲が南米に渡り、アルゼンチンの港湾都市ブエノスアイレスの船着き場ボガの街で生まれた音楽。南米、アフロの様々なリズムが取り入れられ、1890年頃から発展した。情熱的な舞踊を伴うが、のちに音楽として独立し、オスワルド・プグリエーセやイタリア移民三世であるアストル・ピアソラが革新的なタンゴを作曲し、世界の音楽シーンを席巻した。ピアソラ、アストル

 

男根崇拝(民俗学)

 

人間の男女の生殖器を神聖視する世界各地に残存する生殖器崇拝。男根のケースが多い。多産・豊穣・開運をもたらす呪力をもつものとして崇め、天然の木石または男根をかたどってその対象とする。

 

タンジール(タンジェ)

Tangier

モロッコ北部のジブラルタル海峡に面した港町。イスラム勢力やスペインなど古来、交易の中心的な国際都市として繁栄。20世紀にはヨーロッパの列強各国がこの地の利権を争った。スペイン支配、国際管理地域を経て、1956年にモロッコに復帰。別荘地として知られ、作曲家でもあったポール・ボウルズなどのアメリカのビート詩人や、ロックミュージシャンが保養しながら土地の文化から刺激を受けた。ローリングストーンズのブライアン・ジョーンズが紹介した魔術的な伝統音楽ジャジューカ(ジュジュカ)も知られる。

 

丹心歌(タンシムガ)

 단심가

朝鮮半島の12世、高麗末期の鄭夢周による詩。朝鮮王朝(李朝)建国の前夜、高麗への忠誠を誓って詠まれたとされる。李朝でも尊重された儒教的な精神性とも重なり、現在でも韓国で最も知られる古典詩句のひとつ。

 

 

 

 

(チ)

遅子建(チ・シケン)

Chi Zijian

中国の黒竜江省中露国境地域出身の、1964年生まれの女性小説家。満州地域に暮らすさまざまな民族や庶民の暮らしを題材に私的な筆致で描く。代表作に小説「アルグン川の右岸」、「満洲国物語」。「アルグン川の右岸」

 

チェ・ジェチョル(崔在哲)

 

韓国打楽器奏者。自らのルーツである韓国の打楽器文化を実践しながら、日本、アジアのさまざまな伝統芸能と自らの足で歩き交流する。「TAIKO WALK CONFERENCE」代表。音楽詩劇研究所のユーラシアンオペラプロジェクトでも重要な役割を果たしている。

 

チェーホフ、アントン

Anton  Chekhov, Анто́н Чехов 

1860~1904 ロシアの作家。ロシアの小説家、劇作家。数々の短編の名作を残す。モスクワ芸術座で上演された「桜の園」「三人姉妹」「ワーニャ伯父さん」、「かもめ」などの戯曲を発表し、世界の近代演劇に多大な影響を及ぼした。医師として流刑地を調査した極東、サハリン島での紀行文も知られる。

 

チェチェン(人)

Chechenets,  Чеченец, Hохчи

カフカス山脈中央から東部の北斜面に広がり、現在はロシア連邦のチェチェン共和国に多くが住居するが、外部への移民も多い。イスラム教のスンナ派が18世紀に普及しているが、土着の信仰や慣習も根強い。隣国ジョージア方面の山岳文化やイスラム文化が混在する独自の民謡世界をもつ。

 

チェレンホーヴァ

Cheremkhovo, Черемхово

ロシアのイルクーツク州の小都市。鉱山を有するため、第二次世界大戦後にも、シベリア抑留において日本人捕虜も作業に従事。過酷な労働や気象条件により多くの死者を出した。

 

チェンバレンホースクラブ

Chamberlain Country Club

カザフスタンのアルマティ市にある、馬に関する総合施設。遊牧生活以前のカザフスタン、中央アジアの馬とともにある文化を啓蒙している。2019年に音楽詩劇研究所が撮影イベントを行った。

 

チェンバロ

Cembalo, Clavecin, Harpsichord

16-18世紀にヨーロッパで広く用いられたピアノの源流をなすチター属の鍵盤楽器。ハープシコード(英語)、クラブチェンバロ(イタリア語)、クラブサン(フランス語)ともいう。打鍵すると鳥の羽軸などで作られた爪が金属製の弦をはじいて音を出す。そのためピアノに比べ残響音がかなり小さい。18世紀末以降ピアノの隆盛もあり衰退したが、近年は古楽様式の復興に伴い演奏される機会が増えた。

 

チカーノ 

Chicano

メキシコ系アメリカ人。1960年代のアメリカの公民権運動において、歴史的に抑圧されたメキシコ系アメリカ人の文化やアイディンティを指す語として用いられるようになった。アメリカ合衆国の人口比率においてヨーロッパ移民である白人を21世紀中に凌ぐとされる。音楽においてもテックスメックス、ラテンロックなど、さまざまなアメリカ文化と中米音楽とが融合し、「チカーノミュージック」と総称できるような音楽を生んだ。

 

近松門左衛門

 

1653-1725 浄瑠璃・歌舞伎作家。大阪の町人文化としての元禄文化を象徴する存在の一人。義太夫節の祖である竹本義太夫と組んで竹本座の座付作者となる。従来の古浄瑠璃から劇的効果を本位とする総合芸術としての新浄瑠璃(文楽)を形成し、身分制社会の枠組みを越えて人間の生き様を描き出した。代表作に世話物「曾根崎心中」「心中天の網島」。 「心中天の網島」

 

「乳色の雲」(朝鮮現代詩集)

 

文学者の金素雲によって日本語訳され、1940年に発表された詩集。格調高い日本語により日本の文壇を驚嘆させた。金素雲(キム・ソウン)

 

「地上の見知らぬ少年」

L'inconnu sur la terre 

ル・クレジオの1978年に発表された小説的エッセイ。はじめて地上に降り立った少年の目にはどんなふうに世界が見えるだろうかと仮定し、断章形式で綴ったエッセイ。ル・クレジオ

 

チター(ツィター)

Zither

オーストリア、ドイツ、スイスの伝承楽器。共鳴する木箱に5本のメロディー弦と30本以上の伴奏弦を横に張り、金属製の爪(リングとかピックで弾き、他方の指で伴奏弦を弾く。広義には類似構造を持つ、中近東のカヌーン、フィンランドのカンテレ 、ロシアのグースリ、中国や朝鮮半島の揚琴、洋琴、日本の箏もその一種に含まれる。

 

「父と子」

Отцы и дети

19世紀のロシア文学を代表するイワン・ツルゲーネフの小説。父の理想主義と、息子の唯物論的なニヒリズム世代の相克が描かれた。ロシアのジャズサックス奏者アレクセイ・クルグロフに、同小説を素材にした、自身の父、娘の朗読や歌を交えたCD作品がある。アレクセイ・クルグロフ

 

地中海音楽文化(トルコの)

 

トルコ民族の祖である中央アジアの大陸の流れをくむ民族音楽文化に対し、アナトリア半島(小アジア)に築かれたセルジューク、オスマントルコにおいて、バルカン半島のロマ文化、ギリシャのヘレニズム的要素が融合して成熟した東地中海音楽の伝統。

 

千葉文夫

 

フランス文学者。音楽文化への造詣も深く、訳書にジャンケレヴィッチ「夜の音楽 ショパン・フォーレ・サティ ロマン派から現代へ」、ミシェル・シュネデール「グレン・グールド 孤独のアリア」など。著書の「ファントマ幻想:30年代パリのメディアと芸術家たち」では、作曲にクルト・ヴァイル、声と演出にはアントナン・アルトー、テキストにロベール・デスノス、音楽編集にはキューバからの亡命者の小説家アレホ・カルペンチエールら特異な組み合わせの創作人によって制作されたラジオドラマについて述べられる。

 

チベット仏教(チベット密教、ラマ)

Tibetan Buddhism

ラマ教(喇嘛教)ともいわれる。7世紀にインドから伝えられた密教を伴う大乗仏教と、土着の宗教であるボン教が結びついてチベットに展開。13世紀以降モンゴル・シベリアを含むヒマラヤ地域に広まり、16世紀にはチベットを討ったモンゴルが受容して奉じた。法具である摩尼車や、五体投地の所作が知られる。五体投地

 

チベット密教寺院(ブリヤート)(ダツァン)

дацан

ロシアにおける主にモンゴル族(ブリヤート)の信仰するチベット仏教の寺院。20世紀初頭まではバイカル湖以東にのみ存在するにすぎなかったが、ザバイカル地域で47を数えるまでに発展。ソビエト政権下において宗教弾圧を受け、すべてが取り壊されて閉鎖された。1945年にはイヴォルギンスキー・ダツァンが開かれ活動を再開し、1991年にはさらに10のダツァンが開かれた。ウラン-ウデ

 

チャ、テレサ・ハッキョン

Theresa Hak Kyung Cha, 차학경

1951-1982 日本植民地時代日本語教師であった母親に育てられ、自身は英仏に留学。複雑な言語活動を身体に表象させたようなパフォーマンスを行ったが、暴漢により殺害された。著書に伝記、ドローイング、写真、詩、言語実験を含む「ディクテ韓国系アメリカ人女性アーティストによる自伝的エクリチュール」。

 

チャイコフスカヤ、アーニャ

Anya Tchaykovskaya, Аня Чайковская 

ウクライナのドネツク出身のヴォーカリスト。紀元前にもさかのぼるウクライナ古謡の研究とロシア・アヴァンギャルド音楽の重鎮とのトリオを中心に活動する「ウクライナの真珠」と評される歌手。2016年より音楽詩劇研究所にてコラボレーションを続けている。

 

杖鼓(チャンゴ)

장구

宮廷雅楽や民謡,農楽,巫楽などほとんどあらゆるタイプの音楽に用いられる韓国の両面太鼓。宮廷やシャーマニズムでの座奏、あるいは農楽などダイナミックな踊りを伴う立奏でも演奏される。

 

チャンザ

Чанза

ブリヤート族の伝統撥弦楽器。3弦からなり、音色も日本の三味線に似ている。ブリヤート民謡

 

チャンスン

장승

李朝以後村々に広がったというユーモラスな顔の男女一対の木製の人柱、トーテンポール。地上神「天下大将軍」で 地下世界の女神「地下女将軍」と書かれ、「将軍標」ともいわれる。宗教的境界をあらわし、村の魔除け、外部からの厄払いの守護神としての役割や道しるべの役割も果たしたとされる。

 

チャガン(湖)

Chagan,  Шаған

カザフスタン、ソ連邦時代のセミパラチンスクの核実験場にできた人造湖。1965年に行った地下核実験によって草原地帯の大地が吹き飛ばされた場所に雪解け水などが流入し生まれた。直径およそ408m、深さ100m2009年のNHK制作の同地についての番組では、周辺地域ではなお正常値の10倍の放射線の検出が報道された。

 

チャップリン、チャールズ

Charlie Chaplin

1889-1977 イギリス生まれの喜劇俳優,映画監督、作曲家。アメリカで制作し、代表作に「モダン・タイムス」(1936)、「独裁者」(1940)、「ライムライト」(1952)。第二次大戦後、共産主義者とみなされ「赤狩り」にあい、1952年訪欧後、作品内容、イギリス国籍、未成年者を含むその結婚歴を理由に米国入国を許されず、スイスに定住した。

 

チャンダン(長短)

장단

韓国の伝統音楽におけるリズムとその周期。宮廷で奏でられる正楽と民俗楽に分け、正楽では各曲の基本長短を始めから最後までほぼ変化なく一定に演奏。民俗楽では音楽、奏者のノリにより、複雑化し、基本の長短を保ちながら変化に富む。旋律の起伏により伴奏もダイナミックな起景結解(開始、進行、絶頂、仕上げ)の楽曲展開を作り出す。

 

中央アジア強制移住(ソビエトの政策)

 

スターリンによる1937年から1948年にかけての強制移住政策。第二次世界大戦の独ソ戦中にスパイ嫌疑による極東から朝鮮人移住者、その後1948年にかけてヴォルガ流域のドイツ移民、ウクライナ人およびチェチェン人やコーカサスの少数民族もナチズムへの加担の嫌疑で、中央アジア地域に強制移住させられた。多くのは主に農業が困難な地域での開拓と労働に従事した。

 

(中央アジアの)口承芸能

 

中央アジアのチュルク語系の遊牧民の土着の文化や信仰にイスラム教が浸透。やがてそれぞれの民族の国家が形成されるなかで、始祖神話や英雄叙事詩がさらに育まれ語り継がれた。「アルパミシュ」、「デデコルクト」キルギスの「マナス」、トルクメンの「ギョル・オグルィ」などの物語がある。→「デデコルクト」

 

共産党(中国)

 

中華人民共和国を統治し社会主義建設を国是とする中華人民共和国の指導政党。1921年に陳独秀らが上海で結成。中国国民党との抗争に勝利し、1949年政権を樹立した。マルクス−レーニン主義と毛沢東思想にもとづく。

 

中世音楽(ヨーロッパ音楽)

 

キリスト教教会の諸聖歌が形成され、グレゴリオ聖歌に対旋律を付加して生まれた多声楽曲オルガヌムが12世紀に発展。13世紀にかけてはパリのノートル・ダム大聖堂を中心に複雑化しながら理論も体系化され、モテトゥスなどの曲種を生んだ。譜表も発明されて記譜法も発達。世俗音楽では、放浪楽師、吟遊詩人により、恋愛を歌う叙情歌などが各地に広まった。

 

中南米音楽

 

一般にメキシコ以南の地域の音楽文化を指す。先住民族インディオのほかスペイン人、ポルトガル人、フランス人やアフリカから奴隷民文化が混り合い、多種多様な独自の音楽が生まれた。大陸内での混合とは異なり、大海を越えた3大陸の混合のダイナミズムを有する。

 

チュルコズ、サーデット

Saadet Turköz 

トルコ出身のヴォーカリスト。家族のルーツを新疆(東トルキスタン)のカザフ族に持つ。中央アジアの語り物の伝統と即興音楽を融合させ、 チュルク族の移民の歴史を体現する強靭な声で 世界の音楽シーンを横断。2010年、河崎とともに、日本トルコ国交100年を記念する現代音楽制作「Sound Migration」に参加し、以後も断続的に共演を続け、2017,18年には音楽詩劇研究所のプロジェクトに参加。Sound Migration

 

チュンチョン

Chuncheon, 춘천시, 春川

韓国の江原道の主要都市。盆地に位置する。タッカルビやドラマ「冬のソナタ」の主要ロケ地としても知られる。

 

「朝鮮奥地紀行」

Korea and Her Neighbours

イギリスの探検家、紀行文作家のイザベラ・バードによる紀行文。1894(明治27)年から1897(明治30)年にかけて、4度にわたり李朝最末期の朝鮮半島を旅行した記録。

 

朝鮮大学校(日本)

 

1956年に東京都小平市に創立。戦前の植民地政策によって日本に残留した朝鮮人やその子孫らが学ぶ最高学府。文部科学省から大学としての認可を受けておらず、学校教育法の「各種学校」として東京都が設置を認可する。2021年の「コロナ禍」で困窮した学生に国が最大20万円を支給した「学生支援緊急給付金制度」について、対象外とされた。

 

徴用工訴訟問題(日韓)

 

日本の植民地時代に朝鮮半島から渡り日本の工場などで働いた元労働者らが日本企業を相手に、補償を求めて起こしてきた訴訟。2018年、韓国の最高裁が日本企業に対し、賠償するよう命じたのに対し、日本側は「1965年の日韓請求権協定で解決済み」とし、両国の対立が深まった。

 

正楽(チョンアク)

정악

韓国の伝統的な音楽文化。民俗音楽に対し宮中の祭祀、祭事時に演奏される雅楽、祭禮楽や官僚階級に親しまれた風流音楽、声楽曲の正歌など。

 

正歌(チョンガ)

정가

韓国宮廷音楽を基礎におく国楽の正楽の歌唱文化。詩形式、リズム、合奏形態等により、時調、歌曲、歌詞に分類される。

 

チョン・ホンジュン(全琫準)

전봉준

1854-1895 1894年の農民蜂起、東学党の乱(甲午農民運動)の指導者。李朝末の朝鮮に対する日清両国の利害対立が激化するなかで決起。その後、密告により日本軍により討伐され、処刑された。 全琫準を称えるとされる民謡「青い鳥」は美しい旋律をもち、現代の韓国でも愛されて歌われる。→「青い鳥」

 

チョン・モンジュ(鄭夢周)

정몽주

1338-1392 韓国の高麗時代末期の儒学者、高官。ともに高麗の高官だった李朝を開く李成桂のクーデターに対し、高麗への忠誠を誓った「丹心歌」の詩で広く知られる。李成桂の子・李芳遠の手により開京の善竹橋で暗殺された。

 

鄭梨愛(チョン・リエ)

 

日本の美術家。2018年朝鮮大学校研究院総合研究科美術専攻修了。自身の家族史やルーツと向き合いながら、絵画、映像、言語、インスタレーションなど様々なメディアを用いて作品を制作。

 

知里幸恵

 

1903-1922 北海道登別出身。アイヌで初めてアイヌの物語を文字化した「アイヌ神謡集」の著者。言語学者の金田一京助に才をみいだされ1922(大正11)年に上京 。母方の祖母モナシノウクから伝えられた神謡を筆録、和訳し、13篇のカムイユカラ(神謡)を収めた。完成したその夜、心臓病のため19年の生涯を閉じた。「アイヌ神謡集」

 

チン

韓国の伝統楽器の銅鑼。サムルノリのアンサンブルでは、長音による深い響きでドローンを奏でるほか、ミュート奏法で強いアクセントをあらわし、ポリリズムを与える。

 

チンギス・ハーン

Genghis Khan, 成吉思汗

1162-1227モンゴル帝国の初代皇帝。モンゴル系部族を統合してモンゴル高原とその周辺を征服し、1206年にハン位に即位してモンゴル帝国を樹立。さらに、金を攻撃し、西夏、ホラズムに遠征を行い中央アジアの大帝国の基礎をつくった。伝説では、その祖先が「蒼い狼」を父、「白い牝鹿」を母に生まれたといわれる。

 

チン・コン・ソン

鄭公山 Trnh Công Sơn

1939-2001 ベトナムの作曲家。反戦歌も含め600以上の歌を書き、「ベトナム歌謡の父」、「ベトナムのボブ・ディラン」とも称される。1967年、ハノイの歌手カーン・リーと組み様々なヒット曲を生み出す。「坊や大きくならないで」、「美しい昔」は、その後日本をはじめ東アジア諸国で、それぞれの言語で歌い継がれて愛唱歌となった。

 

鎮魂歌(レクイエム)

 

レクイエムとは「安息」を意味し、死者の安息を神に願う、カトリック教会のミサ典礼、またその式文を歌う音楽をさす。一般的には死者を悼む歌、葬送歌の意味でも用いられる。なお訳語として用いられた日本の神道用語と異なり、「レクイエム」の祈りの対象が、死者そのものに向かうことはないとされる。

 

 

 

 

(ツ)

ツァハル

Israel Defense Forces

イスラエル国防軍。1948年の建国以来、中東戦争などアラブ諸国との紛争を幾度も切り抜けてきた精強な軍隊として知られる。兵役は女性にも課され、男子3年女子2年となっている。

 

ツェラン、パウル

Paul Celan

1920-1970 現在はウクライナに属するルーマニアのブコビナ地方出身 ドイツ系ユダヤ人の詩人。名前はユダヤ系の名を隠すため、本名をアナグラム化したもの。戦後のドイツ語圏詩人で、20世紀を代表する詩人の一人とされる。収容所の体験やホロコーストをもとに、言語活動の極限を詩に表わした。代表作に「死のフーガ」、「迫奏」など。1970年パリのセーヌ川で自殺とみられる遺体が発見された。

 

ツォイ、ヴィクトル

Viktor Tsoi, Виктор Цой

1962-1990ソ連時代の伝説的ロックバンド「KINO」のヴォーカリスト。その短い生涯が映画化される等、現在でもロシアではロックアイコンとして絶大なカリスマ性を誇る。交通事故により28歳で死去。カザフスタンの高麗人のルーツを持つ。→KINO

 

ツォイ、リュドミーラ

Людмила Зинина-Цой

ウズベキスタンのコリョサラム(高麗人)第三世代の女性詩人。韓国の古典文化や神話世界とロシア・ウズベキスタンの英雄譚が重なり合い、独自のノスタルジアを顕在化させている。詩集「パンソリ・エコー」など。音楽詩劇研究所および河崎のCD作品にいくつかの詩を提供。

 

つげ義春

 

漫画家。芸術性の高い超現実と私小説的な現実の振れ幅と不条理な人間の情念、夢など無意識的な領域の接近で特異な作風で注目を集めた。有名作に「李さん一家」「ねじ式」「無能の人」など。

 

「対馬まで」(美術作品)

 

鄭梨愛によるヴィデオ作品 (2017)。鄭梨愛

 

津田健太郎

 

声と身体表現の関係性を追求し、さまざまなパフォーマンス作品に出演する音楽詩劇研究所の主要パフォーマーの一人。

 

土橋寛

 

1909-1992 日本文学者、万葉学、古代歌謡の研究。社会学の手法を採り入れ、古事記や日本書記の歌謡が古代社会で本来持っていた意味を分析、独自の体系を確立。著書に「古代歌謡の世界」、「古代歌謡をひらく」、「日本語に探る古代信仰」など。「古代歌謡をひらく」

 

鼓(日本、能)

 

大きさ、形態により小鼓、大鼓、太鼓など。本来はリズム楽器であるが、緒を自由に操作することで多様な音色を打ち分ける。能等お演目では、リズムを提示するだけでなく、さまざまな情景描写にも適用される。演奏の際に掛声を掛けるのが特徴。

 

坪井聡志 

 

アルト、テノールによる繊細な歌唱表現を得意とする音楽詩劇研究所の主要パフォーマーの一人。共著に「アート・ライフ・社会学―エンパワーするアートベース・リサーチ」(岡原正幸編、晃洋書房)。

 

綱渡り(オルム)(芸能、韓国)

 

韓国の伝統遊芸集団のナムサダンの演目の一つ。綱渡りは世界の大道芸でみることができるが、ナムサダンの棚渡りは、音楽、歌、舞踊と密接に関わるのが特徴的。→ナムサダン(男寺党)

 

ツベターエヴァ、マリーナ

Marina Tsvetaeva, Марина Цветаева  

1892-1941 ロシアの女性詩人。現在のロシアでもっとも人気のある詩人の一人。モスクワに生まれ10代で詩壇にデビューし、叙情詩、特に恋愛に関する情熱や憂愁に満ちた作品で知られる。実際に相手は男女問わず恋多き女性だった。ロシア革命の中でヨーロッパに亡命し帰国したが疎開先で自殺。1960年から詩が公表され、ショスタコビッチ。グバイドゥリーナが歌曲のテキストとして扱っている。

 

つむぎね

 

作曲家宮内康乃が主宰する、おもに声や空間を使った独自のパフォーマンスを展開する、女性たちを中心としたヴォーカルアンサンブル。→宮内康乃

 

 チュリスベコフ、サケン

Saken Turisbekov, Секен Тұрысбеков

1961年生まれのカザフスタンの作曲家、ドンブラ演奏家。現代の「キュイ」を作曲。「Konil Tolqyny」の作者。キュイ

 

ツルゲーネフ、イワン

Ivan Turgenev, Иван Тургенев 

1818-1883 ロシア小説家、詩人。帝政ロシアの農奴解放前後の古い貴族の理想主義的意識と、改革の理想をもつ新しい世代との対立を基調に、田園生活を抒情ゆたかに描いた。代表作は「初恋」「父と子」、短編集「猟人日記」など。日本では二葉亭四迷の翻訳で紹介され,近代文学の成立に多大な影響を与えた。

 

鶴見俊輔

 

1992-2015 哲学者。プラグマティズムの紹介、実践や大衆文化や日常性に立脚した哲学を展開。「限界芸術論」では非専門的芸術家によって作られ大衆によって享受される芸術に対する概念を提示。丸山真男、鶴見和子らと「思想の科学」を創刊。「ベ平連」(ベトナムに平和を!市民連合)の発足に参加し、戦争反対運動を続けた。

 

 

 

 

(テ)

ディアスポラ

diaspora

ギリシャ語で「分散」「種を撒く(土地を耕す)」を意味し、離散して故郷パレスチナ以外の地に住むユダヤ人を指した。元の国家や民族の居住地を離れて暮らす。コミュニティ、離散すること自体を指すようになった。原義では故地への帰還を念頭におく。移住、移民、亡命との区別になりうるが、その区別は不可能ともいえる。

 

ディヤルバクル

Diyarbakır, Amed 

チグリス川上流部に位置するトルコ南西部の人口100万を越える都市。住民の大半がクルド人 。古代アルメニア王国の首都があった場所でもある。古くから交通の要衝で栄え、旧市街には古代ローマから東ローマ帝国時代に築かれた長大な城壁に囲まれ、アナトリア最古のイスラム寺院がある。10世紀後半から約一世紀間、南東アナトリアを支配したクルド系王朝のマルワーン朝があったがセルジュク朝に征服され、16世紀にオスマン帝国領となった。

 

テオドラキス、ミキス

Mikis Theodorakis

1925-2021 ギリシアの作曲家、歌手、政治家。ヒオス島生まれ。交響曲、合唱、室内楽、演劇、映画、連作歌曲で数多くの作品を発表。幅広い分野で作曲活動を行い、自らが歌うこともある。映画「その男ゾルバ」「Z」の音楽などを手掛けた。オペラの作曲にも傾注し、古代ギリシャ悲劇を題材に「メデイア」、「エレクトラ」、「アンティゴネ」の3部作を発表し、世界的な注目を集めた。

 

「デカブリストの嘆き」(曲)

То не ветер ветку клонит

1830~40年代に創られたロシアのロマンス(歌曲)。1825年のデカブリストの乱でシベリアに流刑された若い青年将校が、妻を思い、絶望の淵にある心情が歌われている。

 

デカブリストの乱

Восстание декабристов

1825年、貴族出身の青年将校が農奴解放を求めて起こした帝政ロシアで初めての武装蜂起。ナポレオンのモスクワ遠征に反撃してパリに入った彼らが、フランスの自由、平等の精神に触発された。鎮圧され、民衆の参加のない革命が結局は失敗に終わることを教えるとともに、後のロシアの革命運動にも大きな影響を与えた。

 

テキャル、アイディン

Aydin Teker

トルコのコンテンポラリー・ダンスのパイオニア的存在として知られる振付家。アンカラでバレエを学ぶ。人間の骨格や関節構造を知りつくし、それらの動きの限界を広げることで身体を解放するそこから新たな動きを生み出す。作風は時に「解剖学的」と評され、ヨーロッパ各地、エストニア、カナダ、米国、シンガポールなどでも上演されている。河崎と2011年からコラボレーションを続けている。db-ll- bass― 音、身体、楽器」

 

テクノ(ポップ)

Techno Pop

コンピュータで制御されたシンセサイザーやリズムマシーンを主要楽器とし、無機的で均等なリズムを特徴とする。1970年代後半から1980年代にかけて世界的に流行。「テクノ」は後発する1980年代初頭に、アメリカのシカゴの黒人ゲイカルチャーなどから発祥したハウスミュージックを経てデトロイトで誕生したダンスミュージック、クラブミュージックを指す。

 

デデコルクトの書

Dede Korkut

12世紀頃までに成立したとされる、チュルク遊牧民オグズ族の想像上の吟遊詩人 コルクト-アタのイスラム英雄叙事詩。中央アジアからコーカサスを経てアナトリアにいたる遊牧の世界を舞台とする12の物語から成る。オグズ族

 

「デデコルクト」

Dede Korkut

ドイツの現代音楽オーケストラドレスデンシフォニカの中央アジアの伝統楽器奏者とのコラボレーションによる、2014年の音楽劇マルチメディア作品。アルメニア系トルコ人の母を持つギター奏者マーク・シナンが、自身のルーツに関わるテュルク族の伝統と移民問題をテーマに作曲した。シナン、マーク

 

デッサウ、パウル

Paul Dessau

1894-1979  ドイツの作曲家。第一次世界大戦に徴兵され、反軍国主義思想を強める。ルーツであるユダヤ音楽や12音技法を研究し、ブルジョワ的な前衛性や芸術至上主義的態度と距離を置き、映画音楽、実用音楽の作曲に応用。1939年アメリカに亡命。劇作家ブレヒトと知り合い、中期以降の代表作といえる「肝っ玉おっ母とその子供達」や「セチュアンの善人」などを作曲。東ドイツに帰国後も共作を続け、叙情に流れない劇中歌や「乾いた」旋律を響かせた。ブレヒト、ベルトルト

 

テペギョス

Tepegoz, Tepegöz

テュルク族の説話「デデコルクトの書」に登場する異教徒の一つ目の怪物。→「デデコルクトの書」

 

デマルチク、エヴァ

Ewa Demarczyk

1941-2020 ポーランドの女性歌手。演劇大学在学中の1962年から文学キャバレーでデビュー。学生時代にフランス・パリのオランピア劇場をはじめ、東西ドイツほかヨーロッパ、ロシア、南北アメリカ大陸など世界中で公演。若くして戦死、殺害された詩人たちの詩などを歌った。身じろぎしない静謐な佇まいで「黒衣の天使」と称えられた。

 

デミルタシュ、セラハッティン

Selahattin Demirtaş

トルコのザザ系クルド人の政治家、小説家。1973年生まれ。2014年には大統領選に出馬、当選は逃したが、メディアでもクルド民謡をサズを弾きながら歌い、カリスマ的な人気を得た。2016年にテロ教唆・支援の疑いで身柄を拘束され、2018年の大統領選には獄中から立候補した。 日本でも編集「セヘルが見なかった夜明け」(早川書房 2020)が出版された。

 

デュビュッフェ、ジャン

Jean Dubuffet

1901-1985 フランスの画家。アンフォルメルの先駆者と見なされ、従来の西洋美術の伝統的価値観を否定し、芸術思想の枠を超えた創作を展開。精神病者や霊媒など、美術の世界の枠外にいる人々の芸術を称揚し、「アール・ブリュット(生の芸術)」と名付けた。コレクションしたそれらの作品を展示する美術館が、スイスのローザンヌにある。 アール・ブリュット

 

デュファイ、ギヨーム

Guillaume du Fay

1397-1474 現在のベルギーのブリュッセル近郊で生まれたとされる中世ヨーロッパの作曲家。グレゴリオ聖歌などの中世音楽からルネサンス音楽への転換期において新たな方向付けをした。当時のヨーロッパ各地の作曲論理を駆使し、複雑な多声音楽(ポリフォニー)を進化させた。中世音楽(ヨーロッパ音楽)

 

寺山修司

 

1935-1983 劇作家、歌人、詩人、映画監督。青森県生れ。1950年代後半には前衛短歌の代表的歌人と目される。1960年ころより「演劇実験室天井桟敷」を結成。市街劇など多彩な実験演劇を試み、アングラ演劇運動の担い手となった。代表作に「毛皮のマリー」、「奴婢訓」など。映画「書を捨てよ、町へ出よう」、「田園に死す」。ボクシング、競馬の評論など、多彩な活動を行った。

 

デリダ、ジャック

Jacques Derrida

1932-2016 フランスのユダヤ人哲学者。「脱構築」「差延」などの造語を用い、ギリシャ哲学以来の考え方自体のロゴス中心主義を批判し、二項対立的思考の内側から解体を「脱構築」と呼んだ。

 

デルスィム

Dersim

トルコ東部の地域トゥンジェリの旧称。アレヴィー派信徒の牧畜業を営むクルド系ザザ人が多く暮らす。県都の名はカランであったが、トルコ語のトゥンジェリに改称された。1937年とその翌年にはケマル・アタテュルクの命により「トゥンジェリ作戦」が遂行され、数千人の住民が死亡 。アナトリア半島の多様な民俗音楽の歴史と現在を発信し、トルコ政府の外交にも用いられる音楽レーベール「KALAN」は、設立者のこの地域にある出身地のこの地のクルド名にちなんで名付けられた。あるデルスィムの物語 クルド文学短編集、KALAN

 

鄧麗君(テン、テレサ、デン・リージュン)

 

1953-1995  台湾出身の歌手。1967年に台湾で歌手デビュー。香港、シンガポールなど東南アジアを中心に活躍し、1974年に日本デビュー。東アジア圏、中華圏で絶大な人気を誇った「歌姫」。禁じられていた時期もあるが、中国のポピュラー音楽への影響も大きい。中国の民主化運動を支援し、1989年の天安門事件に際して抗議活動を展開したことも知られる。喘息により42際の若さでタイのホテルで客死した。

 

天空(テングリ)信仰

Tengri

匈奴の時代から確認されている。中央アジア、シベリアのテュルク、モンゴル族における、天空世界(澄み切った青空)や天神の下にいる神々への信仰。近隣狩猟民族なども含む古代信仰に共通する、「天界」、「地上界」、地下の「冥界」の三界の層が存在。

 

「天井桟敷の人々」

Les enfants du Paradis

マルセル・カルネ監督によるフランスの映画作品(1945)。脚本は詩人のジャック・プレヴェール。ジャン=ルイ・バローがパントマイム芸人を演じた。19世紀半ばのパリを舞台に、一人の女芸人を巡る男たちが織りなす群像劇。

 

デングベジュ

Dengbej

クルド人の伝承叙事詩や、暮らしの中での事件などを歌う口承芸能。ほとんど無伴奏の独唱。無拍節による、ヨーデルのような裏声と地声を行き来し、深いビブラートと激しい歌唱法で歌われる。芸能として伴奏楽器を伴うこともある。

 

「天然の美」(「美しき天然」)

 

田中穂積作曲、武島羽衣作詞による1902(明治35)年に発表された唱歌。三拍子で奏され、日本初のワルツとされる。大正時代より無声映画上映時の小楽団やチンドン屋、サーカスの呼び込み等の演奏で頻繁に使われ、ジンタとして親しまれた。朝鮮半島に伝わり、極東ロシア、満州などに移住した人々(高麗人)が望郷歌として替え歌し、強制移住させられた中央アジアの地でも歌い継がれた。「流離の高麗人」

 

 

 

 

(ト)

ドイツ劇場(カザフスタン)

German Drama Theate

カザフスタンのアルマティ市の劇場。ヴォルガドイツ人のカザフスタン移民の劇場。1984年にアルマティに移転し、1945年の日本人シベリア抑留者によって建設された映画館跡が拠点となった。建築の老朽化により、元高麗人劇場に再移転。

 

「東西美術館」(ウクライナ)

Музейзахідногоісхідногомистецтва

1923年に宮殿跡に開設されたウクライナのオデッサ市にある美術館。古代、東西ヨーロッパ、東洋の美術を所蔵。ロビーホールと無柱の大理石階段が2017年の音楽詩劇研究所のウクライナ、ロシア、東欧のダンサーとのコラボレーション作品の会場となった。現代美術コーナーでは、2014年以降のロシアとのウクライナ紛争で亡くなったウクライナ軍兵士の肖像画を描く企画展「もしも「戦争がなかったら」が開催されていた。

 

トゥカイ、ガブドゥッラ

Gabdulla Tuqay, Габдулла Тукай 

1886-1913 タタール人の歌聖といわれる詩人。民間伝承に基づきつつ、伝統的詩風を脱却した新しいタタール詩の創始者。現代タタール語の正書法にも多大な影響を与えた。代表的な詩「母国語」は広く知られ、民族にとって「国歌」のような歌。現在、消滅の危機のあるタタール語の保護の象徴的な役割を担っている。

 

東海道五十三次 

 

江戸時代に東海道筋に設けられた、江戸日本橋から京都三条までの間の 53の宿場。多くの浮世絵による絵画、文学に描かれた。

 

東学党の乱( 甲午農民戦争 )

동학농민운동

1894年の農民蜂起。李朝末期の混乱や日清両国の半島を巡る利害関係のなかで、キリスト教等の西学に対し、古来のシャーマニズムを援用した朝鮮独自の思想体系として東学信仰が民衆に広がった。その指導者の一人であった全琫準が軍役人の不正に対し反乱を起こし、日清戦争の引き金となった。反日思想を強めて反乱は広がったが全琫準は捕らえられ、政府によって処刑された。→全琫準

 

道教

 

中国民族固有の宗教文化。老子を教祖に奉じるが、不老不死の神仙を希求し、古来の民間信仰も広く取り入れた多神教。日本の陰陽道 に大きな影響がみられる。

 

東京オリンピック2020

 

新型感染症の世界的蔓延により延期され、2021年に、パラリンピックとともに開催された国際競技大会。

 

「東京音頭」

 

昭和初期に創られた新民謡。西条八十作詞、中山晋平作曲。「丸の内音頭」の名でレコード化されたが、1933(昭和8)年に改作。踊の振付けまでレコードに付され、熱狂的に広まった。国民の意識をひとつに束ねようと画策する内務省や軍の後押しがあったとされる。

 

ドゥドゥク

 

アルメニアなどコーカサス地域でよく使われる、杏の木からつくられる木管のダブルリードの管楽器。「世界で一番哀しい音色」といわれることがある。アルメニア正教の聖歌、民謡等様々な場面で用いられる。トルコではメイ、アゼルバイジャンではバラバンと呼ばれる。最も知られる現代の奏者としてアルメニアのジヴァン・ガスパリアンがあげられる。

 

トゥバ(共和国)

Tuva, Тыва

バイカル湖の西、サヤン山脈とタンヌ・オーラ山脈の間に位置する。スキタイ、フン、チュルク汗国、ウイグル、古代キルギス国家などが支配し、1318世紀にはモンゴル、清朝の支配下に入り、さらにロシア帝国に併合された。1921年にタンヌ・トゥバ人民共和国として独立したが、1944年にはソ連邦に加入。トゥバ語はトルコ語と同じチュルク諸語に分類される。放牧やトナカイの飼育と狩猟を中心とした生活が営まれ、喉歌フーメイが有名。ホーメー(フーメイ)

 

トゥバのシャーマニズム

 

シャーマニズム信仰が浸透していたが、18世紀ごろよりモンゴルを経由してチベット仏教が伝来し、モンゴル系との同化傾向を強めた。土着信仰に寛容な教義をもつ密教文化との同居となったため、イスラム教を受容した他のテュルク系と比較し、モンゴル文化の影響が強い。テングリ

 

ドゥホーヴヌィエ・スチヒー

Духовные стихи

ロシアで古儀式派の人々などが伝承した聖書など、宗教的テーマを含む民間の詩篇、巡礼霊歌。教会の典礼における「聖歌」とは異なり、土着の慣習や習俗とも連関し、喜捨を受けながら放浪するカリーキ・ペレホージェによって歌い伝えられた民間宗教詩。→カリーキ(・ペレホージェ)

 

「東方声聞録」

 

2019年に東京で声をテーマに行われた音楽詩劇研究所主宰のフェスティバル。「つむぎね」、「シルクロード能楽会」、「音楽詩劇研究所」の三団体の上演とワークショップ。 シルクロード能楽会、 つむぎね

 

「童夢」

 

大友克洋による漫画作品(1980~1981)。巨大団地で起こる不審死事件をめぐり、住人である超能力者の老人と少女の戦いを描いた物語。埼玉県川口市、JR蕨駅西口付近の、当時新興であった芝園団地がモデルになった。芝園団地

 

ドゥミール、ドゥユグ

Duygu Demir

トルコ の女性チェロ奏者。パリのコンセルヴァトワールでチェロを修め、クラシック、現代音楽、民俗音楽、即興演奏と活動の幅を広げる。ライフワークとして、ストリートでの演奏も続けている。音楽詩劇研究所の2017年「黒海プロジェクト」に参加。

 

トゥングース系民族(ツングース)

 

満州からシベリア、極東にかけての北東アジアで狩猟生活を送っていた民族。満州族、エヴェン族、エヴェンキ族など。満洲族の女真は、モンゴルに征服された金と中国最後の王朝である清を建国。→清(シン)

 

トーキングブルース

 

アメリカのカントリー・ミュージックや20世紀のフォークソングなどの様式。黒人音楽のブルースの進行や曲調ではないいがシンプルなコード進行の伴奏で、歌うというより語るような歌唱。のちにボブ・ディランなどがこのスタイルで演奏することもあり、日本の1970年代以降のフォークソングにも影響を与えた。

 

トータルセリエリズム

total serialism

20世紀のヨーロッパの前衛音楽の手法。フランスの作曲家オリヴィエ・メシアンらが12音主義、セリー(音列)音楽から発展させた。音の並び(音列)だけでなく、長さ、強弱、アタックなどをそれぞれ種別化、細分化して行われた。従来の情動との関係で創作された音楽美学と対極をなし、科学的な創作方であり、戦後までアカデミズムの中心あった。電子音楽、ポストセリエリズム、ミニマル音楽が台頭し下火になった。→12音主義

 

トーテンポール(信仰 トーテムポール)

totem pole

一定の社会集団、部族や親族などの集団が、祖先の出自などとして信仰する自然物、とくに動植物をトーテムという。柱として立てられ、トーテムを祀り儀礼を執行し、崇拝する。北アメリカ北西海岸に住むインディアン諸族のものとして知られるが、類似する習俗は世界各地にみられる。→チャンスン

 

遠野

 

岩手県南東部の早池峰山をのぞむ内陸に位置する。柳田国男「遠野物語」で河童や座敷童子などが登場し、民話・伝説の宝庫として知られる。→ 柳田国男

 

ヴトカチュク、ィターリ

Vitaliy Tkachuk

ウクライナのギター奏者。ドイツのハンス・アイスラー音楽大学、インドで民族音楽を学び、数々の国際音楽祭で演奏。2017年の音楽詩劇研究所の「黒海プロジェクト」のオデッサ公演で、インド北部地方の笛のバンスリ奏者として共演。

 

時々自動

 

朝比奈尚行らによって結成されたパフォーマンスグループ。1980年代初頭から活動開始。「音楽で演劇する」をコンセプトに実験的な作品を発表し続けている。 映像と、独自のシステムよるダンス、楽器演奏とコーラス、紙芝居、人形劇や実際の食事風景など、種々を組み合わせてのパフォーマンスを展開。故、今井次郎が所属し、数々の音楽を作曲した。今井次郎

 

常磐津(節)

 

三味線音楽、浄瑠璃の流派。人形浄瑠璃と結びついた義太夫節に対して歌舞伎舞踊の伴奏音楽として発展。三味線は中棹を用いる。ゆったりとした曲調で物語が語られ、演奏、歌ともに極端な変化を加えない自然な趣が特徴。

 

徳澤青弦

 

作曲家、チェロ奏者。さまざまなアーティストとレコーディングやライヴサポート、舞台音楽の作曲を中心に活動し、2021年に開催された東京オリンピック2020の開幕式での音楽も一部担当した。

 

独ソ戦(第二次世界大戦)

 

1941-1945。二次世界大戦の重要な一局面をなしたソ連とドイツや枢軸同盟国との戦争。1939年に結ばれた独ソ不可侵条約を破棄し、1941年にドイツ軍がソ連領侵攻。不意をついたドイツ軍が当初は優勢だったが、極寒に慣れず、ソ連国民はスターリンの指導下に祖国擁護に立ち上がり優位に立った。1945年ベルリンの占領で終結し、ナチスドイツを崩壊。連合国側の勝利に大きく貢献するとともに、戦後から続く冷戦構造を確立させた。「大祖国戦争」といわれ、現在でも戦勝記念日(59日)が大々的に讃えられる。

 

常世

 

永久に変わらないこと。永遠。民俗学、国学者折口信夫は、海の遥か彼方の祖霊が住まう異郷(「妣<ハハ>がクニ」)とし、そこから現れる死霊「まれびと」が福をもたらし、それにまつわる神事的諸芸を芸能等の根源であると説いた。

 

ドストエフスキー、フョードル

Fyodor Dostoevsky, ФёдорДостоевский 

1821-1881 ロシアの小説家。貴族出身だが貧しい医者の息子としてモスクワに生まれる。軍職についたが文学を志す。処女作「貧しき人びと」が話題となるが、社会主義活動で逮捕されシベリアに流刑された。社会の混迷を背景として、神学的対話や内面、心理的矛盾との相克の世界を描き、人間存在の根本的問題を追求した。「罪と罰」「白痴」「カラマーゾフの兄弟」などの傑作を残す。

 

突厥

 

モンゴル高原で活動したトルコ系の遊牧民。552年にユーラシアの東西にまたがる突厥帝国を建設。ササン朝や隋・唐と同時期。583年に東西に分裂。モンゴル高原を支配した東突厥は、630年、唐の攻撃で滅び、中央アジアを支配した西突厥も唐に討たれ、7世紀末に滅亡。東突厥は682年に復興してモンゴル高原に帝国を築いた。独自の突厥文字を作り、唐とも交渉があったが744年に同じトルコ系のウイグルに滅ぼされた。

 

トッケビ

도깨비

朝鮮半島に伝わる精霊、妖怪、鬼神。説話、日常会話、諺などに頻繁に登場する。一本足の巨人といわれ、陰気な場所や天候に現れる。いたずら好きでユーモラスな一面をもち、人に深刻な危害を加えることはなく、人に財物を与え福をもたらすこともある。現在では主に全羅道の一部と済州島に多く伝説が残っている。

 

トッペギ

덧뵈기

韓国の李朝時代より伝統的流浪の芸人集団の男寺党(ナムサダン)の演目の一つである仮面劇(タルチュムノリ)。さまざまな仮面は現在も民芸品として人気が高い。顔面に顔全体に斑点のあるものもよく見受けられ、ハンセン病患者の嘆きを演じるムンドゥンイチュム(문둥이춤)の時に用いられる。ナムサダン(男寺党)

 

「トナカイに乗った狩人たち」

 

ロシアの民俗学者B.A.トゥゴルコフの著書(刀水書房1981)。広大なシベリアのタイガを漂泊するエベンキ族の生態。衣食住,狩猟・遊牧生活から家族、氏族、原始文字、暦、シャーマニズム、宇宙観を概説。

 

ドネツク

Donetsk, Донецьк

ウクライナ東部の主要都市。同国有数の工業地帯として知られる。ウクライナ紛争において、2014年より親ロシア派の非承認国家ドネツク人民共和国が掌握している。

 

ドビュッシー、クロード

Claude Debussy

1862-1913 フランスの作曲家。マラルメら象徴派の詩人や画家の影響を受け、印象主義音楽を書いた。ガムランなどアジアの伝統音楽からの影響も受け、ヨーロッパ古典音楽の機能和声法から逸脱、拡張し、不協和音程、変化和音、全音音階などを頻繁に使用。代表作はオペラ「ペレアスとメリザンド」、管弦楽「牧神の午後への前奏曲」。和声法はジャズにも影響を与えた。

 

ドミトリエフ、ニコライ

Nikolai Dmitriev, Николай Дмитриев 

1955-2004ロシアの音楽評論家、ジャーナリスト。モスクワの前衛音楽、民俗音楽の拠点「ドム(ДОМ)」の創設者。

 

ドム(文化イベント施設)

Культурный центр ДОМ

ロシアの前衛音楽、民俗音楽の拠点となるライブスペース。1999年にモスクワに設立された。毎年秋に国際音楽祭ロング・アームフェスティヴァルを開催している。

 

友川カズキ(友川かずき)

 

歌手、詩人、画家、競輪評論家。秋田県出身。中学生時代に中原中也の作品に出会い、影響を受けて詩を書き始める。上京して就職し、飯場で生活しながら歌手活動を開始。1971年、全日本フォークジャンボリーに飛び入り参加。独自の絶叫スタイルと呟くような歌唱で知られ、2000年頃よりヨーロッパを中心に海外でも高い評価を得る。

 

豊住芳三郎

 

ドラム奏者。日本のフリージャズの嚆矢。1960年代よりジャズ演奏の傍ら、ミッキー・カーチスの「サムライ」に参加し、海外での演奏の見聞を得てキャリアの初期からフリージャズムーブメントの中心地であったシカゴに渡り、アート・アンサンブル・オブ・シカゴ関連と演奏活動。以後、欧米の演奏家の招聘活動にもつとめ、世界の即興演奏シーンで信頼が厚い。近年は、台湾、フィリピンなどアジアでの活動も精力的。

 

トランスステップロード(プロジェクト)

Trans-Steppe Road—Tokyo Project

カザフスタン、タタールスタン、ロシア、東京で行われた音楽詩劇研究所のプロジェクト (2019)。

 

 「鳥」(楽曲)

птица

ペレストロイカ時代から継続して活動するロシアのニュ−ウェーブバンド「アウクツィオン」の代表曲の一つ。→ アウクツィオン、ペレストロイカ

 

鳥追い(日本)

 

農作物の害鳥を田畑から追い払うこと。小正月に子供たちが鳥追唄を歌いながら棒で鳥を追払うさまを演じる予祝行事。江戸時代に職業化し、三味線と編み笠を持った二人の女性太夫が鳥追唄を歌って祝言を述べる門付芸となった。この芸能、芸能者を「鳥追い」と呼んだ。

 

トリスターノ、レニー

Lennie Tristano

1919-1978 アメリカの盲目のピアニスト、作曲家。クールや新潮流のジャズ奏者として活動。録音時に、ピアノの残響特性をあえて排除したり、アドリブ芸術の一回性の神話に背くような編集作業を行ったりしたため、物議を醸した。リー・コーニッツやビル・エヴァンスらの奏者を通じてジャズ界に大きな影響を与え、ビバップやバロック音楽をさらに現代的に抽象化させた作品等は後に再評価された。

 

トルストイ、レフ

Lev Tolstoy, ЛевТолстой 

1828-1910 ロシアの作家。ロシアの小説家・思想家。人間の良心とキリスト教的愛を背景に、私有財産の否定、非戦、非暴力を唱え、人道主義的文学を樹立。晩年、放浪の旅に出て、郊外の小さな駅舎にて没した。二大名作「戦争と平和」「アンナ・カレーニナ」のほか、民話的作品や宗教論文を数多く残した。

 

ドレスデン・シンフォニカ

Dresden Symphoniker

ドイツのドレスデンの交響楽団。レパートリーは新作の現代音楽を中心に、中国、ラテンアメリカ、中央アジア、トルコ、中東などのさまざまな地域の音楽に焦点を当てている。作ジョン・アダムズ、フランク・ザッパ、ジョン・マクラフリン、マーク・アンソニー・ターネージ、譚盾らの作品を初演している。→「デデコルクト」()

 

ドローン(音楽)

 

楽曲中の通奏音で音高の変化無しに長く持続される音。低音が担う場合が多い。完全五度などの複音の場合もある。インド古典音楽など民族音楽文化の中で多用されてきたが、ラ・モンテ・ヤング、トニー・コンラッドなど特にアメリカ実験音楽の中では、ドローン自体にフォーカスを当てた「ドローン・ミュージック」の展開もある。

 

トロツキー、レフ

Lev Trotsky, ЛевТроцкий 

1879-1940 ロシアの革命指導者、理論家。ウクライナのユダヤ系農民の子として生まれる。レーニン死後は主導権をスターリンと争い、永続革命論を唱え、世界革命を主張して一国社会主義を批判。ソヴィエト政権を追放され、1940年に亡命先のメキシコで暗殺された。社会主義リアリズムとは一線を画す芸術論、文学論はフランスのシュールレアリストたちにも大きな影響を与え、実質的にトロツキーとアンドレ・ブルトンの共著といえるマニフェスト「自由な革命芸術に向けて」(1938)もある。ブルトン、アンドレ

 

トロット

트로트

日本統治時代より流行した韓国の歌謡曲。戦後に誕生した日本の歌謡曲のジャンルである演歌の源流と指摘されることもある。伝承音楽に多い3拍子ではなく、4拍子のリズムのフォックストロット(狐の歩行)が語源。3拍子系音楽が多い伝統的韓国音楽の特色をあらわすものではなく、日本の影響を受けた、伝統とは異なる低俗文化として蔑視されることもある。

 

トンコリ

 

樺太アイヌで用いられる撥弦楽器。通常は4度または5度で調弦され、5弦。座って楽器を左肩に立て掛けたり,腕に抱きかかえたりして、両手の指で開放弦をはじく。寝転んで演奏されることもある。独奏や踊りの伴奏に用いられ、独奏では自然界の音を模倣描写する曲が多い。楽器内に小さいガラス玉を入れることによって生命が宿ると信じられた。

 

「どん底」(戯曲)

На дне

ロシアの作家マキシム・ゴーリキーの戯曲(1902)。簡易宿泊所を舞台に,泥棒,元男爵,アル中の役者,売春婦らが織りなす群像劇。日本でも翻訳され新劇運動の象徴的上演作品の一つ。ゴーリキー、マキシム

 

どんど焼き(左義長)

 

小正月に行われる、正月飾りやお守り、お札などを燃やす火祭りの行事。地方によって呼び方が異なるが、日本全国で広く見られる習俗。近似する火祭りの習俗は農耕文化に特徴的で、とくにアジア、ロシア各地でみられる。

 

東便制( トンピョンジェ )

동편제

韓国の羅道山岳地帯にみられたパンソリの歌唱方。一般的に日本でイメージされることが多い西便制に対し、男性的で、装飾が少ない、天賦の声量による重厚で素直な歌い方に特徴がある→西便制

 

ドンブラ

Dombra, домбыра 

カザフスタンの代表的なリュート属の2~3弦の伝統撥弦楽器。棹の部分には、ギターのようにフレットが付いている。馬が大地を駆ける様子が歯切れよく表現される。12-18世紀まで吟遊詩人が古くから伝わる抒情詩を弾き語るのに使用。独奏曲が高度に発達し、採譜された伝承曲だけでも数千を数える。また民謡や叙事詩語り、即興詩の朗誦など歌謡の伴奏にも欠かせない。

 

 

 

 

(ナ)

内藤高

 

1949-2008 比較文学者。著書に「明治の音」(中公新書 2005)、翻訳にクローデル「朝日の中の黒い鳥」(講談社学術文庫 1988)がある。「明治の音」

 

ナウロズ(ネウロズ)

nowrūz Наурыз

中央アジアなどで、春分の日に行われる祝祭。地域によってはナウルーズ、ナイルーズ、ネヴルーズとも言う。農事暦で重要であることから、イランを中心に、中央アジア、アゼルバイジャンからアフリカまでに及ぶ広い地域で祝われる。ゾロアスター教の新年の祝祭に由来するといわれる。ナウルズはカザフ語読み。トルコではクルド人の祭日としても知られ、クルドの民族運動が一年でもっとも盛り上がる日でもある。

 

永池健二

 

日本古典文学者。日本古典文学(歌謡史・歌謡文芸の研究)研究者。→「逸脱の唱声 歌謡の精神史」

 

長唄

 

細棹三味線を伴奏に用いる日本の歌唱芸能。謡曲,浄瑠璃などの要素を取り入れた幅広い音楽性をもつ。義太夫節など語りを中心とした「語り物」とは異なり、唄を中心とする。18世紀初頭に江戸の歌舞伎舞踊の伴奏音楽として起こり、その後も歌舞伎と密接な関係をもって発展。19世紀初め頃には歌舞伎を離れた「お座敷長唄」が生まれた。小唄

 

中沢新一

 

宗教学者、人類学者。チベットで仏教を学び、帰国後、日本の民俗学やフランス現代思想を解釈し、人類の思考全域を視野にいれた考古学や芸術人類学を構想。独自の学問「対称性人類学」を提唱。

 

中島敦

 

1909-1942 小説家。少年時代を朝鮮半島で過ごし、1916年南洋庁国語教科書編集書記としてパラオに赴任。南洋の島々を舞台とした「光と風と夢」、中国の史実・古典に題材を求めた作品を書いた「李陵」「山月記」「光と風と夢」など。34歳で逝去。「古譚」

 

中村喜和

 

ロシア文学者。中世文学、文化史、日露文化交流史を研究。著書にロシア正教古儀式派のユートピアや伝説を検証した「聖なるロシアを求めて」、「おろしや盆踊唄考」など。→ロシア正教古儀式派

 

中山晋平

 

1887-1952 作曲家。童謡、歌謡曲、新民謡、芸術歌曲などを作曲。民謡を愛し、その音階やメロディーを研究して親しみやすい曲を作った。作曲数は2000曲を超え、主な曲に「ゴンドラの唄」、「波浮の港」、「証城寺の狸囃子」、「てるてる坊主」など。

 

「ナキサワメ」

 

古事記に登場する女神。巫女が涙を流し死者を弔う儀式が存在し、それらを担う泣き女の役割が神格化したものといわれる。そのような巫女の事を泣き女といい、「泣沢女神」、「哭沢女命」とも表記された。

 

哭き歌(哭き女)

 

琉球、中国、朝鮮半島、台湾をはじめ、ヨーロッパや中東など世界各地で散見される伝統的な習俗。ヨーロッパではロマ人の職の一つであったともいわれる。→プリチターニエ遺族(家族や親族)の代わりに故人を悼み、「悲しい」「辛い」「寂しい」などを表現するために大々的に歌う。独特の節をつけて、延々と泣きじゃくることを生業(または副業)とすることもあった。

 

嘆き歌(ラメント)

lament

嘆き唄。古代・近代を問わず、多くの口承の中では、ラメントは一般的に女性によって演じられるジャンルだったといわれる。

 

ナゴルノ・カラバフ共和国(アルツァフ共和国)

Nagorno-Karabakh Republic, Republic of Artsakh

旧ソ連のアゼルバイジャン共和国の「ナゴルノ・カラバフ自治州」から独立した、人口およそ15万人の事実上の国家。アルメニア人が多く住み、アルメニアの支援で1991年に独立を宣言し、「アルツァフ共和国」を名乗った。

 

ナゴルノ・カラバフ紛争

 

アゼルバイジャンとアルメニア間の紛争。紛争地域は、1923年にアゼルバイジャン共和国の自治州となったが、それまで共存してきた多数派のアルメニア人と少数派のアゼルバイジャン人の対立がソ連末期から始まり、1991年に戦争化。同年アルメニアから全面的な支援を受けた自治州は「ナゴルノ・カラバフ(アルツァフ)共和国」として独立宣言され、以降武力闘争が始まる。ロシアやフランスの仲介で停戦したが、アゼルバイジャン人の多くは避難民となって退避。その後も紛争は継続。

 

ナザルバエフ、ヌルスルタン

Nursultan Abishevich Nazarbayev

カザフスタンの政治家。ソ連の副大統領候補でもあった有力者。ソ連崩壊による独立国家共同体の発足時に指導力を発揮した。1991年のカザフスタン独立から2019年まで約30年まで絶大な支持のなか、法改正で任期を延長し、私物化といわれるほど体制を掌握。辞任後、首都アスタナはその名にちなんでヌルスルタンと改名。禅譲後も政権に留まったが、2022年の燃料価格の引き上げに対するアルマティ市の暴動により、実質的な失脚が伝えられた。

 

ナチ(ス)

Naz, Nationalsozialistische Deutsche Arbeiterpartei

国民社会主義ドイツ労働者党の通称(蔑称)。ヒトラーが首相となった1933年から45年までドイツを支配し、第三帝国ともいわれた。中産階級の反社会主義・反民主主義などの思想と運動が、急激な工業化のために没落しつつある中間層の救済を求める労働運動などを通して浸透。反民主、反共産、反ユダヤ主義を標榜し、全体主義的独裁政治を推進した。

 

「懐かしき江南」

그리운 강남

北朝鮮愛唱歌。日本統治下の抑圧により、平壌近郊の江南から鴨緑江と豆満江北部地域の間島や沿海州に移住しなければならなかった人々の郷愁が歌詞に描かれる。韓国では作曲者の安基栄が解放後に北朝鮮に渡ったため禁止曲だったが、子供たちの遊び歌のなかで伝承。1988年に北朝鮮に渡った文人と芸術家の作品に対する禁止措置が公式に解除された。

 

ナナイ(族)

Nanai, нанайцы

アムール川流域の漁労採集を主とする狩猟少数民族。主にロシア極東に暮らし、中国領内ではホジェン族(Hezhen)と呼ばれる。アムール川中流からウスリー川、松花江にかけての原住民。魚皮皮を用いた衣服や装飾品の美も注目される。

 

「ナニャドヤラ」

 

青森県南部から岩手県北部にかけての地域及び秋田県鹿角地方の旧南部藩領内に伝わる盆踊り、民謡。意味不明な歌詞のために古来さまざまな研究者が興味を持ち、数多くの説が発表され、なかにはヘブライ語説もある。

 

ナホトカ

Nakhodka, Находка

ロシア東部、沿海地方の港市。不凍港を有し、シベリア鉄道の支線の終点となっている。戦後シベリア抑留日本人送還の基港であり、1967年から1993年まで日本の総領事館が置かれた。

 

「涙」(楽曲)

Le Prieure

17世紀のフランスの作曲家・ヴィオール奏者のサント-コロンブによるヴィオラ・ダ・ガンバの古曲。サント-コロンブ

 

ナムガル

Namgar, Намгар

ブリヤートの女性人気歌手ナムガルとそのグループ。ブリヤート-モンゴルの伝統的な歌や現代のロックやジャズ要素が融合する。アンサンブルでは、琴や、蛇皮線のようなチャンザ、馬頭琴モリンホールなどのブリヤートの弦楽器と現代楽器が組み合わされる。2014年に日本公演も行われた。

 

ナムサダン(男寺党)

남사당

李朝中期から1920年代にかけて、喜捨を集めて生活をした韓国の芸能集団組織。村の発展と人々の健康を祈願し、綱渡り、皿回し、農楽、仮面劇、とんぼ返り、人形劇を演じた。貴族社会の非道徳性や腐敗をユーモラスに風刺し、民衆の意識を目覚めさせる役割を果たした。李朝後期から少年たちが男色を売る傾向が強まり、女性で構成されるヨサダン(女寺党)も売春業と連動。1960年代以降、民主化運動の中で伝統を継ぐ人びとが他の伝統芸能とともに復活させ、その象徴となった。

 

ナムチラク、サインホ

Sainho Namchylak,  Саинхо Намчылак

ロシア連邦トゥバ共和国出身のヴォーカリスト。モンゴルとの国境近く、南シベリアに位置する小さな村で生まれた。7オクターブともいわれる声域と技術、芸術的なリサーチと文化的・宗教的背景に裏打ちされたパフォーマンスは「過去も、現在の最先端あるいは未開の領域までも、聴かせ、旅させる」と評される。音楽詩劇研究所では2018年のユーラシアン・オペラに参加後もコラボレーションを重ねている。

 

「楢山節考」

 

深沢七郎の小説(1956)。姨捨山伝説を用いた同作等を原作にした木下恵介(1958)、今村昌平(1983)が監督した映画。深沢七郎

 

鳴海英吉

 

19232000 2年間のシベリア抑留体験についてなどを詩作し、帰国後、詩誌「列島」に拠り戦後詩を切り開いた抑留詩人。たとえば諜報活動に携わるロシア語話者であった詩人の石原吉郎や内村剛介と異なり、下級兵士の立場から極限状態抑留者の現実を詩にした。

 

南蛮文化

 

1617世紀に、東南アジアを経由して日本に渡来したカトリック系キリシタン宣教師、貿易商によって伝えられた外来文化。ポルトガル語を語源とするものが今日まで多く残っている。

 

南島歌謡(日本)

 

民俗学者谷川健一らが、万葉以前の、奄美や沖縄など南の島々に残された呪言、呪謡などを「南島歌謡」としてそこに日本の古代歌謡の原像の起源を求めた研究。→谷川健一

 

難民認定(制度、日本)

 

人種、宗教、国籍、政治的意見などの理由で、自国にいると迫害される(あるいはその可能性がある)ため、他国に逃れた人々を難民と認定し、居住許可を与えるための手続、制度。日本は国際社会の中で他国と比較して、その受入れ人数の実績が極めて少ない。

 

 

 

 

(ニ)

「新潟」(詩)

 

在日朝鮮人の詩人金時鐘が1970年に刊行した詩集。北への「帰国事業」の出港地である新潟から海を隔てた朝鮮半島をのぞむ長篇詩。作者によると本国で越えられなかった朝鮮半島を南北に分断する北緯38度線を、日本で越えるという発想がモチーフになった。北側の元山が詩人の本籍地。金時鐘

 

ニーコン(宗教改革、ロシア) 

 

1666年のモスクワ総主教ニーコンによる、十字の切り方の順序等の典礼改革。改宗を拒んだ人々への対処は、当初は倍額納税などだったが、やがて拷問、処刑など迫害を強めた。そのため多くがウクライナ、シベリア、ロシア極東地域、ポーランド、ベラルーシ・トルコ、新疆などに離散した。ロシア正教古儀式派、セメイスキー

 

新美博允

 

ギター奏者。ボサノヴァ歌手の木下ときわ、とともにバンド「Dois Mapas」を結成。打ち込みやサンプリングと、アコースティック楽器が絶妙にブレンドされたアレンジが、おもにブラジル音楽ファンの間で話題となった。バンド活動休止後も編曲家、演奏家として活動している。

 

ニコライ堂(東京復活大聖堂)

 

東京都千代田区にある正教の大聖堂。正教会の教えをもたらしたロシア人修道司祭聖ニコライの名に由来する。「お雇い外国人」として来日したイギリス人建築家ジョサイア・コンドルの実設計により1891年竣工。関東大震災により煉瓦造の鐘楼が倒壊してドームを破壊し、内部や木造部分の多くを焼損。1929年復興。第二次世界大戦戦時中、東京大空襲では、安置場所のない遺体が大量に大聖堂に運び込まれた。

 

西川千麗

 

1945-2012 日本舞踊家。京都生まれ。二代目家元西川鯉三郎、三代目家元西川右近に師事。1981年より創作舞踊公演「千麗舞の夕」を開始し、京都・東京で毎年開催。作品の構成、振付、脚本、衣裳、舞台美術、音楽の全てを自己の原案で創り上げるスタイルを貫き、高い精神性と現代的感性にあふれた作風は、日本舞踊の世界を超えて広く支持を得た。フランス、ポーランドなど欧米でも積極的に公演。

 

ニジニ・ノブゴロド

Nizhnij Novgorod, Нижний Новгород 

ロシアの大河ヴォルガに、その右岸最大支流オカ川合流地点に開けた都市。古来交易都市として栄えた。1932年から1990年までは、出身者である作家マクシム・ゴーリキーにちなんで街の名は「ゴーリキー」だった。

 

ニジンスキー、ヴァーツラフ

Vaslav Nijinsky, Вацлав Нижинский  

1890-1950 ウクライナ出身の20世紀を代表する舞踊家。キーウに生まれた。両親ともにポーランド人のダンサー。セルゲイ・ディアギレフのプロデュースによりパリでバレエ・リュス(ロシア・バレェ)を旗揚げ。ドビュッシーの管弦楽曲「牧神の午後への前奏曲」による、「ストラヴィンスキーの「春の祭典」などエポック・メイキングな作品に振付けし、注目を集めた。ディアキレフと決裂後、統語失調に苦しんで精神病院を転々とした。

 

日蓮

 

1222-1282 鎌倉時代の僧。日蓮宗の開祖。辻説法を行い「南無妙法蓮華経」を唱え法華経を伝道。蒙古襲来を予言し北条時頼に献じたが、「立正安国論」は国難や他宗を訴える過激な内容であったっため伊豆に流刑された。1263年許されて鎌倉に帰るも、佐渡へ流刑。3年後に鎌倉に帰った年に蒙古が襲来し,幕府は日蓮に意見を求めたが応じず、山梨の身延山の草庵にとどまった。

 

日蓮宗

 

鎌倉中期に日蓮によって開かれた宗教。釈迦の唯一の教えであるとして「法華経」を帰依の対象にし、現実における仏国土建設をめざす。本門の本尊・本門の題目・本門の戒壇の三大秘法を宗旨とし、即身成仏を期する。その本質は「南無妙法蓮華経」に尽きるとされる。宮沢賢治が信仰した国柱会など、今日にいたる国粋的傾向も持つ新興の仏教系宗教団体の多くが、日蓮宗の分派、あるいは影響化にある。

 

日露戦争

 

1904-1905 1904(明治37)年2月から翌年9月までの、日本とロシア帝国が朝鮮と南満州地域の支配をめぐる戦争。日本は多額の戦費と戦死者を出し、後の政権運営に大きな影響を及ぼした。日本は5月の日本海海戦などで勝利を収めたが、ロシアでは革命運動も勃発し、双国とも戦争遂行能力において限界に達し、アメリカ大統領ルーズベルトの斡旋によりポーツマスで講和条約を締結。ポーツマス条約

 

日韓併合(韓国併合)

 

1910年、韓国併合に関する条約によって日本が併合し領土化した。その後、194599日に朝鮮総督府が連合国軍への降伏文書に調印するまで35年間統治し、さまざまな分野で同化政策を行った。

 

ニブフ(族)

Nivkh

樺太北部、アムール川流域に居住する狩猟民族。20世紀末の人口は約 4600人。言語は古シベリア諸語の1つとされ、周囲の言語から孤立する。近隣のツングース系統とは異なり、モンゴロイドの一群とされる。漁猟を中心に生活したが、昭和初期にはトナカイ飼育が普及。また他の樺太先住民族と同様に生活余剰品の交易を他民族と行った。

 

「日本奥地紀行」

Unbeaten Tracks in Japan

イギリスの女性旅行家イザベラ・バードの記録紀行文。1878(明治11)年の3ヶ月かけての東京から北海道(蝦夷地)での体験が、自己の感性で率直に語られる。近代化以前の日本、とりわけ庶民の生態を窺い知れる貴重な資料。アイヌに関する記述も多い。

 

「日本春歌考」(書籍、映画)

 

大島渚監督の映画作品(1967)。明治、大正期に演歌師の草分けであった添田唖蝉坊の長男の添田知道が性に関する俗歌を収集した「日本春歌考」に題名を借りて映画化。性的な妄想と現実との間で、自己を喪失していく大学受験生たちの姿を通じて、天皇制、国家や家族といった共同体と個人との係わりを強く打ち出した作品。添田知道

 

日本人シベリア抑留者の墓(ロシア)

 

戦後のシベリア抑留で犠牲となった日本人の墓地。厚生労働省の調べでは、旧ソ連で約660カ所あるとされているが、すべての位置が把握は困難とされる。

 

日本の古代歌謡の源流

 

奈良時代から平安初期にかけての資料に収められている歌謡の総称。7、5などの音数の整わない歌や、囃子詞の入った歌も多く、「作歌」としての和歌の世界とは異なる、庶民の間で実際に歌われていた歌謡の姿がうかがえる。

 

日本人の起源(説、ブリヤート)

 

日本民族は、北方型蒙古系民族に属し、そのさらなる起源がシベリアのバイカル湖畔と推定できるという説。DNAなどの観点から、共通項も得られ検証されるが、特定は困難で俗説とする向きが多い。

 

ニューオーリンズ(ヌーベル・オルレアン)ジャズ

 

1900年代にアメリカのルイジアナ州ニューオーリンズ周辺で発生し、1910年代までに確立した音楽。南北戦争終了時ごろ、解放された黒人やクレオール(黒人とフランス人などの混血)の人々によって始められ、後の多様なスタイルのジャズに発展するジャズの基盤を形成。後のモダンジャズが各楽器奏者の技芸や感覚に焦点を当てたアドリブソロに対し、集団でそれぞれが同時的に即興する賑やかさが特色。

 

ニューウェーブ(ミュージック

 

サイケ、アートロックが下火になり、パンク・ムーブメントによってロック音楽を取り巻く状況が変化したイギリスで、1970年代後半から80年代前半にかけて発信され流行した音楽。ポストパンク、ディスコ、民族音楽、現代音楽や電子音楽など多様な音楽潮流の影響によって成立。それまで先鋭的ジャズなどを基盤にしていた各国の前衛性のあるサブカルチャーシーンの形成に、新たな影響を及ぼした。

 

ニルヴァーナ(音楽グループ)

Nirvana

アメリカのロック・グループ。グランジ・ロックの代表的存在。ロック音楽のカウンターカルチャー性が希薄になった時代にあって、オルタナティブな音楽として一石を投じた。グランジは「薄汚れた、きたない」を意味する。歌手のカート・コバーンはシアトルの自宅において猟銃で自殺し、1994年に解散。

 

人形劇 (トルミ、コクトゥカクシ劇)

덜미

韓国の伝統芸能のナムサダンの一連の演目の最後に行われる芸能。腐敗した官吏や両班に対する批判、一夫妻妾制、家父長制下の男性の横暴さに対する批判がユーモラスに表現される。コクトゥカクシ(人形)は主人公の妻の名前でもある。→ナムサダン(男寺党)

 

人形浄瑠璃(文楽)

 

近世に生まれた芸能。人形浄瑠璃は、一般に浄瑠璃の語りにあわせて演じる人形劇全般の呼称。狭義には義太夫節による語りと、三人遣いの人形操りによる文楽のこと。元禄時代に年竹本義太夫が大阪の道頓堀に竹本座を創設し、座付き作家の近松門左衛門と劇的な語り物を発表。近世の町人の世界の悲喜劇をあらわした。→近松門左衛門

 

 

 

 

(ヌ)

ヌルリハン、ラフムジャン

Nurlykhan Rakhymzhanov,  Нурлыхан Рахымжанов

カザフスタン伝統楽器奏者。ドンブラ、キルコブスなどの若手の名手として知られ、世界的に活動するカザフスタンの伝統音楽グループ組織Turanの下部組織のメンバーでもある。音楽詩劇研究所のユーラシアンオペラ「さんしょうだゆう」の韓国ソウル公演に参加。→Turan

 

 

 

 

(ネ)

ネイ(ナーイ)

Ney

イラン、トルコ、アラブ諸国など西アジアと北アフリカおよび中央アジアの伝統音楽に用いられるノンリードの葦の縦笛。イスラム神秘主義スーフィーの儀式でも用いられ、尺八の音色も想わせる。

 

ネウリ(ネウロイ)族

Navari

現在のリトアニアやポーランドあたりに暮らしたとされる古代部族。ヘロドトスの「歴史」に記されている。記述によれば年に一度、それぞれのネウロイ一族が数日間狼になり、その後元の姿に戻るという祭祀を有する。小説家中島敦の短編小説「狐憑」のなかに「ネウリ族」として登場する。→「古譚」

 

「ネバダ・セミパラチンスク運動」

Невада ― Семипалатинск

1989年に設立されたカザフスタンの半原子力運動。1949年に初の原爆実験を成功させて以来の現カザフスタンの旧ソ連最大規模の核実験場の一つ。アメリカ合衆国ネバダ州のネバダ砂漠にある核実験場。チャガン湖

 

念仏

 

仏を念じること。10世紀頃からしだいに称名念仏が盛んとなり、観想を否定する法然の教えが広がり、南無阿弥陀仏を唱えることをさすようになった。西方極楽浄土での往生が願われ、念仏が必須とされた。

 

念仏踊り

 

念仏や和讃を唱えながら、鉦や太鼓などを叩き踊る民俗芸能。平安時代に諸国を遍歴して民衆に念仏を広めた空也が踊念仏(空也念仏)を始め、鎌倉時代になって一遍が諸国を遊行して広めた。各地の民俗芸能が混合する形で「念仏踊り」が広まり、太鼓踊や盆踊りの源流となった。近世の初めに出雲大社の巫女の阿国が、民衆の間に行き渡っていた念仏踊に歌を交えて踊ったのが歌舞伎の源流とされる。→一遍、出雲の阿国

 

 

 

 

(ノ)

「ノアの箱舟」

Noah's Ark

「創世記」に登場するアダムから数えて10代目の子孫ノアとその一族が、巨大な箱舟に乗って大洪水から救われたという物語。人悪が増大し、神は地上に人を創ったことを悔やみ、洪水を起こして全滅させることにした。箱舟を作り、家族と全ての動物のつがいを乗せることをノアに命じた。洪水により地上のすべての生き物は滅んだが、箱舟の中にいたものだけが生き残った。水が引くまでに150日間かかった末、箱舟はアララト山(現在のトルコ東部の山)の上に止まった。アララト

 

ノイズ(ミュージック)

noise

一般的な楽音によらず、非楽音を新たな音素材として取り込んだ音楽。自動車や工場、兵器の騒音を用いて、不協和音の解放という同時代的動向を表現した20世紀初頭のイタリア未来派のL・ルッソロを先駆者とする。環境音の取り込みは、アメリカのJ・ケージの「4分33秒」(1952)で先鋭化し、聴取の変革が提言された。ノイズ・ロックは1970年代後半西ドイツを中心に展開。それらの異質性や過剰性は、禍々しき存在としての異教徒も連想させる。

 

 

狂言とともに南北朝時代から現代に演じられる芸能。コーラス、地謡が物語の情景描写や台詞を謡い、楽器は笛、小鼓、大鼓、太鼓で四拍子が基盤となる。起源とされる「翁」を上演する座が鎌倉時代に誕生し、室町時代に観阿弥・世阿弥親子が演劇的な現在の能を完成。シテと呼ばれる主役が人間や幽霊、神、草花の精などを演じる。江戸時代には幕府の式楽として、士分の待遇を受けて格式化した。→夢幻能

 

農楽(プンムル、プンムルノリ、風流踊)

농악

朝鮮半島に古くから伝わる音楽や踊りによる伝統芸能。豊作を祈願したり、豊作を祝ったり、慰労のために行った。「農者天下之大本」と大書した農旗 を掲げ、銅鑼、鉦、杖鼓、太鼓、笛を活発なリズムで奏しながら歌い踊り村中をねり歩く。

 

農奴制(ロシア)

 

145世紀に西洋では農奴解放が始まったが、ロシアでは逆に15世紀後半に階層分化が進み、農民は地主に地代を納める農奴に転化。16世紀には法令として強化され、専制政治を支える社会的基盤となった。ヨーロッパ列強との勢力拡大競争から起こったクリミア戦争で敗北すると軍備の近代化において農民からの徴兵を要し、1861年に「農奴解放令」が公布された。

 

「農民芸術概論綱要」

 

宮沢賢治による芸術論。 農民の生活向上を目指し教鞭を執った岩手国民高等学校や羅臼地人協会での講義用草稿(1926 )。「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」「まずもろともにかがやく宇宙の微塵となりて無方の空にちらばろう」などの言葉が記されている。

 

野坂昭如

 

1930~2015 小説家。歌手。「焼け跡闇市派」を名乗り、常に戦争反対の立場から活動を続けた。1968年、自身の戦争体験を題材にした小説「火垂るの墓」「アメリカひじき」で直木賞を受賞。歌手やタレントとしてテレビなどにも多く出演。「マリリン・モンロー・ノー・リターン」「黒の舟歌」など、シニカルな社会批判、猥歌などユーモラスな歌も多く発表した。「おもちゃのチャチャチャ」で日本レコード大賞童謡賞受賞。

 

喉歌

Throat-singing, Overtone-singing

低い声と高い声を同時に発声する倍音唱法の一種。喉から出す低音とともに、声に含まれている倍音の高音部を声帯の力で意識的に強調させて口笛にも似た音を出し、歌唱でありながら器楽的特徴をもつ。中央アジア、ロシア極東地方に広く伝承されており、アルタイ山脈周辺の民族のカイ、モンゴルのホーミー、トゥバ共和国のフーメイ(ホーメイ)などがよく知られている。→ホーメー

 

 

 

 

(ハ)

バークリー音楽院

Berklee College of Music

アメリカのボストンにある、大学、専門学校を擁する高等教育機関。主にジャズや現代アメリカ音楽などの商業音楽全般を専門とする。1945年ニジョージ・ガーシュウィンが師事したウクライナ生まれの作曲家、ヨーゼフ・シリンガーの弟子が、師の教えを広めるために創始。従来の作曲法に基づく西洋音楽理論に対し、ジャズのアドリブ方法、楽曲分析に基づき、時間に対して、コード(和音)とスケール(音階)の対応から音楽を構築するメソッドが知られる。

 

パーセル、ヘンリー

Henry Purcell

1659-1695 バロック時代におけるイングランドの作曲家。イギリス最大の作曲家と評されることもある。イタリアやフランスの影響を受けつつ独自の音楽を生み出し、生涯に残した曲はおよそ800曲以上。エリザベス朝時代のイギリス音楽が持つ諸要素とイタリア・フランスの風が巧みに融合し、独特の奔放な世界観を醸す。歌曲「ディドとエネアス」など。

 

ハーディーガーディー

hurdy gurdy vielle à roue

リュート型の共鳴胴と鍵盤をもち、ハンドルを回すと松脂を塗った木輪が回転して弦をこすり、音がでる。左手の指で鍵を押して旋律を奏する。10世紀には教会音楽で、13世紀頃から世俗音楽でも用いられた。旋律弦のほか複数のドローン(持続音)弦があり、旋律と同時に常に持続音が響く。教会や上流社会では15世紀ごろから「悪魔の楽器」、「乞食の楽器」と蔑視され衰退したが、 20世紀中頃までは中部フランスを中心にヨーロッパ各地で使われた。

 

バード、イザベラ

Isabella Bird

1831-1904 イギリスの女性の探検家、旅行家、紀行文作家。1878年に日本を横断し、紀行文を残す。北海道にも及びアイヌ文化、習俗の報告もある。その後、ペルシャ、チベット、李朝末の朝鮮半島、中国にも訪れた。「朝鮮奥地紀行」、「日本奥地紀行」

 

バード、ウィリアム

William Byrd

1543-1623  エリザベス朝時代を代表するルネサンス期イギリスの作曲家。「ブリタニア音楽の父」として敬愛される。イギリスは宗教改革以来、王室はローマ・カトリック教会から離れたが、多声のミサ曲は秘密裏に行われたカトリック典礼のための作品と考えられる。

 

ハープシコード(チェンバロ、クラブサン)

harpsichord

→クラブサン

 

ハーン、ラフカディオ(小泉八雲)

Patrick Lafcadio Hearn

1850-1904 著述家、民俗者。ギリシャのリュカディア島生まれ。父はアイルランド人、母はギリシャ人。アメリカのニューオリンズに渡って新聞記者生活をおくる。混合文化のクレオール文化に引き込まれ、諺、音楽、料理、ヴードゥー教、墓、怪談など独特の文化を報告。東洋への関心を深め1890年来日。島根県の英語教師となった。小泉八雲と改名。伝統文化に限らず日本文化を海外に紹介した。

 

バイカルアザラシ

 

ゴマフアザラシと同じく小型だが、淡水に棲む世界で唯一のアザラシとして知られる。ロシアのバイカル湖や周囲の河川におよそ6~9万頭が生息すると考えられ、バイカル湖の生態系の頂点にある。北極海のアザラシが河川を辿ってバイカル湖に達して陸封されたことで独自の進化を遂げたとされる。

 

バイカル湖

Baikal, озеро Байкал

ロシア南東部の三日月型の湖。20世紀後半から急速に面積を縮小しているアラル海、塩海であるカスピ海を除くとアジア最大(琵琶湖の約46倍)とされる世界最古の湖。最大水深も1620mで世界一。多数の島を持ち、周辺には古くからブリヤート人が居住。シャーマン岩(オリホン島)が名高い。 オリホン島

 

「バイカル湖のほとり」

По диким степям Забайкалья

ロシアの愛唱歌。流刑され、牢獄に入れられた人がシベリアへ逃れ、バイカル湖近辺で自分の心理を静かに内省する歌詞の内容。

 

「バイカルプロジェクト」

 

音楽詩劇研究所の2017年の「バイカル・黒海プロジェクト」の一部。ロシアのイルクーツク~ブリヤート共和国のウラン-ウデで行われ、現地のアーチストとコラボレーションを行った。

 

バイキャメラルマインド(二分心)

Bicameral Mind

アメリカの心理学者ジュリアン・ジェインズの著書「神々の沈黙」で用いられた概念、仮説。古代ギリシャには「意識」という概念がなく、心は、神々の声を出していた部分と、現代で言う意識している心に分かれていたと考えた。古代以前の人間は、二分心を持つことにより、社会生活を成り立たせていたという。意識を重視する現代人には消滅しているが、幻聴等、統合失調症(精神分裂病)にその痕跡が残るとされる。→ジェインズ、ジュリアン

 

パイク、ナム・ジュン

Nam June Paik , 白南準, 백남준

1932--2006 ソウル生まれの韓国系アメリカ人の美術家。東京大学、ミュンヘンで美術を学ぶが、ジョン・ケージに影響を受け音楽を志す。インターメディアアートのグループ「フルクサス」に参加し、ケージ、マース・カニングハムらと制作。世界初のテレビ・モニターを用いた作品を発表し、ヴィデオ・アートの父と呼ばれた。東西に分裂した世界の再構築を目指し、ヨーゼフ・ボイスとユーラシアに関するプロジェクトを継続した。

 

灰野敬二

 

1970年代より活動。ギター、パーカッション、ハーディガーディーなどの古楽器、民族楽器、DJ機器など、独自の音楽思想で極限まで引き出し即興によるパフォーマンスを行なう。ソロやセッションのほか不失者、滲有無、哀秘謡、Vajra、サンヘドリンなどのグループをもち、ヨーロッパを中心に海外でも熱狂的なファンをもつ。

 

パヴィチ、ミロラド

Milorad Pavić

1929-2009 ベオグラード生まれのセルビア出身の詩人、小説家、セルビア文学研究者。複雑な構造と仕掛けを用いながら自由な形式で神話や歴史を編み直した。代表作に事典形式で書かれた「ハザール事典夢の狩人たちの物語」(1984) 。

 

バウシュ、ピナ

Pina Bausch

1944_~2009 ドイツの女性振り付家、舞踊家。踊りと演劇を融合させた「タンツテアター」を発展させ、コンテンポラリーダンスの新たな領域を開拓。世界のダンス創作の潮流を成した。

 

ハウス(ミュージック)

house

一小節の4つの四分音符の表拍を、バスドラム等の低音で奏でる「4つ打ち」が基本で、BPM(1分間の拍数)は、120130程度(たとえば心拍の倍)。多くはリミックスやサンプリングなどの手法を使い、打ち込みによってつくられるダンスミュージック。1977年にアメリカのシカゴの「ウェアハウス」というクラブで活躍していたDJによって生み出されたことから、「ハウス」と名付けられた。

 

端唄

 

江戸時代の三味線伴奏の歌曲である。浄瑠璃、民謡でなく、とくに長唄に対して、13分程度の小歌曲に対する名称。大半は作詞、作曲者未詳。小唄は爪弾きであるのに対して端唄は撥を使う(音量が比較的大きいことを意味する)。幕末から明治期にかけて流行。長唄

 

パウル、アユミ 

Ayumi Paul

ドイツのヴァイオリン奏者。現代曲から即興音楽、クラシックを演奏。身体表現や声の表現もしなやかに行い、美術インスタレーション作品でのパフォーマンスも多い。音楽詩劇研究所が、2016年に東京で、バッハ無伴奏ヴァイオリン、河崎作品の初演、即興によるコンサートを制作した。

 

バエズ、ジョーン

Joan Baez

アメリカの女性歌手。1941年にニューヨークのスタテン島でメキシコ系の父と反戦運動家の母をもつ。両親は、クエーカー教徒。1960年代初頭のフォーク・ソング・ブームを代表し、ユダヤ民謡の「ドナドナ」やアメリカ移民の伝承バラッド的な「朝日のあたる家」、反戦歌などを現代の民衆歌曲(フォークソング)として確立。現在まで続く公民権運動や反戦活動へ影響を与えた。

 

白水境 (ベロヴォージェ)

Belovodye, беловодье

17世紀のロシアの典礼改革に反対して離散したロシア正教の古儀式派に伝わるユートピア伝説。アルタイ山脈を支流とするイルティシュの支流、カザフスタンなどを流れるブクタールマ川のほとりに沿った地域をその地として想像された。同地が1791年にロシア帝国に併合されると、中国の彼方の海に浮かぶ「日本国」にさらにそれを求め、想像による旅案内書も書かれた。ロシア正教古儀式派

 

パク・ジナ

Park Jiha,  박지하  

韓国の古典音楽、国楽の女性の楽器奏者であり、現代的な表現を行う若い新世代音楽家のトップランナー。ピリ(ダブルリードの竹笛)に加え、センファン()、揚琴(ハンマー・ダルシマー)などをマルチに演奏。2018年の初頭にリリースした「コミュニオン」が、ミニマル・ミュージックやアンビエント、チェンバー・ジャズ的な独自のサウンドが評価され、世界の音楽フェスティバルの数々に招聘されている。

 

「白鳥」(楽曲)

Akku

カザフスタンの白鳥の鳴き声を模した古曲。シャーマニズムに由来するキルコブスで演奏される。鳴き声は、いわゆる旋律に抽象化されるのではなく、かなり忠実に模倣される。→コブス

 

白丁( ペクチョン)

백정

かつての朝鮮半島の賤民階級のなかで最下位に位置する被差別民。高麗時代には国家の職役についていない一般庶民を指したが、李朝時代の賤民階級として形成され、屠殺業、箕作りなどに携わった。そこから分離して大道旅芸人などの芸能者となった人々とともに迫害され、歩き方、衣服等の社会的な制約事項も多かった。起源を、半島に流入し高麗に帰化した中央アジア系、北方異民族とする説もある。

 

「羽衣」(謡曲)

 

静岡県の三保の松原に伝わる天女伝説をモチーフとする謡曲で、室町時代における上演記録も多い。羽衣を隠されて困った天女が、見事に舞を披露することで羽衣を返してもらう。夕暮れ時富士山が茜色に染まる頃、天女はあまたの宝を空から降らせ、天に飛び返り霞空の中に消えゆく。

 

「ハザール事典―夢の狩人たちの物語」

Dictionary Of The Khazars

セルビアの作家ミロラド・パヴィチの事典形式で書かれた小説(1984)。イスラーム教、キリスト教、ユダヤ教と次々に改宗し、その後歴史上から姿を消してしまった謎の民族、国家ハザールの神話や伝説が、私的な叙述として述べられる。宗教関係別に45項目に編まれ、どこから読むことも出来る。「男性版」、「女性版」が別々に刊行されている。パヴィチ、ミロラド

 

ハザール帝国(ハザール・カガン国)

Xazarlar

7~10世紀に黒海近辺、南ロシア草原に栄えた、主にテュルク系遊牧民族の国。カスピ海、黒海、ヴォルガ川流域での交易で繁栄。ユダヤ教を受容し、ユダヤ人国家となった。キエフ公国がこの地に侵略し、11世紀始めにロシアとビザンツ帝国によって征服された。ロシアにユダヤ教徒=ユダヤ人が多い理由とされる。

 

バシキール(人)

Bashkir

ロシア南西部のテュルク系民族。主にイスラム教スンニー派を信仰。ウラル地方、ヴォルガ川中流域に古くから暮らす先住民族の一つとされ、9世紀にその一部はハンガリーに移住。ロシアではロシア人、タタール人、ウクライナ人に次ぎ4番目の人口を有する。

 

バシコルトスタン(共和国)

Bashkortostan, Башкортостан

ロシア連邦中西部にあるバシキール人を基幹民族とする共和国。首都ウファ。1919年にソビエト連邦で初の自治共和国として成立した。

 

橋づくし

 

浄瑠璃などの「心中もの」の舞台。男女が橋を通りながら川沿いを進みながら心中を果たす道中が描かれる。近現代では三島由紀夫の短編「橋づくし」も知られる。→ 「心中天の網島」

 

パステルナーク、ボリス

Boris Pasternak, Борис Пастернак 

1890-1960 20世紀のロシア文学を代表する小説家、詩人。モスクワでユダヤ系芸術家一家に生まれる。作曲家を志しスクリャービンに師事するが、文学者に転じた。シェイクスピアの戯曲の翻訳も手がけ、反逆の歌手のヴィソーツキーが演じている。第二次世界大戦後は統制を受けた。小説「ドクトルジバゴ」で革命やスターリン時代の粛正を背景に、医師であり詩人である主人公の生涯を描きノーベル賞を受けたが、政治的圧力のため辞退。

 

「バストベの丘」

 Баштобе

カザフスタンのウシュトベにある丘の呼称。極東ロシアに居住した「高麗人」と呼ばれる朝鮮半島出身者が強制移住され際に降り立った場所。当初は荒野の丘に穴を掘って住居としたが、1/3から2/3が、最初の1年以内に病気、飢餓で死亡した。現在は、移住者の墓石群が林立する。高麗人

 

ハタ・ヨーガ

Hatha Yoga

13世紀頃の北インドの聖者が開祖とされ、身体性をより重視しているとされるヨーガ。体位法(アーサナ)を重視し世界に広まった現代のものと、古来のものは異なるものとされる。現在実践されるアーサナの大半は、19世紀後半から20世紀前半にもたらされたイギリスや西洋の身体、健康文化などをベースに再構築されたものといわれる。

 

「はだしのゲン」

 

中沢啓治の漫画作品(1973-1987)。作者自身の広島原爆の被爆体験を元にした自伝的漫画。当初週刊少年ジャンプで連載が始まった。

 

撥弦楽器

 

撥、指、ピックなどで楽器に貼られた弦を弾いて音を出す弦楽器。棹のあるものと無いものに分類される。独奏楽器であるとともに、古来、語り部や唄い手自身により弾き語られることが多い。叙事詩、バラッドの口承芸能の伝承文化において世界的に大きな役割を担い、ギターの弾き語りに代表される現代の大衆音楽や路上音楽文化にも引き継がれている。

 

ハチョ、カラペテ

Karapetê Xaço

19002005  クルド叙事詩デングベジュの歌手。オスマン帝国でアルメニア人家庭に生まれ、1915年のアルメニア人の強制移住の際、両親を失う。幼少から音楽に興味を持ち、クルマンジ方言に親しみながらクルド民謡を歌った。傭兵としてフランス外人部隊に勤務し、アルメニアに移住。エレヴァン・ラジオのクルド語部門で働いた。虐殺の経験についても歌い、国境の外側のクルド人に人気を博した。ディングベジュ

 

客家(ハッカ)の土楼

 

四川・福建・広東・海南などに定住した黄河中流・下流に居住していた客家語を言語とする漢民族、客家(ハッカ)人の多数の家族が共同生活を営む巨大な集合住宅。円形のものが知られ、円形の中庭を囲む形で、3階か5階、大きなものでは200以上の部屋をもつ。

 

八戒(八斎戒)

 

仏教の在家信者が、特に身をつつしむべきと定められた期日に守る8つの生活規則。殺生・不偸盗・不淫・不妄語・不飲酒の五戒に、贅沢な寝台に寝ない、歌舞を見聞きしたり化粧したりしない、正午以降に食を取らない、の三つを加えたもの。一般に月の81415232930日とされる。

 

ハッケ、アレクサンダー

Alexander Hacke

1965年生まれのドイツの音楽家。ノイズ実験音楽バンド、アインシュテュルツェンデ・ノイバウテンのベーシスト、ヴォーカリスト。ソロ活動のほかさまざまなユニットへの参加。クロッシング・ザ・ブリッジ サウンド・オブ・イスタンブール

 

「ハッジー・タルハン」

Хаджи-Тархан

タタール人の古都、アストラハンを描いたロシアの詩人フレーブニコフの1912年に書かれた詩。フレーブニコフ、ヴェリミール

 

パッチム(韓国語)

받침

子音+母音で構成される韓国のハングル(文字)のうち、さらに子音(パッチム)で構成される。終声とも呼ばれる。日本語で音声を記すのが難しい場合が多い。たとえばビビンバと省略表記されるが、「バ」は実際には「バ(ップ、プ)」のように発音され、その()の部分に当たる。

 

服部将典

 

1979年生まれコントラバス、エレキベース奏者。インストメンタルバンドNRQに参加。歌手からの信頼も厚く、さまざまなユニットにゲストプレイヤーとして参加。河崎の舞台音楽監督作品にも参加。

 

バッハ、ヨハン・ゼバスティアン

Johann Sebastian Bach

1685-1750 ドイツの作曲家、クラビーア奏者。ハンブルク市の音楽監督に就任。終生その地位にあって教会音楽のほか、市民のための公開演奏会のために交響曲、室内楽曲などの作曲を続けた。多数の宗教曲、器楽曲ソナタ、協奏曲、管弦楽組曲を書いて、多声的対位法音楽を完成。バロック音楽(その典型ではない)の頂点に立ち、近世音楽の祖とされる。

 

バッハ・コレギウム・ジャパン

Bach Collegium Japan(BJC)

日本の古楽器オーケストラおよび合唱団。1990年に鍵盤奏者、指揮者の鈴木雅明らが結成。主にバロック音楽を演奏し、一般的なモダン楽器によるオーケストラの調弦や奏法とは異なる、ヨーロッパの古楽、および古楽器の響きを日本に広めている。

 

バトゥーラ、ヌルベック

Nurbak Batulla Нурбәк Батулла

1988年生まれのタタールスタン共和国出身の舞踊家。バレェダンサー、振り付家としてキャリアをスタート。2018年、消滅の危機にあるタタール語をテーマにした音楽劇的作品「アリフ(始まりの呼び声)」で、男性パフォーマー部門におけるロシアの演劇大賞、ゴールデンマスクを受賞。2019年の音楽詩劇研究所、タタールスタン共和国カザン公演に参加。

 

浜藤ホール

 

岩手県盛岡市の酒蔵を改造したホール。明治期に建てられた保存建造物の酒蔵の梁と柱を活かして改修したイベントホール。

 

バム鉄道

Байкало-Амурская магистраль

ロシアのバイカル湖南岸を走る「シベリア鉄道」に対し、北岸地域から極東沿岸地方に走行する。「アムール鉄道」、「第2シベリア鉄道」といわれる。1930年代に既に建設が始まり、第二次大戦後はシベリア抑留捕虜の日本人も敷設労働に従事。スターリン死去の後、中断するが、中ソ関係の緊張から、国境付近を走行するシベリア鉄道の代替路線として再建設。「世紀の大建設」事業として約200万人が参加。1984年に本戦が開通し、現在も延線中。2016年の日露の政府間協議の中では、サハリンから北海道までをつなぐ建設案が報道された。

 

ハメルンの笛吹き

Rattenfänger von Hameln

グリム兄弟が民間伝承を集めてまとめ上げた「ドイツ伝説集」に収録されている物語の一つ。見知らぬ男が町に現れ、笛を吹いてネズミを集め退治するが、約束の報酬金を住民が支払わないことに怒り、町中の子供を集めて連れ去ってしまう。ドイツのハメルンで1284年に起きた謎の事件を元にしているといわれ、イギリスにも類似の伝説がある。

 

林光

 

1931-2012 作曲家。声楽曲、器楽曲、劇音楽、映画音楽など多岐にわたる。とくに劇音楽の分野で独自の世界を確立し、「オペラシアターこんにゃく座」の座付き作曲家として、「日本語オペラ」の創作を試みた。「森は生きている」など学校等で公演されることも多い。それらの劇中歌は「ソング」と称され、独立して歌い継がれる。新藤兼人、大島渚の多くの映画音楽を担当。著書も多数残した。

 

林芙美子

 

1903-1951 小説家 福岡県生れ。貧しい放浪生活の中で、逞しく生きていく姿を日記体で描いた自伝的小説「放浪記」が1930年にベストセラーとなる。中国、樺太、朝鮮・シベリヤ経由でパリへ一人旅をした。戦間期はボルネオまで新聞の特派員として従軍したが、植民地支配と戦争政策の矛盾に気づいて戦争協力を止める。戦後は反戦、報国文学的な作品を発表したが48歳で急死。「浮雲」「雨」など、戦争に傷ついた庶民を描いた名作を残した。

 

林家彦三

 

落語家。1990年福島県生まれ。林家正雀門下の二ツ目。古典のほか、文学作品を素材にした独自の文芸落語も展開。著書に「猫橋」(ぶなのもり2020)、「汀日記」(書肆侃侃房 2022)。

 

(早池峰の)神楽舞

 

岩手県の伝統芸能。花巻市の集落に伝わる、山伏が伝え舞った神楽の総称。「能」の原形ともいわれる中世期の「神楽」が現在にも受け継がれている。

 

バヤン

Bayan, Баян 

ロシアのボタン式アコーディオン。一般的に鍵盤がない。ヨーロッパ型のアコーディオンを改良し、20世紀初頭に開発。広まって、各地の民俗音楽が演奏に合わせて歌われるようになり、ロシア民謡の一般的イメージをつくった。作曲家ソフィア・グバイドゥリーナらは、そのよう演奏法や表現とは異なる書法で演奏法を開拓。グバイドゥリーナ・ソフィア

 

バラキレフ、ミリイ

Mily Balakirev, Милий Бала́кирев 

1837~1910  ロシアの作曲家。ヴォルガ川中流域のニジニノヴゴロドに生まれる。民族主義的な芸術音楽の創造を志向し、キュイ、ムソルグスキー、コルサコフ、ボロディンを仲間に5人組を結成。彼らの中では唯一音楽教育を受けた人物。コーカサス地方への旅行中、トルコ・イスラム系諸民族の民俗音楽にも接し影響を受ける。

 

パラジャーノフ、セルゲイ

Sergei Parajanov, Сергей Параджанов

1924-1990 ジョージア生まれのアルメニア人映画監督。生誕地のトビリシはコーカサス随一の文化都市であり、ジョージア人、アルメニア人、アゼルバイジャン人、クルド人、アッシリア人、ロシア人、キリスト教徒、イスラム教徒、ユダヤ教徒らが混在し、創作に大きな影響を与えた。社会主義リアリズムを大きく逸脱した奔放な表現により当局に統制、弾圧された。1968年アルメニアで宮廷詩人の生涯を鮮やかな色彩と様式による代表作「ざくろの色」を撮影。

 

ハラル(ハラールフード)

Halal foods

ムスリムの戒律で食べること許されている食物。「ハラール」はイスラム法で「許可」を意味する。

 

ハリスト正教会(日本)

 

ロシア領事館付司祭として1861(文久1)年に渡来ロシア正教会の宣教師ニコライによって日本に創立された東方正教会系の教会。ロシア正教に限定されるものではない。ニコライ堂

 

バルガス、チャベラ

Chavela Vargas

1919-2012 コスタリカに生まれのメキシコの女性歌手。脊髄性小児麻痺を患いながら街頭で歌い始めメキシコに渡る。画家ディエゴ・リベーラ、フリーダ・カーロ夫妻、ロシア革命を指導したことで知られるトロツキーと知り合い交流を深める。1950年代には男装の異端歌手として注目された。1970年代の後半にアルコール中毒を理由に活動を休止したが、80歳を過ぎ、レスビアンであることを公表し、その相手であったカーロの伝記映画「フリーダ」では嘆き歌「ジョローナ」(ラ・ヨローナ)を絶唱。亡くなるまでステージに立った。「ジョローナ」(ラ・ヨローナ)

 

ハルキウ(ハリコフ)

Kharkiv, Харків

ウクライナの北東部の都市。第二の都市といわれ。17世紀半ばにウクライナ・コサックによって建設され、帝政ロシア軍の南進拠点の地となった。

 

ハルク

Halk 

トルコの大衆歌謡。トルコの民謡をベースにし、複雑なリズムや旋律をもつものも多い。女性歌手は迫力のある低音が特徴的。サズなどの伴奏で謡われる唄は、日本の長唄も想起させる。主な歌手はサバハト・アッキラズ、ムザッフェル・アクギュン、セヘル・ディロヴァンらが知られる。→サナート

 

バルツァ、アグネス

Agnes Baltsa

ギリシャのメゾソプラノ歌手。1944年レフスカ島生まれ。現代を代表するオペラ歌手の一人。ギリシャ民謡を歌うことにも精力的。1992年のバルセロナオリンピック開会式ではオリンピック旗の入場に合わせて、ミキス・テオドラキス作曲のオリンピック讃歌「ヘレニズム」を歌った。テオドラキス、ミキス

 

バルチック艦隊

Балтийский флот

1904年から翌年にかけて、満州(中国東北部)、朝鮮の支配権を巡る日露戦争におけるロシア帝国の主力艦隊(日本側による通称)。正式には「第2太平洋艦隊」1905(明治38)年5月の日本海海戦で日本連合艦隊に撃滅された。日露戦争

 

「春と修羅」

 

宮澤賢治の詩集(1924)生前に唯一刊行された唯一の詩集。とりわけその序文には、宗教観や民俗芸能にもとづく詩的宇宙観が展開。序文の中で詩群について「心象スケッチ」であると称している。妹の詩を描いた「永訣(えいけつ)の朝」が特に知られる。宮澤賢治

 

バルト、ロラン

Roland Barthes

1915~1980  フランスの思想家、記号学者。時期により文体や書法は異なるが、思想の根幹にあるテクスト論、エクリチュール論が通底する。テクストは作者という主体性の解明のためではなく、多元的な対話の源泉となる文化や制度の引用の「織物」として存在するとした。社会、古典文学、音楽、演劇、写真、映画、日本も対象に、そのような眼差しで 意味作用を分析。1980年に交通事故で逝去した。

 

バルド(吟遊詩人 ロシア)

bard, бард

元来はケルトの吟遊詩人をいう。ロシアでは1950年代初めころから現れはじめた自作自演の歌を中心に歌う歌手をさし、ブラート・オクジャワなどがその代表的な存在。反体制的、文学的な傾向が強くなり、そのため当局からの規制を受け非公式な流通手段で流布されることもあった。オクジャワ、ブラート

 

バルトーク・ベラ

Bartók Béla

1881~1945 ハンガリーの作曲家、民俗音楽研究家。民俗音楽や20世紀前半の新しい書法を駆使して作曲。その姿勢、作風は子供のための教育音楽として作曲された作品にも通底する。マジャール民謡、東ヨーロッパの民俗音楽を収集し、数学的にも分析を行い新たな構造を発見し創作に応用。アフリカのアルジェリアまで足を伸ばすなど精力的に研究を続けたが、1940年アメリカに亡命。ニューヨークで貧困のうちに没した。

 

パルノーク、ソフィア

Sophia Parnok, СофияПарнок 

1885-1933 ロシアの「銀の時代」の女性詩人、ユダヤ人。幼い頃からバセドウ病を患う。1926年に書かれた詩集「音楽」は、33の音楽や音にまつわる詩が含まれる。20世紀のロシアを代表する詩人マリーナ・ツヴェターエヴァらとのレズビアンの関係にあり、「ロシアのサッフォー」とも呼ばれた。ツヴェターエヴァ・マリーナ

 

ハルラサン (漢拏山)

한라산

韓国の済州島の標高約2000メートルの山。噴火によって生じた360余りの丘が独特な風景を作り出す。13世紀後半、島が元王朝の直轄地になった際に、蒙古馬と在来種と掛け合わされて生まれた小型馬の放牧がみられる。済州島

 

バロウズ、ウィリアム

William Seward Burroughs

1914-1997  アメリカの詩人。アレン・ギンズバーグ、ジャック・ケルアックと共に1950年代から60年代に登場したビート・ジェネレーションを代表する作家。バイセクシュアルを公言。デビュー作「ジャンキー」発表後、モロッコのタンジールに移住し、15年以上浸ったドラッグと決別を決意。1959年に小説「裸のランチ」を発表する。猥褻な内容、発禁処分を受ける。妻殺し、ドラッグ中毒など放蕩的な私生活も含め、多くのアーティストに影響を与えた。

 

バロック(音楽)

baroque

16世紀末から18世紀前半までの、バッハが対位法的多声音楽の様式を完成するくらいまでのヨーロッパ音楽の様式。宗教音楽や、ルネサンス音楽の対位法から逸脱し、多様な楽式が生まれ、器楽や独唱が発達した。「いびつな形をした真珠」という意味。

 

ハ ン(恨)

朝鮮半島の人々の思考様式、文化の基盤をなす概念とされる。日本語でいう怨み、恨みや復讐心とは異なる。シャーマニズムにも由来するとされ、自身の内部に沈殿する宿命的な哀しみや喪失的な感情から、生命力のあるさまざまな芸能を生んだ。

 

パンク(ミュージック)

Punk

1970年代半ばから後半にかけて発生したロックのスタイルの一つ。1975年頃にアメリカ、ニューヨークのインディーズロック・シーンから誕生。ラモーンズ、パティ・スミスなが知られ、影響を受けたセックス・ピストルズがイギリスのロンドンでデビューし、その象徴的な存在となる。当初は反体制的なアナーキーなメッセージを歌うバンドが多かったが、政治性はじょじょに弱まり、先鋭的な音楽や民族音楽の要素も取り入れたニュー・ウェーヴが台頭。

 

ハングル 

 한글

朝鮮半島の国字。1446年に「訓民正音」の名で公布。「大いなる文字」の意で、20世紀初頭に名付けられた。音素を表す字母(子音字母14種類、母音字母10種類)を組み合わせ、音節単位で文字をつくる表音文字。1文字は初声(子音)、中声(母音)、終声(子音)に分けられる。縦書きも横書きもできる。

 

ハンコック、ハービー

Herbie Hancock

1940年生まれのアメリカのジャズピアニスト、作曲家。1960年代にデビューして間もなく、マイルス・デヴィスのグループに加わる。和声理論をアドリブの根拠にする従来のモダンジャズの方法をより自由に拡張したモード奏法とファンク、ロックへと接近する過渡期に活躍。脱退後も、アコースティック、エレクトリック両面で独自の世界を音楽に築いた。とくに後者では、時代のさまざまな先端音楽をとりいれた。

 

犯罪者の歌(ロシア)

Блатная песня

犯罪者、泥棒がテーマになる曲で、ロシアで19世紀からソ連時代にかけてそのような唄が作られ、独自のジャンル名としても成立。ソビエト時代のそれらの曲は、黒海沿岸のオデッサのユダヤ人によって作曲され、レストランなどで演奏された。そのためユダヤ音楽のクレズマーの影響を強く受けている。クレズマー

 

汎神論(的コスモロジー)

pantheism 

神と自然存在全体とを同一視、一体化する、アニミズムやシャーマニズム的ともいえる宗教・哲学観。

 

パンソリ

판소리

韓国の伝統口承芸能。李朝後期の18世紀初め、主に朝鮮の中部以南で庶民の娯楽として各地の祭りや広場で演じられた。18世紀末には多くの名人が出て、貴族階級にも愛されて全盛期を迎えた。賤民階級である広大(クァンデ)が歌い、南部に多かった巫女による祈祷歌の歌唱の影響を強く受けた。男性が歌うのが基本だったが、19世紀後半から妓生の名唱者もあらわれ、現在では女性のほうが多い。

 

バンスリ

Bansuri

北インドのヒンドゥー音楽で使用される最も代表的な伝統的木管楽器、竹製の横笛。インドやバングラデシ地域の伝統音楽的な曲で使われる。リグ・ヴェーダやその他のヴェーダ経典、古代インドのヒンドゥー教や仏教、ジャイナ教の宗教画にも描かれている。

 

反ベトナム戦争学生運動

 

1960年代後半、アメリカで学生を中心に始まり全世界にひろがったベトナム戦争に反対し、アメリカ軍の撤退を主張した平和運動。自国の戦争政策に反対する運動の規模として、第1次世界大戦末期のロシアの革命期を除いては最大のものとされる。

 

 

 

 

(ヒ)

ビートルズ

The Bratles

1960年にイギリスで結成されたロック・グループ。メンバーは全員、北西部の港湾都市のリバプール生まれ。1964年に「抱きしめたい」がアメリカで大ヒット。個性の異なるジョン・レノンとポール・マッカートニーが主に作詞、作曲をすることで多彩な名曲を生んだ。1966年西ドイツと日本、フィリピン、アメリカを巡演する最後の世界ツアーを行う。最新の録音技術を用い、スタジオでの創作活動期に入り、コンサートでは再現困難な作品を作った。1970年に解散。

 

稗搗節

 

宮崎県民謡。平家の落人が住みついたといわれる椎葉村で、ヒエを常食してきた農民が冬の農閑期に脱穀するときの仕事唄に由来する。1950年代に同地のダム工事の従事者から広められ、レコードに吹き込まれ、全国的に普及。

 

東トルキスタン

Sherqiy Türkistan Jumuhuriyiti

現在の中国の新疆ウイグル自治区。「西トルキスタン」は、旧ソ連の中央アジアの「スタン」系諸国を指す。清、中華民国の支配下にあったが、ウイグル人のイスラム民族主義による独立運動により、193040年代の二度独立政権が試みられたが消滅。1955年に自治区として中華人民共和国に編入。新疆ウイグル

 

土方巽

 

1928-1986 舞踏家、振付家。秋田県生まれ。「暗黒舞踏」と称する「舞踏」の創始者。ヨーロッパのダンス、芸術にも大きな影響を与え、「Butoh」という言葉で世界に広まる。肉体の暗部にある身ぶりを求め、土俗的な因習にも遡りながら、ヨーロッパに起源を持つバレェなど、従来のダンス「文化」と対極をなした。

 

ビシュケク

Bishkek, Бишкек

キルギス共和国の首都(旧カザフスタンのフルンゼ)。カザフスタン国境近く、キルギス山脈山麓の谷あいにある。

 

ビチェフスカヤ、ジャンナ

Janna Bichevskaya, Жанна Бичевская

1944年モスクワ生まれのソビエト時代よりロシアを代表する女性フォーク歌手。ロシアのジョーン・バエズともいわれる。さまざまな民間伝承歌や詩人の詩をギターながら伸びやかで愁いのある声で歌い、1980年代には西側諸国にも紹介された。愛国主義的な歌もあり、近年は戦意高揚を含むような歌詞もある。バエズ、ジョーン

 

ピッケン、ローレンス

Laurence Picken

1909-2007 イギリスの科学者、古代中国、日本、トルコ音楽などを研究した音楽学者。8世紀に中国から日本文化にさられ、雅楽の源流となった唐楽の研究などで大きな功績を残した。

 

ヒップホップ(ミュージック)

hip-hop

1970年代前半ごろから、ニューヨークの路上で始まった、音楽・ダンス・ファッションを中心とする文化。DJ、ブレイクダンス、グラフィティ、ラップがその要素をなす。ブロンクス地区のアフロ、カリブ、ヒスパニック系の住民の間で行われていた「ブロックパーティ」から生まれた。

 

微分音(程)

microtone

平均律の半音より細かい音程。半音より狭い音。本来は無限に存在するが、楽譜などで、分数により細分化され音程として具体的に指定されることもある。アジア、中東音楽やそれらの影響の強いヨーロッパの民俗音楽 (ジプシー音楽や東ヨーロッパの民俗音楽) の歌唱や楽器奏法で多くみられる。前衛的音楽では意図的にそれらの音程が用いられることが多い。

 

白夜 

Midnight Sun

主に北極圏付近や南極圏付近で夏至前後に見られ、陽が落ちても暗くならず、 夜中でも薄明であるような自然現象。

 

「(小倉)百人一首」

 

鎌倉時代に藤原定家が選んだ和歌集。内容は恋歌が43首で圧倒的に多く、四季歌は32首で、秋が16首で最も多い。近世以後、「歌ガルタ」として広まった。

 

「表現の不自由展」(2019           

 

名古屋市で開催されるトリエンナーレ芸術祭の2019年における企画展。「表現の自由」とは何かを問う形で企画。彫刻作家キム・ソギョン、キム・ウンソン夫妻の日本軍慰安婦をモチーフとして作成されたとされる「平和の少女像」など、社会的問題を投げかける多くの作品の是非、公的助成のあり方などを巡り、延期が決定し、中止に追い込まれた。2021年には大阪で妨害行為等への厳戒態勢の中、「表現の不自由展かんさい」が開催された。

 

兵藤裕己

 

日本中世文学、芸能研究者。とりわけ盲僧琵琶など語り物の口承芸能や社会における声や語りの観点から、時代における日本人像を考察する。著書に「〈声〉の国民国家」(講談社学術文庫)、「王権と物語」(岩波現代文庫)、「演じられた近代─〈国民〉の身体とパフォーマンス」(岩波書店)、「琵琶法師─〈異界〉を語る人びと」(岩波新書)など。→「演じられた近代─〈国民〉の身体とパフォーマンス」

 

ビョーク

Björk

アイスランドの歌手。1965年レイキャビック生まれ。ヒッピー・コミューンで育ち、祖父の影響でジャズを聴き、音楽学校で古典音楽を勉強した。12歳でアイスランド童謡、トラッドを中心にした作品を発表。1993年にアルバム「デビュー」で本格的にソロ活動を開始。最新技術を導入した先鋭的なサウンドと、アイスランドをはじめ様々な伝統音楽を融合。

 

病身舞(ピョンシンチュム)

병신춤

密陽地方発祥とされる、障がい者の身体を模した韓国の伝統舞踊。ハンセン病患者、小人、背むしなどの病身の人々の様相を模倣し、官僚社会や家族制度などへの風刺や非難の意味を込めたパロディーの側面も持つようになる。日韓併合とともに野蛮な風習とされ、集会取締令の対象として禁止された。独立後に、幼い時から放浪する病身舞の集団に入り橋の下で暮らしてきた孔玉振(コン・オクチン)の天才的な舞で芸能として復活。

 

平野川(百済川)

 

大阪府の淀川水系の河川。平野川の分水路。大正年間には曲がりくねる川を直線化し周囲を区画整理された。20年に及ぶ工事の過程で、猪飼野には工事に従事した朝鮮人がそのまま暮らし、街を形成した。

 

ピリ(篳篥)

피리

オーボエや日本の雅楽の篳篥のように二枚のリードを振動させて音を出す、韓国の伝統的な縦笛の管楽器。宮廷音楽と民俗音楽両方に使われ、主旋律を奏でる。宮廷音楽、民俗音楽合奏、巫俗音楽、舞踊伴奏を奏でるヒャンピリ、古来の唐の雅楽や宗廟祭礼楽を吹くためのタン・ピリ、歌曲伴奏や小編成で使われる小型のセ・ピリという3種類がある。

 

「ピリカ ピリカ」

Pirka 

アイヌ伝承の子守唄と知られる。ピリカは「美しい、美しさ、良い、良さ」の意とされる。各地で歌われてきたが。1958年にヒットした雪村いづみの「ピリカ ピリカ」の旋律のベースとなった短調風のものは、外国人宣教師による音楽教育の影響による洋楽や日本的音階の要素が含まれているとされる。

 

ビルスマ、アンナ

Anner Bylsma

1934-2019オランダのチェロ奏者。豊かな残響を持つ一般的なモダン楽器とは異なる古来のガット弦を使用し、バロックチェロの第一人者として活動。その特徴を活かし、歌うようにではなく、親密に語るようなフレージングで、西洋古典音楽の再解釈を行った。

 

琵琶(日本)

 

東アジアの有棹の弦楽器。一般的に弓を使わず、弦をはじいて音を出す。78世紀頃、中国から日本に渡り、正倉院の宝物として伝来当時の琵琶が遺されている。五弦琵琶、楽琵琶、平家琵琶、盲僧琵琶、唐琵琶、薩摩琵琶、筑前琵琶などの種類があり、奏法、調弦も異なる。 薩摩琵琶

 

「琵琶法師」(書籍)

 

国文学者の兵藤裕己の著書(岩波書店2009)。琵琶法師が平家物語の語り部になって以後、修験道のなかで道教、陽道、密教などと習合し、土俗的な仏教文化と融合した、「異界のざわめきに声を与える」盲僧琵琶について述べられている。「新書」の形態でありながら「最後の琵琶法師」ともいわれた熊本の盲目の奏者、山鹿良之による説経「俊徳丸」のDVDが付録されている。兵藤裕己

 

ピンクフロイド

Pink Floyd

1965年に結成されたイギリスのバンド。プログレッシブ・ロックの先駆的存在。浮遊感や倦怠感をもつ幻想的なサウンドは、プログレッシッブロックの一側面であるクラシック音楽やジャズをバックグラウンドにした技巧的音楽と対置できる。代表的なアルバム作品に「原子心母 」、「狂気 」。

 

ヒンドゥー(教)

Hindu

インドの民族宗教。古代インドのバラモン教と民間信仰が融合しながら形成。宗祖、教団組織は存在しないが、社会的伝統や、仏教などあらゆる段階の宗教を包含する多様倫理体系をもつ。それゆえに宗教に限定されない、インドの伝統的な民族的な制度、慣習の総体の呼称といえる。生活様式、身分や職業までを含んだカースト制、河川崇拝が特徴的。ヨーガもその修行の一つ。

 

 

 

 

(フ)

ファドゥツ

Vaduz

スイスとオーストリアの間に挟まれたリヒテンシュタイン公国の首都。ライン川右岸の谷底の平野に位置し、おだやかな農村風景の中に古城を有する。

 

フィン・ウゴル系

Finno-Ugric peoples

シベリア中北部、北、東欧に話者地域が分布するウラル語族の民族。ユーラシア北方のツンドラ地帯において狩猟採集とトナカイ遊牧を生業にする民族が多いが、テュルク系のバシキール人の遺伝子を持つマジャール人のように騎馬遊牧民族も存在した。フィン・ウゴル語にはハンガリー語、フィンランド語、エストニア語などがある。

 

プーシキン、アレクサンドル

Alexander Pushkin, Александр Пушкин 

1779-1837  ロシアの国民詩人といわれる詩人、小説家。革命の必要性を表明したためにコーカサスへ追放され、小説「コーカサスのとりこ」を発表。代表作はオペラ原作としても知られる、チャイコフスキーの「エフゲーニー・オネーギン」、「スペードの女王」、キュイの「大尉の娘」など。「大尉の娘」はジプシー歌謡の代表曲「黒い瞳」の名で宝塚歌劇団の重要なレパートリーとしても知られる。妻を巡る決闘により37歳で死亡。

 

「プーシキンスカヤ10

Art Center "Pushkinskaya-10, Арт-центр Пушкинская, 10

ロシアのサンクトペテルブルグの総合アート施設。1980年代後半に、芸術家たちがアパートの空家に定住して始まる。当時はこうした独立施設は非公認だった。14のアートギャラリー、コンサート会場、音楽クラブ、レコーディングスタジオ、子供向け劇場をもち、現在もペテルブルグの自由な現代芸術のランドマークとして機能。

 

ブードゥー

Voodoo

ハイチの宗教の一つで、至高神の他に多様な神々や祖霊を崇拝する多神教。それらの霊的存在の人間への憑依が信仰の中心。 キューバのサンテリーアやブラジルのカンドンブレのように、アフリカの原始宗教とカトリックとが混交した宗教。主な信仰の担い手は都市の下層民、および農民だった。

 

フェドソーヴァ、イリーナ

Irina Fedosova,  Ирина Федосова  

1827-1899 「泣き歌」の歌い手。北西の端、フィンランドと国境を接する北極圏に現在のカレリア共和国のオロネツ地方に生まれる。民族叙事詩の研究者に発見され、 ロシアの天才的「泣き女」といわれた。プリチターニエ(ロシアの泣き歌)

 

ブエノスアイレス

Buenos Aires

アルゼンチンの首都。ラプラタ川下流の西岸に位置し、パンパス農牧地帯とラプラタ水系の広大な流域を後背地とし、大貿易港を有する。国際貿易で繁栄し、ヨーロッパから夢を抱いてきた移民、アフリカから労働力として連れてこられた黒人たち、そして現地インディオ系の人々とが混在して溢れ返り、活気に溢れた都市が形成された。その中で必然的にさまざまな音楽文化が融合し、タンゴが生まれた。

 

フォノグラフ(蓄音器)

phonograph

1887(明治10)年にトーマス・エジソンが発明した世界初の録音・円筒形の蝋管レコード再生機。メリカの発明王トーマス・エジソンが 世界初の録音・円筒形の蝋管レコード再生機の「フォノグラフ」を発明。日本でも1909(明治33)年に円盤式レコードの再生機が発売され、やがて蓄音機と呼ばれた。

 

フォルモーサ

Formosa, 福爾摩沙,美麗島

台湾の別称。ポルトガル語。

 

巫楽、(巫堂  ムーダン)

무당

韓国のシャーマニズム儀礼、巫俗。東北シベリアのシャーマニズムの系統につらなるもので、古代においては国家宗教の地位にあった。高麗時代以降は仏教,特に李朝の儒教によって抑圧され、社会的地位がきわめて低下。シャーマン(職業的宗教者)が「クッ」いう神を憑依(ノリ)させ、お告げを行う祭儀を行う。それに伴う音楽→シナウィ。

 

深沢七郎

 

1914-1987 作家。山梨県生まれ。中学卒業後,放浪生活を経てギター奏者となり,1954年から日劇ミュージックホールに出演。1957年に姥捨伝説から構想した「楢山節考」を発表。「笛吹川」「甲州子守唄」「みちのくの人形たち」など土俗的世界の表現や、日常生活をユーモアな批評精神で戯画化した。「風流夢譚」では天皇家にも触れる内容から、出版元の社長の家族に対する右翼少年による殺人事件が生じた。

 

釡山

Busan, 부산 

韓国南東端、東海岸の主要都市。高麗時代まで小さな漁村だったが、李朝初期の15世紀に倭館が設置され、対馬との貿易が行われて繁栄。江戸時代の鎖国時代の日本では、蝦夷地および琉球とともに、日本人が海外に居住できる限られた場所となった。1876年の明治政府の圧力による不平等条約、日朝修好条規によって自由港として開港し、日朝貿易の拠点として発展。

 

富士(山信仰)

 

仏教等の外来宗教の影響を受ける以前から存在していた原始山岳信仰。麓の浅間神社への信仰が成立し、密教的要素を加え修験道の本拠となる。12世紀前半に活躍した修行僧の末代上人は、山頂に大日寺を築き、室町時代後半には、一般庶民も登拝。江戸時代には「富士講」として関東を中心に大流行し、庶民が巡礼として夏季に白衣を着て鈴を振り、「六根清浄」を唱えながら登拝した。

 

プスコフ

Pskov, Псков 

ロシアの都市。エストニア・ラトビア国境に近く、第二次世界大戦中はドイツの占領期間がある。

 

二葉亭四迷

 

1864~1909 小説家。日本最初のまた言文一致体、近代リアリズム小説の「浮雲」を1887年に刊行。内閣官報局の仕事に転じ、 その後満州に渡り、ツルゲーネフ、ゴーゴリらのロシア近代文学を翻訳。特派員としてペテルブルクに赴き、途中ウラジオストクでエスペラント語も学んだ。船での帰国途中にベンガル湾上で没した。

 

「二人でお酒を」(楽曲)

 

梓みちよが歌った1974年のヒット曲。テレサ・テン(鄧麗君)が歌い、中国、台湾でも「再來一杯」という曲名で流行した。

 

舞踏(日本)

 

1950年代後半から前衛舞踊家土方巽が、大野一雄らと共に創始、発展させたダンス。正統的なモダン・ダンスに対し、異端性を強調して「暗黒舞踏」という語を用いた。日本独自の伝統と前衛を混合した舞踊のスタイルとして認知されている。歪んだ身体や内股、低い重心など前近代的・土着的な身体を志向し、過激で猥雑で混沌とした舞踊を産み、ダンサーや芸術家の関心をひき、ヨーロッパを中心に世界的な広まりをみせる。

 

ブヌン(族、音楽)

Bunun, 布農族

台湾の高地少数民族。「パシププ」と呼ばれる、豊作祈願の際に歌われる特異な八部合唱文化が知られる。フランスの映画監督ゴダールの作品にも音楽提供する、チェロ奏者デヴィッド・ダーリンのロードムービー的なセッションにより、広く紹介されている。

 

踏み絵(絵踏み)

 

江戸幕府がキリシタンを摘発するために用いた方法。キリストやマリアが彫られている絵を踏ませる。とくに九州地方で制度化して実施され、それを拒み、ためらう者を処罰した。内面での信仰を重視する「隠れキリシタン」が生まれじょじょに効果はなくなっていった。明治政府も信仰の禁止の姿勢をさらに強めたが、岩倉使節団が欧米諸国を視察した際、キリスト教解禁が条約改正の条件であるとされ、1873(明治6)年にキリスト教禁止令が解禁された。

 

フュージョン(音楽)

fusion

電気楽器を導入したジャズから派生し、1970年代半ばに発生。ロックやラテン音楽、電子音楽を融合。アドリブ重視はモダンジャズから継承されるが、シンコペーションやポリリズムの上の不確定性のあるドラマというより、安定したノリの良い安定したビートの上でテクニックを強調したソロパートを含むことが多くなった。1990年代から現在にかけては、より聞きやすくしたスムーズジャズのジャンルに移行。

 

フョードロフ、レオニード

Leonid Fedorov, Леонид Фёдоров  

作曲家、プロデューサー、アヴァンロックバンドのアウクツィオンのボーカリスト、ギタリスト。1980年代に国のロック文化の中心地のペテルブルク(旧レニングラード)で生まれ育つ。ソロ活動では1920代のロシアの詩、フォーク、宗教音楽、前衛的なジャズに目を向け、コントラバスのウラジーミル・ヴオルコフや、民俗音楽の研究者セルゲイ・スタロースチンらと共同作業を続けている。アウクツィオン

 

ブラウン、ジェームス

James Brown 

1933-2006 アメリカの歌手。幼少時にアパッチ系の父とアフリカ系の母が離婚し、親戚の間を転々とし、窃盗罪で少年院に入る。出所後、ゴスペルグループを作り、有名になる。ソウルシンガーとなり、シャウトを用いた圧倒的な歌唱とダンスで名を馳せた。アフロ回帰を求めながら、よりパフォーマティブで新しいサウンドをバックバンドJB’Sとともに作り上げ、ソウルの「ゴッドファーザー」と称された。

 

フラメンコ

Flamenco

スペインのアンダルシア地方に伝わる芸能。インドを起源として西に流れてきたロマ族(ジプシー=スペイン語ではヒターノ)、かつてこの地に君臨したアラブ系民族のスラム文化、在来のアンダルシアの民族芸能が融合し、18世紀末頃に誕生。1920年から1950年ごろまでは低迷期を迎えるが、20世紀後半に伝統復興の気運が起き、名唄、ギターなどの名演奏家が紹介され、多ジャンルの音楽にも大きく影響を与えた。

 

フランス国歌(ラ・マルセイエーズ)

La Marseillaise

1792年にフランス革命の際のマルセイユの義勇兵の革命歌。作詞・作曲はルージェ・ド・リール。1795714日に国民公会で国歌として採用。ナポレオン・ボナパルトが皇帝になった第一帝政から王政復古により公の場で歌うことは禁止されたが、1879年に再び国歌と制定。

 

フリージャズ

Free Jazz

1950年代後半から一部の急進的な演奏家と聴衆に支持を受けたアメリカで生まれたジャズの形態。既存の音楽理論を逸脱し、より原始的な衝動として音楽を即興的に行うことを目指した。ルーツであるアフリカの流儀への回帰、その多神教世界の霊性の体現し、短い旋律を執拗に繰り返したり、不可思議なリズムでトランスしたり、賑やかで未秩序的なポリフォニーを奏でる。本国よりヨーロッパや日本で支持され、それぞれの発展を遂げている。

 

プリチターニエ

Prichitanie, причитание 

ロシアで、結婚や、葬儀の際、女性によって歌われる「泣き歌」、「嘆き歌」の農村儀礼の呼称。号泣ではなく、歌い手の世界観を読み込んだ歌謡として発達した。上流階層では早くに廃れ、19世紀に民衆の伝統として、民俗学者により研究が進んだ。→嘆き歌(ラメント)

 

ブリヤート国立バレー劇場

Бурятский государственный академическийтеатр оперы и балета

ロシアのブリヤート共和国の首都ウラン-ウデにある1939年に開館された音楽劇場。2012年より2019年までボリショイ・バレエ団で東洋人初のソリストとして活躍されていた岩田守弘が、芸術監督を務めた。

 

ブリヤート(人)

Buryatia., Буряты

主にロシア、中国、モンゴルに居住するモンゴル系民族。バイカル湖周辺の山地で天幕(ユルタ)に暮らす遊牧民だったが、17世紀中頃からロシア人と接触し、定住して農耕も行った。バイカル湖をはさみ東西に区別され、東はロシア人との混血が進まずに固有の文化を維持しているのに対し、西は混血が進み生活もロシア化されている。

 

ブリヤート民謡

 

民謡においては5音階などを用いて暮らしを歌い、撥弦楽器チャンザや弓奏楽器モリンホールを伴う。シャーマニズムの歌では、鳥やオオカミの音を模倣し、シャーマンを補助する。それらの特徴は、モンゴルや北シベリアの音楽に類似する。→チャンザ、モリンホール

 

プリンスィズ(諸島)

Princes' Islands,  Prens Adaları

トルコ北西部、イスタンブール近海のマルマラ海の北東に浮かぶ9つの島から成る、近代化以来の歴史的保養地。ビザンツ帝国時代は流刑地だった。オスマン朝では島々の大部分が放置され、ギリシア人、アルメニア人、ユダヤ人などの逃避地となった。19世紀に入ると別荘地としての開発が始まり、フランス人、のちにトルコ人の富裕層も進出。1929年にソ連を追放されたトロツキーが4年間滞在して「ロシア革命史」を執筆した。

 

ブルース

blues

19世紀末ごろに誕生したアメリカ南部のアフリカ系アメリカ人による音楽。多くの曲は12小節を1コーラスとし、ブルーノートという五線譜には表せない音や減七度が重用されるようになる。1865年に南北戦争で北部諸州の勝利により解放された黒人は安価な労働力となる。アングロサクソン系の移民から差別を受け、低賃金で雇われたたアイルランドやスコットランドの白人による、バンジョーなどの楽器を伴うバラッドと黒人文化が融合して誕生。ギター弾き語りによる独唱のイメージはその融合に由来する。

 

「ブルー・モンク」(楽曲)

Blue Monk

ジャズピアニストのセロニアス・モンクの作曲によるBフラットのキーのブルース(1952)。モダンジャズにおけるブルースは、和声(コード)が細分化し、原初的なブルースと異なるが、さらに独自の感性によって逸脱しながら作曲、演奏された。モンク、セロニアス

 

(ヴォルガ)ブルガール

 

ブルガリア人の祖となったテュルク系民族。7~13世紀の頃、現在のロシア連邦のタタールスタン共和国とチュヴァシ共和国周辺に国家を築いた。10世紀のアラブの旅行家イブン・ファドラーンの「ヴォルガ・ブルガール旅行記」で知られる。その頃テングリ崇拝を残しながらイスラムを国教として定めた。スラブ人に圧力を受けながら13世紀にキプチャク-ハン国(ジョチ・ウルス)の属国となった。天空(テングリ)信仰

 

ピエール・ブレーズ

Pierre Boulez

1925-2016 フランスの作曲家、指揮者。セリー音楽の発展、電子音響技術の活用し、第二次大戦以降のヨーロッパ前衛音楽の理論的支柱。数学を学んでからパリ音楽院に進み、メシアンらに師事。1954年には「ドメーヌ・ミュジカル」を設立。アメリカ作曲界では、ジョン・ケージらが西洋古典音楽の伝統で回避された偶然性を、不確定性として導入したのに対し、作曲者の意図を重視する「管理された偶然性」を掲げた。指揮者としてもそれらの音楽的探究をいかした新たな解釈で、多くの古典曲を再現した。ケージ・ジョン

 

フレーブニコフ、ヴェリミール

Velimir Khlebnikov, Велимир Хлебников 

1873-1924 ロシアの詩人。1908年頃から詩作を始める。新造語やザーウミ(超意味言語)を駆使した実験的作品を発表、マヤコフスキーとともにロシア文学の権威性を否定する未来派の中心的存在だった。原始主義的傾向を示す初期の作品では、古代やスラブ異教への回帰、アジアへの憧憬が歌われた。その根底には、西欧近代に対するロシア独自のナショナリズムの模索の姿勢も見られる。

 

ブレヒト、ベルトルト

Berthold Brecht

1898-1956 ドイツの劇作家、詩人、演出家。1920年代前半から劇作家、詩人として有名になる。クルト・ヴァイル作曲の「三文オペラ」(1928)で成功を収めた。見慣れた常識に対して異常の念を抱かせる「異化効果」などの演劇理論を生み出す。役への感情移入を基礎とする従来のリアリズム演劇を否定し、出来事を客観的、批判的に見ることを演者や観客に促す「叙事的演劇」を提唱。1933年亡命し、北欧を経てアメリカで「肝っ玉おっ母とその子供たち」「ガリレイの生涯」などを執筆。戦後、東ドイツで活動。教育劇(教材劇)

 

プレヴェール、ジャック

Jacques Prévert

1900-1977 フランスの詩人、脚本家。シャンソンの作詞や映画「天井桟敷の人々」の脚本で知られる。シュルレアリスム運動に参加するが脱退し、日常生活に即した平易な話し言葉、言葉の意外な組み合わせる新たな言語感覚で市井の哀歓を表わした。「美しい星へ」「枯葉」「バルバラ」など50の詩編がコスマらの作曲で残された。

 

ブローク、アレクサンドル

Alexandre Blok, Александр Блок 

1880-1921 ロシア象徴主義を代表する詩人。革命期のペテルブルクをめぐる12人の赤軍兵士を十二使徒になぞらえた長編詩「十二」が特に有名。ショスタコヴィッチが1967年に「アレクサンドル・ブロークの詩による7つの歌曲」を作曲。

 

プロコフィエフ、セルゲイ

Sergey Prokofiev, Сергей Прокофьев 

1891-1953 ロシアの作曲家。モダニズム的な感性と豊かな叙情性を併せ持つ多くの傑作を生んだ。ロシア革命後、日本経由でアメリカへ亡命。アメリカやフランスで活動したが、家族とともにソ連へ帰国。創作の自由は制限され、当局の意図に合致した作品を書くことに応じながら創作を続行。195335日、スターリン逝去と同年同日に61歳で逝去。

 

文化科学宮殿 

Pałac Kultury i Nauki

ポーランドの首都ワルシャワに建設され、1955年に完成した「スターリン様式」の高層建築。ワルシャワのランドマークだが、社会主義時代の遺産的建造物として市民感情は複雑といわれる。西川千麗の日本舞踊公演「よだかの星」(2001)の上演会場となった。

 

フンフルトゥ

Huun-Huur-Tu, Хуун-Хуур-Ту

トゥバ共和国(ロシア連邦)の民謡等の伝統音楽を、伝統楽器や喉歌のアンサンブルで演奏。フランク・ザッパ、クロノス・カルテット、ハズマット・モディーン、ライ・クーダー、鼓童、トルコの即興演奏グループKONJOとも共演した。トゥバ、KONJO

 

 

 

 

(ヘ)

ヘ、ロマン

Roman,He, Хе Роман

1949年ロシアのサハリンのトマリ(日本統治時代の泊居町)に生まれるロシアの詩人。朝鮮学校を卒業後、大工、レンガ職人、音楽家、新聞の編集委員、サハリン国営テレビ・ラジオ会社の韓国語ラジオなどに携わる。25歳までは韓国語で作品を書き、韓国の古典詩歌から時調を翻訳。ギターの弾き語りで自作詩、ロシアや外国の詩の古典の詩を演奏する「バルド」でもある。バルド

 

ベイオール(地区)

Beyoğlu

トルコのイスタンブールの主要地区。かつてのコンスタンティノープルがあったヨーロッパ大陸側、金角湾の北岸の「新市街」に位置する中心街。オスマントルコ帝国時代には外国人居住区として栄えた。そのシンボル的なガラタ塔は第4回十字軍の最中の1204年に破壊されたが、1273年から1453年のコンスタンティノープルの陥落まで居留したジェノヴァ人によって再建されて現在に至る。

 

「平家物語」

 

鎌倉時代の、平家の栄華と没落を描いた軍記物語。和漢混交,七五調を主とする律文と散文からなる叙事詩。「平曲」として琵琶の伴奏によって物語が語られた。男性盲人の自治的互助組織である当道座に属した琵琶法師が各地を巡って伝えた。能の演目で武人がシテを演じる「修羅能」の多くは平家物語に依拠し、多数はシテが敗者である「負修羅」。

 

ヘイデン、チャーリー

Charlie Haden

1937~2014 アメリカのジャズコントラバス奏者。アイオア州生まれ。幼少より家族と共にラジオ番組でカントリーやアメリカン・フォークなどを歌う。脊髄性小児麻痺に侵される15歳まで歌い続けるが、コントラバスに転向。モダン・ジャズの最先端に君臨し、フリー・ジャズの革新者としても知られる。スペイン市民戦争を題材にした「リベレーション・ミュージック・オーケストラ」(1969)は代表作の一つ。

 

ベートーベン、ルートヴィヒ・ヴァン

Ludwig van Beethoven

1770-1827 ドイツの作曲家。ボンに生まれ、ウィーンに移住。ハイドン、モーツァルトの影響を受け、作曲家としての地位を確立し、ウィーン古典派様式を完成。20代後半から耳の不調が始まり、40代半ばにはほぼ何も聞こえない状態だった。ホモフォニー全盛期に対位法を研究し、独特のポリフォニックな技法による表現を成熟させた。「英雄」「運命」など9つの交響曲、室内楽曲など多数の傑作を生み、ロマン主義音楽への道を開いた。

 

ベールイ、アンドレイ

Andrei Belyi, Андрей Белый 

1880-1934 ロシアの象徴主義の詩人、哲学者。「銀の時代」を牽引。代表作に「銀の鳩」(1909)、「ペテルブルグ」(1916)があり、その実験的手法はシンボリズムの枠を超え、フォルマリズムや未来派へも影響を与えた。芸術を、神からの言葉の具現化し、作家はそれを媒介するだけのシャーマンととらえた。その手段としては音楽が最も適した手段であると考えた。「銀の時代」

 

ヘグム(奚琴)

해금

古代に奚(モンゴル、中国東北部)から古代中国、朝鮮半島に伝わった擦弦楽器。胡弓(こきゅう)の一種で、二弦。現代の奏者として、古典からさまざまなジャンルを横断する姜垠一(カン・ウニル)などが知られる。

 

ベケット、サミュエル

Samuel Beckett

1906-1989 アイルラドのダブリン生まれのフランスの小説家、劇作家。「不条理劇」の元祖といわれる戯曲「ゴドーを待ちながら」(1952)など、1937年にパリに移住後、詩・小説・戯曲・ラジオ・テレビドラマを制作。極端な言語実験を行い、それらが身体、声、身振りと連動したり断絶したりする。

 

「ペシミストの勇気について」

 

詩人の石原吉郎の随想(1970)。八年間の収容所生活シベリア抑留体験についての随想。抑留地で再会した一人の男、集団的思考と行動を拒絶した鹿野武一の生き方について述べられる。

 

ベジャール、モーリス

Maurice Béjart 

1927 -2007 フランスのマルセイユ生まれのバレエ振付家。1957年に「モーリス・ベジャール・バレエ団」を設立し、「春の祭典」で鹿の交尾に着想を得た大胆な振付けで大成功を収める。前衛電子音楽の創始者ピエール・アンリがロックビートにのせた作品を提供。

 

ヘッドバンギング

head-banging

ロック、ヘヴィメタル、ハードコアなどで聴衆や奏者が、ビートに共鳴し頭を激しく上下する行為。

 

ヘブライ語

hebraea

アラビア語やエチオピア語などとともにセム語族に属する言語。古代ヘブライ語はユダヤ教の聖典である旧約聖書に結実したが、口語はユダヤ人の離散とともにしだいに衰退。中世にはもっぱら文語としてユダヤ教徒の祈祷などにおける宗教言語として受け継がれたが、後にパレスチナのユダヤ人の日常語として復活。ヘブライ文字は22の子音字からなり、右から左へ横書きされる点などで他のヨーロッパ系言語と異なる。

 

ベリャコーヴィッチ、ヴァレリー

Valery Belyakovich, Валерий Белякович 

1950-2016 ロシアの演出家。1977年にロシア演劇のニューウェーブの象徴的存在だったユーゴザパト劇場を創立。ペレストロイカで出国規制が緩くなった1987年にエジンバラ演劇祭で「ハムレット」を上演し、衝撃的な舞台で世界的な評価を獲得(最優秀賞受賞)。日本にもよく招聘された。

 

ヘッセ、ヘルマン

Hermann Hesse

1877-1962 ドイツ生まれのスイスの詩人、小説家。20世紀前半のドイツ文学を代表する文学者。 南ドイツの風俗に穏やかな人間の生き様を描いた。一次大戦中より絶対平和主義を唱え、東洋思想にも惹かれた。水彩画を描き、詩画集も創作。1946年にノーベル文学賞を受賞。代表作に「車輪の下」「デミアン」「ガラス玉遊戯」。

 

(サンクト・)ペテルブルグ

Saint Petersburg, Санкт-Петербург

ロシア連邦北西部のロシア第二の都市。帝政ロシア時代ピョートル1世がヨーロッパへの貿易ルート確保のために築いた。その結果、北方戦争でスウェーデンを破りバルト海の覇権に貢献。1712-1728年、1732-1918年にはロシア帝国の首都。1914-1924年はペトログラードと改称。レーニン死後、レニングラードに改称され、1991年に、旧称サンクト・ペテルブルグに戻された。

 

ペルウェル、スィヴァン

Sivan Perwer

1955年にトルコのクルディスタンの多く暮らすディヤルバクル近郊に生まれたクルド人の詩人、作家、歌手、タンブール奏者。クルド人の間でカリスマ的な支持を得ている。民族の抑圧を歌い、イラク、シリア、トルコでの活動は制限され1976年にトルコから出国。2013年に故郷に戻る機会を得たが、現在も亡命生活を送っている。ディヤルバクル

 

ペルゴレージ、ジョヴァンニ・バッティスタ

Giovanni Battista Pergolesi

1710~1736 イタリアの古典派時代の、オペラの劇的構成において叙唱(レチタティーヴォ)と歌唱の分化など、後の西洋オペラの形成に大きく影響を与えたナポリ楽派の作曲家。多くの歌劇を作曲したが、夭折。宗教音楽の分野でも「スターバト・マーテル」が現在でも頻繁に演奏され名曲として名高い。

 

「ベルリン・東京ミーティング」

 

作曲家足立智美がドイツ文化センターで主宰したコンサート、ワークショップ。ベルリンの即興音楽シーンの現在を伝え、日本の音楽家との交流を図る内容だが、2021年は新型感染症の蔓延で、ドイツの音楽の来日が叶わず、足立自身と、河崎のワークショップコンサートも含めて開催された。足立智美

 

ペレストロイカ

Reconstruction, перестройка

1980年代後半にソビエト連邦のゴルバチョフ書記長が主導した政治、経済体制改革運動。「建て直し」を意味するロシア語。冷戦体制の終焉など国際的、文化的な意義は大きい一方、国内の経済面においては代替の市場システムが正常に機能せずインフレが進んだ。1991年のクーデターを契機とするロシア共和国大統領エリツィンが主導権掌握し共産党解体が進行。同年12月にソ連解体とゴルバチョフの退陣というめまぐるしい経過を経て、改革は幕を閉じ、社会主義崩壊と全面的な資本主義化に道を譲った。

 

ベレヒニア

Berehynia, Берегиня

東スラブ神話で、万物を産んだ偉大な神であると信じられた水と森の女神。ウクライナの独立とオレンジ革命のシンボルとして、首都キーウの独立広場に像がある。

 

ヘロドトス

Herodotus

紀元前5世紀 古代ギリシア哲学者、歴史学者。大旅行家で、東はメソポタミアのバビロン、西は南イタリア、北は黒海北岸、南はナイル川を1000キロメートルも遡ったとされる。各地の見聞をもとにペルシア戦争とその背景を主題とする人類初の客観的な叙述による歴史書「歴史」を著した。

 

ペンタトニック(五音音階)

pentatonic

西洋古典音楽などにおける、「ドレミファソラシド」の8音音階に対し、1オクターブの音域に対して5つの音をもつ音階の総称。

 

ベンチャロヴァ、ナターリャ

Natalya Bencharova, Наталья Бенчарова

ロシアのカザン出身のバイカル地域、イルクーツク州の音楽、文化、教育イベントのプロデューサー。バイカル湖上のこの地の先住民族であるブリヤートの聖なる島に暮らし、氷上の音楽フェスティバル「青い湖」を開催。

 

ヘンデル、ゲオルク・フリードリヒ

Georg Friedrich Händel

16851759 ドイツ出身の作曲家。イタリア、イギリスで活躍し、多くのオラトリオを残した。「メサイア」は有名な「ハレルヤ・コーラス」を含む。

 

ベンヤミン、ヴァルター

Walter Benjamin

1892-1940 ベルリンに生まれたドイツのユダヤ人思想家、文芸批評家、哲学者、思想家、翻訳家、社会批評家。マルクス主義とユダヤ神秘思想のメシアニズムとに立脚。「ベルリンの幼年時代」など随想的な文体も好んで用いた。1933年にヒトラー政権樹立とともにパリに亡命。第二次世界大戦の勃発にともなって収容所に収監。釈放されたが、1940年パリ陥落により逃亡し、ピレネー山中で服毒自殺したとされる。

 

 

 

 

(ホ)

ボアール、アウグスト

Augusto Boal

1931-2009 ブラジルの演劇家、演劇理論家、政治活動家。「被抑圧者の演劇」と称し、生活に遍在する抑圧を意識、対象化を演劇創作の中で行う。演者と観客の枠組みを解体しながら、ドラマの流れが作られる。かつてブレヒトが試みた「教育劇」にも通じ、応用演劇の実践が先取りされた。ブラジルMPBの第一人者である歌手シコ・ブアルキとは「アテネの女たち」の共作なども通じて親しい関係にある。応用演劇、教育劇(教材劇)、MPB

 

ボイス、ヨーゼフ

Joseph Beuys

1921-1986 旧西ドイツ出身の現代美術を創作した芸術家。「社会彫刻」という概念を編み出し、芸術の概念を「教育」や「社会変革」に拡張。そこで「人はみな芸術家」である。第二次世界大戦において空軍に志願しウクライナ、クリミア方面の東部戦線に加わった経験も踏まえユーラシアのビジョンを共有し、ナム・ジュン・パイクと25年にわたる共作を試みた。パイク、ナム・ジュン

 

ボーカロイ(VOCALOID

 

ヤマハが開発し、2003年に発表された歌声合成技術その応用ソフトウェアの総称。

 

ポーツマス条約

 

1905年、日露戦において、日本はアメリカ大統領セオドア・ルーズヴェルトに仲介を要請し、アメリカのポーツマスで締結した講和条約。日本は韓国の保護権、遼東半島南部の租借権、南樺太などを獲得して大陸進出を果たした。賠償金が獲得できないなど、その内容に国民の不満が高まり、日比谷焼打事件などの暴動が起きた。日露戦争

 

「ホーハイ節」

 

青森津軽で盆歌を元にできた民謡。囃子詞の「ホー」の部分では、日本の民謡では珍しいヨーデル唱法を用いる。そのような歌唱の多いアイヌ民謡の影響説が有力。→ヨーデル

 

ホーメー

Khoomei, xoomei

倍音を多く含む喉歌の呼称。モンゴルではホーミー、トゥバではホーメイ、アルタイではカイ、ハカスではハイとよばれる。叙事詩や賛歌を装飾する目的で発達したと考えられ、地域により表現法は若干異なる。モンゴルでは1950年代以降、国家主導の音楽政策の中で、アルタイ山脈周辺地域の喉歌を援用。ホーミーがなかったと考えられる西部以外の地域にも急速に広まった。民謡の旋律にも積極的に用いられながら、高度に洗錬された。喉歌

 

ホーロー(人)

福佬

台湾、中華人民共和国南部などに暮らす漢民族。

 

「僕の呼び声」

 

歌手、女優の石橋幸が歌うロシア・アウトカーストの唄のコンサートのタイトル。2022年で第24回を迎える。第17回より河崎が音楽監督、構成を担当している。石橋幸

 

「僕は愛する」

Люблю

ロシアの詩人ウラジーミル・マヤコフスキーの長編詩(1922)。ロシアのサックス奏者アレクセイ・クルグロフによる作曲作品があり、2019年に東京でも発表。自身のサックスと河崎のコントラバスとのデュオにパフォーマーを加えた編成で演奏された。マヤコフスキー、ウラジーミル

 

ホケトゥス 

hoquetus

一つの旋律をアンサンブルが休符を挟みながら分解する作曲手法。14世紀のフランスの作曲家ギヨーム・ド・マショー による「ダヴィデのホケトゥス 」 が知られる。ユーラシアン・オペラ「さんしょうだゆう」における河崎作曲の弦楽四重奏組曲のパートでも多用されている。イソリズム

 

「母国語」(詩、楽曲)

Туган тел 

タタール人の歌聖 ガブドゥッラ・トゥカイによる詩 (1909)。この詩を歌詞とするタタールスタンの国民的愛唱歌。ガブドゥッラ・トゥカイ

 

ボサノヴァ

bossa nova

1950年代の終わりにリオ・デ・ジャネイロで誕生したブラジルのポピュラー音楽。アントニオ・カルロス・ジョビンが作曲、ヴィニシウス・ジ・モライスが作詞した「想いあふれて」が、最初のボサノヴァといわれる。土着的なサンバやのリズムや歌謡を引き継ぎつつ、哲学的な歌詞が囁くような声で歌われ、対照的な都会的な「新しい傾向」をもつ。楽曲展開も斬新な和声と転調が多用され洗練された。ジャズ、後のブラジルの先端的なMPBなどにも大きく影響を与え、日本でも現在まで愛好される。しかし本国では、1960年代前半に一時的に流行したものとされ、一般的ではない。→MPB

 

ホジャ

Hodscha, hodja

コーランを教える教師。トルコではシャーマニックな祭儀や治癒行為も行った。

 

ボスポラス(海峡)

Bosporus

トルコ黒海とマルマラ海を結ぶ海峡。この海峡によってトルコはアジア側とヨーロッパ側とに分けられる。南北の全長は 30km。マルマラ海の入口にイスタンブールがあり、軍事や交通の要地となっている。

 

ボヤルスキー、ミハイル

Mikhail Boyarsky, Михаил Боярский

1949年生まれのロシアの俳優、歌手。「三銃士」のダルタニヤンなどを演じ、ソ連時代より国民的人気を得る。歌手としても多数のヒット曲をもち、現在も広く愛されている。2014年以降のクリミア問題に関しては、プーチン大統領の立場を支持する書簡に署名したことでも知られる。

 

堀川久子

 

新潟県在住の舞踏家。美学校・小杉武久音楽教場、ダンサー田中泯の身体気象研究所の創設に参加。帰郷後、郷土の伝統芸能を訪ね歩きながら、農業などから踊りの在所を探る。ヨーロッパ、新潟を活動の拠点とし、道、野外、家屋など、劇場外での公演も多い。

 

ホリデイ、ビリー

 

Billie Holiday

1915-1959 アメリカのボルチモア生まれの歌手。少女時代から麻薬の常習者で逮捕投獄を繰り返した。カウント・ベイシー楽団などの歌手を経て独立。ジャズの歌唱に特徴的なスキャットも使わず、声域や声量が豊かでないにもかかわらず、歌詞で旋律を表現することだけでジャズ歌手の頂点にのぼりつめた。代表曲「奇妙な果実」は黒人リンチ殺人を題材にした。

 

ポリフォニー

polyphony

複声部の複旋律から絡まり合いながら成立する合奏の形態。各地の民族音楽の合唱文化にもみられる。狭義にはそれらを意図的に作曲のなかで体現した西洋古典音楽のポリフォニーをさす。中世音楽以降の多声音楽やバロック音楽のなかに完成させたバッハの「対位法」を発展させた音楽がある。

 

ボルヘス、ホルヘ・ルイス

Jorge Luis Borges

1899-1986 アルゼンチンの小説家、詩人。1940年代以降に登場した「新しいラテン・アメリカ文学」の代表的な先駆者。夢や迷宮、無限の循環、架空の書物や作家、宗教、神などをモチーフとする幻想的な短編によって知られた。詩集「ブエノスアイレスの熱狂」、短編集「伝奇集」「エル=アレフ(不死の人)」など。

 

ホロヴィッツ、ウラディーミル

Vladimir Horowitz

1903-1989 ユダヤ系の家庭に生まれたウクライナ出身のアメリカのピアニスト。ロシアで活躍した後に西ヨーロッパ各地でも演奏。1928年のニューヨークでも大成功を収め、不動の地位を築いた。ショパン、リストシューマン、ラフマニノフなどのロマン派の作品の演奏で最もよく知られている。

 

ホロコースト(ポグロム)

Holocaust

ユダヤ教で神に供える犠牲に由来するギリシア語起源の言葉。1933年から45年までのナチスドイツによる、600万人が殺されたといわれるユダヤ人大虐殺。古くからヨーロッパ、ロシアやウクライナなどで行われてきた集団的迫害行為は「ポグロム」といい、ロシア語で「破壊」を意味する。13世紀以来、ドイツやイベリア半島のユダヤ人は迫害を避け、王が庇護したポーランドやウクライナ方面に逃がれたが、反ユダヤ思想を叩き込まれコサックによる襲撃、略奪を頻繁に受けた。ミュージカル「屋根の上のバイオリン弾き」でもウクライナでのユダヤ人差別が描かれた。

 

ポロナイスク

Поронайск

ロシアサハリン島の街。1869年にロシアが、この地域のニヴフ民族、アイヌ民族が暮らす集落(オタス)に隣接して、チフムネフスキー監視所を建設したのが町の始まり。1905年、ポーツマス条約により南樺太が日本に割譲されると、「敷香(しすか)」という名に改称。戦後はソヴィエト領となり、音楽詩劇研究所でコラボレーションを続けるウクライナの歌手アーニャ・チャイキフスカヤが幼年時代を過ごした。

 

盆踊り

 

盆の民俗芸能、慣習。祖霊、精霊を慰め、死者の世界に送り返すことを主眼として、唄にのって集団で踊る。起源は平安時代に一遍によって始められた踊念仏といわれる。やがて民間習俗と習合して芸能に重点がおかれる念仏踊りとなった。新盆の家の前に赴いて輪踊りし、頬被りをして顔を隠し、生き返った死者に扮して演じられた。明治から一時衰退したが、大正末期から奨励され再び盛んになった。明治以前は歌垣の風習に結びつき、未婚の男女、既婚者らが一時的な肉体関係をもつ場でもあり、泊まり込んで乱交を行う「ざこ寝堂」は全国の農村に存在し、昭和時代にも存続した。→一遍

 

梵字(サンスクリット)

 

古代インド語、梵天(ブラフマー神)によってつくられたという伝承に由来する文字。日本には、中国経由で仏教と共に伝えられたため、仏教の経典と強いつながりを持つ。一文字で如来や菩薩などを象徴し、文字自体を神聖な文字として崇められている。

 

ポンチャック

뽕짝

韓国のカセット・テープ、CDミュージック。リズムボックスやキーボードとともに歌謡曲や民謡がエンドレスにメドレーで歌われる。高速道路のサービスエリアなどで売られることが多かった。名前は4分の2拍子のリズムの音感をあらわす。トロット

 

 

 

 

(マ)

マ、ヨーヨー

Yo-Yo Ma 馬 友友

1955年フランスのパリで生まれのアメリカの中国系アメリカ人チェロ奏者。父は中国出身の作曲家。母は香港出身の声楽家。バッハから現代曲まで幅広いレパートリーを持ち、ジャンルを問わず多くのコラボレーションも行い、日本舞踊の坂東玉三郎とも共演。東西の伝統音楽と、現代の音楽との関りを模索する「シルクロードアンサンブル」を展開。

 

マースレニッツァ

Maslenitsa, Масленица

スラブ地域の「バター祭り」を意味する春の大祭。直後にキリスト復活祭前の大斎の期間に入る。死者の霊をまつり、多神教崇拝の時代まで遡る古代スラブ人の予祝行事であったとされる。歌い踊り、太陽の形をあらわす丸いブリヌイ(クレープ)を食べ、案山子(モレーナ)を燃やし、その灰を畑に撒いて豊作を願う。ソ連時代は正式に祝われなかったが、家族行事として残された。ペレストロイカの開始後、大々的な屋外祝賀が再開し、中央アジアにも引き継がれる。

 

マーチング(バンド)

marching band

演奏をしながら、曲想に合った動きを加えた吹奏楽の演奏形態。マーチは行進の意味で、オスマン帝国軍の軍楽隊(メフテル)が元祖とされる。その賑々しい響きはヨーロッパに脅威とともに受け入れられ、モーツァルト、ベートーベンも曲想を意識して創作を行った。室内で奏でられる芸術音楽に対し、野外で奏される比較的シンプルな楽曲のため、大衆音楽、アマチュア音楽活動に多大な影響を与えた。

 

マアルーラ(の音楽)

Maaloula 

シリア南西部の町。標高約1600メートルの山間部の険しい崖に囲まれた地は、キリスト教徒の定住地としては世界最古の一つ。キリスト教徒が多く居住し、現在もイエス・キリストの時代のアラム語が話され、宗教歌も歌われる。一般的なヨーロッパの聖歌とは異なり打楽器も多用される。アラム語

 

舞鶴(港)

 

京都府北東部の日本海沿岸の都市。港は、戦中は旧海軍の軍事的拠点として使用され、戦後は大陸に進駐していた軍人や一般人の本土への引揚、日本在留の中国・朝鮮人の送還の指定港だった。日本各地から夫や親族の帰還を待ち望む多くの人々が出迎えに訪れた。昭和291954)年に発売された菊池章子のレコード「岸壁の母」が大流行した。

 

マカーム(ムガームなど)

maqām

微分音程を含むアラブ、ペルシャ、中東、中央アジアのトルコ圏にみられる旋法体系。西アジアに独特の半音以下の微小音程も含む7音音階で、種類は膨大な数にのぼる。今日実用されるマカームの数はトルコやエジプトで30種前後、マグレブ(チュニジア、アルジェリア、モロッコ)では理論上24、イランでは12とされる。イランでは,マカームの代りにダストガーというペルシア語で呼ばれる。

 

マガダン

Magadan, Магадан 

ロシアの極東の都市。かつては流刑地で知られた。20世紀初頭から極東での資源探索が進められ、北のコリマ川上流に金鉱山を発見。厳しい気候と不便な交通から開発は進まず、1932年にはマガダンに流刑者の強制収容所が建設され、強制労働の拠点になった。

 

マジックリアリズム

magic realism

主にラテンアメリカで発展した魔術的幻想的文学の表現。文学や美術で、神話や幻想などの非日常、非現実的な出来事に緻密なリアリズムが混在する。そのような傾向は他地域にもみられ、たとえばロシアではゴーゴリ、ブルガーコフ、中国では莫言、残雪などの作家も挙げられる。→ゴーゴリ、ニコライ

 

マショー、ギヨーム・ド・

Guillaume de Machaut

14世紀のフランスの作曲家。多声楽曲のモテトゥスやポリフォニー技法、イソリズムを複雑化させたアルス・ノーヴァを代表する作曲家。革新的な手法と20世紀のミニマリズムにも通ずるそれらの技法を用い、ミサの通常文全てを通して作曲された最古の「通文ミサ」である「ノートルダム・ミサ曲」が知られる。イソリズム

 

マスラボーエヴァ、アナスタシア

Anastasia Masloboeva, Анастасия Маслобоева 

ロシアのイルクーツクの女性歌手、グースリ奏者。父エフゲニー・マスラボーエフとともに10代より活動し、シベリアのフォークロアを題材にしたCD作品群を創作。

 

マスラボーエフ、エフゲニー

Evgeny Masloboev, Евгений Маслобоев 

ロシアの打楽器奏者、作曲家。イルクーツク近郊に生まれる。フォークロアの要素とフリージャズを混合させた多くの作品を、娘であるアナスタシアとともに創作。多くの映画、映像作品の作曲も行っている。シベリア東部、極東地域では盛んではあるとはいえない前衛音楽シーンの精神的支柱になっている。

 

マダン(劇)

마당극

韓国の演劇の一形態。円形のマダン(広場)を中心に、演者観客と観客が相互に関係をとりながら渾然一体となって劇を進行させる。1970年代-80年代にかけて韓国の若者が民主化運動の中で盛んとなり、伝統的な仮面劇タルチュムの継承が民衆文化運動として取上げられ、演劇運動として発展し、創作劇も生まれた。

 

マチューシン、ミハイル

Michael Vasilyevich Matjuschin, Михаил  Матюшин

1861-1934 ロシアの作曲家、美術家。ヴァイオリン奏者として活動した後、四次元理論を持ち込み美術家として未来派の指導的役割を果たした。革命後は、色彩原理の応用による新しい空間認識を謳い「ゾル・ヴェド派」を結成。空間をすべてが相互につながっている球体と見なし、視神経の訓練により視野角を360度に拡大して、新しい視力の形成を提案。

 

松井須磨子

 

1886-1919 長野県生まれの俳優。文芸協会付属演劇研究所1期生となり、1911年、帝国劇場における「ハムレット」「人形の家」に主演し、新劇女優としての地位を確立。 島村抱月との恋愛関係から処分を受け、抱月とともに芸術座を結成し、「サロメ」「カルメン」などに主演。トルストイ原作の「復活」で新劇初の全国巡演を行ない、主題歌「カチューシャの唄」が大流行した。1918年に急死した抱月を追い翌年に自死。

 

松岡正剛

 

1944年、京都府生まれ。情報文化論、日本文化論を展開する「編集工学者」。1971年工作舎設立、雑誌「遊」を創刊。多くの著書のほか、ブックレビューサイト「千夜千冊」を展開。

 

松尾芭蕉

 

1644-1694 江戸前期の俳諧師。三重県伊賀の上野の生まれ。士族待遇の農家出身であったが、武士身分を捨てて町人の世界に入った。地を旅行して「野ざらし紀行」、「更科紀行」、「奥の細道」など多くの名句と紀行文を残し、和歌の余興であった俳諧に芸術性を与え、俳句の地位を高めた。

 

「窓の外は雪」

 

歌手忌野清志郎が作詞、作曲したバンドRCサクセション初期の曲。忌野清志郎

 

摩尼車(マニ車)

 

主にチベット仏教で用いられる仏具。円筒形で、側面にはマントラが刻まれている。回転させた数だけ経文を唱えるのと同じ功徳があるとされる。

 

マヤコフスキー、ウラジーミル・

Vladimir Mayakovsky, Владимир Маяковский 

1893-1930 ロシアの詩人。ジョージアに生まれ15歳のときから革命運動に参加。若い詩人や画家たちとロシア未来派に加わり、19歳で作品を発表。詩劇「ウラジーミル・マヤコフスキー」(1913)、長詩「ズボンをはいた雲」(1915)。革命後は雑誌「レフ(芸術左翼戦線)」を結成。戯曲「ミステリヤ・ブッフ」、「南京虫」を書いたが、恋愛関係の綻びからピストル自殺したとされる。

 

マラクリナ、アーシャ

Asya Marakulina

1988年にロシアのペルミに生まれ、ペテルブルクを拠点とするロシアの女性現代美術家。感情の内的世界と物体の現実世界のバランスをとる時空間を、グラフィックと絵画、テキストとサウンド、衣服とオブジェクト、刺繡とアニメーションなど、さまざまなメディアを使用して表現。

 

マリア観音(バンド・木幡東介

 

1987年に結成された木幡東介率いる日本のロックバンド。日本語本体の歌唱を求めそれに基づく身体表現を一致させることで、西洋音楽や欧米に由来するリズムと対峙し、結果として特異なパフォーマンス、サウンドを構築。河崎が1996~2001年まで参加し、脱退後は主に木幡のソロ活動として展開したが、2014年バンドとしての活動も再開。

 

マリ(人)(チェレミス人)

Mari, Марийцы

ヴォルガ川やカマ川沿岸に居住するウラル語族。16世紀にキリスト教が流入したが、古来自然崇拝を行ってきた。 2012年にマリ人の説話をモチーフにした映画「神聖なる一族24人の娘たち」が日本でも公開されて話題を呼んだ。名前の頭文字が「O」である24人の女性たちの生と性にまつわる奇妙な物語がみずみずしい映像で描かれた。

 

マリ-エル(共和国)

Mari El, Марий Эл

ロシア連邦の共和国。ロシア西部のヴォルガ中流域に位置する。フィンランド語やハンガリー語と同系統のマリ語のウラル語族フィン・ウゴル系マリ人が基幹民俗。

 

ウラジーミル・マルコフ

Владимир Марков

ロシアの口琴、自作楽器奏者。バイカル地域に暮らし同地の民俗音楽を研究。

 

まれびと(「マレビト」)

 

民俗学者、国文学者の折口信夫が用いた語。異郷からの来訪神をいう。「まれびと」が芸能化し、それらを祭儀や諸芸の源泉とする説。外部からの異邦者を信仰、芸能の起源とし、田の神など土地や家に固有な祖霊神に日本人の信仰起源を求める柳田国男の論に対立した。→折口信夫

 

マルクス、カール

Karl Marx

1818-1883 ドイツ、イギリスの哲学者、経済学者。ユダヤ人の家庭に生まれた。両親の家系はいずれも代々ラビ(ユダヤ教の教師)を輩出した。私有財産の哲学的解明と労働疎外の問題に取り組んだ。「経済学批判」や「資本論」で資本主義の矛盾を分析し、弁証法的唯物論、史的唯物論の理論を築き、20世紀の社会主義革命の思想的な礎となった。資本主義の根本傾向はそれらの分析通りに展開しているともいえる。

 

マルケス、ガルシア

Garcia Marquez

1928-2014 コロンビアの小説家。架空の土地を舞台に、その建設者である一族の歴史をたどるかたちで、ラテンアメリカの歴史を描いた大作「百年の孤独」(1967)は、現実と幻想が混交する魔術的(マジック)リアリズムの手法で描いた傑作。1982年にノーベル文学賞受賞。マジックリアリズム

 

「マルドロールの歌」

Les Chants de Maldoror

シュールレアリストたちに多大な影響を与えた長編散文詩(1868)。終世無名のままだったフランスのロートレアモン伯爵(イジドール・デュカス)の作。オートマティスム (自動記述) による奇想に満ちた文体で、悪の化身に対する反逆を歌う6歌から成る。脈絡のない単語の列を支離滅裂に繋ぎ合わせるシュールレアリストたちの「デペイズマン」を先取りした句も知られる。ロートレアモン

 

丸山美佳

 

ウィーンと東京を拠点に、批評家、アートキュレーターとして活動。現代美術やパフォーマンスと交差するメディア文化や身体のポリティクスと、複数のフェミニズム/クィア理論との横断に焦点をあて展覧会の企画を行う。巡回展覧会プロジェクト「Behind the Terrain」(ジョグジャカルタ、2016/ハノイ、2017/東京、2018)など。

 

マレーヴィチ、カジミール

Kazimir Malevich, Казимир Малевич  

1879-1935 ウクライナ、ロシアの未来派の美術家、美術理論家。キエフ近郊のポーランド人家庭に生まれる。ロシア・アヴァンギャルドにおいて「絶対(至高)主義」と訳されるスプレマティズムの創始者。幾何学的な色彩平面形態だけを描くのが特徴で、カンバスに黒や白い正方形を書いたのみの代表作が知られる。

 

「満鉄小唄」

 

満州の朝鮮人慰安婦についての替え歌。満州国建国の1932年に流行した軍歌「討匪行」が本歌。朝鮮出身の娼婦が客を誘う際の駆け引きを歌った春歌的な内容。その悲哀をあらわす反面、朝鮮人慰安婦を卑下して歌った歌でもあり、朝鮮語で表わすことが困難な日本語の濁音の発声をからかうように歌われた。満洲の抗日ゲリラ討伐の苦難を歌う本歌は厭戦的雰囲気を持ち、戦局が不利になると禁じられた。

 

マンデリシュターム、オシップ

Osip Mandelstam, О́сип Мандельштам 

1891-1938 ポーランドのワルシャワ生まれのロシアの詩人。象徴派の詩人たちと交わり、第一詩集「石」(1913)により神秘性を否定するアクメイズムの代表的詩人として評価された。革命後は次第に発表の場を失い、1934年にスターリンを諷刺した詩で逮捕され流刑。二度目の逮捕の後、収容所で不審な死を遂げた。詩を、遭難の危機に臨んだ航海者が海に託す「投瓶通信」のようなものと喩えた。

 

マントラ

Mantra

サンスクリット語で文字、言葉を意味する。真言と訳され、密教では仏や菩薩の誓い、教え、功徳がある言葉とされる。賛歌、祭詞、呪文なども広義に含まれる。インドにおいては、祭式の中で唱える賛歌、歌詠、祭司、呪文が書かれたヴェーダ聖典の本文、ヨーガ学派の音声を用いた修行法をいう。

 

万葉集

 

現存最古、奈良時代の歌集。20巻、収録歌はおよそ4500首に及ぶ一大歌集。作者は無名の人民から大詩人・貴族・天皇に及ぶ。5・7調で短歌形式が多いが、5と7を長く繰り返す長歌もあり、歌謡的なものだったとされる。万葉仮名の使用による日本文学の起源。

 

 

 

 

(ミ)

三浦宏予

 

ダンサー、女優。演劇、オペラ、クラブや美術館、ギャラリーでのイベント、映像作品に出演。シャーマニズム、アニミズムに興味を持ち、その延長線上にダンスや演劇をとらえ、ジャンルを横断する。2001年より生まれ故郷の岩手県遠野市に伝わる早池峰神楽を師事。演劇、ダンス作品への出演やコンテンポラリーダンスの独舞公演、振り付けも行う。音楽詩劇研究所の主要メンバー。

 

三上寛

 

歌手、詩人、俳優。1950年青森県北津軽郡小泊村(現・中泊町)生まれ。同郷の詩人、寺山修司などの影響を受けて現代詩を書き始める。北の漁村の風習や生タブーを題材にした「怨歌」を歌い、日本を代表するフォークシンガーとしてスタイルを確立。詩集やエッセイなど著書も多数。

 

美加理

 

東京生まれ。俳優。高校在学中に寺山修司作・演出の「青ひげ公の城」で舞台デビュー。1980小劇場の象徴的存在。演出家・宮城聰とともにク・ナウカシアターカンパニーの設立。「王女メデイア」、「天守物語」、「マハーバーラタ」などで主演。極度に集中した身体表現は高い評価を集めて「歌わないカナリア」と呼ばれた。2011年から主に静岡県舞台芸術センターSPACで活動し、フランス・アヴィニョン演劇祭など海外公演にも多数出演。

 

三木聖香

 

歌手。2012年よりピアノ弾き語りで自作曲によるライブ活動を開始。ポピュラーからシャンソン、アヴァンギャルドまで幅広く活動し、2015年より音楽詩劇研究所に参加。2019年まで海外公演、ほとんどの作品でメインヴォーカリストをつとめ、海外の歌手ともコラボレーションした。村松喜久則、京極加津恵両師に民謡の歌唱、三味線を師事。

 

ミショー、アンリ

Henri Michaux

1899-1984 ベルギー生まれのフランス画家、詩人。メスカリンをはじめとする幻覚剤の効果のもとに詩や絵の創作に取り組んだ。それらの実験は20世紀の文学と美術において独自の地位を占めた。西洋からの一人の「野蛮人」としてインド、中国、日本などの国々を訪ねて書いたアジア旅行記「アジアにおける一野蛮人」も知られる。

 

水木しげる

 

1922-2015 漫画家。大阪府に生まれ鳥取県境港で育つ。第二次世界大戦に従軍し、パプアニューギニアのラバウルで左腕を失う。従軍体験やそこにおける幻視体験、精霊との交流が後の創作の源泉となった。1958年に貸本漫画家としてデビュー。代表作「ゲゲゲの鬼太郎」では日本古来の民間伝承を描き、さまざまな妖怪を紹介、創作。

 

禊(みそぎ)(言語)

 

身体に穢れのあるときや神事の前に、川や海の水につかって身体を洗い清めること。禊の起源は、イザナギが亡き妻のイザナミをたずね黄泉の国に訪れたあと、筑紫の日向で身体についた穢れを清めたことに求められるとされる。

 

溝口健二

 

1898-1956 東京生まれの映画監督。サイレント映画時代から活躍。ドイツ表現主義的なモダニズム手法、戦前の左翼思想、軍国主義にも乗じながら新しい題材で多作した。戦後は、1952年から「西鶴一代女」、「雨月物語」、「山椒太夫」がベネチア映画祭で連続受賞。「長回し」による「ワンシーン・ワンカット」の技法を用いて、とくに社会の犠牲となる女性の姿をリアルに描いた。

 

ミニマリズム(ミニマル・ミュージック)

Minimal Music

1960年代にアメリカで生まれた音楽様式、作曲技法。 音列技法を経て複雑な知的操作による作曲方が行き詰まった現代音楽の状況に反動し、インドやアフリカなど非西欧音楽からの影響で発展。短い旋律やリズム・パターンを反復する過程で、それらをずらしつつ音楽を変化させる。主要な作曲家に、テリー・ライリー、スティーブ・ライヒ、ラ・モンテ・ヤング、フィリップ・グラスら。ロックやポップスへの影響も大きい。

 

ミハイロヴァ、アリーナ

Alina Mikhaylova, Алина Михайлова 

ロシアのダンサー。1972年にラトビア付近の都市プツコフに生まれ、体育大学を卒業後、ダンサーとして活動。ロシアにおけるヨーガの最も初期の紹介者でもある。母方に高麗人の出自を持ち、3世代続く舞踊家。民族的出自などからもニュートラルな表現を即興に求め、世界各地の即興音楽家と共演を重ねる。音楽詩劇研究所のユーラシアンオペラプロジェクトに参加。

 

身分制度(朝鮮、李朝時代)

 

一般的に両班(儒学を修める高級官僚)、中人(職務が限定される官僚)、常人(農、商、工に携わる庶民)、賎人の4つに大別。基本的に世襲され、婚姻は階級間に制約された。娼妓、巫堂、広大、仏教の僧侶などは賎人に属し、中でも白丁は、特殊部落を成して一般人とも隔離され、屠殺・柳器匠などに従事した。

 

宮内康乃

 

作曲家。1980 年神奈川生まれ。音楽パフォーマンス集団「つむぎね」主宰。楽譜をつかわず、人間の声や呼吸や身体にもとづく有機的なリズムをもとに音を紡ぐ独自のメソッドを展開。他分野とも多数協働し、ワークショップ、アウトリーチ活動にも力を注ぐ。仏教音楽の聲明、三味線、箏、笙、正倉院復元楽器などの作曲も手掛けている。

 

宮沢賢治

 

1896-1933 岩手県生まれの詩人、童話作家、農芸化学者。農村指導者、宗教思想家。空想性、宗教性、土着性、科学精神、ユーモアが豊かに交錯する文学宇宙を築いた。日蓮宗の熱心な信者となり布教のため上京。帰郷し、1926年には農民の生活向上を目指して指導を実践するために羅須地人協会を設立。37歳に亡くなる以前に刊行された著書は2冊のみで、没後に、詩人の草野心平に発掘された。

 

三行英登

 

映像作家、グラフィックデザイナー。舞台、映像、美術など様々な場で映像制作および記録者として、協同作業を数多く行う。映像作品に、長編ドキュメンタリー作品として「日比谷に咲いたタカラヅカの花」、文化人類学者溝口大助との共同制作によるビデオインスタレーション「Justice」など。音楽詩劇研究所の主要メンバー。

 

ミュレン、ゼキ

Zeki Muren

1931-1996 トルコの歌手、俳優、詩人。 1951年にデビュー後映画界にも進出し、主演と主題歌も担当するスターとして人気を得て「トルコ歌謡の王様」といわれた。オスマン朝の古典声楽をベースに妖気漂う独特のコブシ回しで知られる。女性的な衣裳、髪型、メイクで歌ったため、同性愛者だったとされる。

 

明恵(上人)

 

鎌倉時代前期の僧侶、学僧。浄土宗全盛期に、密教の教理の背景の華厳思想を説いて多くの著作を残す。インド渡航計画を立てたが果さず叶わなかった。19歳のときから約40年にわたり夢の記録を書き残した「明恵上人夢記」がある。自己の夢を解釈し修業に活用した。日本舞踊家の西川千麗が創作のテーマの一つとした。西川千麗

 

民衆演劇運動(東南アジア)

 

1960 年代に、インドネシアやフィリピンやで産まれた民衆演劇運動。インドネシアでは詩人、劇作家のレンドラがベンケル劇団を立ち上げ、擬音や古謡を用いた身体演劇を用いて反体制的メッセージを表わした。フィリピンでは女優セシル・ギドーテらがPETAを設立し、英語ではなくフィリピン語でワークショップを重ねながら各地に民衆劇団を誕生させた。

 

 

 

 

(ム)

ムアッジン

mu'azzin

イスラムの礼拝を呼びかけアザーンを朗誦する男性の朗唱師。モスクやマドラサ(高等教育機関)に付随する塔(ミナレット)の上から、メッカの方角に向かって人差指を耳の穴に入れてアッラーを称える。

 

巫堂(ムーダン)

무당

韓国のシャーマニズム。クッを主宰するシャーマン。降神巫(北部に多い)と世襲巫(南部に多い)がある。→クッ

 

ムガーム 

Mugham

微分音程を含むアラブ圏の旋法体系のアゼルバイジャンでの呼称。→マカーム

 

(複式)夢幻能

世阿弥が確立した能の作劇様式。語は近代以降に用いられるようになった。登場人物がすべて現実の人間である「現在物」に対し、主人公(シテ)が死者、神、鬼、精が化身して登場し、過去を回想する。シテが生前の姿や里人として登場する前場と、旅人などを演じるワキの夢の中に、亡霊や精霊として本来の姿で登場する後場の二場に分かれる。橋掛かりが現世とあの世をつなぐ。→世阿弥

 

ムジークテアター(シアターミュージック)

Musiktheater

オペラやミュージカルを含む音楽劇を指すが、特に20世紀に、従来のオペラに反発する音楽や演劇自体がもつ相互性を援用しながら創作される作品。通常のオーケストラとは異なり、演奏家に演劇的、舞踊的なパフォーマンス性が要求される。アルゼンチンのマウリシオ・カーゲルやドイツのハイナー・ゲッペルズらの作曲家、スイス出身の演出家クリストフ・マルターラーが知られる。

 

霧社事件

 

1930年に起きた台湾原住民族の抗日蜂起。民地支配に対する原住民の不満が爆発し、マヘボ族のモーナ・ルダオが指導。計画的な一斉襲撃により、日本官民側も134名が犠牲となった。台湾総督府は波及をおそれて「高山族」1000名以上を近代兵器も導入して殺害。指導者らの自殺により鎮圧された。高砂(高山)族

 

ムソルグスキー、モデスト

Modest Mussorgsky, Модест Мусоргский

1838-1881ロシアのプスコフ生まれの独学の作曲家で、ロシア国民楽派の「五人組」の一人。「芸術は人々と語り合うための手段である」と考え、言語による歌唱表現を重視し、オペラ「ボリス・ゴドゥノフ」、70曲に及ぶ歌曲を創作。ピアノ組曲「展覧会の絵」も名高い。飲酒癖を増長させ、健康を害し、42才で死去。

 

ムックリ

 

アイヌの竹製の口琴。薄い板についた紐を引っ張る事で、細長い切り出しの部分を振動させて音を出し、口の中に響かせる。口の形を変えることで倍音を変化させ、自然音などを模倣する。女性が奏することが多い。サハリンのアイヌは、北方諸民族文化同様に金属製も用いる。

 

6つの古代碑銘(エピグラフ)」

6 Epigraphes antiques

1914年に作曲されたクロード・ドビュッシーの楽曲。ピアノ連弾や室内楽等のバージョンがある。フランス(ベルギー)の小説家、詩人のピエール・ルイスが古代ギリシャの架空の女性詩人を偽装し、「翻訳作品」として発表された「ビリティスの歌」の朗読伴奏用に作曲。ドビュッシー、クロード

 

無拍節

 

一定の拍や節が持続しないによる自由リズムによる旋律。 即興的に歌唱、演奏されることが多く、五線譜上で指定された拍子や速度などが持続しないため、一般的に拍節を合わせる合奏による再現が困難。

 

ムハッベット(ムラト・エルシェン)

Muhabbet

ドイツの1984年生まれのトルコ移民3世の歌手。R&Bとトルコ大衆歌謡アラベスクを融合させた新たなジャンルを展開。アラベスク

 

 

 

 

(メ)

「明治の音: 西洋人が聴いた近代日本」

 

比較文学者の内藤高の2005年の著書。近代前後の民衆の生活とともにある歌や音楽的感性、サウンドスケープ、またはそれを形成する土壌について、西洋人(イザベラ・バード、エドワード・モース、ピエール・ロチ、ラフカディオ・ハーン、ポール・クローデル)の手記から考察される。

 

メイファー「梅花」

 

1970年代に作られた、台湾の国民的愛唱歌。風雪に耐えて美しい花を咲かせる梅の花を、当時中国人民共和国と軍事的、政治的な対立をしていた中華民国が、自国の立場になぞらえて歌われた。テレサ・テンの歌唱でも知られる。 テン、テレサ

 

メヴレヴィー(教団)

Mevlevilik

イスラム神秘主義教団。13世紀に、現在のアフガニスタンで生まれ、ペルシャの最大の神秘主義詩を大成したルーミーによって創始。旋回舞踊(セマー)で知られる。セマー

 

メシアン、オリビエ

Olivier Messiaen

1908 ~1992 フランスの作曲家。20世紀半ばのヨーロッパ前衛音楽理論の礎をつくり、カトリックの神秘性、東洋音楽のリズム、鳥の声の分析など、さまざまな革新的書法を用いたが、それらの作品全てに独自の官能性が通底する。第2次世界大戦に従軍して捕虜となり、収容所で「世の終りのための四重奏曲」を作曲し、自身を含む捕虜が初演を行った。代表作にオルガン曲「キリストの降誕」 、「トゥランガリラ交響曲」 、「異国の鳥たち」 など。

 

メデスキ、マーティン・アンド・ウッド

Medeski Martin & Wood

アメリカのニューヨークのダウンタウン即興要素の濃いジャムバンド。キーボード奏者のジョン・メデスキーは、ロシアの伝説的ニューウェーブバンドのアウクツィオンとのコラボレーションをギター奏者マーク・リボーとともに行っている。→アウクツィオン、リボー、マーク

 

メリェム 、ハティジェ

Hatice Meryem

トルコの女性作家、脚本家。代表作は「蚊ほどの亭主でいいから」。アンカラ国立劇場にて演劇作品としても上演された。「あるデルスィムの物語 クルド文学短編集」(さわらび舎)に短編「白頭鷲」が収められている。

 

メリスマ 

melisma

一音節に二つ以上の音符を用いる。いわゆる「コブシ」もその一種。それぞれの言語特性にも結びついて表わされる。五線譜等に再現する難しさに、各地の民俗音楽や、大衆音楽の特色があらわれている。

 

メロディヤ(音楽レーベル)

Μелодия

1964年には国有企業として設立され、音楽出版出版を独占。日本にもわずかに輸入されたが、クラシック音楽を中心に貴重な音源も多く、それを求めるマニアも少なくない。それら以外の、ペレストロイカ以前に検閲で禁じられた音楽や、アメリカ、西洋の音楽は、レントゲンフィルムを用いた「肋骨レコード」やカセットテープで密かに地下流通した。ソ連の崩壊後に私企業化した。

 

 

 

 

(モ)

モース、エドワード

EdwardSMorse

1838-1925 アメリカの動物学者で日本ではダーウィンの進化論の紹介、貝塚の発見で知られる。1878年から5年間に3度に渡り来日。左右の手で別々の文章や絵を描くことができる両手両利きだったといわれている。

 

モーツァルト、ヴォルフガング・アマデウス

 

1759-1791 オーストリアの作曲家。ザルツブルグに生まれ幼時から音楽の神童として知られる。ハイドンらが確立したソナタ、古典派の論理性や形式性から、より自由な情趣を加えた創作を行った。600曲以上の作品を残し、交響曲・協奏曲・室内楽曲・ピアノソナタの他、オペラ「フィガロの結婚」「ドン=ジョバンニ」「魔笛」など。

 

「最上川舟歌」

 

秋田の新民謡、船頭歌。山形内陸部の左沢(あてらざわ)発祥だが、現在唄われているのは、昭和に入ってから同地で舟乗りが歌った様々な歌をまとめあげ、現代風にアレンジされたもの。囃子詞「エンヤコラマーガセ」が特徴的。

 

喪輿かつぎ(の歌)(韓国)

상두꾼

韓国で、かつての賤民階級の職であった「棺かつぎ」に歌われた挽歌。各地の伝承歌が現在にも伝えられ、伝統音楽文化の一端を成す。仏教的な内容を持つ「回心」歌だが、土着のシャーマニズムに儒教、道教、風水が習合して唱われる。多くは交唄形式であり、重い棺を墓地まで担ぎ運ぶ労働歌の側面をもつ。→葬列歌(韓国)

 

モスクワ大公国(モスクワ・ルーシ)

Московская Русь

9世紀にゲルマン系ノルマン人が北欧から南下し、スラブ人と同化しながら1283年に国家として成立。モンゴルの支配を受けていたが、1380年のクリコヴォの戦いでキプチャク=ハンを破り、独立の道を歩み始めた。イヴァン3世はビザンツ帝国の後継国家を自称して「第三のローマ」を名乗った。16世紀に雷帝イヴァン4世がツァーリとして即位し、農奴制を強化しながらシベリア征服を進め恐怖専制政治を行った。混乱期が続いて1613年にはロマノフ朝に代わり、領土を拡大、1721年にピョートル一世が即位し帝政ロシアが始まった。 ロシア帝国(帝政ロシア)

 

「モスクワ・ミーティング」

 

音楽詩劇研究所がロシアのモスクワで行ったモスクワの音楽家、ダンサーとのセッション(2016)。セルゲイ・レートフ、アーニャ・チャイコフスカヤ、アリーナ・ミハイロヴァ、ヴァチェスラフ・ガイボロンスキーが参加。

 

モダ(地区)

Moda

トルコのイスタンブールはアジアサイドとヨーロッパサイドに海峡で分かつが、アジア側のカドゥキョイの一画をなす地区。古い街だが近年は若者を中心とした新たな文化発信の拠点にもなっている。

 

モダニズム(芸術)

 

伝統に対する改革的な芸術の潮流。18世紀末からヨーロッパを中心に意識的なものとなり、第一次大戦後の1920年代にはダダイズム、シュールレアリスムなど「〜イズム」を自称するような芸術運動体が広まった。第二次世界大戦へと向かう時代の中では、反戦、左翼的な政治的な態度に結びついて強められる傾向があった。

 

物売りの声(日本)

 

行商、街商の引き売りの声。物品が豊富になった江戸時代の都市で盛んになり、幕府からの許可書を得た者が行った。飲食物の販売が多く、それぞれ特徴のある売り声が必要であり、以降の都市のサウンドスケープとして街を活気づけた。

 

「モモ」

Momo

ドイツの作家、ミヒャエル・エンデの童話小説(1973)。副題のとおり「時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にかえしてくれた女の子のふしぎな物語」。童話であるが、作者のさまざまな思想、とりわけ貨幣経済についての考えなども反映されている。エンデ、ミヒャエル

 

桃山晴衣

 

1938-2008 歌手、三味線奏者。伝統邦楽とその社会に留まらず、古代、中世歌謡、今長唄、小唄などの江戸の芸能、明治大正演歌のなかに日本の歌の原像を求め研究し、想像的な復元を行った。梁塵秘抄への斬新な取り組みはとくに知られる。演出家ピーター・ブルックや即興演奏家デレク・ベイリー、振付家ピナ・バウシュなど海外の芸術家とも共演。

 

森鴎外(森林太郎)

 

1862-1922 小説家、医学者。現島根県の津和野生まれ。陸軍軍医となり1884年にドイツへ4年間留学。公務の傍らに書いた「舞姫」など滞在体験をもとに小説を発表。自我の葛藤、反自然主義的なロマン派的作風はで翻訳、評論、歴史研究など活動は多岐にわたり、大正期には「山椒大夫」「高瀬舟」など説話や歴史的題材に創作。さんしょうだゆう

 

森進一

 

1947年山梨県甲府市生まれ鹿児島県育ちの主に演歌を歌う歌手。中学卒業後に集団就職し、大阪で職を転々としたのち「女のためいき」でデビュー。掠れ声で女心を歌う特異な歌唱で賛否を浴びた。1970年前後に大ヒットした「港町ブルース」、「おふくろさん」、「襟裳岬」などは、演歌、歌謡曲のスタンダードソングだが、オリジナルの個性が強く、他者が歌うことは難しい。

 

モリンホール

Morin khuur, Морин хуур

モンゴルやブリヤート族が用いる伝統楽器。2弦の擦弦楽器で、馬の頭を頭部に有し、「馬頭琴」の名でも知られ、「草原のチェロ」の異名をとる。西洋楽器とは異なり、弦や弓は馬の尾毛やナイロンを束ねて作る。そのため倍音によるノイズ成分が多く含むオーガニックな音色を持つ。

 

モンク、セロニアス

Thelonious Monk

1917-1982 アメリカのジャズ・ピアニスト。ピアノを独学し、教会のオルガン弾きなどの仕事を経て、ジャズ演奏を始めた。数多くのスタンダードナンバーの作曲で知られ、ビバップのパイオニアの一人とされるが、不協和音の多用や打楽器的な奏法、唐突な沈黙やユーモアが交錯する非正統的な即興で一線を画した。代表曲「ラウンドミッドナイト」「ブルーモンク」など。

 

 

 

 

(ヤ)

 

 

 

 

ヤイサマ(ネ)ヤーズディー

 

アイヌの独り唄。「ヤイ」は「自分自身」、「サマ」は「そば」を表わすとされる。一般的に共同体に伝承される唄としてより、恋愛や苦しい時とか悲しい時など、その時々の気持ちをあらわした叙情的な即興歌として独唱された。一人一人が旋律のようなものをもち、歌詞はそこに当てはめられて歌われる。

 

「八木節型」

 

秋田音頭など歌唱の際に拍節やリズムがはっきりしている(リズム、テンポに乗って歌える=みなで即興的に歌いやすい)日本民謡。 民族音楽学者小泉文夫の民謡の分類。→「追分型」

 

八木美知依

 

箏奏者。古典の演奏、新作箏合奏の作曲を行う一方、エフェクターも駆使し、国内外のフリージャズ、即興演奏家とのセッションも多く行う。さまざまなジャンルを横断、越境しながら独自の音楽をうみだす「ハイパー箏奏者」。

 

「焼きぐり打令」

군밤타령

朝鮮半島の民謡。京畿民謡とされるが、新民謡として1932年に発表。男女の交唄する春歌的な内容の明朗さとリズミカルな曲調で、現在も南北両国で愛好されている。

 

ヤクート(族)

Якуты

ロシアのサハ共和国の基幹住民である北東アジアのテュルク系民族。ヤクート人は「サハ」と自称する。レナ川流域から広がり、現在も他のシベリア、北方少数民族と比較して大きな規模で存続。テュルク系だが、多民族との交流、混合から言語も独自性を持つ。宗教もイスラムではなくロシア正教を受容することが多い一方、古来のシャーマニズムと混合される形で信仰される。

 

ヤズディー

Yazidi

イラク北部、アルメニア、シリアの山岳地帯に暮らすクルド人が信仰してきた、聖典をもたず口伝される古来の一神教。ゾロアスター教などの影響下に生まれ、太陽が神の象徴。多くがイスラム教を信仰するようになったため、クルド人の中でも少数派であり、現在は過激派ISからの迫害も受ける。レタスを食べる事を禁じる戒律が存在。

 

柳宗悦

 

1989-1961 日本の哲学者、民芸運動の創始者。宗教、美術を幅広く研究し、1915年に朝鮮に旅行して李朝の壺から美術に魅かれた。1924年京城 (ソウル) に朝鮮民族美術館を開設。日本の朝鮮政策を批判する文章を発表。生活に根ざし、無名の作である民衆の工芸に美を発見し、「民芸」の語をつくった。妻はドイツ歌曲の草分け的な存在だったアルト歌手の柳兼子。

 

柳田国男

 

1875~1962 民俗学者。郷土研究や民間伝承の反歴史主義的な比較研究により、日本の庶民生活の原像を求めた。民話や民謡から常民文化の探求し、日本民俗学を体系化。土地に根を下ろす祖霊神信仰は、国文学的な視点の濃厚な折口民俗学の「マレビト」信仰とは異なる。主な著書に、「遠野物語」「木綿以前の事」「海上の道」など。

 

ヤナトゥ、サヴィナ

Savina Yannatou

1959年生まれのギリシアの女性歌手。地中海ルネサンスやバロック歌曲、ジャズと幅広く活動したが、セファルディック(イベリア半島から追放されたスペイン系ユダヤ人)、ギリシャ民謡の歌唱でも知られる。汎地中海的なトラッドを現代的な感覚で表わし、ドイツのフリージャズのコントラバス奏者ペーター・コヴァルトの「グローバル・ヴィレッジ」(フォークロアに根付きつつ国際的共同体の観念で演奏される即興表現)にも参加。

 

薮入り

 

江戸時代に広まった習俗。正月と盆の16日に、他郷に出た商家の奉公人や既婚女性が休暇をもらって里帰りし1日を過ごした。

 

山下洋輔

 

1942年生まれのジャズピアニスト、作曲家。1966年に山下洋輔トリオ結成。コード進行に囚われない激しく、スピード感のあるアドリブでフリージャズを演奏。演劇の唐十郎、小説の筒井康隆、芸人のタモリなどの芸人、漫画の赤塚不二夫などが共感し、音楽の枠を越えて活動。ジャズがそのように社会現象の一つとして展開を見せたことは、以降日本で類がない。近年はよりオーソドックスなスタイルの演奏が多い。

 

山下りん 

 

1857-1939 茨城県生まれのロシア正教のイコン画家。家出の末に上京し、親戚の支援により浮世絵、日本画、洋画を学ぶ。1880年に正教会の聖像画(イコン)を学ぶ機会を得てペテルブルグで聖画を学ぶ。自由な表現のカトリック宗教画に憧れ葛藤の中、1883年に帰国。ニコライ聖堂の神学校内宿舎に暮らし聖画を描き続けた。1918年に帰郷後は、白内障を患いながらトマト栽培と飲酒の生活にいそしみ、絵筆はとらなかった。イコン

 

山田耕筰

 

1886-1965 作曲家。東京生れ。ドイツ留学後アメリカにも滞在し、カーネギー・ホールで自作管弦楽曲を発表。帰国後は日本歌曲、歌劇の創出を試みて「からたちの花」「この道」「赤とんぼ」など多数の歌を作曲。歌詞の一音節に一つの音符があてはめ、民謡等にみられる拍節の不定さや母音歌唱の揺らぎを援用しなかった。戦期には音楽家の国策協力の陣頭に立って活動。戦後直後、音楽評論家の山根銀二との間に「楽壇戦犯論争」があった。

 

「ややこまい(あやこまい)」

 

出雲阿国が舞ったとされ、歌舞伎踊りの祖になったといわれる。 幼女の動きを模して娼婦が踊る舞。歌舞伎踊りの祖とされる。民俗芸能として新潟県柏崎市の綾子舞、香川県仲多度郡の綾子踊、東京都西多摩郡旧小河内村の鹿島踊などに、その面影が伝わっているとされている。出雲阿国

 

ヤングム(洋琴)

양금

韓国の伝統の多弦、複弦(同じ高さの音に二本の弦を使う)の、細い撥で叩いて音を出す打弦楽器。ペルシャのサントゥールに起源をもち、東西に広まった。西ではツィンバロン、ダルシマーと呼ばれ、東にはシルクロード、中国を経由し朝鮮半島に16世紀頃伝わったとされ、両班階級のあいだに愛好された。日本へは江戸末期に明清楽の楽器として月琴とともに伝来したが、日清戦争や唱歌の普及による明清楽の衰退とともに姿を消した。チター(ツィター)

 

両班(ヤンバン)

양반

高麗や李朝における支配階級。東班(文官)・西班(武官)があり、農・工・商に従事せず、儒学だけを勉強して科挙を経て高級官職にも昇進することができる特権を持った。土地と禄俸などを国家から受け、次第に世襲化し、地主階級を形成。1894年の甲午改革により制度は廃止。

 

 

 

 

(ユ)

唯物論

materialism

精神的なものに対して物質の根源性を主張する、科学主義に貫かれた哲学説。古代インド、中国、デモクリトスの原子論などのギリシャ哲学にもみられる。マルクス、エンゲルスが弁証法的唯物論を確立し、共産主義、社会主義の理論的根拠となった。

 

ユーゴザパト劇場

Московский театр на Юго-Западе

モスクワの南西部にある1977年に設立された劇場。ペレストロイカ期にニューウェーブとして注目され、弾圧を受けながらも上演を重ねた。ベリャコーヴィッチ、ヴァレリー

 

 

ユーカラ(ユカラ)

yukar 

アイヌ民族の口承芸能。カムイ(神々)のユーカラ(神謡)と英雄の少年が主人公であることが多い人間のユーカラ(英雄叙事詩)がある。特に後者を指して「ユーカラ」ということが多い。前者の神々は多様で、シャーマニズムの痕跡があらわれ、リフレインや動物の声の模倣が音楽的な神秘性を与える。後者の物語は長大で、父母を失い一族に育てられた少年が、異民族と戦闘を繰り返しながら、敵国の美少女を伴い凱旋するような内容。

 

「ユーカリ・タンゴ」

Youkali Tango

ドイツの作曲家クルト・ヴァイルが作曲したフランスで書かれたハバネラのリズム(拍節を3・3・2の舞踊生のあるリズムで分割)を用いたミュージカルナンバー。フランス語歌詞には「ユーカリ」という名のユートピアが描かれている。

 

ユーロジヴィ

 

юродивый(男性)/ юродивая(女性)Yurodivy

「佯狂者」、「聖愚者」、「瘋癲行者」と訳されるロシア正教の聖人の称号。15世紀後半頃から現れたとされる。乞食にも見まがう精神薄弱的な容貌で狂人を装い、あらゆる罪の根源である「傲慢」を超克するために放浪生活を送った。文学においてもさまざまな役割の暗喩として象徴的に扱われた。

 

「雪女」

 

ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の「怪談」(1904)に収められている短編。同作品を原作にした西川千麗の日本舞踊作品。西川千麗

 

ユダヤ(人)

Jews

ユダヤ教徒とその子孫。古代パレスティナを去って離散し、その移住先によってセファルディム(スペイン系)、アシュケナジム(ドイツ・東欧系)、ミズラヒム(アジア系)に大別される。中世を通じてキリスト教社会や各移住地で迫害を受け、職業からも排斥されたため、芸術、金融業、商業に従事して成功者を出した。ロシア地域でのポグロムが盛んになると多くがアメリカに移民。パレスチナ回復、祖国建設を目ざしたシオニズムが勃興し、1948年にイスラエル建国。先住するパレスチナ人との紛争が続く。

 

ユルタ(ユルト)

Yurta

中央アジアの遊牧民族が使用した移動式の天幕型住居の呼称。モンゴル語系では「ゲル」中国語では「パオ」。

 

ユン・イサン (尹 伊桑)

Isang Yun 윤이상

1917-1995 釜山近郊に生まれの朝鮮、ドイツの作曲家。1939年に日本に留学してチェロ、作曲を学ぶ。故郷に戻り反日運動に参加し投獄。西ドイツに渡り先端の技法を学び、作曲活動を行う。西洋の現代音楽の十二音技法に、韓国の民俗音楽に基づく「主要音」の概念を導入して伝統音楽の「うねり」を表現。アジアを代表する20世紀の作曲家として武満徹とともに評価が高い。 1963年には北朝鮮を訪れた。1967年スパイ容疑で KCIA に拉致され、韓国法廷で死刑を宣告される。ストラビンスキー、ブレーズらの音楽家の尽力、西ドイツ政府の対韓強行措置により特赦を受けてドイツに戻った。1994年、韓国で記念音楽祭が開催され、帰還が予定されたが体調悪化により断念し、故郷の地を踏むことなく死去。

 

ユン・ドンジュ(尹東柱)

Yun Dong-ju, 윤동주

1917-1945 朝鮮の詩人。現在の中華人民共和国吉林省延辺朝鮮族自治州の北間島地域で生まれた。敬虔なキリスト教徒信者だった。1942年に日本に留学するが、福岡の刑務所で27歳で原因不明の獄死。遺構詩集「空と風と星と詩」が1948年に韓国で出版され、清冽な言葉で広く知れわたった。

 

 

 

 

(ヨ)

ヨイク

yoik jojk

フィンランド、極北ロシアのラップランド、コラ半島のフィンランド語に近い独自の言語を持つ先住民族、サーミ族のシャーマニズムに起因する人々の自然観や感情についての歌唱。共同体の歌というより、本来は無伴奏の即興歌として一人で歌われることが多かった。日本でも公開されたアマンダ・シェーネル監督の映画作品「サーミの血」で、同地での1930年代のサーミ人への差別とともに紹介された。

 

楊水尺(ヤンスチョク)

양수척

李朝時代の被賤民階級でも最下層だった白丁の源流とされる。起源には前高麗時代、百済征伐に抵抗し鴨緑江の外に追放された人々の子孫、女真や契丹など北方民族の帰化人(遊牧民気質のために一般的な生活に馴染めず、忌避された)という説がある。水際で柳器業、屠殺肉商、旅芸人などを生業にして放浪的に暮らしたとされる。→白丁

 

ヨーデル

Yodeling

裏声と地声(胸声)を往来するアルプス山岳地方の歌唱法。牛飼いなどに歌われ、そのような作業の中でうまれた唱法と推測される。類似する歌唱は世界的に存在し、中国や台湾の高山地域、アメリカの山岳民、アメリカやオーストラリアの先住民、アフリカのピグミーにもある。日本ではアイヌの裏声唱法の由来が指摘される青森の「ホーハイ節」が類似する。

 

与謝蕪村

 

1716-1784 江戸時代中期の大阪生まれの日本の俳人、文人画家。江戸に出て俳諧を学ぶ。10年ほどの放浪のあと、芭蕉以後に形骸化していた俳諧の現況打破を求め「蕉風回帰」を唱え、独創的な発句を残した。俳画も創出し、名句のいくつもが現在も親しまれている。明治期に正岡子規がその存在と芸術を伝えたが、それ以前は世に知られた存在ではなかった。和文、漢文、韻文が混交する「春風馬堤曲」の一部の表現形式は口語自由詩ともいわれる。「春風馬堤曲」

 

「よさほい節」

 

元来即興的に紡がれる遊び歌や猥歌に独特の数え歌。大正時代に演歌師によって流行。男女の別れを歌う戯れ歌だったが、より猥褻でユーモアのある替え歌が広まり、軍隊や芸妓に歌われた。1967年の大島渚監督「日本春歌考」の中で通底された。「日本春歌考」

 

吉沢元治

 

1931~1998 コントラバス奏者。戦後米軍キャンプを始めさまざまな日本の主要ジャズ楽団で演奏。1960年代末よりフリージャズを指向するようになり、山下洋輔、阿部薫ら後輩である先鋭的演奏家と共演。独奏表現に芸術的本質を捉え、熊野に隠遁。その後、ヨーロッパ、アメリカ、韓国等海外にも活動をひろげ、ジャズに囚われず即興による自由なアンサンブルを目指して活動を展開し、ワークショップも積極的に行った。河崎が師事し、最後の弟子となった。

 

吉増剛造

 

1939年東京生まれの日本の現代詩の先端を走る詩人。文字表現に収まらない視覚性もその作品の中では重視され、朗読パフォーマンスも国内外で行う。80年代からは銅板に言葉を打刻したオブジェや写真、映像表現にまで創作を広めた。翻訳困難な詩にもかかわらず各国で翻訳、研究が進んでいる。

 

吉松章

 

現代演劇のほか、能、狂言など伝統芸能的な要素を用いて独自のパフォーマーンスを構築する。音楽詩劇研究所の主要メンバー。

 

よしやチルー(思鶴)

 

1650~1668年琉球王国の琉歌歌人。「吉屋」という置屋の遊女。古今調の技巧的で繊細な歌を残した才色兼備を謳われた。身分差による悲恋の歌がとくに知られ、薄幸のヒロインとして古くから語り継がれた。悲恋に打ちひしがれて絶食し、18歳で死去したといわれるが、生涯の実証が難しい。琉歌

 

「よだかの星」(舞踊作品)

 

宮澤賢治の童話を原作にした西川千麗の日本舞踊作品。20012002年ポーランドのクラクフ、ワルシャワなど3都市で「雪女」(原作小泉八雲)とともに上演(打楽器奏者橘政愛、河崎らが共同で音楽を創作)。西川千麗

 

読売交響楽団

 

1962年に設立された日本のオーケストラ。公共や放送関係社ではなく、新聞社が交響楽団を所有するのは世界的には稀有。

 

ヨホール

Yohor

ロシアのバイカル湖周辺のブリヤート族の民謡の円舞。大衆的な祝祭日に踊られる。手をつないで輪になり、太陽の動きに合わせて左から右に移動する。太陽に背いて動くのは悪霊だけだと信じられているため、逆方向に動くことは許されない。輪の中で指揮官が唄い、踊り手は馬や鳥を模倣しながら各々別の動きで踊る。

 

「夜仰向けにされて」

La noche boca arriba

アルゼンチンの作家、フリオ・コルタサルの小説 (1956)。交通事故で病院に入院し、病床の眠りの夢の中の古代アステカ族の儀式と現実を交錯させる。コルタサル、フリオ

 

ヨンガム(令監)

제주 영감놀이

韓国の済州島のシャーマンの「口寄せ」の儀式(シンバン)に由来する、ぼろ衣と破れ傘をまとって異教から現れた来訪神、鬼神。済州島には「一目人島」から現れたヨンドン神など、常世信仰的な祖先ではない死者、来訪者に対する「マレビト」信仰があり、沖縄のニライカナイ神とも類似する。

 

 

 

 

(ラ)

ラーゲリ

Camp, Лагерь 

ロシア語でキャンプ場、収容所。秘密警察が設けられたロマノフ王朝時代の18世紀、シベリア開拓要因として囚人が収容された。当初は監視の目も甘く脱走も頻繁で、犯罪者の「脱走ソング」も生まれた。ソ連時代には「反革命分子」を収容するため強制収容所が復活。日本では第二次大戦後に捕虜となったシベリア抑留者が在留した強制収容所のことをさし、過酷な環境の強制労働の中で、思想教育が行われた。日本人のほか、ドイツ軍捕虜、イタリア、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリア、フィンランド、バルト三国・ポーランドから200万人以上の捕虜や政治犯が収容所に送り込まれた。1953年のスターリンの死の直後から規模縮小が進んだ。

 

「ライブ イン パリ」

Love, Power, Peace: Live at the Olympia, Paris, 1971

アメリカの歌手、ジェームス・ブラウンの1971年のライブ音源によるレコード作品。演奏と観客の熱狂的なコールアンドレスポンスもまた一つの儀式的な現象として聴くことができる。ブラウン、ジェームス

 

ライム (押韻)

rhyming

語の母音をそろえるなどで韻を踏むこと。それにより朗唱にリズム感を与えることは口承歌謡文化の根本であり、現在では極端に韻を重視するラップミュージックも広く知られる。いっぽう近現代詩等の文学では、韻律からの解放による自由な言語表現が求められた。→ラップミュージック

 

羅臼

 

北海道の北東端、知床半島の町。流氷で知られ、根室海峡を挟み、対岸に国後島をのぞめる。地名の語源はアイヌ語によるが諸説あり特定が難しい。

 

楽道庵

 

東京都千代田区の古民家を改造したフリースペース。舞踏家の亞弥が即興と舞踏を中心としたワークショップを毎週月曜日に開催を長年継続している。→亞弥

 

ラジオ体操

 

1928(昭和3)年に「国民保健体操」として制定され、NHK のラジオ放送で広く普及。第2次大戦後廃止されたが、1951年新ラジオ体操(第一体操)が生まれ,翌1952年5月に第二体操も加えられ今日に至る。13種の運動を連続的に編成。現在でも一般的なラジオ体操第一の作曲は服部正、第二は團伊玖磨による。

 

ラジオ放送(第一声、日本)

 

アメリカで1906年に世界初のラジオ放送が行われ、1920年に公共放送が開始された。日本でも1923年の関東大震災を経てその重要性から開局が急がれ、1925(大正14)年に広まった。

 

ラップ(ミュージック)

 

1970年代のニューヨークのブロンクスの黒人街の路上パーティーの音楽に由来するとされる音楽。歌唱にメロディをあまり必要とせず、曲の拍感覚に合わせ(合わせない方法もある)、口語に近い抑揚をで歌詞の内容に先立ち韻を踏むことが重視される。ルコムXやキング牧師らの演説、西アフリカの口承叙事詩の伝統、「グリオ」も起源として指摘される。

 

ラファロ 、スコット

Scott LaFaro

アメリカのジャズコントラバス奏者。ビル・エヴァンス・トリオでの、インタープレイと呼ばれる濃厚な即興的対話における高度な技術と、クールジャズから発展した奔放な和声解釈によるアドリブが特徴。25歳で交通事故死。後のジャズ演奏家に大きな影響を与え、その革新的な演奏が切り開いたであろうと将来が惜しまれた。

 

ラフマニノフ、セルゲイ

Sergei Rachmaninov, Сергей Рахманинов 

1873-1943 ロシアの作曲家、ピアニスト。没落貴族の家庭に生まれた。当時の中心であった国民楽派と対立する西洋音楽よりのモスクワ音楽院で頭角を現す。作品の多くは後期ロマン派の作風だが、正教の鐘の響きや民謡等、ロシア音楽の特色が濃厚。精力的な活躍をヨーロッパでも展開。10月革命の影響でアメリカへ移住し、終世故郷への期間は叶わなかった。

 

ランボー、アルチュール

Arthur Rimbaud

1854-1891 フランス北部生まれの詩人。15歳から詩を書きはじめ、「酔いどれ船」で詩壇に登場。同性愛関係にあったヴェルレ−ヌに発砲されるなど、スキャンダラスな生活の中で「地獄の季節」を完成。その後散文詩集「イリュミナシオン」を脱稿するが、20歳で詩作を放棄。武器貿易商人として放浪の末37歳で死去。

 

 

 

 

 

リー、カーン

Khanh Ly

1945年ベトナムのハノイ生まれの女性歌手。アジアに広く広まったヒット曲「美しい昔」ほか、ベトナムの「ボブ・ディラン」ともいわれる作詞、作曲家のチン・コン・ソンとコンビを組み多くの曲を歌って有名になった。過度な情感を用いず、低音のアルトで淡々と歌う。チン・コン・ソン

 

リー、ブルース

Bruce Lee, 李小龍

1940-1973  アメリカ出身の中国人の武道家、俳優。中国系の俳優の父、ドイツ人と中国人の混血の母の間に、サンフランシスコで生まれる。香港に帰国し、幼年より子役として映画出演。18歳で渡米し、アクション俳優として活動。怪鳥のような声をつかって格闘シーンを演じた。「燃えよドラゴン」(1973)でハリウッドに進出し絶大な人気を集めたが、香港で同年急逝。

 

李恢成  

이회성

1935年樺太生まれの小説家。朝鮮籍をもち、朝鮮総連等に勤務したが作家活動に入り、「砧をうつ女」(1972)により、初の外国人として芥川賞受賞。「伽倻子のために」は後に小栗康平監督によって映画化。金大中政権発足を機に韓国国籍を取得。現在20年以上にわたり長編小説「地上生活者」を書き続ける。

 

リヴィウ

Liviv, Львів 

ウクライナ西部の旧市街には東欧の伝統的様式とドイツ、イタリアなどの建築様式が混在する歴史的な都市。13世紀半ばには成立し、ガリチア地方の商都として発達。14世紀以降はポーランドやハプスブルグ帝国、旧ソビエト連邦に併合される、現在はウクライナの一部。

 

リゲティ・ジョルジュ

Ligeti György

1923~2006 ハンガリーのユダヤ系作曲家。第二次大戦中に強制収容所で家族の命を失くす。戦後ブダペストでコダーイらに作曲を学び、ドイツで電子音楽とミュジック・セリエルの手法を習得。管弦楽曲「アトモスフェール」は1960年代の作曲界に影響を与えた。100台のメトロノームを鳴らす音楽や、ロックなど多様式でも知られた。スタンリー・キューブリックの映画「2001年宇宙の旅」の中でも楽曲が使用された。

 

李成桂(イ・ソンゲ)(太祖)

이성계

1335-1408 李朝初代国王。前高麗時代の武将として北の女真や南の倭寇に対する功績があった。中国における元から明への交替期にクーデタを起こし親元派を排し、1392年に新王朝を建国。儒教を国教とし、首都を開京(ケソン)から漢陽(ソウル)に移した。

 

リディア旋法

lydian mode

グレゴリオ聖歌に用いる8つの教会旋法(そのうちのイオニア旋法がのちの長調、エオリア旋法が短調)のひとつ。長調(ドレミファソラシド)音階のファ(4度)が半音上がる。基音(ド)から5度(ソ)を堆積して、オクターブ中でそれらの音を並べ替えると、この旋法の音階が形成される。第二倍音である5度の開放、協和的な性質から、音階から形成される旋律にも同様な印象を与える。アメリカの作曲家ジョージ・ラッセルが「リディアンクロマチック」理論を構築し、ジャズ理論に応用。武満徹が着目して強く影響を受けている。武満徹

 

リボー、マークー 

Marc Ribot

アメリカの1954年生まれのギタリスト。ハイチ人のクラシック・ギター奏者に師事。さまざまなジャンルを取り込み「フェイク・ジャズ」と称されたラウンジ・リザーズに参加。端正なテクニックと荒々しく破壊的な音響を同居させながら、サウンドに極度な陰影を与える。トム・ウェイツ、エルヴィス・コステロら、数多くのレコーディングやライヴに参加。

 

「流離の高麗人」

 

姜信子著、ヴィクトル・アン写真(石風社 2002)。姜が高麗人の出自を持つウズベキスタンの写真家と、中央アジアのコリアンディアスポラの来歴と現在を報告。朝鮮半島方、満洲、極東ロシア、スターリンの強制移住により中央アジアにまで替え歌として伝承された、明治時代の唱歌「天然の美(美しき天然)」を軸に展開。姜信子、高麗人

 

琉歌

 

沖縄本島を中心に生まれた短詩形叙情歌。888630音で歌われることが多い。成立は156世紀頃とされ、中国から流入した三味線(三線)と結びついた音楽、舞踊と結びついて発達。王侯貴族、士族だけでなく農村の女性や遊女に至るまで、階層や性別を問わず広く愛された。複雑な歌謡形態をもつ古謡が、労働歌などとして三線のリズムを伴い、韻律的を伴う定型的な短詩形としてまとまったとされ、民謡の形成に大きく影響を与えた。恩納なべ、よしやチルー(思鶴)

 

柳芭

 

1960年にエヴェンキの一族に生まれ、青年期までトナカイとともに山に暮らす。名前のリューバ、ロシア語名のリューダの愛称型で、民族の中露との交渉を表わす、1985年、中国の民津大学の美術学部を卒業し、内モンゴル人民出版社に美術編集者として配属される。森の生活と都会生活との狭間でそのどちらにも適合できずに苦しみ、過度な飲酒で故郷の川で溺死した。遅子建の小説「アルグン川の右岸」の登場人物イレーナのモデル。ドキュメンタリー映画「トナカイ神」(「神鹿呀,我的神鹿」)で、その人生が記録されている。→「アルグン川の右岸」

 

「梁塵秘抄」

 

後白河上皇が編纂した平安末の歌謡集。当時流行した7・5調の歌謡である今様 や民謡、風俗歌から発展した催馬楽 などの歌謡を分類集成した。仏教的内容も多いが、白拍子や遊女と呼ばれた女性芸人によって作られた世俗歌も多数。世俗歌謡では当時の民衆の生活を反映し、韻律の不整形も多数。記譜はなく、歌い方も伝承されていないので旋律などは想像しがたい。

 

 

 

 

(ル)

「ルーマニアン舞曲(ルーマニアン民俗舞曲)」

Romanian Folk Dances, Román Népi Táncok

ハンガリーの作曲家、バルトークが1915年に発表したピアノ組曲で、後に室内楽版も編曲された。当時ハンガリー王国の一部であったルーマニアの各地の民謡を題材にしている。バルトークの生地は現在のルーマニア領内にあたる。バルトーク・ベラ

 

ル・クレジオ、ジャン=マリ・ギュスターヴ

Jean-Marie Gustave Le Clézio

モーリシャス生まれのフランスの小説家。言語実験の要素を含む前衛的な作風で若くしてフランス文学界の新たな潮流をなした。語学教師として、タイ、メキシコにも滞在し、中南米の先住民フォークロアに惹かれ、作品に脱西欧、童話的な要素が新たな特徴として加わる。2008年ノーベル文学賞を受賞。

 

ルソー、ジャン・ジャック・

Jean-Jacques Rousseau

1712-1778 フランス、スイスの哲学者、作曲家。西洋近代を創始した哲学者といわれ、思想、政治、教育、文学などの分野において根本的な価値転換作業を行った。「社会契約論」では「人民主権」の概念が、フランス革命、後の民主主義の進展に大きく影響を与えた。写譜は生業でもあり、作曲家としては「むすんでひらいて」のメロディが有名。オペラ作品も残し、自身の言語論と関わりながら歌曲を重視。五線譜ではなく数字譜を提言し、理論を残した。

 

 

 

 

(レ)

礼楽

 

礼が表わす秩序と楽があらわす節度、平安を体現する中国の古典音楽および理論。「教養文化として六芸 (礼、楽、射、御、書、数) が重要視する「論語」や「礼記」に記され、音楽も統治方法の一つとされた。琴 (七弦琴) や雅楽があるが、実際の音楽というより、精神論と音律等の数理論として発展。儒教を受容する日本や韓国にも影響を与えた。

 

レートフ、イゴール

Yegor Letov, ЕгорЛетов

1964-2008 シベリアのオムスク生まれの詩人、ヴォーカリスト、ギタリスト。厭世感をあらわす観念的な歌詞をガレージパンク的なサウンドにのせたサイケロックバンド「市民防衛」で活動。大都市での活動を好まず、生前より伝説的な存在だった。ソ連崩壊後の政権も共産主義も否定した。43歳で急死。没後、オムスク空港の名を冠する住民投票でも、多くの得票数を得た。兄はジャズアヴァンギャルド界の巨匠セルゲイ・レートフ。

 

レートフ、セルゲイ

Sergey Letov, Сергей Летов 

ロシアのサックス、リード奏者。1956年に現在のカザフスタンのセメイに生まれる。宇宙工学士として数々の特許を得るが、ジャズサックス奏者に転身。以後、ペテルブルグ、モスクワのペレストロイカ期の現代美術、ロック、ジャズ、実験音楽に関わり、現在までその中心的人物として国内外で精力的に活動。河崎、および音楽詩劇研究所と共同作業し、ユーラシアンオペラ「さんしょうだゆう」でも重要な役を演じている。

 

レーニン、ウラジーミル

 

1870-1924 ロシアの革命家。ヴォルガ川中流沿岸に生まれる。父はモンゴル系のカルムイク人とトルコ系のチュバシ人の混血、母はドイツ人、スウェーデン人、ユダヤ人の混血。帝政ロシア内の革命勢力をまとめ、革命を主導し、ソ連共産党(ボリシェヴィキ)の初代指導者を務めた。科学的社会主義理論の普及に尽力し「帝国主義論」、「国家と革命」は世に大きな影響力を与えた。 病床にあった1922年に、後継者としての主導権を握ったスターリンが、ベラルーシ、ウクライナ、ザカフカスの共和国と連合してソヴィエト社会主義共和国連邦(ソ連邦)を成立。1924年に死亡。 スターリン更迭を勧告する遺書は1956年まで隠蔽された。

 

レールモントフ、ミハイル

Михаил Ю́рьевич Лермонтов

1814-1841 ロシアの小説家、詩人。詩編「詩人の死」が、決闘死したプーシキンの死は貴族階級の横暴によるものだという告発的内容を含んだため皇帝の逆鱗にふれ,カフカスに流刑。ジョージアに流刑されていたデカブリストや当地の知識人と出会い、独立運動に感銘を受ける。この地のコサックの老婆が歌う子守唄を採譜しロシア語に翻訳し、のちにロシア民謡として日本でも愛唱された。決闘によって死去。

 

レガメ・フェリックス

Regamey Felix

1844-1907 フランスの画家。挿絵画を中心に創作。1876年に来日し日本各地を巡り、庶民の暮らしや、宗教的行事などを素描。中国、インドを経て1877年の帰国後は、持ち帰った品々や記録がパリ万博などで公開された。

 

レジツキー、ウラジーミル

Wladimir Resizki, Владимир Резицкий 

1944-2001ロシア北部のアルハンゲリスク出身のペレストロイカ期から活躍する前衛サックス奏者、音楽研究者。リトアニアでヴャチェスラフ・ガネーリン、ウラジーミル・タラソフとのトリオで活動後に帰郷し、1972年グループ「アルハンゲリスク」を結成。現在まで続く国際ジャズ祭「ジャズデイズ」を組織した。「アルハンゲリスク」

 

レッドツェッペリン

Led Zeppelin

1970年代に最も影響力を持ったイギリスのロックバンド。1968年にギタリストのジミー・ペイジをリーダーにロンドンで結成し1980年まで活動。ハードロックを基調とし、民族音楽的要素、ファンク、サイケデリックなど様々な曲想をロック化してとりいれた。メンバーそれぞれの個性をもとに、ライブではインプロヴィゼーションを重視した演奏を行った。

 

レノン、ジョン 

John Lenon

1940-1980イギリスのリヴァプール出身の歌手、詩人。ビートルズで活動し、1970年の解散後も辛辣なユーモア、内省、平和思想、妻の現代美術家オノ・ヨーコの影響も受けて前衛性も発揮。多岐にわたる活動をしたが1980年に暴漢によって射殺された。ビートルズ

 

レマン()

Lac Leman

スイス、フランスに跨がるヨーロッパで2番目に大きな湖。三日月型。南にアルプスを望み、古くから国際的な保養地として知られる。湖畔のモントルーではジャズ・フェスティバルが開催され、ニューポート、モンタレーと並び世界三大ジャズフェスティバルといわれ、ビル・エヴァンスをはじめライブ録音が名盤として多く残されている。

 

レリス、ミシェル

Michel Leiris

1901-1990  フランスの思想家、詩人、民俗学者。1920年代にシュルレアリスム運動に参加するが、ブルトンと対立しグループを脱退。バタイユ主幹の「ドキュマン」誌に協力。31年、ダカール-ジブチ、アフリカ横断調査団参加し、人類博物館に勤務、民族学者として独自の視点から研究。バタイユ、カイヨワと社会学研究会を設立。戦中はレジスタンスに加わった。歌の原初が言及される「角笛と叫び」では、日常生活、闘牛、オペラ、儀式、呪詞、古謡などから、さまざまな声 について、随想的な断章形式で述べられている。

 

レンパー、ウテ

Ute Lempe

1963年生まれのドイツの女性歌手。ミュージカル女優としてダンスや演劇性をも含む表現力を駆使し、ブレヒト、ディートリッヒ、ドイツ頽廃芸術詩人のカバレットソング、パウル・ツェランをテーマにしたアルバムを制作。コラボレーション相手もニック・ケイブ、トム・ウェイツらのロック歌手や現代音家マイケル・ナイマンとの共演など多岐にわたる。

 

浪曲(浪花節)

 

浄瑠璃や説経節、祭文語りなどが基礎となり、大道芸として明治時代初期から始まった演芸。三味線を伴奏にして、白声と呼ばれる倍音を強調した独特の声、主に七五調の節と啖呵(台詞)で物語が進行。ラジオ放送にも乗じ大人気を博し、桃中軒雲右衛門や二代目広沢虎造の名手、流派も生まれた。いっぽう芥川龍之介、三島由紀夫をはじめ多くの文学者は嫌悪感を表わした。戦間期には軍国的な内容も反映し、戦後GHQの指導のもと下火になったが、昭和30年代初頭に再び最盛期を迎え、三波春夫、村田英雄らの歌謡浪曲も流行した。

 

老荘思想 

 

実在説が定まっていない老子、寓話「万物斉同」を用い「逍遙遊」を説いた荘子の思想をのちに合せた学説。儒家思想で強調される人為性に対し、自然の道に従う「無為自然」が説かれ、古来の道教的な世界観が反映される。現代においては、西洋哲学、思想にたいするオルタナティブな「タオイズム」として知られる。

 

ローザンヌ

Lausanne

スイスのジュネーブとともにスイスのフランス文化圏の中核をなす主要都市。レマン湖湖畔にある。国際オリンピック委員会(IOC)の所在地。

 

ローゼンバウム、アレクサンドル

Alexander Rosenbaum, АлександрРозенбаум 

ロシアのユダヤ系の歌手。1951年生まれ。医者として働き、1980年頃歌手に転じる。医学にまつわる歌、ユダヤ音楽起源のオデッサの犯罪者の歌を歌い、カリスマ的な人気を得た。アフガニスタン紛争に関する歌を書き、積極的にソ連軍・ロシア軍への慰問活動を行ったように、愛国者としてしられ、2000年代には下院議員になった。2014年以降のウクライナにおけるロシアのクリミア侵攻は支持。

 

ロートレアモン伯爵(イジドール・デュカス)

Le Comte de Lautréamont

1846-1870 フランスの詩人。マルドロールの歌

 

ローリングストーンズ

Rolling Stones

1963年にロンドンで結成されたイギリス出身のロックバンド。ブルース、R&Bなどの黒人音楽の世界観を、社会性をもつ歌詞で表現。キース・リチャーズのサイドギターを軸に、各プレイヤー独自のセッション感覚でルーズともいわれるサウンドが紡がれ、その上にリズミカルでスキャンダラスなミック・ジャガーの歌声が踊る。

 

「ロシアアウトカーストの唄」

 

歌手、俳優の石橋幸による、すべてロシア語で歌われるコンサート。ソ連やアメリカのニューヨークのロシア人移民街を訪ねて自ら収集した、囚人の歌、街唱、貧民の歌、亡命ロシア人の歌、コサックの歌、ジプシーの歌などの俗謡で構成される。それらの歌は「アウトカーストの唄たち」と総称される石橋幸

 

「ロシア異界幻想」

 

ロシア文学者の栗原成郎の著書(岩波新書 2002)。ロシア思潮の根底に流れる霊や終末のイメージをベースに、民衆の口承芸能のなかでも、嘆き歌、泣き歌、民衆の宗教的葬礼歌などについて紹介される。プリチターニエ

 

ロシア革命(10月革命)

Russian Revolution, Российская революция

191711月(ロシア暦10月)のソビエト政権の樹立により成功した世界史上初の社会主義革命。1905年、正教の司祭ガポンが指導した労働蜂起が阻止された「血の日曜日事件」を機に起きた諸暴動を第一次革命とする。各地に形成されたソヴィエト(労働者、農民、兵士の評議会)は、第一次世界大戦中の1917年に第2次革命が勃発すると、革命組織として位置づけられ、2月革命でツァーリ政府を打倒。ブルジョワ民主主義の立場から大戦への参加を継続した臨時政府と二重権力のなか、亡命先のスイスから帰国したレーニンは「すべての権力をソヴィエトに」を訴え、武装蜂起したボリシェヴィキが10月革命(11月7日)を成功。ソヴィエト政権の樹立が宣言された。

 

ロシア正教古儀式派

старообрядчество

ロシア正教で古い祈祷法の遵守を試みた人々。「ラスコーリニキ(分離派)」とも蔑称で呼ばれた。17世紀に、十字の切り方の変更など ニコンの典礼改革を嫌ったために迫害を受け、多くがウクライナ・シベリア・ロシア極東地域・ポーランド、バルト地域を中心に、ルーマニア・トルコ・新疆(東トルキスタン)にも逃散。教会を持つことが許されず、コミュニティを成し、質素な隠遁生活を送ることが多かった。セメイスキー

 

ロシア正教の鐘

 

ズヴォナールと呼ばれる専門職者が奏する、複数の鐘が打ち合う音が特徴的。大地の原風景をなすサウンドスケープといえる。奏法は「教会法規」で4種の奏法や楽曲的な展開が記されており、すべての鐘を打ち鳴らすトレズヴォンは、他のキリスト教会の鐘には聴くことができない。西洋音楽的作曲でも、チャイコフスキー「荘厳序曲」では実際に用いられ、ラフマニノフは鐘の響きを模した。

 

ロシア正教の聖歌(ズナメニ聖歌)

Znamenny Chants, Знаменное пение

祈祷の言葉の阻害要因になるため、正教ビザンツの聖歌の伝統を引き継ぎいでオルガン等の楽器伴奏を伴わず、斉唱された。八調(オクトエコス)と呼ばれるギリシア語のビザンツ聖歌の旋法を用いたが、スラブ語は音節数や抑揚が異なるために、独自の単旋律聖歌に変容。作曲者としてフョードル・クレスチャニンらの名が残っている。17世紀以降は西洋音楽の影響を強く受けポリフォニー聖歌が主流となり、19世紀末にラフマニノフの「徹夜祷」など音楽的作品も作曲された。

 

ロシア帝国(帝政ロシア)

Russian Empire , Российская империя

モスクワ大公国で1613年にロマノフ朝が成立し領土を広げた。ピョートル1世が開拓してペテルブルグを開き、モスクワから遷都。1721年に国名をロシア帝国と改め、初代皇帝として即位。帝国は強権的な農奴制を行い、極東方面への支配体制をつくるが、オスマン帝国の混乱に乗じた西洋列強の「東方問題」に参入。南下政策を開始するも、失敗が続いた。不凍港を求め、シベリア鉄道の敷設に着手しつつ本格的に極東に進出し、日露戦争を開戦。混乱の中で第一次世界大戦を迎え、その渦中、1917年二月革命に置いて帝国は崩壊。十月革命が成立し、ロマノフ家は処刑された。

 

ロシア民謡

 

ロシアの国民的愛唱歌。無伴奏やグースリ等の楽器とともに歌われた古い民衆歌が、バラライカやボタン式アコーディオン(バヤン)の普及により、歌謡化し、19世紀には国民楽派の作曲家の収集により歌曲や歌劇にも応用された。ソビエト時代は赤軍合唱団の合唱はにより世界の広がり、日本でも1950年代の歌声喫茶などで労働歌、革命歌とともに訳詞で愛唱された。

 

ロスチャイルド、マックス

Max Rothschild,  Макс  Ротшильд

ロシアのギター奏者。エレキギターを中心に、スィングジャズをエレクトリックなアイデアで再現するプロジェクトを行い、さまざまなジャンルを融合しながら、ドイツ、ロシアでの演奏活動。2019年の音楽詩劇詩劇研究所とウクライナの歌手アーニャ・チャイコフスカヤとのコラボレーションに参加。

 

ロストロポーヴィッチ、ムスティスラフ

Mstislav Rostropovich, Мстислав Ростропович

1927-2007 ロシアのチェロ奏者、指揮者。旧アゼルバイジャン共和国のバクーに生まれる。ショスタコーヴィチ、プロコフィエフ、ルトスワフスキ、シュニトケなど多くの作曲家が曲を献呈。「人民芸術家」の称号を得るが、ショスタコーヴィチ、ソルジェニーツィンら反体制派を擁護したことで政府と対立してアメリカに移住。ベルリンの壁が崩壊した際、壁のそばでバッハを演奏した映像が日本でも報じられた。

 

ロチ、ピエール

Pierre Loti  

1850-1923 フランスの作家。明治初期に二回日本に滞在し、日本古来の文化遺産に深く感動し、違和感とともに辛辣に観察。同棲した三味線を弾く倡妓との長崎での生活等を記した小説「お菊さん」は、後にA・メサジェが歌劇として作曲し、1893年にパリで初演された。

 

ロマン派(音楽)

 

19世紀における西洋古典音楽の傾向。シューベルト、シューマン、メンデルスゾーン、ショパン、リスト、ベルリオーズ、ブラームスなどの名が挙げられる。古典派音楽を元にしつつ、個人の精神的な自由な感情や情趣を根拠とし、従来の様式から逸脱。職業音楽家的存在だった古典派以前の作曲家と異なり、芸術至上主義的な態度で創作されることが主だったとされ、一般的な「芸術家(音楽家)像」を形成したともいえる。

 

呂明賜

 

台湾出身の元プロ野球選手。前傾姿勢の異彩の打撃フォームから長打を放ち、「アジアの大砲」といわれ、センセーショナルなデビューを果たしたが、入団年以降は日本では活躍の場が少なかった。

 

「ロングアーム」(・フェスティバル)

Long Arm Festival, Длинные Руки 

ロシアの前衛音楽、民俗音楽の国際音楽祭。モスクワのドム文化センターで行われる。音楽詩劇研究所は2016年に招聘された。ドム

 

「論文」(楽曲)

Treatise

イギリスの作曲家、コーネリアス・カーデューによって1963年から1967年の間に書かれた曲。図形楽譜を用い、193ページに及ぶ。言葉による指示もなく、楽器編成、演奏者の数、演奏する部分は指定されていない。ヴィトゲンシュタインの哲学から影響を受けた。カーデュー、コーネリアス

 

 

 

 

(ワ)

ワークソング(労働歌)

 

音楽、歌唱行為の原初の一つと考えられる。労働作業やその形態に応じてさまざまなリズムや歌唱、楽想が生まれ、民謡としても歌われ、楽曲に発展することもあった。労働自体を「テーマ」に作られる楽曲としての労働運動歌、革命歌も近代以降に作られた。

 

ワールドミュージック(ブーム)

 

西洋の古典音楽や大衆音楽以外のさまざまな伝承音楽、フォークロア・ミュージックを総称する言葉として「民族音楽」があるが、それらの音楽と20世紀半ば以降の欧米のポップスやロックと融合した音楽が「ワールドミュージック」と呼ばれた。1980年代にブームとなった当初が、1かつてアフリカに多くの植民地を有したフランスのパリが発信の中心だった。

 

「わが西遊記」

 

中島敦の「悟浄出世」と「悟浄歎異沙門悟浄の手記」による中国の小説「西遊記」をモチーフにした小説(1947)。河崎が作曲して手がけたミュージカル活劇「Tenjik Tenjik」の原作。「西遊記」、中島敦

 

和漢混交文 

 

日本の文語体の文章で、和文、漢文の両方の特色を合わせた文章。

 

和讃

 

梵讃、漢語でなく和語を用いた仏教歌謡。75調の四句で一章(平安時代の流行り唄今様の形式)を成し、鎌倉時代には布教に広く用いられた。霊地巡礼で唱えられるようになる御詠歌は57577の和歌で一節をなす。

 

「和人のユーカラ」(シャモのユーカラ)

 

深沢七郎の短編集「みちのくの人形たち」(1981)に所収された短編小説。北海道を舞台に、「アイヌらしき」謎の男との不思議な交流や会話が書かれる。深沢七郎

 

「忘れられたパンソリ(語り唱)」

 

美術家の鄭梨愛のビデオ・インスタレーション作品(2017) 。鄭梨愛

 

和太鼓(合奏)

 

日本の太鼓の総称。神事、戦などで用いられた。日本では、バチで叩くものを太鼓、手で叩くものは鼓と区別して呼ばれた。江戸時代以降歌舞伎等の下座音楽として芸能の場でも用いられたが、現代のように太鼓が主体の音楽はなかった。「鬼太鼓座」や「鼓童」などが知られるプロ和太鼓集団や、愛好団体でもなじみ深い、複数の太鼓のみで形成される合奏形態は、組太鼓(複式複打法)といわれる1950年代に形成された新しい形態。

 

渡辺真也

 

1980年静岡県生まれの映画監督、インディペンデントキュレーター。アートキュレーターとして国民国家に焦点を当てた国際美術展をアメリカ、スイス、ドイツ、日本などで開催。映画作品に「Soul Odyssey – ユーラシアを探して」 (2016)など。著書に「ポニョCODE 『崖の上のポニョ』に隠された宮崎駿の暗号」(三元社 2021)など。

 

渡部八太夫

 

東京生まれの説経祭文師、山伏。小学校教員として地芝居の復活に関わり、邦楽(長唄、義太夫、説経節)の道に入る。 2011年人形浄瑠璃猿八座の座付き太夫として、義太夫節よりももっと古い文弥節を活用して古説経、古浄瑠璃、山伏祭文に源流を持つ説経祭文の現代的再生に取り組む。石牟礼道子作品はじめ、様々な物語を三味線で歌い語る。

 

蕨(市)

 

埼玉県の都市。全国で面積最小、人口密度最大の都市。JR蕨駅付近は、近隣の川口市を含め海外からの在留者が多く、クルド人が多く生活し「ワラビスタン」といわれることがある。南隣の西川口駅(川口市)付近は、中国を中心にしたアジア食材、飲食店が多く「アジアンタウン」としても知られる。

 

ワルシャワ労働歌(ワルシャビャンカ)

Warszawianka

題名は「ワルシャワ市民」、「ワルシャワの女性」を意味する労働歌、革命歌。ロシア第一革命(1905-1907)時、ロシア統治下のポーランド蜂起の際に広く歌われるようになった。レーニンが好んだといわれ、ロシア語などに翻訳され世界にも広まった。日本では1927年に鹿地亘が翻訳し、戦後の学生運動でも歌われた。1936年に始まるスペイン内戦の際は、アナーキストによって新たに歌詞がつけられ「バリケードへ(A LAS BARRICADAS)」という曲名で歌われた。

 

「ワルツ」

 

歌手の友川カズキの曲。酒場のカウンターで余興的に書いた詩であると作者自身は語っている。友川カズキ

 

 

 

 

A

AlifThe Call of the Beginning)」

Алиф

2018年のロシアの演劇大賞のゴールデンマスクを受賞のダンス、音楽作品。タタール語の古代アラビア文字を身体化する振り付けと、キリル文字表記となったときに語から失われた7つ音をテーマにした。なお「Alif」はアラビア文字で第1番目に位置する文字だが、音を持たない形式的な文字。バトゥーラ、ヌルベック

 

ART&Shock(劇場)

 

Театр ARTиШОК

2001年にアルマティ市に設立された、カザフスタン初の独立劇場(ソビエト時代は劇場は基本的に公共施設)。

 

 

 

 

B

Behind the Terrain ― sketches on imaginative landscape

 

「風景」に焦点をあて、東南・東アジアを中心に巡回する展覧会プロジェクト。現代における移住や境界線といった言葉の定義付けが風景とどのような関係性で結びついているのかを、個人の歴史性だけでなく、追憶・記憶の政治的な相互関係から考察することを目的とする。2018年に東京の小金井アートスポット・シャトーでも開催され、美術家鄭梨愛、李晶玉など国内外の作家の作品が展示された。鄭梨愛

 

 

 

 

C

Chain Gang

 

1960年にアメリカのR&Bの歌手のサム・クックが歌った囚人ソング。軽快なメロディをもつが、囚人服を着せられて足に鎖を付けられ、土木作業などの重労働をさせられていた悲哀が歌われる。

 

(ユーラシアンオペラ)「Continental Isolation

 

音楽詩劇研究所のユーラシアンオペラプロジェクト作品。2018年初演。2015年初演の「終わりはいつも終わらないうちに終わっていく」をベースにユユーラシア各地でコラボレーションを行い、2018年東京公演に集大成した。「終わりはいつも終わらないうちに終わっていく」

D,Д

db-Ⅱ-bass – 音、身体、楽器」(ダブルベース)

 

トルコの振付家アイディン・テキャルと河﨑純によるプロジェクト。骨格学を援用した独自の振付け法で、楽器を弾く身体と楽器の関係を表面化させ、そこから音楽的、舞踊的舞台芸術作品として表現する。2012年から2013年にかけて、イスタンブール(アクバンク・ジャズ・フェスティバル)、東京、横浜(東京芸術見本市TPAM)で上演。テキャル、アイディン

 

Действие буквально

Literal action

2017年に設立されたカザフスタンの自閉症とダウン症のパフォーマーグループ。アルマティ市の劇場トランスフォーム劇場を拠点に活動。音楽詩劇研究所の2019年のユーラシアンオペラ「さんしょうだゆう」に参加。ダウン症

 

 

 

 

E

ECM(音楽レーベル)

 

1969年にドイツ(西ドイツ)で設立された現代音楽、ジャズのレーベル。民族音楽、即興音楽、古楽も含めさまざまなジャンルが融合されて多岐にわたる。独特のリバーブを用いた統一感のあるサウンドとアートワークにより、レーベル自体が一つのジャンルを成しているといえる。

 

Ekipaj Kalipso(カリプソの乗組員)

Экипаж Калипсо

ウクライナの舞踏家、ドミートリー・ダツコフと、イーラ・ルキヤンチクによる音楽ユニット。マンドリン、ギターの繊細な演奏にパンキッシュでミステリアスな男女のヴォーカルが重なる。歌唱音楽ユニット。オデッサ市を中心に活動。ダツコフ、ドミートリー

 

EXIAS-J

 

日本の即興音楽のグループ。1999年設立のギタリスト近藤秀秋が主導する音楽アソシエーション。正式名称は 「Experimental Improvisers' Association of Japan」。超ジャンルの演奏家が集まったコレクティブで、メンバーはその都度のプロジェクトにより選択された。リトアニア、台湾、ロシア、アメリカ、スコットランドでフェスティバルに招聘され、河崎も参加した。近藤秀秋

 

 

 

 

F

Fall Up(festival)

Падать вверх

ロシアのイルクーツクで開催される、国際アクチュアルアート・フェスティバル。名称は「落ちこぼれ」を意味する。ロシアや海外の前衛的な音楽家、劇場、芸術家たちが参加。ロシアやイギリスで知られる音楽家・作曲家のエフゲニー・マスラボーエフが芸術監督。エフゲニー・マスラボーエフ

 

 

 

 

H

HIGH FEST

 

アルメニアの首都エレヴァンで毎年行われる国際演劇祭。2016年に音楽詩劇研究所が招聘された。2021年で第19回を迎えている。

 

 

 

 

(I)

It's A Man's Man's Man's World

 

1966年に発表されたアメリカのR&B、ソウル歌手ジェームス・ブラウンの代表曲の一つ。ブラウン、ジェームス

 

 

 

 

(J)

JANIS(レコードショップ)

 

1981年開店。広範囲にわたる音楽を、輸入盤、海賊盤、自主制作盤も含めて独自のジャンル分けも行いながら取り扱った。2018年にレンタルショップである本店が閉店。

 

Jazz Tokyo

 

2004年に創刊された、ジャズを中心にさまざまに派生する新しい音楽シーンを伝える日本のWEBマガジン。

 

Jeong Ga Ak Hoe

정가악회

2000年に設立された。さまざまな音楽劇や音楽公演を提供する韓国のソウルにあるプロデュースチーム。若手伝統音楽家のミュージシャンプール、アンサンブル。政治、伝統文化の伝達、文化の多様性テーマを、映像作品も用いながら伝統音楽と現代音楽を融合しながら創られる。

 

 

 

 

K

KALAN

 

トルコの音楽レーベル。アナトリア周辺地域の民族音楽や現代の音楽を数多く制作する重要なレーベル。アーカイブ的な録音だけではなく、歴史に埋もれたマイノリティーの観点から新たな作品が制作されることが多い。文化の多様性を喧伝するためトルコ政府が外交の際に用いるといわれる。 レーベル名は、現在はトルコ語で呼ばれている、主宰者の故郷のクルド語名。

 

KGB(カーゲーベー ソ連国家保安委員会)

 

ロシアの社会主義時代の秘密警察組織。反革命勢力としての民族主義を根絶することにも向けられていたため、構成員は可能な限りロシア人以外の民族(特にポーランド人とユダヤ人)から補充するように組織された。レーニンによる1917年設立された秘密警察組織(チェーカー)、スターリンによるNKVDの後、1954年、内務省から分離して設立。反体制派の取り締まりをはじめ、国境警備、海外での情報収集を行った。1991年に解体され、ロシア連邦の保安省に引き継がれたが、1993年に廃止。

 

KINO

КИНО

1982年にレニングラードで結成された、ヴィクトル・ツォイが率いたニューウェーブ音楽を代表するロックバンド。ペレストロイカ期にカリスマ的な人気を誇ったが、ツォイの交通事故死により1990年解散。ツォイ、ビクトル

 

KONJO

 

トルコの即興音楽グループ。前衛ギタリストのシェヴケット・アクンジュ、黒海、バルカン地域の民族音楽をベースに歌うスムル・アーギュリアン、打楽器奏者のオルチュン・バシュトゥルクによるトリオ。→アクンジュ、シェヴケット

 

 

 

 

L,л

LEOレコーズ

Leo Records

フランスの亡命ロシア人のレオ・フェイゲンが1979年に設立したイギリスの音楽レーベル。欧米の前衛の他、知られざるロシアの前衛ジャの前線を紹介し世界に発信。2021年までにそのタイトルは500作品に及ぶ。

 

「Лето」

Summer

キリル・セレブレニコフ監督 ヴィクトル・ツオイやソ連ロックを題材にした映画 (2018)。→KINO

 

Lost River Song

 

トゥバ共和国出身の歌手、サインホ・ナムチラクの自作の「泣き歌」。赤子のような泣き叫ぶ声がシャーマニックに歌われる。→ナムチラク、サインホ

 

 

 

 

M

MAYA MAXX

 

1961年生まれの日本の画家、イラストレーター。独学で絵画を始め、作家のよしもとばななや山田詠美らの小説の装丁画や絵本、CDやブックデザインなど多彩な活動で知られる。2020年より北海道の岩見沢を拠点に制作活動を行っている。

 

MPB

Musica Popular Brasileira

ボサノヴァ以降の、ブラジルのポピュラー音楽。新しい傾向として生まれたボサノヴァの静的な洗錬に対し、1960年代後半に、ロックビートを導入。サンバやフォークロアの根源に遡りつつ、さらなる反動的な先鋭的なサウンドやパフォーマンスを構築。初期においては反対性的傾向が表わされることも多かった。シコ・ブアルキ、カエターノ・ヴェローゾ、ジルベルト・ジルを嚆矢とする。

 

 Huseynê Mûşî

 

1936~2001 トルコの東部、北クルディスタン地域生まれのクルド人歌手。クルドの叙事詩を歌う。デングベジュ

 

 

 

 

O

OCORA(音楽レーベル)

 

フランスの民族音楽の老舗レーベル。1957年にアフリカのマリ共和国に設立。電子音楽作曲家の祖の一人、ピエール・シェフールらの尽力で、フランス語圏のアフリカの現地発信の膨大なアフリカ伝承音楽を中心に録音。1969年に母体だったフランス放送に吸収され、世界各地の民族音楽、伝統音楽を記録し、精緻な解説を付して音源を発表している。

 

 

 

 

P

PAMS(演劇フェスティバル)

 

2005年からソウルで毎年10月に開催される国際芸術見本市。2019年に国際交流基金ソウルセンターの主催で、音楽詩劇研究所のユーラシアンオペラ「さんしょうだゆう」を上演。

 

PlanB

 

東京の中野区のライブイベントスペース。アートプロデューサーの木幡和枝、ダンサーの田中泯らによって1982年に誕生した。表現者たちの自主的な参加により共同運営され、ジャンルやスタイルにとらわれないパフォーマンスの実験的追求をテーマに多岐にわたる企画を展開。

 

PKK(クルディスタン労働者党)

 

アブドラ・オジャランが1978年に設立したトルコの政党。マルクス・レーニン主義を標榜し、トルコ南東部での「クルド人国家の樹立」を掲げた。1984年からトルコ国内で武装闘争を開始。近年では民族国家建国は排他性を生むとして、クルド文化や言語を保護することに要求を下げたが、軍や治安部隊への攻撃は継続。オジャランは99年に死刑判決を受けたが、後に終身刑に変更された。

 

 

 

 

R

R&B

 

1940年代頃から、ゴスペル、ブルースなどが融合した、アメリカの黒人による大衆音楽に対して使われた用語。1960年代になるとより洗錬、大衆化され「ソウル」という用語も生まれた。ロックン・ロールなど、その後のポピュラー・ミュージックに与えた影響は大きい。南部メンフィスのスタックス、北東部ニューヨークのモータウン・レーベルを中心に、多くの楽曲、アーチストが輩出された。

 

R&Besk

 

ドイツのトルコ移民新世代によるR&Bとトルコ大衆歌謡アラベスクの融合音楽。ラップ、ヒップホップをトルコまたはクルドの出自をもつ移民感覚も表わされている。アラベスク

 

RCサクセション

 

日本のロックバンド。歌手、作曲家の忌野清志郎らによって、1968年に結成。R&Bの感覚をもちながらアコースティク編成で、きわめて繊細でシニカルな内容を歌った。1980年代以降は、サウンドをロック化し、ニューウェーブ、ローリングストーンズ、ソウルミュージックのテイストのサウンドを取り入れ、ナイーブな詩の感覚を維持させたまま日本のロックムーブメントの象徴的存在となった。

 

 

 

 

S

Şeroyê Biro

 

1881~1970  アルメニアで活動したクルド人歌手。クルドの叙事詩ディングベジュを歌った。デングベジュ

 

Sound Migration

 

2010年、2011年におこなわれた、国際交流基金主催の、日本とルコ現代音楽制作プロジェクトの名前。トルコの歌手サーデット・チュルコズ、ギタリストのシェヴケット・アクンジュ、日本からはヴォーカリスト国広和毅、女優の美加理、河崎が参加。

 

Stone Out

 

コントラバス奏者齋藤徹の韓国のシャーマン金石出に捧げられた、コントラバス2台と17絃箏カルテットによる作曲作品。さまざまな韓国のシャーマニズムや農楽に由来するリズムと即興演奏をもとに組曲として演奏される。斎藤徹

 

「СВЕТ=0ТЕНЬ(光=0=影)」

 

ロシアのモスクワ近郊、エゴリフエスク市の郊外の森の中の巨大なアートレジデンス「グスリッツァ」で行われた総合芸術祭。音楽詩劇研究所はサインホ・ナムチラク、ロシアのダンサーたちとの作品を発表。→「グスリッツァ」

 

Syunoven(朱乃べん)

 

1980年福島県会津生まれの美術家。1990年代後半からスケートボードや音楽を通じた絵を描き始める。独学で追求を続け、一本の線が渦巻いて、ループ、螺旋状に絡み合った、VOCCI(ぼち)という名の抽象線を描く。

 

 

 

 

T

Tri-O

Три- О

ロシアの管楽器奏者セルゲイ・レートフを中心とするロシアの管楽器トリオによる即興音楽アンサンブル。1985年に結成され現在まで断続的に活動している。レートフ、セルゲイ

 

Turan 

 

2008年に設立されたカザフ民族音楽を伝統楽器アンサンブルに編曲して演奏する集団。コブス、ドンブラ、ジェティゲン(チター系の古楽器)、シャーマン太鼓などで合奏され、毎年いくつもの世界各地の音楽祭に招聘されている。

 

TRFtrf

 

1992年に結成された女性ヴォーカル、ダンス、DJという、当時の日本の音楽シーンでは見られることがなかった編成によるユニット。1990年半ばから、作曲家小室哲哉のプロデュースでヒットを連発した。2000年以降、新曲のリリースはないが、2022年まで主要メンバーが変わることなく活動を継続する息の長いグループ。

 

 

 

 

Y

Yakaza

Yakaza Ensemble

トルコの室内楽とエレクトロニクスと民族音楽を融合した、新しい神秘主義(スーフィズム)を標榜するアンサンブル。メンバーが日本文化への造詣が深く、小津安二郎の映画からのサンプリングを行い「Ykaza」とは「ヤクザ」に由来する。

 

YMO(イエローマジックオーケストラ)

Yellow Magic Orchestra

1978年に結成されたバンド。1984年の「散開」までのおよそ5年半活動。当時の最新電子楽器とプログラミング技術を駆使したサウンドを用い、従来のジャズやロックとは異なる無機質なパフォーマンスを行った。欧米の現代思も、芸術におけるモダニズムを「黄色人種」が演じることで解体し、ポストモダニズムを体現。結成当初は横尾忠則をYMOのメンバーに加える構想があった。1993年に再結成(再生)坂本龍一

 

You are the shaman of your Life

 

トゥバ共和国出身の歌手、サインホ・ナムチラクの楽曲。歌手の母語であるロシア語やトゥバ語ではなく英語で歌唱される。→ナムチラク、サインホ

 

ZenTrane

 

モスクワのジャズクラブ「コズロフ」でおこなわれている、アヴァンギャルドジャズのイベント企画。